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4.医薬品等の承認審査等について


(1)承認審査

ア.医薬品等の審査体制について
(ア)昨年7月1日に、薬事行政組織の見直しを行い、医療と医薬品の幅広い安全対策を一元化して推進することと、承認審査における専門性と透明性を高めて審査体制を強化することが図られたところである。
(イ)具体的には、従来の薬務局を改組して安全対策全般を所掌する「医薬安全局」を設置するとともに、審査関係では審査管理課において医療用具も含めた審査業務の管理を中心に、さらに再審査・再評価、日本薬局方、希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定、遺伝子組換え技術応用医薬品製造指針への適合等の審査関連業務も所掌することとされた。
(ウ)同時に、「国立衛生試験所」を「国立医薬品食品衛生研究所」に改称するとともに、この中に新たに「医薬品医療機器審査センター」(以下「審査センター」とする。)を設置し、承認審査における専門性と透明性を高めて審査体制を強化したところである。
(エ)具体的には、審査センターにおいて新医療用医薬品を中心に医学、薬学、獣医学、統計学等の専門知識を習得した審査官によるチーム審査を実施しており、さらに組織と人員の確保を図りながら事務局審査中心の審査への移行を図った。
(オ)これにより新薬等の審査については、審議会への諮問と最終的な承認の判断を行う厚生本省、審査実務を行う審査センター、調査業務を行う医薬品機構が、また、医療用具の審査については同様に厚生本省、審査センター、(財)医療機器センターのそれぞれ3ヶ所が連携を図りながら審査の高度化と迅速化を進めることとしている。
イ.医薬品について
(ア)平成9年は新医療用医薬品として新有効成分15成分が承認された。
(イ) 平成8年6月の薬事法改正に基づき、昨年4月より「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(新GCP)が施行され、治験における被験者の人権保護の一層の強化とデータの信頼性の向上を目指して法制化された新たなGCPがスタートした。また、医薬品機構において治験指導・相談業務とGCP等基準適合性調査業務が開始された。
(ウ) 新医薬品の承認申請の目的で実施される試験の標準的方法として平成9年に公表されたガイドライン等は次のとおり。
a. 医薬品の生殖発生毒性試験に係るガイドラインの改定について
(平成9年4月14日)
b. 医薬品におけるがん原性試験の必要性に関するガイダンスについて
(平成9年4月14日)
c. 新投与経路医薬品等の安定性試験成績の取扱いに関するガイドラインについて
(平成9年5月28日)
d. 新原薬及び新製剤の光安定性試験ガイドラインについて
(平成9年5月28日)
e. 新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関するガイドラインについて
(平成9年6月23日)
f. 分析法バリデーションに関するテキスト(実施方法)について
(平成9年10月28日)
(エ)医療用後発品の生物学的同等性試験ガイドラインを12月22日に公表し、後発品の先発品との治療学的な同等性を保証するための方法を具体的に明示したところ。
(オ)一般用医薬品については、これまでにも承認審査の効率化等の観点から、薬効群毎に承認基準を作成し、承認権限を都道府県知事に委任してきている。平成9年度中には「水虫、たむし用医薬品」の承認基準の作成を進めている。
(カ)体外診断用医薬品については、国内で標準品等の入手が可能な31の測定項目については平成9年9月1日以降提出資料の簡素化を図った(平成9年8月28日医薬発第139号)。また、体外診断用の放射性医薬品に関してはその標識成分規格集が出版されたことに併せて「体外診断用放射性医薬品指針」を平成9年12月11日医薬発第415号通知をもって廃止した。
(キ)日本薬局方について 平成8年3月に第13改正日本薬局方を制定したが、最新の科学技術の進展並びに国際的調和に対応するために、平成9年12月26日厚生省告示第254号をもって第13改正日本薬局方第一追補の制定等が行われた。また、同日付け厚生省告示第255号をもって承認を要しない医薬品を定める件などの告示の改正が行われている。改正の主な点は

a. 製剤総則中の各試験法を一括して一般試験法にまとめたこと。
b. 貼付剤の項目を新たに追加し、これまでの硬膏剤を取り込んで徐放性等の
規定を盛り込んだこと。
c. 一般試験法において、有害試薬である「重クロム酸カリウム」、「臭化第
二水銀」を用いる方法等を削除したこと。
d. 新たに「カリジノゲナーゼ」、「メシル酸ジヒドロエルゴトキシン」、
ニンジン末」を収載したこと。
e. 12品目についてエンドトキシン試験法の規格値を設定したこと。
f. 生薬の基原についてあいまいであった表現を明確化したこと。
g. 生薬4品目の純度試験に残留農薬の規格値等を設定したこと。

