概要情報
事件名 |
南労会(懲戒解雇等) |
事件番号 |
東京地裁平成18年(行ウ)第584号 |
原告 |
全国金属機械労働組合港合同 全国金属機械労働組合港合同南労会支部 |
被告 |
国(裁決行政庁 中央労働委員会) |
被告補助参加人 |
医療法人南労会 |
判決年月日 |
平成21年1月14日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、医療法人南労会(「南労会」)の次の行為が不当労働行為であるとして、全国金属機械労働組合(「組合」)及び同南労会支部(「支部」、組合と併せて「組合ら」)が大阪府労委に救済申立てをした事件である。
① X1執行委員を懲戒解雇したこと
② X2副委員長を出勤停止処分としたこと
③ X3分会長ら5名を減給処分としたこと
初審大阪府労委は、平成10年2月27日付けで、南労会に対し、X1執行委員に対する懲戒解雇(上記①)は不当労働行為であるとして、南労会に上記懲戒解雇がなかったものとしての取扱い及びバックペイを命じ、その余の申立ては棄却した。
これを不服として、南労会及び組合らはそれぞれ再審査を申し立て、中労委は、平成18年1月18日付けで、初審命令を取り消し、本件救済申立てを棄却した。
組合らはこれを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、組合らの請求を棄却した。
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判決主文 |
組合らの請求を棄却する。 |
判決要旨 |
X1執行委員の懲戒解雇事由の存否
X1執行委員は、Y1理事長が患者を診察中、突然、診察室入口のアコーディオンカーテンを開けて診察室に入り込み、診療介助に当たっていたY2婦長の腰部付近を右手で殴打した事実及びこのことにより同婦長が悲鳴を上げ、また、Y1理事長が診療を一時中断して診察室を出てX1執行委員に抗議した事実、Y1理事長が診察室に戻り患者に謝罪した事実が認められる。
このようなX1執行委員の行為は、職員としての品位、診療所の名誉、信用を失墜さするような言動に該当する上、当然に環境の静謐性や患者の安心感が確保される必要のある医療機関において、患者の面前で現に診療介助をしている者に対して行われたこと、Y1理事長の診察室での診療業務にも支障をきたしたことからすると、情状が重く、就業規則上の諭旨解雇事由に該当する。
そして、X1執行委員は、これ以前にも診察室にいたY2婦長に対する暴言等を理由に減給2回の処分を受けており、懲戒に処された後に同一懲戒事由もしくは異なる懲戒事由に該当する行為を重ねたということができるから、就業規則上、諭旨解雇より一等重い懲戒解雇の事由があるといえる。
2 X2副委員長らの懲戒処分事由の存否
①X2副委員長が階段を上がっている途中のY2婦長の臀部を捕まえ、引き留めようとした事実、②X2副委員長とX3分会長らが事務室でY3医師を取り囲み、同医師に対し大声で組合らの申入書に対する回答を迫り、Y4事務長らが制止したにもかかわらず止めなかった事実、③X2副委員長とX3分会長が、更衣室にいたY1理事長及びY2婦長に対し、更衣室の外からドアをたたいたり、大声で「Y1出てこい」などと叫び、Y4事務長らが制止したにもかかわらず止めなかった事実、④X2副委員長が、上記③に際し、自分の行動を制止したY4事務長を突き飛ばしたり、Y5事務次長の左腕をひねり上げた事実が認められる。
このようなX2副委員長らの行為は、正当な理由なく上長(Y4事務長ら)に反抗し、又はその指示に従わない態度であるとともに、職員としての品位、診療所の名誉、信用を失墜さするような言動であり、就業規則上、減給もしくは出勤停止の事由に該当する。
3 不当労働行為意思
X1執行委員のY2婦長に対する暴行については、著しい非違行為ということでき、組合の正当な活動ということはできない。そして、本件懲戒解雇以前に、X1執行委員は懲戒処分(減給)を受けていたこと、本件懲戒解雇当時、X1執行委員は、Y2婦長に対する暴行の事実を否認しており、非違行為に対する反省も認め難かったことからすると、同種の非違行為が再発するおそれさえあったといえる。
次に、X2副委員長らのY3医師、Y2婦長及びY1理事長に対する暴行等については、X2副委員長は、非違行為の存在を否認しており、反省も認め難かったこと、X3分会長らの非違行為はX2副委員長のそれと同じく組合の婦長排斥活動の一環として行われており、X2副委員長とX3分会長らは同様の対応をとることが予測されたことからすると、同種の非違行為が再発するおそれさえあったといえる。
そうすると、本件各処分は、その各町会事由やそれ自体の非違性に比例してされたものであって、X1執行委員やX2副委員長が組合らの組合員であることやその組合活動を嫌悪していたことを決定的動機としてされたものではないというのが相当である。
4 してみると、本件各処分については、いずれも相当な懲戒処分事由があってされたものであり、南労会が組合らを嫌悪していたことを決定的動機としてされたものではないから、これらを不利益取扱い(労組法7条1号)又は支配介入(同条3号)であるとはいえないとするのが相当である。
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