ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 健康・医療 > 医療 > 医療安全対策 > 第12回 記述情報の分析について > 記述情報分析事例

記述情報分析事例

 
事例8807 (早出職員の手書きによる食札誤記載により、流動食の患者に常食を誤配膳した事例)
発生部署(栄養部) キーワード(食事・栄養、その他)

 ■ 事例の概要(全般コード化情報より)
発生月【6月】 発生曜日【日曜日】曜日区分【平日】発生時間帯【6時〜7時台】
発生場所【配膳室】
患者の性別【  】 患者の年齢【  歳】
患者の心身状態【      】
発見者【他職種者】
当事者の職種【調理師・調理従事者】
当事者の職種経験年数【14年 ヶ月】
当事者の部署配属年数【14年 ヶ月】
発生場面 【誤配膳】
(薬剤・製剤の種類) 【           】
発生内容 【誤配膳】
発生要因-確認 【確認が不十分】
発生要因-観察 【           】
発生要因-判断 【           】
発生要因-知識 【           】
発生要因-技術(手技) 【           】
発生要因-報告等 【           】
発生要因-身体的状況 【          】
発生要因-心理的状況 【          】
発生要因-システムの不備 【          】
発生要因-連携不適切 【          】
発生要因-勤務状態 【          】
発生要因-医療用具 【          】
発生要因-薬剤 【          】
発生要因-諸物品 【          】
発生要因-施設・設備 【           】
発生要因-教育・訓練 【          】
発生要因-患者・家族への説明 【          】
発生要因-その他 【           】
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【間違いが実施されたが、患者に影響がなかった事例】
備考【                   】

 ■ ヒヤリ・ハットの具体的内容
早出調理師による、誤配膳。(濃厚流動食喫食患者さんに、常食を配膳。)他に4〜5枚程度時間外食事箋があり、手書きによる患者名と食事の誤記載によるもの。

 ■ ヒヤリ・ハットの発生した要因
名前と食事を十分確認しなかった。

 ■ 実施したもしくは考えられる改善策
食事箋の内容確認を十分行う。



専門家からのコメント


 ■ 記入方法に関するコメント
 次の事項についての記載があれば、事例の背景がより理解でき、問題点の分析や改善策も具体的なものとなったのではないでしょうか。
 ・ 栄養部門の栄養士・調理師・調理担当職員などの勤務体制と担当する業務内容
 ・ 配膳業務を担当する職員の種類
 ・ 当事者調理師の時間外における食事指示箋から食札作成に関する業務の経験年数
 ・ 食札作成業務に関する教育指導の実施状況
 ・ 時間外食事指示箋の平均的件数
 ・ 時間外変更の受け付けから配食までのプロセスとマニュアルの有無
 ・ 食事指示箋と食札との照合方法

 ■ 改善策に関するコメント
 食事指示箋は、入院中、転棟・外泊・外出・退院時に出されます。また食種・主食・禁止事項・特別指示など食事指示箋の情報の内容も多種多様で毎食ごとに発行されるため栄養部門の情報処理量は膨大なものになります。通常、栄養部門では、食事指示箋で伝えられる情報を基に、実際に食事を作るための「業務指示書」を作成して調理作業を行います。
自動化された情報システムの下では、時間内であれば、食事指示がコンピュータ入力されると、その情報が栄養部門に伝えられるとともに、食札にも自動的に印字されるシステムとなっています。ところが、その自動化された部分にピットホールがあります。通常は、あらかじめ病院として決めたメニュー(約束食事箋)の範囲内で医師の食事指示がコンピュータにより具体的な食事を作る「業務指示書」に変換され、栄養士がこれを確認し、情報は調理プロセスの指示書である食札となります。
 しかし、時間外や急な食事指示の変更時は、医師による手書きオーダーとなり、栄養部門の職員が手書きの食事指示箋をもとに、新たに手作業で「業務指示書」を作成することになります。特に時間外の食札作成は手書き作業となり、食事指示箋を見慣れていない調理員などの職員が、調理に必要な情報を取り出し、食札を作ることになります。専門職でない職員というリスクと、更に転記ミスというエラー発生を誘発させる要因が加わるわけです。

