事件名 |
千石 外2社 |
事件番号 |
東京地裁平成13年(行ウ)第86号
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原告 |
全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部 |
被告 |
中央労働委員会 |
被告参加人 |
株式会社千石 |
被告参加人 |
大阪輸送企業組合 |
判決年月日 |
平成14年 4月10日 |
判決区分 |
救済命令の一部取消し |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、株式会社千石、株式会社一森及び有限会社イチモリが、全日
本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部の千石分会の組合員X1ら2名を解雇したこと及び平成5年5月26日付け団体交渉
申入れに応じなかったこと、並びに、大阪輸送企業組合、千石及びイチモリが、組合からの同年9月6日付け団体交渉申入れに応
じなかったこと及び同分会の組合員X2ら3名に対して就労を拒否したことが、不当労働行為であるとして申立てがあった事件で
ある。
初審大阪地労委は、(1)一森及びイチモリは組合員X1ら2名の解雇をなかったものとし、一森において同人らを従業員とし
て取り扱い、バック・ペイを支払うこと、(2)一森は、平成5年5月26日付け団体交渉申入れに速やかに応じること、(3)
企業組合は、組合員X2ら3名を従業員として取り扱い、バック・ペイを支払うこと等を命じ、その余の申立てを却下した。これ
を不服として、労使双方から再審査の申立てがなされ、中労委は、初審命令を一部変更して、イチモリに対する救済申立てを却下
し、その余の各再審査申立ては棄却したところ、組合は、これを不服として行政訴訟を提起した。
東京地裁は、X1ら2名の解雇及び5.26団交申入れについてイチモリは労組法上の使用者に当たるとして、中労委命令のう
ち、イチモリに対する救済申立てを却下した部分について取り消し、組合のその余の請求を棄却した。 |
判決主文 |
1 被告が中労委平成9年(不再)第25号、同(不再)第26号、
同(不再)第27号、同(不再)第28号不当労働行為再審査申立事件について、平成13年1月17日付けでした命令の主文I
の4中、(1)X1ら2名に対する平成5年4月27日付け解雇、(2)平成5年5月26日付けの原告の団体交渉に応じないこ
と、についての原告の被告補助参加人有限会社イチモリに対する救済申立てを却下した部分を取り消す。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用(補助参加によって生じた費用を除く。)はこれを5分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担とし、被
告補助参加人株式会社千石、同大阪輸送企業組合の各補助参加によって生じた費用は、原告の負担とし、被告補助参加人有限会社
イチモリの補助参加によって生じた費用は、これを2分し、その1を被告補助参加人の負担とし、その余を原告の負担とする。
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判決の要旨 |
4910 事業廃止に伴う新経営者
イチモリの設立自体により一森からイチモリに変わること自体は伝えられている上、現実に同運転手らに対する給料等の支払がイ
チモリ名義で行われ、同運転手らもこれを受領していること、一森当時とイチモリ設立後において、同運転手らの就労の実態、労
働条件、労務、賃金等の管理事務全般の担当者等に変化がないこと、X1ら2名に対する本件解雇についての解雇予告手当や解雇
通告書もイチモリ名義でされていることからすれば、同運転手らについての雇用関係が一森からイチモリに承継されたかどうかは
ともかく、イチモリは、同運転手らの労働条件について支配、決定できる地位にあったということができるから、前記の説明や手
続が行われなかったことをもって、イチモリがX1ら2名を初めとする一森に採用された生コン運転手らについて使用者に当たら
ないとすることはできない。
4910 事業廃止に伴う新経営者
千石と一森及びイチモリは、その役員、資本、本店所在地において全く異なる別個の法人であること、本件生コン運転手らは、主
にX2が請け負った阪南産業の生コン運送に従事し、平成4年9月25日以降は、千石が第1プラントで製造した生コンを運送し
