労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  京都農業協同組合(緊急命令申立) 
事件番号  東京地裁平成21年(行ク)第97号 
申立人  中央労働委員会 
申立人補助参加人  京都農業協同組合労働組合
京都府農業協同組合労働組合連合会 
被申立人  京都農業協同組合 
決定年月日  平成22年5月28日 
決定区分  緊急命令申立ての認容 
重要度  重要命令に係る緊急命令申立 
事件概要  1 Y1農協が、①Y2農協との合併に伴う雇用・労働条件等に係る団体交渉(以下「団交」という。)及び職員会結成と加入勧奨問題に係る団交において誠実に応じなかったこと、②職員説明会時及び合併前後においてY2農協会長やY1農協管理職らが組合員に対して組合非難、脱退勧奨等の発言をしたこと、③代替施設を提供せずに組合事務所を退去させたことが、不当労働行為に当たるとして、京都府労委に救済申立てがあった事件である。
2 京都府労委は、①合併関連事項等に係る団交に誠実に応じること、②組合事務所を貸与すること、③これらに関する文書を手交することを命じた。 
 Y2農協は、これを不服として、再審査を申し立てたところ、中労委は、再審査申立てを棄却した。
 これに対し、Y2農協はこれを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したため、中労委が緊急命令の申立てを行ったのが本件であるが、同地裁はこれを認容した。
決定主文   被申立人は、被申立人を原告、申立人の所属する国を被告とする当庁平成21年(行ウ)第102号不当労働行為救済命令取消請求事件の判決確定に至るまで、申立人が中労委平成19年(不再)第23号事件について発した命令によって維持するものとした京都府労委平成16年(不)第7号事件について、京都府労委がした平成19年4月18日付け命令の主文第1項及び第2項に従い、
1 被申立人は、次の事項について、説明資料を提示するなどして、誠実かつ速やかに組合との団体交渉に応じなければならない。
(1) Y1農協とY2農協との合併に伴う雇用・労働条件に関する事項のうち、退職金の勤続年数の通算、「共済LA」の職員の給与体系などに関する事項
(2) 平成16年11月9日付け「申し入れ」でY1農協職員会に関して回答を求めた事項
2 被申立人は、組合に対して労働組合事務所を貸与しなければならない。その際、平成17年3月24日の団体交渉における合意の経過も踏まえ、設置場所、面積など詳細な貸与条件を組合と誠実に協議した上で、社会通念上合理的な取決めをしなければならない。
決定の要旨  1 争点(1):中労委による本件命令の適法性
(1) 本件臨時組合大会前後における組合の同一性
 本件臨時組合大会は、組合の規約に定める手続等に沿ったものとはいえないが、組合員が激減し、脱退届が提出されたとしても、執行委員長には届かないような状況であって、規約に則った招集手続を経て開催することは実際上不可能であったということができる。他方、本件臨時組合大会は、執行委員長が招集当時に組合員であったことが確認された者全員(10人未満)に対して招集を行い、委任状提出者を含めてその過半数の出席があり、実際に出席した組合員の全員の賛成を得て、組合の名称変更、新執行委員長の選出等が決議され、本件臨時組合大会につき、その後に異議が申し立てられたことはない。
 以上によれば、本件臨時組合大会は、臨時組合大会として開催されたものということができ、本件臨時組合大会前後において組合の組織的同一性を肯定した本件命令の判断には、重大な疑義があるとはいえない。
(2) 組合は本件組合員大会における解散決議により解散したか
 本件組合員大会は、組合の規約に則さない独自の招集手続と決議手続により行われたものであり、組合大会として成立しているかの点においても、解散決議として成立しているかの点においても、問題がある。本件組合員大会には重大な瑕疵があるとして、同解散決議が有効なものではないとした本件命令の判断には、重大な疑義があるとはいえない。
(3) 本件団交におけるY1農協の対応は労組法7条2号に該当する不当労働行為か
 ①本件合併関連事項に関する団交において、以前の団交における回答内容に反した対応をしたり、組合には職員に対するもの以上の説明は行わず、組合とは協議しないという姿勢を示したものと評価できること、また、②Y1農協職員会事項に関する団交において、職員会の組織化の指示及び加入勧奨が、組織としての行動と評価されるものであるにもかかわらず、人事部長の個人的行動であるとして応じなかったことを、不誠実団交であると評価し、労組法7条2号の団交拒否に当たるとした本件命令の適法性に重大な疑義があるとはいえない。
(4) 代替施設を貸与することなく本件組合事務所を退去させた行為は労組法7条3号に該当する不当労働行為か 
 Y1農協との間での本件組合事務所の使用貸借契約に基づく権利義務は、吸収合併により特段の事情がない限りそのままY2農協に継承される。Y1農協と組合は、Y1農協が本件組合事務所に代わる組合事務所用の施設を提供することを条件に移転に応じる旨の合意が成立しており、合併後もその使用が継続されることを予定したものと解するのが相当である。そうすると、Y2農協は、合併後はY1農協の義務を承継した者として、同合意を履行すべき義務を負う。
 以上によれば、Y1農協が組合に対し、本件組合事務所から退去させながら代替施設を貸与しなかったのは、労組法7条3号の支配介入に該当するとした本件命令の適法性に重大な疑義があるとはいえない。
2 争点(2):緊急命令の必要性
 Y2農協は労働組合性を否定する対応を執り、いまだ団交及び本件組合事務所の代替施設の貸与をしていないことが一応認められる。Y2農協がこのような対応を執り続ける場合、組合の団結権は侵害され続けることになり、特に組合の存続自体に多大の影響を及ぼすことが認められることにかんがみると、現時点において、本件命令が維持するものとした初審命令の主文第1項及び第2項につき緊急命令を発する必要性及び相当性がある。
3 結論
 以上によれば、本件緊急命令申立ては理由がある。
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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
京都府労委平成16年(不)第7号 全部救済 平成19年4月18日
中労委平成19年(不再)第23号 棄却 平成20年12月24日
東京地裁平成21年(行ウ)第102号 棄却 平成23年3月31日
東京高裁平成23年(行コ)第150号 棄却 平成23年11月17日
最高裁平成24年(行ヒ)第116号 上告不受理 平成24年11月30日
 
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