労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  東京書院 
事件番号  東京地裁昭和47年(行ウ)第6号 
原告  株式会社 東京書院 
被告  中央労働委員会 
補助参加人  東京書院労働組合 
判決年月日  昭和48年6月28日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 従業員が会社運営の刷新と従業員の待遇改善について建議書を提出し、労働組合結成を予告したところ、会社は経営不振を理由に事業所を閉鎖し、従業員全員を解雇し、これについての団体交渉を拒否したことをめぐり、右解雇等が不当労働行為に当たるとして東京地労委に救済申立てがあった事件である。
2 東京地労委は、①従業員5名に対する解雇撤回及び原職もしくは原職相当職への復帰並びにバックペイ、②誠実団交応諾を命じた。
 会社は、これを不服として、再審査を申し立てたところ、中労委はこれを棄却した。
 本件は、これを不服として、会社が東京地裁に行政訴訟を提起した事件であるが、同地裁は会社の請求を棄却した。
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
判決の要旨  1 解雇について
 本件解雇問題が起こった昭和43年5、6月頃の会社の経営が不振であったことは窺われるが、会社が従業員全員に解雇を通告した時点で、急に会社がその事業を中止するのやむなきに至った必然性については、その裏づけに乏しく、結局右解雇通告は、同日従業員が建議書を会社会長に手交し、労働組合結成の意思を明示したことに反発し、右労働組合の結成を阻止するために、経営不振に藉口してなされたものと推認するほかはない。
 従って、右解雇は労組法7条1号、3号違反の不当労働行為に該当する。
2 団体交渉拒否について
 会社が組合からの一連の団体交渉の申入れを拒否したことについては、「組合員の言動からみて、正常な話し合いが期待できないから、」とする会社の言い分にも或る程度首肯し得るところがあるが、それとても、会社の理由のない突然の休業と解雇という措置がそもそもの発端となって惹起されたという事情、更に「被解雇者を相手に団体交渉はできない」とする会社の言い分も、右解雇そのものが当該団体交渉の項目となっているという事情等を考えれば、会社の右団体交渉拒否には、正当な理由がないと認めざるを得ず、右は不当労働行為に該当する。
3 事業廃止、清算手続との関係について
 不当労働行為たる解雇に対して与えられる労働委員会の救済命令は、その不当労働行為によって生じた結果を排除し、当該解雇がなかったのと同一の状態を回復させること(事実状態の原状回復)を本来の使命とするものであるとともに、その限度にとどまるべきものであるから、不当解雇がなされた後に被解雇者の従業員たる地位(その解雇がなかったとしての)に何等か変動を及ばすような事実、たとえば適法な解雇或いは雇用契約の合意解約等の事実が生じているときは、その救済命令の内容は、被解雇者が後の解雇或いは雇用契約の合意解約の日まで従業員たる地位にあったものとして取扱うべきことを使用者に命ずるをもって足り、且つその限度にとどまるべきものと解するのが相当である。
 しかるに会社は、中労委が本件命令を発した時点において会社が清算手続中であり、積極財産は皆無であるということのみを主張するにとどまり、被解雇者に対し、その地位の変動を生ぜしめる何等かの措置をとったということにつき、何等主張立証しないのであるから、本件命令(原職復帰等)の履行は、法律上は勿論事実上も未だ不能であるとは称し得ず、本件命令につき被救済利益が喪失したものとは認められない。
4 結論
 以上に判断したとおり、会社のなした本件解雇、団体交渉拒否は、いずれも不当労働行為と認定すべきであり、しかも会社はその後解散し、清算手続中であるとはいうものの、未だ被解雇者に対し何等の措置もとっていないのであるから、中労委が会社に対し右結果を排除するため、本件命令を発したのは相当であって、右命令に違法があるとはなし難い。
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京地労委昭和43年(不)第34号 全部救済 昭和43年12月10日
中労委昭和43年(不再)第79号 棄却 昭和46年11月17日
東京高裁昭和48年(行コ)第41号 棄却 昭和49年10月28日
最高裁昭和50年(行ツ)第22号 上告棄却 昭和50年9月11日
 
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