概要情報
事件名 |
北海道・北海道教育委員会 |
事件番号 |
札幌地裁平成23年(行ウ)第32号 |
原告 |
北海道 |
被告 |
北海道(処分行政庁:北海道労働委員会) |
被告補助参加人 |
X1、北海道教職員組合 |
判決年月日 |
平成26年3月31日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 北海道教職員組合(以下「組合」)及び組合員X1は、北海道が,X1が組合の実施したストライキ(以下「本件スト」)に参加したことを理由として、X1を懲戒(戒告)処分(以下「本件懲戒処分」)に付したことが不当労働行為に当たるとして救済を申し立てた。北海道労働委員会(以下「道労委」)は、同申立てを一部認容し、北海道に対し、X1に対する戒告がなかったものとしての取扱、同戒告をなすことによる組合の運営に対する支配介入の禁止を命じた(以下「本件命令」)。
2 北海道は、これを不服として、札幌地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、北海道の請求を棄却した。
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判決主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
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判決の要旨 |
1 争点①(道労委が本件懲戒処分の労組法7条1号該当性を判断しなかったことが違法であるか否か)について
労組法7条は、不当労働行為として禁止される行為を1号ないし4号にわたって列挙しているところ、これらのうち、基本的で一般的な類型は、不利益取扱い(1号)、団体交渉拒否(2号)及び支配介入(3号)の三類型である。これら各類型については別個の類型として別個の要件が規定されており、不利益取扱い(1号)に該当することが支配介入(3号)に該当するための要件ではないと解されることからすれば、労働委員会において、使用者の行為が支配介入(3号)に当たると判断するに当たり、当該行為が不利益取扱い(1号)に当たるか否かをも判断する必要はない。
したがって、道労委が本件命令をなすに当たり本件懲戒処分の労組法7条1号該当性を判断しなかったことが違法であるとはいえないから、この点についての北海道の主張は理由がない。
〔なお、X1は、地方公務員法57条の「単純な労務に雇用される者」(いわゆる単純労務職員)であり、組合は、労組法等の適用において異なる者を含むいわゆる「混合組合」である。〕
2 争点②(本件懲戒処分が労組法7条3号の支配介入に当たるか否か)について
ア 労働組合の活動が行われた場合において、当該組合活動に正当性が認められず、懲戒事由に該当するときは、使用者は当該組合活動を行った労働者に対して懲戒処分をすることができる。もっとも、使用者の懲戒権は無制約なものではなく、使用者が懲戒処分をなすに当たり考慮すべき事情を考慮しないなど慎重な検討を欠き、その結果、懲戒処分が懲戒事由すなわち懲戒の対象となる組合活動との関係で均衡を失し、社会通念上相当なものとは認められない場合には、当該懲戒処分は使用者の裁量の範囲を超えてなされたものとして権利の濫用となると解するのが相当である。
この点について、北海道は、本件参加行為は、単純労務職員の争議行為を禁止する地公労法附則5条、同法11条1項に反する違法行為であるところ、当該違法行為に対する本件懲戒処分は相当であり、不当労働行為にも当たらない旨主張するので、以下、本件懲戒処分の相当性を検討する。
イ 北海道教育委員会(以下「道教委」)は、本件懲戒処分を含む本件各処分をなすに当たり、その基準として、本件ストに参加するために職場を離脱した時間が30分以上の者については戒告処分、職場を離脱した時間が29分以下の者については文書訓告とする処分基準を設け、これに従って本件懲戒処分をなしたものである。このことからすれば、道教委は、X1に対する処分(本件懲戒処分)を決定するに当たり、以下のような事情について考慮しなかったものと認められる。
(ア) 本件参加行為によるX1の担当する職務への影響の有無
X1は、2度にわたって本件学校の校長に対し、本件ストに参加する旨事前通告をして本件ストに参加したものである上、本件参加行為によっても、X1の担当する本件学校の職務には特段の影響がなかった。
懲戒対象とされる行為の結果は、対象行為の悪質性の有無・程度を検討する上で重要な要素となるものであり、対象行為の悪質性の有無・程度は、懲戒処分を行うか否か、行うとしてどの程度の懲戒処分を行うかを検討する上で重要な要素となるものである。したがって、道教委が、本件参加行為によるX1の担当する職務への影響の有無を検討しなかったことは、考慮すべき事情を考慮しなかったものというべきである。
(イ) 過去のストに対する処分例との均衡
本件ストへの参加者に対する処分を決定するに当たり、道教委においては、過去のストに対する処分例との比較がなされたものの、ストライキ参加者のうち少数のみが処分された事例との相違点や、ストライキ参加者のほとんどが処分を受けた事例との類似点等について、何ら具体的な議論、検討はされておらず、その他にもそのような議論、検討がなされたことを認めるに足る証拠は記録上存在しない。
同じ規定に同じ程度に違反した場合、これに対する懲戒は同じ程度たるべきであるという公平性の要請からすれば、本件各処分の基準を定めるに当たり、道教委が、上記のように、過去のストに対する処分例と本件ストとの均衡を考慮しなかったことは、考慮すべき事情を考慮しなかったものというべきである。
ウ 以上の事情によれば、本件懲戒処分(及び本件各処分)の処分権限を有する道教委は、本件懲戒処分をなすに当たり、考慮すべき事情を考慮せず、慎重な検討を欠いていたというべきである。
上記の事情に加え、X1が本件懲戒処分によって勤勉手当の減額等の経済的な不利益を受けていること、本件ストまでの間に一連の給与独自削減措置によって削減されたX1に係る給料及び期末・勤勉手当の累計額は200万円を超えており、本件給与独自削減措置によってさらに今後4年間にわたって継続することが予測されたこと、一連の給与独自削減措置のうち、平成18年度4月から実施されたものについては、当時の北海道副知事が平成19年度までの2年間に限定して緊急実施するものである旨述べていたことなど、X1が本件ストに参加したことについて相当の事情があったと認められることにも照らせば、法令の違法性(すなわち、地公労法11条1項の憲法、条約への適合性等)について検討するまでもなく、本件懲戒処分は懲戒の対象たる本件参加行為との関係で均衡を失し、社会通念上相当なものとはいえず、道教委の裁量の範囲を超えてなされたものであって、権利の濫用に当たるというべきである。
そして、本件ストに参加したX1に対し、その行った組合活動(本件参加行為)に比して重い懲戒処分がなされれば、組合員や組合員になろうとする者がストライキのみならず、その他の組合活動に参加することをちゅうちょすることは容易に想定できるのであって、その結果、組合は弱体化し、その自主性を阻害されることになるというべきである。したがって、本件懲戒処分は、組合に対する弱体化行為としての支配介入(労組法7条3号)に当たると認めるのが相当である。
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その他 |
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