ウ.化粧品、医薬部外品について
(ア)化粧品について

a. 平成9年3月に種別を25から11に統合するとともに、承認前例のあ
る143成分を新たに指定し、承認を要しない化粧品の範囲を拡大し
た。
b. 化粧品規制の在り方については「化粧品規制の在り方に関する検討会」
において昨年3月に中間とりまとめが行われ、消費者の安全確保を最大
限配慮したうえで規制緩和と国際的な整合化の実現を目指した今後の化
粧品規制の在り方の方向性が示された。現在、具体的な課題についての
検討を進めており、今後これらの検討結果を踏まえて新たな化粧品規制
を実施していくこととしている。
(イ)医薬部外品について

a. 染毛剤、パーマネント・ウェーブ用剤、薬用歯みがき類について承認基
準を作成し、承認権限を委任してきたところであり、他の種別について
も承認基準の作成を進めているところである。
b. 平成9年3月に「承認不要医薬部外品基準」を定め、清浄綿を承認を要
しない医薬部外品に指定した。

エ.医療用具について
(ア)平成7年度に開始された政府の「規制緩和推進計画」に基づき、医療用具規制の分野においても規制緩和が進められているが、平成9年3月には外国臨床試験データの原則受け入れ、一変不要範囲の明確化等の措置を実施したところであり、さらに平成9年度中に医療用具の人体に対するリスクに応じたクラス分類を導入するとともに承認不要範囲のさらなる拡大、臨床試験不要範囲の見直し、販売業の届出不要範囲の拡大等について実施すべく検討を進めている。
(イ)医療用具に係る基準としては、薬事法第42条第2項に基づく基準(42条基準)、工業標準化法に基づくJIS規格等がある。42条基準は多くが昭和30年代から40年代にかけて策定されたものであり、規制緩和推進計画の一環としてその見直しが求められており、また、JIS規格についても平成8年12月の閣議決定「経済構造の改革と創造のためのプログラム」において平成9年度以降3年間にすべての規格の存続、改正又は廃止についてゼロベースの全面見直しを行うこととされており、検討を進めている。
(厚生大臣所管の医療用具JIS制定品目:254品目(平成9年12月末現在))
(2)承認審査の国際的整合化の推進
ア.医薬品について
(ア)近年、優れた新医薬品の地球的規模での研究開発の促進と患者への迅速な提供を図るため、承認審査資料の国際的整合化推進の必要性が指摘されている。
(イ)我が国としても、日・米・EU三極の一つとして、国際共同研究の推進やICHへの積極的参加等を通して、医薬品規制の国際的整合化を推進することとしている。
(ウ)平成9年7月第4回日・米・EU三極医薬品承認審査整合化国際会議(ICH)がブリュッセルにおいて開催され、臨床試験の実施に関する一般ガイドライン等について合意が得られ、各地域で実施されることになった。平成10年2月に次期会議に向けた準備会合がワシントンで開催される予定である。
イ.医療用具について
 医療用具規制についての国際整合は、1992年に欧州連合(EU)の提唱で創設された「医療用具規制国際整合化会合(GHTF:Global HarmonizationTask Force)」において、日、米、EU、加、豪の規制当局及び産業界代表者が参加して積極的に進められている。
 昨年は規制全般の整合化作業を進めている作業グループ1(SG1)が4回開催され、医療用具のクラス分類の整合化作業や医療用具に求められる基本的要件の検討が進められている。
 第7回GHTF本会合は、平成10年2月にシドニーで開催される予定である。
また、医療用具の個別の規格については、国際標準化機構(ISO:International Standards Organization)及び国際電気標準化会議(IEC:International Electrotechnical Commission)の場で精力的に作業が進められている。

