労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名 根岸病院
事件番号 東京高裁平成19(行コ)253号
控訴人 医療法人社団根岸病院
被控訴人 東京都(処分行政庁 東京都労働委員会)
被控訴人参加人 東京地方医療労働組合連合会
被控訴人参加人 根岸病院労働組合
判決年月日 平成20年1月16日
判決区分 棄却
重要度  
事件概要 Y病院は、就業規則に定年後の嘱託再雇用の定めをしているが、X組合のX1組合員に対して嘱託再雇用契約を更新しなかった。X組合はこのことに関してY病院に団体交渉を申し入れたが、Y病院はこれに応じなかった。
 X組合から救済申立てのあった東京都労委は、本件更新拒否は不利益取扱いではなく、支配介入にも該当しないが、団体交渉に応じなかったことは正当な理由がない団交拒否の不当労働行為であるとし、団交応諾命令及び文書掲示命令を内容とする救済命令を発した。
 Y病院はこの救済命令を不服として提訴したが、原審は東京都労委の命令を支持し、Y病院の請求を棄却した。
 本件は、原審の判決を不服として、Y病院が控訴した事案である。
判決主文 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用(参加によって生じた費用を含む。)は控訴人の負担とする。
判決の要旨 ① Y病院の請求は理由がないから、これを棄却すべきものと判断する。その理由は、下記のとおり付加するほかは、原判決の事実及び理由欄「第3 争点に対する判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。
② Y病院は、定年後の満61歳までの嘱託雇用後の再雇用は、限定した職員に実行されるものであって、期待権が発生するものではなく、新規採用と同様に論ずべきものと主張する。しかしながら、Y病院が定めた就業規則23条及び『定年退職後の嘱託処遇について』による定年退職者の嘱託雇用制度は、すべての定年退職者の嘱託雇用を保障するものではないものの、一定の条件を満たせば嘱託雇用の機会があったものということができるから、期待権が発生しないということはできず、Y病院の主張とは整合しないものである。
③ Y病院は、採用する理由は検討されても、採用しない理由を検討しなければならないというものではないから、再雇用しないという理由の説明はY病院に過ぎたるものを求めるものであると主張するが、嘱託再雇用と新規採用とが同一であるとの前提自体が採用できないものである上、Y病院自身も、再雇用の採否について一定の選考基準に基づいて行っていることを認めており、その選考基準の適用に関する説明が可能であることから、この主張は理由がない。また、個別の嘱託再雇用について説明することはプライバシー侵害の問題が生じるとも主張するが、団体交渉にプライバシーの問題が随伴することは通常あり得ることであり、当事者の工夫によって説明可能であるので、この主張も採用の限りでない。
④ Y病院は、原判決が、団体交渉において、嘱託再雇用契約を結ばなかった本件の組合員に対して、Y病院が当該組合員の希望を確認しなかった理由等の点につき、Y病院が質問を受け説明する必要があるべきであると判断していることを批判している。
  しかしながら、Y病院の就業規則23条には嘱託雇用を『本人が希望し、Y病院が特に必要と認めたとき』と規定し、賃金、健康、能力・勤務態度の『三要素』を重視する運用をしていたのであるから、Y病院が嘱託再雇用をしたいと思う者のみに再雇用の打診をすれば足りるといえるものではなく、本件団体交渉が、その運用の実際を確認するとともにその相当性について協議を求める趣旨のものであったのに対し、Y病院は団体交渉に応じることを拒み続けてきたのであって、未だ実質的な交渉がされたとはいえない本件において、Y病院が団体交渉に応じないことを正当化する理由とすることはできないものというほかない。
⑤ Y病院が司法機関ないし準司法機関における法的紛争の場で嘱託再雇用の基準や適用について一定の説明をしたからといって、本来的な集団的な労使関係の自主的な解決の場である団体交渉の場において説明したことになるものでなく、本件組合員の更新拒否の問題について未だ係争中であることも団体交渉とは別個の問題であるから、Y病院が嘱託再雇用についての団体交渉の申入れを拒絶する正当な理由とすることはできない。 


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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成12年(不)第5号 一部救済 平成18年5月23日
東京地裁平成18年(行ウ)第337号 棄却 平成19年7月5日
最高裁平成20年(行ツ)第126号
平成20年(行ヒ)第133号
上告棄却、不受理 平成20年5月30日
中労委平成18年(不再)第43号 棄却 平成20年9月17日
 
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