ているのであるが、本件生コン運転手らの採用、控室の管理、給料制の生コン運転手の担当車両の決定、本件生コン運転手らへの
指導、休暇の管理、生コン運転日報の整理、給料の計算等の労務管理等についてはもっぱらIが行っており、千石が行っていたの
は、配車係が配車順をIと相談することや、ユーザーからの苦情について、本件生コン運転手らから事情聴取を行うことといった
程度であったことからすれば、千石がX1ら2名をはじめとする本件生コン運転手について、その労務や賃金等の管理、労働条件
等を支配、決定できる地位にあったとはいえないから、千石と一森及びイチモリとの間に緊密な関係があるからといって、千石が
X1ら2名をはじめとする本件生コン運転手の使用者であるとすることはできない。
6160 訴訟参加
企業組合は、企業組合がX2ら3名の使用者に当たるとした上で不当労働行為を認めなかった本件命令について不服申立てをして
おらず、単に被告に補助参加しているにすぎないところ、原告は、企業組合はX2ら3名の使用者であると主張し、被告もこれを
認めているのであるから、被告の補助参加人である企業組合のこの主張は、被告の訴訟行為と抵触するものであって効力を生じな
いものというほかはない。当裁判所は、企業組合がX2ら3名の使用者であることを前提に、企業組合がしたX2ら3名に対する
就労拒否の不当労働行為性を判断せざるを得ない。
1401 労務の受領拒否
3700 使用者の認識・嫌悪
企業組合がX2ら3名の使用者であるとしても、X2ら3名が就労を拒否された経緯からすれば、X2ら3名に対する就労拒否
は、企業組合が、X2ら3名は組合員として企業組合に加入したものであり、企業組合の組合員は事業主でなければならず、給料
制の運転手は認められないとしていたのに対し、X2ら3名の側では、あくまで企業組合に雇用されたと主張し、従業員としての
就労を求める態度であったために行われたものであることが明らかである。企業組合において、X2ら3名が原告千石分会に加入
したことを嫌悪し、そのことの故にその就労を拒否したことを認めるに足りる証拠はない。
4916 企業に影響力を持つ者
千石と一森及びイチモリとは、全く別の法人であり、千石がIら2名を含む本件生コン運転手らについて、その労務や賃金等の管
理、労働条件等を支配、決定できる地位にあったとはいえない。また、企業組合に加入したX3についても、企業組合は世界産業
の代表取締役Eが設立し、支配していたもので、千石、一森及びイチモリとは全く別個の組織形態を有する独立した法人としての
実態を有しており、千石が、企業組合に加入したX3を含め、企業組合の組合員について、その労務や賃金等の管理、労働条件を
支配、決定できる地位にあったことを認めるに足りる証拠はないから、千石がX2ら3名についての使用者であるとすることはで
きない。
4911 解散事業における使用者
企業組合は、世界産業の代表取締役Y1が設立し、支配していたものであって、一森及びイチモリとは全く別個の独立した法人と
しての実態を有していた。また、一組合員として企業組合に加入しており、企業組合の理事であったこともないし、組合員X2ら
3名も、Iと同時期以降に企業組合に加入しているところ、平成5年4月26日にはイチモリは有効に解散しているのである。し
たがって、イチモリが解散した後は、イチモリが企業組合の組合員であるX2ら3名について、その労務や賃金等の管理、労働条
件等を支配、決定できる地位にあったとはいえないから、イチモリがX2ら3名についての使用者であるとすることもできない。
2130 雇用主でないことを理由
千石及びイチモリは、X2ら3名について、労組法上の使用者には該当しない。原告は、9.6団交申入れにおいて、千石に対し
てのみ団交の申入れをしており、イチモリ及び企業組合に対しては、団交の申入れをしていないことは明らかである。したがっ
て、その余の点について判断するまでもなく、原告の9.6団交申入れについての救済申立ては却下を免れない。その余の点につ
いて判断するまでもなく、原告の9.6団交申入れについての救済申立ては却下を免れない。
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業種・規模 |
窯業・土石製品製造業 |
掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集37集267頁 |
評釈等情報 |
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