 このように、治療・ケアの一環としての病院食を作る上で重要な情報伝達のプロセスに、調理師などの非専門職が関与したり、日常業務とは異なる業務を担当したりするため、時間外においては情報伝達エラーが起こりやすいと言えます。
 病院食提供業務プロセスにおいては、途中での情報変換が不可欠であり、その変換が場合によっては非専門職により手書きされるなど、食事関連業務の特殊性を踏まえた安全対策が必要です。なお、コンピュータによる自動化には新たなピットホールが発生していることも踏まえて、次のような対策を提案します。
1. 情報の伝達が確実に実施されるようチェックシステムを確立する
 本事例について考えてみますと、時間外食事指示箋チェック表を作成し、患者氏名、食事の内容(変更がある場合は変更前後の内容)を記録のうえ、調理過程の適当なところで食事指示箋、食札と成果物が適合しているのかを検証することが重要です。
 食事の提供は栄養部門内だけでも栄養士、調理師、配膳担当者(時には委託業者)などが関わり、これらの間の連携で行われており、この種の間違いは、連携の中においても発生する可能性があり、再発防止のためにも栄養部門内の取り決め(事務的処理の取り決め・調理、配食時の取り決め)をマニュアル化しておく必要がある、また、配食時は最終的にチェックするシステム(例えば時間外変更分の再チェックなど二重のチェック体制)などのマニュアルを作成し、周知徹底させることが必要と考えます。
2. 関係職員への教育システムを確立する
 食事指示箋からの情報収集等の重要性について学習する教育指導を併せて実施する必要があります。調理員は、医師からの食事オーダーに常に携わっているとは考えられず、栄養士の勤務体制から時間外の食札作成業務を調理員が行っているものと推測されます。
従って、患者へ食事が提供されるプロセスにおいて、食札が重要な業務指示書としての機能を持つことや、誤記載が患者に与える影響について具体的事例による研修を実施し、関係職員が食事提供の責任を果たせるような教育システムの確立が必要と考えます。
3. 時間外変更における情報伝達システムを確立する
 食事オーダーには締め切り時間が設けられていますが、実際には緊急入院や、病態の変化により締め切り時間外の食事変更があるため、24時間体制での対応が必要です。人的資源も情報システムの脆弱になる時間外においては、情報伝達エラーが最も発生しやすいことを念頭にした、あまり煩雑でなく実行しやすい情報伝達システムの構築が重要と考えます。
 1つは、時間外における「病棟⇔栄養部門」において、もう1つは、病棟内においても「医師⇔看護師⇔看護助手など配食に関わる者」へと変更内容の情報が正確に伝わるように、情報伝達の方法や手段、タイミング、伝達する内容等について、具体的な取り決めを行うことです。そして、その取り決めの周知徹底を図るために、採用時、勤務場所変更時などに全関係職種へのオリエンテーションの徹底をルール化することも重要です。



 
事例9548 (ICUから一般病棟に転棟後、糖尿病患者に普通食が開始され病状が悪化した事例)
発生部署(病棟・集中治療室) キーワード(食事と栄養 転棟・病態・情報)

 ■ 事例の概要(全般コード化情報より)
発生月【6月】 発生曜日【火曜日】曜日区分【平日】発生時間帯【 時〜 時台】
発生場所【病室】
患者の性別【女性】 患者の年齢【82歳】
患者の心身状態【床上安静】
発見者【他職種者】
当事者の職種【看護師】
当事者の職種経験年数【0年2ヶ月】
当事者の部署配属年数【0年2ヶ月】
発生場面 【経口摂取】
(薬剤・製剤の種類) 【           】
発生内容 【内容の間違い】
発生要因-確認 【確認が不十分】
発生要因-観察 【           】
発生要因-判断 【           】
発生要因-知識 【           】
発生要因-技術(手技) 【           】
発生要因-報告等 【           】
発生要因-身体的状況 【          】
発生要因-心理的状況 【          】
発生要因-システムの不備 【          】
発生要因-連携不適切 【医師と看護職の連携不適切,看護職間の連携不適切】
発生要因-勤務状態 【          】
発生要因-医療用具 【          】
発生要因-薬剤 【          】
発生要因-諸物品 【          】
発生要因-施設・設備 【           】
発生要因-教育・訓練 【          】
発生要因-患者・家族への説明 【          】
発生要因-その他 【           】
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【間違いが実施されたが、患者に影響がなかった事例】
備考【                   】

