労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名 明治乳業
事件番号 東京高裁平成16年(行コ)第223号
控訴人 個人31名
被控訴人 中央労働委員会
参加人 明治乳業株式会社
判決年月日 平成19年3月28日
判決区分 棄却
重要度  
事件概要  本件は、会社がX1ら31名の昭和55年度から60年度での昇給・昇格を差別したことが不当労働行為であるとして、申立てがあった事件である。初審東京地労委は、申立てを却下又は棄却し、中労委は、初審命令の一部を変更した。
 X1らは、これを不服として東京地裁に行政地裁を提起し、同地裁が、請求を棄却したところ、X1らは、これを不服として東京高裁に控訴したが、同高裁は、控訴を棄却した。
判決主文 1.本件控訴を棄却する。
2.控訴費用は控訴人らの負担とする。
判決の要旨 (争点)
 会社が組合員X1ら31名を嫌悪し、不利益に扱うため、会社の職分・賃金制度のもとで昭和55年度ないし60年度における昇級・昇格を行い、その結果として、組合の運営に支配介入したことが不当労働行為であるか。(このほかの争点として、既に死亡している組合員についての訴えの適否及び却下決定の適否、除斥期間-審理の対象について)
① 組合らは、本件中労委命令のうち、X2の救済申立てを却下した部分については、X2は再審査申立て後の平成9年1月7日に死亡したところ、その相続人らは継承の申出をしておらず、本件訴訟の原告にもなっていないことから、組合らが中労委命令の取消を求める利益はないとするのが相当であり、不適法であるので却下するのが相当であるとした原審を支持するとされた例。
② 本件中労委の審理終了後、X3は平成12年3月19日、X4は同13年7月5日にそれぞれ死亡したが、その各相続人は労働委員会規則34条1項7号に定める期間内に、救済申立てを継承する旨を申し出なかったのであり、労働組合法、労働委員会規則等には審理終結時点で「当事者恒定の状態」になる旨の規定はなく、死亡した再審査申立人の地位はその遺族が当然に相続するものでないとともに、労働委員会が継承手続の意思確認を遺族あるいは代理人にしなければならいという規定も存在しないことから、中労委がX3及びX4の再審査申立てを却下したことに裁量権濫用の事実があるこということは困難であり、適法であるとした原審を支持するとされた例。
③ 会社は、毎年4月1日付けで職分及び号給の格付けを行い、これに基づいて各従業員の賃金額が決定され、毎月25日を賃金支払日とされていることが認められるから、毎年4月1日に賃金額が決定された場合には翌年3月25日の賃金支払日までの賃金が自動的的に決定されることになり、職分及び号給の格付行為(基本的意思決定行為)とこれに基づく賃金支払行為(同種行為の反復、継続)とは緊密ないし一体の問題といえ、継続して行われる一括して一個の行為と評価できるので、職分及び号給の格付け行為を不当労働行為とする救済申立てに関しては、格付行為に基づく最終賃金支払日が除斥期間の起算点になるとされた例。
④ 本件の救済申立て日は昭和60年4月18日及び昭和61年3月19日であり、上記③の除斥期間の起算点からすれば、昭和59年度及び60年度に係る昇格・昇号給差別の救済申立ては、除斥期間内であるが、昭和55年度ないし58年度の職分及び号給の格付行為(昇格・昇給)に対する申立ては、除斥期間経過後により不適法であって、直接の審理対象とはならず、却下を免れないとされた例。
⑤ 昭和59、60年度の職分・号給の格付行為の不当労働行為(不利益取扱いとそれを通した支配介入)の成否を判断するためには、人事制度上、これら格付行為を決定付ける関係にある、それ以前の一定期間の人事考課成績決定行為の不当労働行為性についても審査が及ぶこととなるとされた例。
⑥ 過去に行われた不利益扱いの累積した結果としての格差につき、救済行為に対する救済の内容に取り込んで、その是正を図ることが労働委員会の裁量によって行えるものであっても、救済対象の始点となる時から10年以上も遡る各年度の職分・号給の格付行為(昇格・昇号給)から生じた格差は、救済対象となる行為との時間的な隔たりがあまりに大きいといわざるを得ず、しかも、これを取り上げて、その是正を図るためには、それら各年度ごとの人事考課成績決定行為が適性であるかどうかを改めて判断する必要があるのであり、これに踏み込んで審理・判断することは、除斥期間が設けられた趣旨に明らかに反するものであって、本件中労委命令が、このような観点から、その不当労働行為該当性について審理をしなかったことにつき、裁量権の行使に違法があるとみる余地はないとされた例。
⑦ 人事考課成績が標準に達していなくとも移行格付試験の成績が優秀であれば、合格する可能性があったのであって、この移行試験を受験した場合で、組合差別によって不合格とされたならば、これを不当労働行為として争うことは可能であるが、自らの意思で受験しなかった組合員らが、この点を争うことは前提を欠くといわざるを得ず、失当であるとされた例。
⑧  個人的な考察においても、組合員らのうち、救済対象となるうる者の昭和59、60年度の職分・号給の格付行為とこれを決定する人事考課成績決定行為が、不適正であるとは認めるに足りず、まして、それが組合活動等を嫌悪して不当に差別したと認めることができないとされた例。

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京地労委 昭和60年(不)第27号、同昭和61年(不)第20号・第21号 棄却 平成8年7月2日
中労委平成8年(不再)第39号 一部変更 平成14年2月4日
東京地裁平成14年(行ウ)第132号 棄却 平成16年5月31日
最高裁平成19年(行ツ)第211号
最高裁平成19年(行ヒ)第224号
上告棄却・上告不受理 平成21年2月17日
 
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