労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名 西日本旅客鉄道(西労岡山)
事件番号 東京高裁平成18年(行コ)第43号
控訴人 西日本旅客鉄道株式会社
被控訴人 中央労働委員会
被控訴人補助参加人 ジェーアール西日本労働組合
判決年月日 平成19年6月27日
判決区分 棄却
重要度  
事件概要  本件は、会社が、①岡山支社の運転区及び津山鉄道部西分室において、助役らが申立人組合の組合員に対して昇格、転勤等の人事権を利用して組合からの脱退を慫慂したこと、②岡山支社が岡山地本から申し入れられた団体交渉に応じなかったことが不当労働行為であるとして、申立てのあった事件である。初審岡山県労委は、会社に対し、①昇格試験、転勤等を利用した脱退慫慂を行うとによる支配介入の禁止、②団体応諾、③①及び②に関する文書の交付を命じ、中労委は、再審査申立てを棄却した。会社は、これを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起し、同地裁は会社の請求を棄却した。東京高裁もこれを維持して、本件控訴を棄却するとの判決を言い渡した。
判決主文 1.本件控訴を棄却する。
2.控訴費用は、補助参加によって生じた費用を含め、控訴人の負担とする。
判決の要旨 (争点1)Y1助役の組合員X1及びX2に対する脱退慫慂行為の成否、会社の帰責性について
① X1及びX2の各陳述書等は、要するに供述の積み重ねであり客観的裏付けに乏しいものの、Y1助役らの証言等、直接の反対証拠方法が存在するにもかかわらずこれが一切提出されていない以上、それぞれ具体的かつ詳細なものであり、平成7年2月13日のスナック「カンテラハウス」において、Y1助役から組合からの脱退の慫慂を受けたとするX3地本執行委員長作成の平成7年11月30日付けの報告書の内容やそれぞれの陳述ないし供述と互いに整合するという点も指摘できるから、その細部はともかく、Y1助役から組合からの脱退の慫慂を受けたと認定することができるとされた例。
② Y1助役は、その職務内容から使用者の利益代表者に近接する地位にあり、X1及びX2に対する発言には、会社と組合との間の労使関係にかかわる事項をめぐって絶えず緊張関係が生じていたなかで会社の意向に沿って、上司としての立場からされた発言と評価せざるを得ないものが含まれているといえる。また、訴外組合員であるY1助役が積極的に組合活動を行っていたともうかがえないこと等から、脱退慫慂行為が訴外組合への勧誘として行われたとみることは相当ではない。さらにY1助役の同脱退慫慂行為が昇格試験に言及して継続的に行われたものであること等の事実をみると、個人的な関係における助言・忠告等にとどまるものであったと評価することは困難である。そうすると、Y1助役の脱退慫慂行為は、会社の意を体してなされたものであって、労働組合法7条3号所定の不当労働行為(支配介入)に該当するというべきであるとされた例。
(争点2)Y2科長ないしY3助役の組合員X4に対する脱退慫慂行為の成否、会社の帰責性について
③ X4とY2科長及びY3助役との平成6年4月21日の談話室における会話についての平成7年11月30日付けの録音反訳書は、Y2科長及びY3助役からの反対証拠の提出がないのであるから、その内容が具体的かつ詳細なものであることのほか、当時の労使関係の状況に照らし、現実性があり、合理性もあるというべきであるから、証拠価値を有し、Y2科長らのX4に対する脱退慫慂行為が認められるとされた例。
④ Y2科長ないしY3助役とも、会社支社の行う転勤者の人選につき、従業員の勤務態度等について具体的職務を把握するなどの職務を行っており、従業員の転勤に関して事実上の影響力を有する地位にあることから、使用者の利益代表者に近接する職制上の地位にあったと認めるのが相当である。また、両名の発言は会社と組合との間の労使関係にかかわる事項をめぐって絶えず緊張関係が生じていたなかで会社の意向に沿って上司としての立場からされた発言と評価せざるを得ないものが含まれおり、訴外組合員であるY3助役が積極的に組合活動を行っていたとか、両名がX4と個人的に懇意にしていたとの特段の事情も認めることはできないことから、Y2科長ないしY3助役の組合員X4に対する脱退慫慂行為は会社の意を体してなされたもので、労働組合法7条3号所定の不当労働行為(支配介入)に該当するというべきであるとされた例。
(争点3)
  本件団体交渉拒否の正当な理由の存否について
⑤ 会社は、組合が不当労働行為救済申立てをしたことにより当事者間での交渉の進展が期待できないことが明らかであったから、本件団体交渉拒否には正当な理由があった旨主張するが、労働者側の不当労働行為救済申立てが使用者側の団交拒否の正当な理由になるとは解し難いとされた例。

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
岡山県労委平成7年(不)第1号 一部救済 平成11年3月25日
中労委平成11年(不再)第23号  棄却 平成16年12月 1日
東京地裁平成17年(行ウ)第11号 棄却 平成17年12月26日
最高裁平成19(行ツ)258号
最高裁平成19(行ヒ)279号
上告棄却・上告不受理 平成19年12月13日
 
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