事件名 |
千石外2社 |
事件番号 |
東京高裁平成14年(行コ)第140号
|
原告 |
全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部 |
被告 |
中央労働委員会 |
被告参加人 |
株式会社千石 |
被告参加人 |
大阪輸送企業組合 |
被告参加人 |
有限会社イチモリ |
判決年月日 |
平成15年 1月21日 |
判決区分 |
控訴の棄却 |
重要度 |
|
事件概要 |
本件は、株式会社千石、株式会社一森及び有限会社イチモリが、
(1)全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部の千石分会の組合員2名を解雇したこと、(2)平成5年5月26日付団
体交渉申入れに応じなかったこと、(3)大阪輸送企業組合、千石及び有限会社イチモリが、組合からの平成5年9月6日付団体
交渉申入れに応じなかったこと、(4)同分会の組合員3名に対して就労を拒否したことが、不当労働行為であるとして争われた
事件である。
大阪地労委は、(1)株式会社一森及び有限会社イチモリは組合員2名の解雇をなかったものとし、株式会社一森において同人
らを従業員として取り扱い、バック・ペイを支払うこと、(2)株式会社一森は、平成5年5月26日付団体交渉申入れに速やか
に応じること、(3)企業組合は、組合員3名を従業員として取り扱い、バック・ペイを支払うこと等を命じ、その余の申立てを
却下したところ、これを不服として労使双方から再審査の申立てがなされ、中労委は、初審命令のうち、有限会社イチモリに対す
る救済申立てを却下し、企業組合に対して命じた部分を取り消し、その余の各再審査申立てを棄却したところ、組合は、これを不
服として東京地裁に行政訴訟を提起した。
同地裁は、中労委命令中、有限会社イチモリに対する救済申立てを却下した部分を取り消し、その余の請求を棄却するとの判決
を言い渡し、中労委及び組合は、これを不服として東京高裁に控訴したが、同高裁は、各控訴をいずれも棄却した。 |
判決主文 |
1 1審原告及び1審被告の各控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は各自の負担とする。 |
判決の要旨 |
6222 団体交渉拒否
イチモリは、法律上有効に設立された有限会社であり、一森から事業資産を引き継いだほか労務管理を行っていたのであるから、
X1ら2名の労働条件等を支配、決定できる地位にあったと認められ、組合は、このような法的にも実体的にも存在するイチモリ
に対しても救済を求めている以上、これが実態がないものとして救済利益を否定する必要もなく、また、イチモリは、社員総会の
決議により解散し、その登記を行っていることが認められるが、このことは一森に対する救済の内容が限定されることがあるにと
どまり、イチモリに対する救済利益を否定する事情とはいえないから、イチモリは、X1ら2名に対する本件解雇及びこれらに関
連する組合からの5.26団交申入れについて、労働組合法7条の「使用者」に当たる。
5144 不当労働行為でないことが明白
千石と一森及びイチモリとの間にも、人的なつながりや取引上において、緊密な関係にあったということができるが、他方で、千
石と一森及びイチモリは、その役員、資本、本店所在地において全く異なる別個の法人であること、本件生コン運転手らの労務管
理等についてはもっぱらX2が行っており、千石が行っていたのは、配車係が配車順をX2と相談することや、ユーザーからの苦
情について、本件生コン運転手らから事情聴取を行うことといった程度であったことからすれば、千石がX1ら2名を初めとする
本件生コン運転手について、その労務や賃金等の管理、労働条件等を支配、決定できる地位にあったとはいえず、千石は、X1ら
2名に対する本件解雇及びこれらに関連する組合からの5.26団交申入れについて、労働組合法7条の「使用者」に当たらな
い。
6160 訴訟参加
組合は、企業組合はX2ら3名の使用者であると主張し、中労委もこれを認めるが、企業組合は行政事件訴訟法第22条による補
助参加人といえ、共同訴訟的補助参加人の地位にあるので、被参加人である中労委の訴訟行為と抵触する行為をすることができる
から、企業組合がX2ら3名の使用者であることを否認する以上、中労委の自白を前提に判断することはできない。
1302 就業上の差別
企業組合がX2ら3名の使用者であるとしても、同人らに対する就労拒否は、事業主以外の地位に基づく経済活動を認めない姿勢
を明確にしたものにすぎず、企業組合において、X2ら3名が組合分会に加入したことを嫌悪し、同人らが企業組合の従業員であ
ることを否定するため、償却制かリース制かの選択を強制し、これを選択しないことを口実として、その就労を拒否したことを認
めるに足る証拠がないから、不当労働行為に当たらないとした原判決は相当である。
5144 不当労働行為でないことが明白
千石は一森及びイチモリを介してX2ら3名の労務や賃金等の管理、労働条件等を支配、決定できる地位にあったとはいえず、ま
た、企業組合を介して、企業組合の組合員について、その労務や賃金等の管理、労働条件等を支配、決定できる地位にあったとは
いえないから、千石がX2ら3名の使用者であるとすることはできないとした原判決は相当である。
5144 不当労働行為でないことが明白
千石と一森及びイチモリは、人的なつながりや取引上において、緊密な関係にあったが、他方で、全く異なる別個の法人であり、
千石が、一森及びイチモリを介して、組合員X2ら3名を初めとする生コン運転手について、その就労や賃金等の管理、労働条件
等を支配、決定できる地位にあったとはいえず、また、企業組合は、千石、一森及びイチモリとは全く別個の組織形態を有する独
立した法人としての実態を有しており、千石が、企業組合を介して、企業組合の組合員等の就労者について、その就労や賃金等の
管理、労働条件等を支配、決定できる地位にあったと認めるに足る証拠がないから、千石が組合員X2ら3名について労働組合法
7条の「使用者」に当たらない。
5144 不当労働行為でないことが明白
組合は、9.6団体交渉申入れにおいて、千石に対してのみ団体交渉の申入れをしており、企業組合に対しては、団体交渉の申入
れをしていないことは明らかであるから、組合の9.6団体交渉申入れの救済申立ては却下を免れないとした原判決は相当であ
る。
|
業種・規模 |
道路貨物運送業 |
掲載文献 |
|
評釈等情報 |
中央労働時報 2003年10月10日 1018号 57頁
|