労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  東日本旅客鉄道(水戸動労不登用)
事件番号  東京地裁平成18年(行ウ)69号
原告 東日本旅客鉄道株式会社
被告 国(処分行政庁 中央労働委員会)
被告補助参加人 国鉄水戸動力車労働組合
個人13名
判決年月日  平成19年9月13日
判決区分  棄却
重要度   
事件概要   会社が、国鉄において運転士資格を取得した組合員X1ら15名を運転士に発令しないことが不当労働行為であるとして争われた事件で、初審茨城地労委は、平成9年6月1日付けでX1ら15名を運転士に発令したものとして取扱い、運転士として就労させること、組合運営への支配介入の禁止を命じ、その余の申立てを棄却した。会社は、これを不服として中労委に再審査申立てをしたところ、中労委は、初審命令を一部変更し、その余の再審査申立てを棄却した。
 なお、15名のうち、2名は再審査申立てを取り下げた。
 会社は、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は会社の請求を棄却した。
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用(補助参加費用を含む。)は、原告の負担とする。
判決要旨  (争点1)会社がX1ら13名を運転士に発令しなかったことが不当労働行為に当たるか
1 会社は、水戸支社において、平成4年2月1日、平成5年3月1日及び平成6年10月26日と、前後3回にわたって未登録者のうち合計13名に運転士の発令を行ったが、組合の組合員で発令された者はいなかった。これらの発令の結果、未登録者で運転士を希望していながら運転士発令を受けていない者は、17名となったが、組合の組合員15名のほかは、組合の組合員とともに国鉄の分割、民営化に反対する運動を行ってきた者と、平成9年7月ころに組合を脱退した者であって、いずれも組合の関係者といえるものであった。未登録者のうち、組合の組合員及びその関係者は運転士を希望していながら、誰ひとり、運転士発令を受けていない。
2 他方、未登録者のうち訴外Z労組ほか組合以外の労組に所属する従業員は全員運転士に発令されている。
3 以上のとおり、未登録者の運転士発令において、組合の組合員及びその関係者と、それ以外の者との間で、歴然とした差異があることは明らかであり、未登録者に対する運転士発令の選考に当たり、所属組合と発令の有無との間に関係があることが強く疑われる。
4 これに対して、会社は、運転士の発令については、人事考課の結果等勤務成績に基づき公正に判断しており、X1ら13名が発令されていなかったのは、同人らの勤務成績が劣っていた結果であると主張する。しかしながら、小集団活動や提案を行った人数が少ないことは直ちにX1ら13名の個々の勤務成績が劣っていたことをうかがわせる事情とはいえない。またX1ら13名のうち、7名の者が戒告、訓告等の処分を受けているが、これらの処分者のうち、就業規則上の懲戒処分を受けたのは1名だけであり、その余は懲戒処分に至らない軽微な処分を受けたことにとどまっているし、X1ら13名のうち6名は、処分を受け事実はない。一方で、運転士に発令された従業員の中には、多くの処分を受けたものより重い処分を受けた者も含まれていることなどからすると、X1ら13名の中に処分歴を有するものがいることについても、同人らの個々の勤務成績が運転士の発令を妨げる事情とはいえず、会社の主張は根拠を欠くというべきである。
5 以上に加え、会社のかつての社長が、Z労組統一大会等に出席し、組合を「迷える子羊」とたとえた上で、Z労組を軸とした一企業一組合を目指すなどと発言していたことや、会社と組合とは、組合幹部に対する人事異動について、その不当労働行為性を、労働委員会及び訴訟で争っていたことなどの事情を併せ考慮すると、会社は、国鉄の分割、民営化に反対する方針を取っていた組合を嫌悪していたことが推認される。また、会社は、平成7年3月、X1ら2名を車掌に発令して、その後2年間の車掌業務に就かせているが、会社では、運転士に発令するには2年程度の車掌業務を経験させる取り扱いにしていたことや、平成6年秋ごろに行われた会社と組合との団体交渉における発言等からすると、この車掌発令は、将来X1ら2名を二年間の車掌業務の後、平成九年春以降には運転士に発令するという前提の元に行われたものと推認することが相当である。
6 しかるに、会社は、平成9年6月1日、X1ら2名とともに車掌業務を勤め、その後運転士資格を取得した40名を運転士に発令したが、X1ら2名は運転士に発令しなかった。前記のとおり、X1ら2名について、勤務成績が劣るなどの特段の事情は見当たらないから、本来は40名と同様に平成9年6月1日付けで運転士に発令されるはずであったのに、その所属組合を理由として運転士の発令から排除されたものといわざるを得ない。
7 以上によれば、X1ら13名は、組合に属していることを理由とする不利益取扱いを受けなければ、運転士に発令されていたと認められる。すなわち、会社は、X1ら13名を、その所属組合を理由に運転士に発令しなかったと認められる。

(争点2)本件命令は、労働委員会の裁量を逸脱したものか
1 会社は、救済命令による運転士発令は、会社の人事権を侵害するものであると主張する。
2 しかし、昇進する者を選抜するなどその的確性を総合的に判断して決定すべきような事実とは異なり、X1ら13名は不当労働行為がなければ運転士に発令されていたと認められるのだから、X1ら13名を運転士に発令したものとして取り扱うことを命じることは、労働委員会に与えられた裁量権の範囲を超え、又は著しく不合理であって濫用にわたるものであるとは認められない。

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
茨城地労委平成9年(不)第8号 一部救済 平成12年2月28日
中労委平成12年(不再)第17号 一部変更 平成17年12月21日
東京高裁平成19年(行コ)第334号 棄却 平成20年2月27日
最高裁平成20年(行ヒ)第190号 上告不受理 平成20年12月18日
 
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