 ■ ヒヤリ・ハットの具体的内容
術後にICUから一般病棟へ転床時、術前には糖尿食を食べていた患者であったが、術後に普通食が出されたままになり、血糖が上昇し、栄養指導を受ける際に患者から栄養士に「今は普通食を食べている」と発言があったことにより誤食が発覚した。

 ■ ヒヤリ・ハットの発生した要因
・医師と看護師の連携不足・ICU看護師と一般病棟看護師の情報の伝達不足・病状と栄養との関連づけができていない。

 ■ 実施したもしくは考えられる改善策
・病状と栄養について再教育・病棟が変わる場合の情報伝達と共有の仕方についてマニュアル作成



専門家からのコメント


 ■ 記入方法に関するコメント
 次の事項についての記載があれば、事例の発生要因が明確になり、効果的な対策立案の助けになると思います。
 ・ 患者の主病名及び術式
 ・ この患者の糖尿病の重症度
 ・ 術前・中・後の血糖値、血糖コントロール状況、術後のIVH管理の状況
 ・ 流動食の開始時期
 ・ 普通食が出されていた期間
 ・ 栄養食事指導の状況
 ・ ICU及び病棟の看護チームの、患者の糖尿病と血糖コントロールに対する認識
 ・ 糖尿病と血糖コントロール、食事療法に対する患者や家族の認識
 ・ 主治医の食事オーダー及び医師指示表又は熱型表への記載状況
 ・ 栄養部門における食事の変更情報の記録方法及び変更確認の方法
 ・ 転科・転棟時の食事を含む患者情報移行における院内のルール
 ・ 診療記録は一元化されているのか
 ・ 医療情報システムは電子化されているのか

 ■ 改善策に関するコメント
 本事例から患者の全身管理についての認識が希薄ではないかという印象を受けます。患者の主病名は分かりませんが、糖尿病患者については術前の血糖値のチェックは行われているはずでしょう。また術後の経管栄養も血糖値には十分注意が払われていることと思います。通常主治医は、ICU入室に際しては絶食オーダーを出さなければなりませんし、ICUから退室するまでの間も医師指示表又は熱型表に栄養に関する指示ないし状況は記録しなければなりません。当然一般病棟へ転棟するときにも食事オーダーをしなければなりません。また、病態を踏まえた生活援助や患者教育を実施する看護師は、この患者にとっての食事の重要性を看護チームで共有し、適切な食事が摂取できるよう医師のオーダー内容を監査する役割があります。

 本事例の直接の発生原因は記載された情報からは明確にわかりませんが、ICUから退室時に主治医が普通食のオーダーをしたか、糖尿病食のオーダーが出されていたにもかかわらず栄養部門に伝わらなかったかのいずれかではないでしょうか。いずれにしろ、エラーに気付いたり、エラーの発生を防御したりするシステムが十分に機能していないことは確かです。
 主治医のオーダー誤りであれば、ICUにおける手術に注意が向けられ、食事に関心が向けられなかったことになります。また、栄養部門における間違いであれば、食事オーダーの中での患者の病態にかかわる重要情報の読取りができていなかったことになります。また、患者が摂食するまでに本事例の発生を食い止めるためには、ICUから一般病棟への申し送りに栄養管理情報があれば少なくとも栄養部から食事が上がってきたときにチェックできたでしょう。当然一般病棟が患者の傷病については認識しているはずですから一般病棟からICUないし診療記録の点検が行われチェックできたものと考えます。
 本事例から患者の病態に関する情報が手術というイベントで切断されたこと、本来患者の病態を熟知していなければならない主治医及び病棟看護師の食事に対する認識が希薄であったこと、診療記録が十分に機能していなかったこと栄養部において患者の食事変更記録に工夫がなかったことなどが指摘でるように思います。また、インフォームドコンセントにより患者や家族への食事療法について認識をもってもらい、治療への積極的な参加を求めることも必要ではなかったかと思われます。これらを踏まえて次のような対策を提案します。

1. 医療情報の一元化により、患者情報を医療チームで共有するシステムを作る。
2. 患者の病態に影響する重要情報の伝達方法を院内でルール化する。
3. 食事・栄養の安全に関する認識を高めるための全職種対象の研修会・教育の実施



 
事例13190 (家族がペットボトルに入れておいた化粧水を看護師が水と思い誤飲させた事例)
発生部署(入院部門一般) キーワード(誤飲、差し入れ、患者・家族との協働、情報共有不足)