(3)「医薬品の臨床試験の実施の基準」(GCP)の円滑な実施

ア.新GCP制定の経緯
 平成8年6月の薬事法改正により、従来薬務局長通知による行政指導として位置づけられていたGCPを厚生省令で定める基準とし、製薬企業のみならず治験実施医療機関及び治験を担当する者に対して遵守を義務付けることとなった。
 そこで、平成8年9月から中央薬事審議会に設置したGCP特別部会において旧GCPの見直しに着手し、平成9年3月13日付けで同審議会から答申が行われた。この新GCPの答申を受け、平成9年3月27日付けで「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成9年厚生省令第28号)」を定め、同年4月1日から施行している。なお、治験のモニタリング、監視等については経過措置が設けられており、平成10年4月から全面施行されることになっている。

イ.新GCPの主な変更点
(ア)文書による説明と同意の取得
(イ)治験総括医師制度の廃止
(ウ)治験依頼者の責任体制の強化
(エ)治験審査委員会の機能の充実
(オ)治験責任医師の責任と業務の明確化と治験支援体制の充実等
ウ.円滑な実施に向けての事業
 新GCPにより治験実施体制も大きく変わることになるため、平成9年度は次のような事業を行っているところである。
(ア)「新GCP普及定着総合研究班」の設置
 新制度における必要な支援策を研究、提言することを目的とする。
(イ)「GCP適正運用推進モデル事業」の推進
 2病院をモデル病院として指定し、新GCP実施に伴う具体的な問題点及び解決策を明らかにすることを目的とする。
 平成10年度は、これらの事業の結果等を踏まえ、新GCPの普及定着を図ってまいりたい。

(4)FD申請について
 承認許可業務の効率化を図るため、フレキシブルディスクを用いた承認・許可申請システム(FD申請システム)を、医薬品等については平成7年度より、医療用具については平成9年度から開始したところである。医薬品等については46都道府県が導入済み、若しくは導入予定となった。医療用具についても平成9年度末には40の県で導入予定となっている。今後もシステムの機能向上、FD申請の普及等を進めることとしており、FDシステムの所期の目的が達せられるよう都道府県においてもご協力願いたい。

(5)希少疾病用医薬品等の指定

 医療上の必要性が高いにもかかわらず、患者数が極めて少ないことにより研究開発が進んでいない難病、エイズ等を対象とした医薬品(希少疾病用医薬品)、医療用具(希少疾病用医療用具)の研究開発を民間企業の自主努力のみに期待することは極めて困難となっている。これら医薬品等の研究開発を促進するため、平成5年10月に希少疾病用医薬品及び希少疾病用医療用具の指定による研究開発促進制度が発足した。希少疾病用医薬品又は希少疾病用医療用具として指定されれば、助成金の交付(平成10年度予算案5億円)、税額控除、指導・助言、優先審査、再審査期間の延長といった措置が講じられる。これまで希少疾病用医薬品として111品目、希少疾病用医療用具5品目が指定され、これら医薬品、医療用具のうち、平成9年11月20日現在で、医薬品39品目、医療用具2品目が承認されている。今後とも当該制度を推進し、希少疾病用医薬品等の研究開発の促進に努めていくこととしている。

(6)再審査・再評価

ア.医療用医薬品の再評価在り方検討会
 昨年2月に医療用医薬品再評価在り方検討会(座長:前川 正、前群馬大学長)を発足させ、医療用医薬品の見直し制度についての提言を頂くため検討いただいているところである。昨年10月末には欧州各国の医薬品承認の更新制度や米国の定期報告制度などについての調査団を派遣し、現在その報告書が取りまとめられているところであり、本年2月を目途に検討会の再開を予定している。
イ.医薬品の再審査について
 平成5年10月より、希少疾病用医薬品並びに、市販後調査において患者の延命効果や、QOLの改善等を指標とした有用性の評価を行うため薬剤疫学的手法を導入した臨床試験を行う必要のある新医薬品について、再審査期間を10年に延長して再審査を実施することとしている。
 なお、これまでに1,464品目について再審査を行い、そのうち124品目が承認事項を変更する必要があるとされた。
 また、平成8年度より再審査のために収集された安全性等の情報を広く医療機関にフィードバックすることを目的に、再審査概要(SBR)を作成する事業を開始した。また平成9年度より再評価についても再評価概要(SBR2)を作成する事業を開始した。

