事件名 |
東日本旅客鉄道(千葉動労不採用) |
事件番号 |
東京高裁平成14年(行コ)第154号
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控訴人 |
国鉄千葉動力車労働組合 |
控訴人 |
中央労働委員会(兼被控訴人) |
被控訴人 |
東日本旅客鉄道株式会社 |
判決年月日 |
平成16年 2月27日 |
判決区分 |
控訴の棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
国鉄は、改革法及びその関連法規に基づき、昭和62年4月1日に会
社ほか5社の旅客会社及び貨物会社等に分割・民営化された。新会社への職員の採用については、改革法において、国鉄は、採用
候補者の選定及び採用候補者名簿の作成を行い、新会社の設立委員は、労働条件及び採用基準を決定し、国鋏を通じて職員の募集
を行い、国鉄作成の採用候補者名簿に基づいて雇用することとされていた。新会社の職員採用に際して、千葉動労所属の組合員
12名は、採用候補者名簿に登載されず、会社及び貨物会社に採用されなかったことから、組合は、組合員の不採用は、労組法7
条1号及び3号の不当労働行為であるとして千葉地労委に救済を申立て、同地労委は、これを認容して、組合員12名を救済する
命令をした。これに対し、会社及び貨物会社は、再審査申立てを行い、中労委は、千葉地労委の命令中、貨物会社を被申立人とす
る部分及び会社を被申立人とする部分の一部については不当労働行為は成立しないとして、同命令の一部を取り消し、組合の救済
申立ての一部を棄却し、その余の再審査申立てを棄却する命令をした(中労委命令による救済対象者2名)ため、会社及び組合
は、それぞれ、命令の取消しを求めて訴えを提起し、原審東京地裁は、会社の訴えを認容して中労委命令中の救済部分を取り消
し、組合の訴えについてはこれを棄却した。そこで、中労委及び組合は控訴したが、東京高裁は、控訴を棄却した。 |
判決主文 |
1 本件控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は、控訴人中労委に生じた費用の2分の1と被控訴人に生じた費用を控訴人中労委の負担とし、その余の費用は参加
によって生じた分を含めて控訴人千葉動労の負担とする。 |
判決の要旨 |
1500 不採用
4909 事業分離後の新企業体
4911 解散事業における使用者
改革法は、承継法人の職員として採用されなかった国鉄の職員については、国鉄との間で雇用契約関係を存続させ、国鉄が清算
事業団に移行するのに伴い清算事業団の職員とし、雇用契約関係を存続させることとしたが、清算事業団の職員の地位に移行した
者は、承継法人の職員に採用された者と比較して不利益な立場に置かれることは明らかであり、仮に国鉄が採用候補者の選定及び
採用候補者名簿の作成に当たり組合差別をした場合には、労働組合法7条の適用上、設立委員自身が不当労働行為を行った場合は
別として、専ら国鉄次いで清算事業団にその責任を負わせることとしたものと解さざるを得ず、設立委員ひいては、承継法人が同
条にいう「使用者」として不当労働行為の責任を負うものではないと解するのが相当であるから、承継法人にその責任を問うこと
はできず、また、本件事実関係によれば、設立委員自身による不当労働行為があったことも否定せざるを得ないとされた例。
1500 不採用
4909 事業分離後の新企業体
4911 解散事業における使用者
改革法23条は、承継法人の職員の採用の手続と権限及び責任を、名簿作成段階と採用の段階に分断し、それぞれの権限と責任
を国鉄と設立委員に分属させたものと解されるほか、前者の段階における不当労働行為について、国鉄ひいては清算事業団の責め
に帰すべきことが予定されているのであるから、使用者として責任を負うべき主体が存在することとなり、設立委員ひいては会社
に使用者性を認めないことが労組法7条の解釈上も不当なものとは認められないとされた例。
5008 その他
国鉄又は清算事業団に対する救済命令によっては、全面的な現状回復措置を探ることはできないことになるが、救済命令の内容
として、いかなるものが相当かは、労働委員会が不当労働行為の内容、これによる職員の不利益、これを回復するため取り得る手
段とその有効性等を総合的に判断して決定されるべきものであって、現職復帰というような完全な原状回復のみが救済の内容では
なく、代替措置が可能であるならば、労働者の救済にとって有効である限り、このような代替措置を救済として命ずることもで
き、完全な原状回復ができなくても不当労働行為に対する救済の実効性は図れ、国鉄改革の目的、その経緯にかんがみれば、この
ような方法による救済方法によることも不当労働行為救済制度の中の選択肢の一つと考えられるところであって、違法視すること
はできないとされた例。
4909 事業分離後の新企業体
4911 解散事業における使用者
中労委は、補助機関論、法人格否認、実質的同一性などを根拠として、承継法人の職員の採用に係る設立委員ひいては被控訴人
の使用者性を主張するが、これらの主張は、本件国鉄改革に妥当するものではなく、いずれも採用することはできないとされた
例。
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業種・規模 |
鉄道業 |
掲載文献 |
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評釈等情報 |
中央労働時報 2004年8月10日 1031号 52頁
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