 ■ 事例の概要(全般コード化情報より)
発生月【5月】 発生曜日【日曜日】曜日区分【休日】発生時間帯【8時〜9時台】
発生場所【病室】
患者の性別【女性】 患者の年齢【70歳】
患者の心身状態【      】
発見者【家族・付き添い】
当事者の職種【看護師】
当事者の職種経験年数【3年2ヶ月】
当事者の部署配属年数【3年2ヶ月】
発生場面 【内服介助】
(薬剤・製剤の種類) 【           】
発生内容 【水と化粧水を間違えて患者に飲ませた】
発生要因-確認 【確認不十分】
発生要因-観察 【           】
発生要因-判断 【           】
発生要因-知識 【           】
発生要因-技術(手技) 【           】
発生要因-報告等 【           】
発生要因-身体的状況 【          】
発生要因-心理的状況 【          】
発生要因-システムの不備 【          】
発生要因-連携不適切 【          】
発生要因-勤務状態 【          】
発生要因-医療用具 【          】
発生要因-薬剤 【          】
発生要因-諸物品 【          】
発生要因-施設・設備 【           】
発生要因-教育・訓練 【          】
発生要因-患者・家族への説明 【          】
発生要因-その他 【           】
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【間違いが実施されたが、患者に影響がなかった事例】
備考【                   】

 ■ ヒヤリ・ハットの具体的内容
普段は家人が食事介助をおこなっていたが、家人不在のため、看護師が食事介助をおこなったところ、冷蔵庫の中の水と化粧水を間違えて飲ましてしまった。化粧水は中毒センターに確認したところ無害であった。

 ■ ヒヤリ・ハットの発生した要因
無色透明であった、物理的な問題点

 ■ 実施したもしくは考えられる改善策
化粧水とわかるようにペットボトルにテープを貼り、化粧水と明記する。



専門家からのコメント


 ■ 記入方法に関するコメント
 この「誤飲」事例は、食事介助という本来は看護チームが行う療養上の世話の一部を患者の家族に委譲し、協働して食事介助を行うという現実の体制の中で、“差し入れ”の不適切な管理と、患者の食事やケアに関する情報が適切に共有されなかった結果生じたものと推測されます。しかし、エラー発生の要因はより複雑多岐にわたると思われますので、もう少し多面的に背景要因を探る必要があるでしょう。
 以下のような情報が記入されていると、状況に応じた、より具体的で個別性のある対策を導くことができるのではないでしょうか。
家族がペットボトルに化粧水を入れておいた経緯
患者の状態に関する情報(認知能力、ADL、全身状態、嚥下の状態、食事の制限等)
看護師の勤務体制や業務の状況
看護師の身体的・精神的状態、疲労度
食事介助に関する業務基準、家族に介助を委譲する基準
この患者の食事介助を家族が行っていた理由
看護チームと家族との間の食事介助に関する申し合わせや、情報交換の手段・方法
いわゆる“差し入れ”の確認や管理の方法

 ■ 改善策に関するコメント
 この事例は、「誤飲」という結果として現れましたが、患者への差し入れ食品の不適切な管理と、患者のケアに関する情報が適切に共有されなかったことが、エラー発生の主な要因であると位置づけるならば、同じ状況の下で、「食中毒」の発生や「不適切な食品の摂取による病状の悪化」、患者の状態によっては「誤嚥」「窒息」など、様々な食事関連事故が発生する危険性も否定できません。
一方、入院生活を各人のライフスタイルに沿った豊かなものとする上で、私物の持参や差し入れは必要欠くべからざるものです。そのため、療養上の世話に業務上の責任を負う看護師は、患者のプライバシーの保護と私物の安全管理を両立させる必要に迫られます。患者のプライバシーやライフスタイルを尊重しつつ、差し入れなどの私物の安全管理を徹底するには、患者と患者を取り巻く人々との間の情報の共有が不可欠です。特に、臨床の現場は、高齢者の入院が増加する一方ですから、認知症などの認知能力が十分でなかったり、ADLが低下したりした「自立度の低い高齢患者」を、看護チームと家族が上手く連携してケアすることはこの上なく重要なことです。
1. 持ち込み食品の安全管理基準を作り、患者・家族と共有する
 家族が差し入れた物であっても、それが原因で医療事故が発生すれば病院の管理責任は免れません。安全のために、次のような具体的方策を実行するとよいでしょう。
 (1) 生物や調理物は冷蔵庫に保管する。
 (2) 保管日時を記入し、原則として24時間を経過したら廃棄する。
 (3) タッパや空容器を飲食物の保管に使用する場合、内容を明記する。
 プライバシーを侵害するのではなく、安全管理の姿勢を患者・家族に理解してもらえるよう十分な説明と同意のもとに行うことは言うまでもありません。入院時のオリエンテーションなどを活用して、理解と協力を得ていきましょう。

