労働委員会関係裁判例データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[判例一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件名  ミューズ音楽院
事件番号  東京高裁平成19年(行コ)第69号
控訴人 個人Y
学校法人神代学園
被控訴人 東京都(行政処分庁 東京都労働委員会)
被控訴人補助参加人 全労協全国一般東京労働組合
判決年月日  平成19年11月29日
判決区分  棄却
重要度   
事件概要   本件は、Yが経営する音楽学院において、時間外手当の支給基準変更を契機として組合が結成されたところ、Yが、組合が申し入れた団体交渉を拒否し、組合員X1及びX2に対して、教務部長、事業部長の任を解く降格処分等を行ったことが不当労働行為に当たるとして争われた事件である。
 東京都労委は、団交拒否及び降格処分を不当労働行為として、団体交渉応諾、降格処分の取消しとバックペイの救済命令を発した。Y及び音楽学院は、これを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は東京都労委の命令を支持し、Yらの請求を棄却した。これに対し、Yらは東京高裁に控訴したが、同高裁は、控訴を棄却した。
判決主文  1 本件控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は、補助参加によって生じた費用を含め、控訴人らの負担とする。
判決要旨   ① 争点(1)(組合員X1に対する降格処分の不当労働行為の成否)について
 学園理事長(以下「理事長」という。)は、組合の分会長であった組合員X1及びその組合活動を嫌悪し、同分会の運営・活動を妨害し、弱体化を企図して、本件降格処分を行ったものと一応認めることができる一方、理事長が主張する本件降格処分の降格理由は、いずれも降格理由といえないか、14年間にわたり教務部長を務めてきたX1を降格する理由として十分とまではいえず、正当な理由があるとはいえないから、本件降格処分は不当労働行為(不利益取扱い、支配介入)に該当すると認定するのが相当であると判断する。(理由は原判決を引用)
② 争点(2)(組合員X2に対する降格処分の不当労働行為の成否)について
 理事長は、組合の書記長であった組合員X2及びその組合活動を嫌悪し、同分会の運営・活動を妨害し、弱体化を企図して、本件降格処分を行ったものと一応認めることができる一方、理事長が主張する本件降格処分の降格理由は、いずれも降格理由といえないか、14年間にわたり事業部長を務めてきたX2を降格する理由として十分とまではいえず、正当な理由があるとはいえないから、本件降格処分は不当労働行為(不利益取扱い、支配介入)に該当すると認定するのが相当であると判断する。(理由は原判決を引用)
③ 争点(3)(本件命令主文第3項の必要性)について
 当裁判所も、本件命令主文第3項は適法であると判断する。
 理事長が約1年にわたり、組合らとの団体交渉を拒否した理由は、分会に「使用者の利益を代表する者」に当たるX1、X2が加入しているというものであったことが認められるが、本件全証拠を検討しても、両名が「使用者の利益を代表する者」に当たると認めるに足りないから、本件団体交渉の拒否は、労組法7条2号所定の不当労働行為に該当するものである。そして、本件命令が「使用者の利益を代表する者」の参加を許しているとの理由で拒否してはならない旨を命じたことについて、その必要性がないとまでいうことはできない。(理由は、原判決を引用)
④ 控訴審における学園らの主張について
 ア 当事者の誤認について
 (ア)本件命令の名宛人は、理事長と学園であり、理事長がその取消訴訟を提起したことは、本件記録上明らかである。そして、実質的にみても、学園は理事長が設置した個人経営の学校であり、その労使関係において、不当労度行為救済命令の名宛人となるべきものは、理事長をおいて他にないというべきである。
 (イ)学園らは原判決は、組合の分会を別に補助参加人として扱っており、不当である旨主張するが、原判決が組合のみを補助参加人として扱っていることは、原判決の当事者欄の表示及び本件記録に照らし、明らかである。
 イ 学園らの組合の申立適格不存在の主張について
 (ア)労組法2条の労働組合が、企業別組合に限られるものではなく、一定地域において、一定の産業ないし職業に従事する労働者が企業の枠を超えて組織する本件組合にようないわゆる地域一般労組もこれに含まれることは労組法の趣旨、文言に照らして明らかであり、本件組合は学園らとの関係で、不当労働行為救済適格を有するというべきである。
 (イ)当裁判所も、組合員X1及びX2が、職員の雇入れ、解雇、昇進又は異動に関し、直接の権限を持つ監督的地位にあったとか、使用者である学園らの労働関係についての計画と方針に関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と職責とが当該労働組合の誠意と責任とに直接に抵触する監督的地位にあったと認めることは困難であり、組合員X1及びX2が「使用者の利益を代表する者」に当たるとは認定できない。(理由は、原判決を引用)
 ウ 手続的要件の不存在の主張について
 (ア)学園らは、組合が不当労働行為救済申立適格を有しないとの見解を前提に労働委員会の審査の在り方を非難するものであるが、労働委員会は、組合員X1及びX2が労組法2条ただし書1号の「使用者の利益を代表する者」に当たらない旨認定判断しており、労組法5条1項の資格審査を行い、組合の不当労働行為救済申立適格を認めたものであることは十分に推認できる。のみならず、資格審査は、労働委員会が国家に対し負う責務であるので、同審査に仮に手続上または実態上の瑕疵があったとしても、使用者はこれを理由に不当労働行為の救済命令の取消しを求めることはできない(最裁昭32・11・24判決・民集11巻14号2336頁)。
 (イ)組合は、本件命令の申立人であるから、本件において、民訴法四二条所定の「訴訟の結果について利害関係を有する第三者」該当する。
エ 不当労働行為意思に関わる事実ないし法律の錯誤の存在について
 使用者側の言動が不当労働行為に該当するか否かは、客観的に判断すべきであり、使用者側が労働組合を労働組合でないとか、正当な労働組合活動を正当でないと誤信したとのその主観的な認識は、そのような主観的な認識を持つに至った理由のいかんにかかわらず、不当労働行為の成否には影響しないものと解するのが相当である。

[先頭に戻る]

顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
東京都労委平成14年(不)第37号 一部救済 平成17年7月19日
東京地裁平成17年(行ウ)第412号 棄却 平成19年2月8日
東京高裁平成19年(行タ)第46号 緊急命令申立ての認容 平成19年11月29日
東京高裁平成19年(行タ)第51号 執行停止申立ての却下 平成19年11月29日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約183KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。