労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  日産自動車 
事件番号  東京地裁昭和48年(行ウ)第67号 
原告  日産自動車株式会社 
被告  中央労働委員会 
参加人  全国金属労働組合
日本労働組合総評議会全国金属労働組合東京地方本部
日本労働組合総評議会全国金属労働組合東京地方本部プリンス自動車工業支部 
判決年月日  昭和49年 6月28日 
判決区分  全部取消 
重要度   
事件概要  1 会社が、プリンス自動車工業との合併後において、日産自動車で実施してきた昼夜二交替の勤務体制及び計画残業を旧プリンス自動車工場にも導入する一方、この勤務体制を承認しない全国金属東京地本プリンス自動車工業支部の組合員には一切残業させなかったことが、不当労働行為に当たるとして、東京地労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審東京地労委は、支部組合員に対して残業差別をしてはならない旨の救済命令を発した。
 会社は、これを不服として、再審査を申し立てたところ、中労委も初審命令を支持した。
 本件は、これを不服として、会社が東京地裁に行政訴訟を提起した事件であるが、同地裁は、会社が、計画残業に反対している支部組合員を計画残業に組み入れなかったことには理由があるとして、救済命令を取り消した。
 
判決主文  1 原告を再審査申立人、参加人らを再審査被申立人とする中労委昭和46年(不再)第38号事件につき、被告が昭和48年3月19日付でした別紙命令書記載の命令を取り消す。
2 訴訟費用は、本訴によって生じた部分を被告の、参加によって生じた部分を参加人らの各負担とする。 
判決の要旨  1 不当労働行為の成否
(1) 支部は、団体交渉において、日産型交替制にともなう遅番勤務については明確に拒否し、また、計画残業をもって強制残業である等として、これを拒否した趣旨のものであると認められる。
 会社が支部に対して、その所属組合員は計画残業あるいはこれと日産型交替制に服するように求めたことについて、首肯し難いような点はみられない。
 さらに、支部が計画残業に反対しているにもかかわらずその所属組合員をこれに組み入れるならば業務に支障を生ずるおそれがあると会社が懸念したとしても、それは無理からぬところである。
 そうだとすれば、他に支部の運営への支配介入を企図したものであることを裏付けるような特段の事情のない限り、会社が旧プリンスの三工場の製造部門の支部所属組合員に対しては昭和42年6月3日以降、間接部門の支部所属組合員に対しては昭和46年6月18日以降残業を命じなかったことは、支部が自らの自主的な判断により会社の申入れを拒否したことの結果によるものとみられるから、不当労働行為を構成しない。
(2) ①会社は、昭和42年1月にはともかく支部の存在を認め、その後は支部と団体交渉ルールの設定等について折衝したり、また同年3月22日から同年6月3日までの間には、もっぱら支部の春闘要求事項であり、基本的な労働条件にかかわる重要事項でもある賃上げ問題とか合併にともなう賃金体系、退職金等に関する問題等について団体交渉を行なっていたこと、②支部は、右三工場の製造部門において日産型交替制が実施される以前から、日産型交替制にともなう遅番勤務のような夜勤には反対であるとの情宣活動をし、同年3月ころから同年6月ころにかけては、日産型交替制にともなう遅番勤務や計画残業に反対する旨の記載のあるビラを配付していたこと、ならびに、③会社において、支部が計画残業に反対しているものと考えたうえ、この反対にもかかわらずその所属組合員を計画残業に組み入れるならば業務に支障を生ずるおそれがあることを懸念し、リリーフマンを作業にあてたこと自体にはそれなりの理由があるし、このリリーフマンによる補充計画を毎月あらかじめ組むという、作業の円滑な遂行の観点からすれば妥当な方策を講じていること等の事情がある。
 そして、このような事情があるということは、会社が同年6月3日または昭和46年6月18日に至るまで右三工場の支部所属組合員に残業を命じなかったこととの関係においては格別、少なくとも、会社がそれ以後においても残業を命じなかったこととの関係においてみる限り、右各事実をもって前述のような特段の事情にあたるとみることをより一層困難ならしめる。
 以上のほか、会社が昭和42年6月3日または昭和46年6月18日以降においても右三工場の支部所属組合員に残業を命じなかったことについて、前述のような特段の事情を認めるに足りる証拠はない。
2 結論
 そうすると、本件命令は、原告が支部所属の組合員に対し残業を命じなかったことをもって不当労働行為であるとした初審命令の判断を相当であるとして、原告の再審査の申立てを棄却しているから、違法として取消しを免れない。
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京地労委昭和43年(不)第12号 全部救済 昭和46年 5月25日
中労委昭和46年(不再)第38号 棄却 昭和48年 3月19日
東京高裁昭和49年(行コ)第51号・第52号 全部取消 昭和52年12月20日
最高裁昭和53年(行ツ)第40号 上告棄却 昭和60年 4月23日
 
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