2. 患者のケアに関する情報を看護チームと患者・家族で共有できるシステムを作り実行する
 高齢患者の入院生活を安全で質の高いものにするには、家族と看護チームの協働は不可欠ですが、連携の方法を具現化し、関係者に情報が伝わるような仕組みを作る必要があります。
 例えば、
家族の中で、差し入れや食事介助を担当する者、洗濯物を担当する者など、介護メンバーとその役割を明らかにしておく。
重要な情報伝達の要となる家族内でのキーパーソンを決めておく。
看護師、家族を問わず、患者の世話をした者が患者の反応を書いておいたり、伝言をメモしておいたりできる「交換ノート」を活用する。
このシステムの中で、1.で示した持ち込み食品の安全管理を実行する。



 
事例13596 (病院食に害虫が混入していた事例))
発生部署(栄養部門) キーワード(異物混入、害虫駆除、HACCP)

 ■ 事例の概要(全般コード化情報より)
発生月【5月】 発生曜日【日曜日】曜日区分【休日】発生時間帯【12時〜13時台】
発生場所【病室】
患者の性別【女性】 患者の年齢【  歳】
患者の心身状態【障害なし】
発見者【患者本人】
当事者の職種【調理師・調子従事者】
当事者の職種経験年数【1年0ヶ月】
当事者の部署配属年数【1年0ヶ月】
発生場面 【経口摂取】
(薬剤・製剤の種類) 【           】
発生内容 【お膳にゴキブリの付着】
発生要因-確認 【確認が不十分】
発生要因-観察 【           】
発生要因-判断 【           】
発生要因-知識 【           】
発生要因-技術(手技) 【           】
発生要因-報告等 【           】
発生要因-身体的状況 【          】
発生要因-心理的状況 【慌てていた】
発生要因-システムの不備 【          】
発生要因-連携不適切 【          】
発生要因-勤務状態 【          】
発生要因-医療用具 【          】
発生要因-薬剤 【          】
発生要因-諸物品 【          】
発生要因-施設・設備 【           】
発生要因-教育・訓練 【          】
発生要因-患者・家族への説明 【          】
発生要因-その他 【           】
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【間違いが実施されたが、患者に影響がなかった事例】
備考【                   】

 ■ ヒヤリ・ハットの具体的内容
病棟の患者様のお膳に生きたゴキブリが付着しており、配膳後患者様本人と看護助手共に気づかれ連絡をもらう。食事一式作り直しお詫びに伺う。

 ■ ヒヤリ・ハットの発生した要因
季節的にゴキブリの発生が増える時期も重なった。

 ■ 実施したもしくは考えられる改善策
ゴキブリの駆除消毒、消毒後のゴキブリ混入の予防。



専門家からのコメント


 ■ 記入方法に関するコメント
 次のことについて詳細な記載があれば、原因や要因に基づく対策の立案につながると考えます。
1. ゴキブリはいつの食事(朝食・昼食・夕食)に入っていたのか。
2. 配膳の方法は中央配膳か、病棟配膳か。
3. 配膳車はどのようなものを使用しているのか。
4. 配膳車を使用している場合、清掃、消毒はどのように行っているのか。
5. 配膳車に食事を入れた後、どの場所に、どの位の時間放置しておくのか。
6. 害虫駆除の時期、頻度、場所、方法などの情報
7. 厨房内へのダンボールなどの持ち込みの有無