ウ.医薬品の再評価について
 医療用医薬品については、昭和42年9月以前の承認分について19,849品目全ての再評価を終了し、また昭和42年10月以降昭和55年3月以前の承認分についても、1,860品目全ての再評価を終了した。
 なお、現行の新再評価制度において、順次必要なものにつき再評価指定をおこなっているところであるが、現在までに2,614品目について再評価を終了している。
エ.GPMSPについて
 一昨年の薬事法改正により、GPMSP基準を製造業者等の遵守事項として省令に定め、また再審査・再評価の申請資料の収集、作成のための適合性の基準として定めた。昨年からは再審査申請資料の信頼性に係る査察が開始され、製造業者等を査察する際には所在地の都道府県にもご連絡しているところであり、市販後調査の信頼性確保のためのノウハウの共有化を進めたいと考えている。
 さらに、適正な市販後調査のためには製薬企業のみならず医療機関側の協力が不可欠であり、北里大学病院をモデル病院として選定し、9年度よりGPMSPモデル事業を開始した。医療機関の協力が円滑に進み、市販後調査の信頼性が確保されるような方策について提言が得られることを期待している。
オ.安全性定期報告(PSUR)について
 ICHにおいて、安全性情報の定期的報告書(PSUR)の提出頻度、報告内容等について合意が得られた。
 我が国ではこれに基づき、製造業者等に対し新医療用医薬品の承認後2年間は半年毎、3年目以降再審査期間中は年1回報告を求める安全性定期報告制度を平成9年度より開始した。
 これにより、我が国だけでなく諸外国における副作用情報、調査・試験の成績、各国の規制状況などの安全性情報を定期的に入手できるようになり、安全対策の充実・強化が図られることになる。なお、これに伴い従来の年次報告制度は廃止される。

(7)後発医薬品の品質等の確保対策

 医療用医薬品の経口固形製剤の一部には後発品を中心にその品質が不十分なものがあるのではないかとの指摘がある。経口固形製剤の品質の確保のためには、溶出試験規格の策定、遵守が重要であるが、新医薬品に対しこの規格設定は、一部を除いて平成7年4月以降申請分に対して設定されているだけである。溶出試験規格の設定のない医療用医薬品のうち後発品のあるものは約550成分5,000品目以上にのぼる。これらについて、早急に品質の信頼性の確保を図る必要があることから、平成16年度までに、国立医薬品食品衛生研究所及び10都府県(埼玉県、東京都、神奈川県、富山県、静岡県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県)の衛生研究所の協力を得て、溶出試験規格を策定し、再評価を実施し、その結果を公表することとしている。
 また、生産段階における後発医療用医薬品の品質確保対策として、注射剤及び内服剤について、医療上の必要性等を踏まえ調査対象品目を選定し、当該品目の製造所へ立ち入り、品質管理状況等を調査し必要な指導を行うとともに、製品を収去し、溶出試験、無菌試験等を実施することとしている。
 各都道府県におかれては、製造所への立入調査指導、製品の収去及び内服剤の溶出試験の実施についてご協力をお願いする。
 さらに、後発医薬品製造業者は情報収集・提供が充分に行われていないとの指摘もある。医療用医薬品の製造業者に対しては、副作用情報の収集や医師等への情報提供体制を確保するため、昨年4月改正した薬事法に基づき、「医薬品の市販後調査の実施に関する基準」(GPMSP)の遵守を義務づける等の措置を講じているところであるが、後発品製造業者に対して、先発品製造業者と同等の情報収集・提供体制を定着させるための事業について、平成10年度より都道府県に委託して実施することとしているのでご協力をお願いする。



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