概要情報
事件名 |
西日本旅客鉄道(西労中国地本転勤等) |
事件番号 |
東京高裁平成24年(行コ)第380号 |
控訴人 |
西日本旅客鉄道株式会社 |
被控訴人 |
国 |
被控訴人補助参加人 |
ジェーアール西日本労働組合
ジェーアール西日本労働組合中国地域本部 |
判決年月日 |
平成25年1月29日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
重要命令に係る控訴審判決 |
事件概要 |
1 組合らは、会社が、①組合の組合員4名を岡山支社の各運輸センターへ、1名を会社大阪支社の大阪電車区に転勤させたこと(本件各転勤)、②X2ら3名に対し戒告処分又は低い勤務評価を行ったこと(本件処分等)、③分会の掲示板に掲示した掲示物を撤去したこと(本件掲示物撤去)、④組合員らの転勤、処分等を議題とする19年2月20日付け団交申入れ及び19年6月18日付け団交申入れ(本件団交申入れ)に応じないこと(本件団交拒否)が①・②は労組法7条1号及び3号、③は同条3号、④は同条4号)に当たるとして、救済を申し立てた。
2 初審岡山県労委は、本件団交拒否が労組法7条2号に、本件掲示物撤去が同条3号に該当するとして、会社に対し、誠実団交応諾、上記団交拒否および掲示物撤去に関して文書手交を命じ、その余の救済申立ては棄却した。組合らと会社は、これを不服として、それぞれ再審査を申し立てが、中労委は各再審査申立てを棄却した。会社は、中労委命令を不服として、取消訴訟を提起したが、一審(東京地裁平成24・9・19)は会社の請求を棄却した。
3 会社は、一審判決を不服として、原判決の取消し及び中労委命令のうち救済部分の取消しを求め控訴を提起した。東京高裁は、会社の控訴を棄却した。 |
判決主文 |
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。 |
判決の要旨 |
当裁判所も本訴請求には理由がないものと判断する。その理由は、大要原判決の理由のとおりであるから、これを引用する。
一審判決の概要は次のとおり
1 本件各転勤は、労組法7条1号及び3号の不当労働行為に該当するか
本件各転勤の対象者の中には、転勤により一定の生活上・組合活動上の不利益を受ける者がおり、会社と西労との間はおおむね対立した状況にあったことが認められるが、本件各転勤には業務上の必要性、人選の合理性が認められることに加え、本件各転勤の対象者が西労の組合員ないし同人らの組合活動のゆえに行われたこと、あるいは西労の弱体化を意図して行われたことを認めるに足る立証はないから、本件各転勤は、労組法7条1号及び3号には該当しない。
2 本件処分等は、労組法7条1号及び3号の不当労働行為に該当するか
会社と西労とはおおむね対立した状態が続いていたことが認められるが、本件処分等にはそれぞれ理由があることに加え、本件処分等が西労の組合員ないし同人らの正当な組合活動のゆえに行われ、あるいは西労の弱体化を意図して行われたことを認めるに足る立証はないから、本件処分等は、労組法7条1号及び3号に該当しない。
3 本件掲示物撤去は、労組法7条3号の不当労働行為に該当するか
本件掲示物は、会社の分会の組合員に対する転勤、処分、勤務評価に関する対応を非難し、これら労使間の懸案事項について、分会の立場からの見解を表明するとともに、掲示物の読者の理解をも得ることを目的として記載し掲示したものであり、同掲示物記載の表現をもって、会社と西労との労働協約(本件協約)で定める掲示物撤去要件に該当するとはいえない。よって、会社の本件掲示物撤去は労組法7条3号に該当する。
4 本件団交拒否は、労組法7条2号の不当労働行為に該当するか
ア 本件各転勤、本件処分等会社の個別的人事権の行使に関する事項は義務的団交事項に当たるが、同事項については労働協約で苦情処理等の別段の手続に委ねることとし、団体交渉事項から除外している場合、そうした取扱いは、団体交渉権保障の趣旨に反しない限りは、許容されるものと解される。そして、上記事項について、使用者が団体交渉を拒否できるといえるには、苦情処理等の手続において、実質的な協議や審理が行われること、すなわち、当該手続が団体交渉に代わる機能を果たしているといえる必要があり、使用者は、当該手続において具体的な説明等を行うことにより組合の理解を得るよう努力することが望まれる。
イ 本件団交申入れは、本件各転勤、本件処分等について交渉が申し入れられたものであるが、苦情処理会議等での会社の対応は、組合らの理解が得られるような詳しい説明を行ったり、再度、苦情処理会議等を開催し、説明、協議を行うなどの対応をとっておらず、会社が、組合らの理解を得る努力をしたとまでは認められない。したがって、苦情処理会議等での説明等をもって、団体交渉に代わると認められる実質的な協議や審理が行われたものと認めるには至らない。
ウ また、本件団交申入れは、本件各転勤、本件処分等が不当労働行為に当たるとして、交渉が申し入れられたものでもあるが、一般的にいえば、このような労使関係の運営に関する事項も義務的団交事項に当たり、会社は組合らと誠実に協議・交渉する義務がある。会社は、同事項について、説明し、組合らの疑問の解消に努めるような対応をとっておらず、この点についてみても実質的な協議・交渉が行われたとはいえない。
エ 以上のとおりであるから、会社が本件団交申入れを拒否したことは労組法7条2号に該当する。 |
その他 |
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