 ■ 改善策に関するコメント
異物や害虫の混入は危険であると同時に、患者にとっては大変不快で、その病院の医療サービスへの信頼を著しく低下させる一因となります。害虫の発生を0に抑えるのは非常に困難ですが、院内での連携と総合的な対応が鍵となります。
 ゴキブリなどの害虫は食中毒の原因菌と同じく、(1)持ち込まない(2)増やさない(3)殺すの3原則で対応することが重要です。その際、食品が持ち込まれ保管される厨房などの調理施設の他、配膳車、配膳ルート、病棟のパントリー、食堂、患者の床頭台、洗面所、浴室、トイレ等々、害虫の餌となるものが存在する場所全てを視野に入れた対策が必要となります。食事のことは栄養部門に任せるといった対応では、害虫駆除は成功しません。以下に、3原則の具体的方法を提示しておきます。
 (1) 持ち込まない。
 ゴキブリはダンボールなどに付着して厨房内へ入るケースが多いので、厨房内にダンボールを持ち込まない。
 外から飛んでくる場合もあるので、出入口・窓を開放したままにしない。
 (2) 増やさない。
習性を考慮し清掃を十分に行う。
ゴキブリは暗く狭いところ(厨房の隅・調理機器の隙間、配膳車などの隙間など)、暖かいところ(炊飯器の裏側、冷蔵庫のゴムパッキンなど)を好む。
 不潔にしているとゴキブリの餌が多くなり発生場所となる。
 殺す。

定期的に害虫駆除を行う。集団給食施設等における食中毒を予防するために、HACCP(Hazard Anaiysis Critical Control Point:危害分析重要管理点)の概念に基づき「大量調理施設管理マニュアル」(平成9年3月24日衛食第85号)に添って業務を行うこととされている。これによると『施設におけるねずみ、こん虫等の発生状況を1月に1回以上巡回点検するとともに、ねずみ、こん虫の駆除を半年に1回以上(発生を確認した時にはその都度)実施し、その実施記録を1年間保管すること。』と
されている。
害虫駆除の方法も大分改善され、以前は噴霧での駆除であったために食器や、調理器具を片付けるなどの作業負担があったが、現在は薬剤を塗りつけておく方法があり、しかも長期的に薬効がある。駆除する場所、害虫の発生状況などによっても駆除薬剤、方法などに違いがあるので専門業者に相談してみるのも良い。
ゴキブリ駆除後は弱ったゴキブリが出てくるケースも多いので要注意である。
害虫駆除は厨房のみ行っても空調や、排水溝などから通って侵入してくる場合もあるので、施設全体で定期的に実施する。
以上のような防止策の実施が重要であることは言うまでもありませんが、害虫や異物の混入を0にすることは非常に困難であることも事実です。配膳時には誤配などのチェックの他に、異物や害虫混入の可能性も含めて、衛生管理の面からのチェックを意識的に行うことも重要です。
これにより、危険な食事が患者に提供されるのを水際で防御することができます。これは、配膳を担当するスタッフの業務として位置づけておきたいものです。
<参考>
殺虫剤についての情報は「環境機器株式会社」のホームページの“異物混入対策”の項に詳しく掲載されていますので参考になると思います。



 
事例13632 (X線により経管栄養チューブ留置部位を確認しないまま栄養剤の注入を開始した事例)
発生部署(入院部門一般) キーワード(食事と栄養)

 ■ 事例の概要(全般コード化情報より)
発生月【 月】 発生曜日【水曜日】曜日区分【平日】発生時間帯【12時〜13時台】
発生場所【病室】
患者の性別【  】 患者の年齢【  歳】
患者の心身状態【痴呆・健忘】
発見者【     】
当事者の職種【看護師】
当事者の職種経験年数【16年 ヶ月】
当事者の部署配属年数【7年 ヶ月】
発生場面 【           】
(薬剤・製剤の種類) 【           】
発生内容 【           】
発生要因-確認 【           】
発生要因-観察 【           】
発生要因-判断 【           】
発生要因-知識 【           】
発生要因-技術(手技) 【           】
発生要因-報告等 【           】
発生要因-身体的状況 【          】
発生要因-心理的状況 【          】
発生要因-システムの不備 【          】
発生要因-連携不適切 【          】
発生要因-勤務状態 【          】
発生要因-医療用具 【          】
発生要因-薬剤 【          】
発生要因-諸物品 【          】
発生要因-施設・設備 【           】
発生要因-教育・訓練 【          】
発生要因-患者・家族への説明 【          】
発生要因-その他 【           】
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【間違いが実施されたが、患者に影響がなかった事例】
備考【                   】

 ■ ヒヤリ・ハットの具体的内容
経管栄養中の患者さんで、何度も胃管を自己抜去される方。今回、胃管再挿入後、レントゲンの指示が出ていたにもかかわらず、レントゲンを確認せずに注入を開始してしまった。胃管の位置は、空気注入で胃部の空気音は確認していた。レントゲンでは胃管の位置は、問題なかった。

 ■ ヒヤリ・ハットの発生した要因
何度も繰り返される再挿入で、確認がおろそかになってしまっている。漠然と業務を行っている。

 ■ 実施したもしくは考えられる改善策
指示の再確認と、業務の手順の再確認。ひとつひとつの業務を確実に行うことの確認をした。



専門家からのコメント


 ■ 記入方法に関するコメント
 患者による経管栄養チューブの自己抜去が頻回で、再挿入が何度も繰り返され、「今までも大丈夫だったから、今回も大丈夫だろう」という心理的な思い込みにより、レントゲンの指示が出ていたにもかかわらず再挿入後の確認をせずに注入を開始してしまった事例と推測できます。
 事例を分析するには、「なぜ、再挿入が必要になったか?」「なぜ、レントゲンを確認しなかったか?」「なぜ、この出来事に気づいたか?」などの質問を深めていくための、次のような情報が必要且つ有用と考えます。
 * 患者の年齢、入院期間
 * 経管栄養を行っていた期間、自己抜去の回数
 * 自己抜去後の看護計画の内容と実施状況
 * 「痴呆・健忘」の程度、身体・心理状態
 * 治療経過と治療方針
 * チューブの太さ、固定の状況
 * 栄養注入の量と回数
 * 経管栄養に対する患者の理解度
 * 家族などによる社会的サポートの有無
 * チューブを挿入した人(報告者自身かどうか)や時間
 * 看護提供方式、その日の病棟の全看護師数
 * 当該看護師の経験年数、看護師の疲労度、その日の受け持ち患者数、重症度
 * 患者ベッドの場所(看護師詰め所からの距離)
 * 病院で定めた経管栄養チューブ挿入および注入に関する手順の内容
 * 看護師への教育とその評価
 * 医師の指示と指示受けのプロセス、コミュニケーション(医師-看護師、看護師間、看護師-放射線技師間)
 * 抑制に関連した情報(前述)

 ■ 改善策に関するコメント
 本事例は、空気注入を行ない、胃部の空気音を確認していたこと、幸運にもチューブが胃の中に挿入されていたことから、結果的には、患者への傷害は認めず、ヒヤリ・ハット事例となったケースであったといえます。しかし、聴診法(胃内への空気注入音の確認)のみで、最も不確実な方法を実施していること、チューブが胃の中に入っていなければ、患者が死亡する可能性もあり重大な結果を招きかねなかったことから、詳細な要因分析が必要なヒヤリ・ハット事例と位置づけられます。個人の「確認の強化」だけはなく、システムとしての改善策を実施する必要があります。
1) 経管栄養チューブの必要性のアセスメント
 経管栄養チューブが不要になれば、自己抜去や再挿入も必要になりませんから、本事例は発生しません。医師による医学的な視点だけでなく、看護師、患者、家族などによる身体・心理的な視点から経管栄養チューブの必要性をアセスメントすることが重要です。また、6週間以上の長期留置であれば、PEGなどの経腸栄養法も検討する必要があると考えます。
2) 経管栄養チューブ挿入時の確認方法の明確化
 高齢者では、気管にチューブが入っても咳嗽反射が見られないことがありますから、特に挿入時(初回)の確認が重要になります。初回はX線で確認することを原則とすること、注入前は聴診法(胃内への空気注入音の確認)と吸引法(胃内容物を吸引し、リトマス紙でphの確認)を併用することを施設の手順として定め、チェックリストを作成しましょう。
初回は、挿入した人(サイン)、時間、チューブのサイズや長さ、マーキングの位置、挿入時の患者の反応、X線による確認の時間、結果を評価した人(サイン)などの項目が必要です。チェックリストを作成した場合には、目的、用語の定義、使用方法などを明確にし、スタッフ教育とその評価を行なわなければならないことはいうまでもありません。
3) ヒューマンエラーの教育
 職種経験16年ですから、看護師としてエキスパートレベルにいるかもしれません。しかし、産業界では自分の経験のみに頼りすぎることがヒューマンエラーの要因になることや、経験年数に関係なくヒューマンエラーは生じることなどが明らかになっています。ヒューマンエラーの概念やその予防法に関する教育は改善策を検討するうえで基本になるでしょう。

参考資料:日本看護協会,医療・看護安全管理情報No.8 経鼻栄養チューブの誤挿入・誤注入事故を防ぐ, http://www.nurse.or.jp/anzen/anzenjoho/index.html (2005年1月アクセス)



  ●機器・機器操作
事例3692 (定期点検未施行による突然の圧縮空気の圧不足)
発生部署(入院部門一般) キーワード(人工呼吸器)

 ■ 事例の概要(全般コード化情報より)
発生月【5月】 発生曜日【日曜日】曜日区分【休日】発生時間帯【4時〜5時台】
発生場所【病室】
患者の性別【  】 患者の年齢【  歳】
患者の心身状態【障害なし】
発見者【同職腫者】
当事者の職種【医師・看護師・准看護師・設備保守委託業者】
当事者の職種経験年数【 年 ヶ月】
当事者の部署配属年数【 年 ヶ月】
発生場面 【施設・設備】
(薬剤・製剤の種類) 【           】
発生内容 【施設・設備の管理ミス】
発生要因-確認 【           】
発生要因-観察 【           】
発生要因-判断 【           】
発生要因-知識 【知識が不足していた】
発生要因-技術(手技) 【           】
発生要因-報告等 【           】
発生要因-身体的状況 【          】
発生要因-心理的状況 【          】
発生要因-システムの不備 【          】
発生要因-連携不適切 【          】
発生要因-勤務状態 【          】
発生要因-医療用具 【          】
発生要因-薬剤 【          】
発生要因-諸物品 【          】
発生要因-施設・設備 【           】
発生要因-教育・訓練 【          】
発生要因-患者・家族への説明 【          】
発生要因-その他 【           】
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【間違いが実施されたが、患者に影響がなかった事例】
備考【                   】

 ■ ヒヤリ・ハットの具体的内容
ICUの人工呼吸器(2台)が同時にアラームが鳴り出し、作動不能になった。手動での人工呼吸に切り替え、宿直医師と病棟婦長、及び機器の緊急連絡先に連絡。圧縮空気の圧不足が判明。設備保守委託業者に連絡し原因判明するが、月曜日以降の対応になるため、患者を別の部屋に移動する。

 ■ ヒヤリ・ハットの発生した要因
配管内のメンテナンスは一年間1回も施行されていなかった為、配管内の温度調節器が作動しておらず氷結したため、配管内を通過する酸素の量が減少した。

 ■ 実施したもしくは考えられる改善策
配管付属機器の一斉点検。保守契約の検討



専門家からのコメント


 ■ 記入方法に関するコメント
人工呼吸器が作動不能になってから、手動に切り替え、原因が判明し別の部屋に移動するまでの時間経過はどれほどだったのでしょうか。また、その際の対応について時間経過に沿って記載されていると、より具体的な改善策がたてやすくなります。

 ■ 改善策に関するコメント
定期的なメンテナンスの実施
 今回のヒヤリ・ハットの発生した要因は、圧縮空気の圧不足でしたが、医療機器の使用に際しては原因不明の故障で突然使用できなくなる事例も少なくありません。その他、人工呼吸器に関しては、電気容量を超えたためにブレーカーが遮断され人工呼吸器が使用できなくなるといった事例も生じています。このような緊急事態にどのように役割分担し対応するといった訓練等もしておく必要があります。
また、改善策に「保守契約の検討」とあるように、医療機器の保守契約やリース等を行なうことで機器の保守点検や機器の更新等が定期的に実施され安全な機器使用の環境を整備できます。臨床工学士、医師、看護師、事務職員をメンバーとする、「保守契約検討委員会」を構成する方法もあります。



 
事例6541 (点検を怠った人工呼吸器の停止によりチアノーゼとなった事例)
発生部署(入院部門一般) キーワード(人工呼吸器、モニタ、警報、定期点検)

 ■ 事例の概要(全般コード化情報より)
発生月【4月】 発生曜日【日曜日】曜日区分【平日】発生時間帯【12時〜13時台】
発生場所【病室】
患者の性別【男性】 患者の年齢【67歳】
患者の心身状態【障害なし】
発見者【家族・付き添い】
当事者の職種【看護師】
当事者の職種経験年数【2年0ヶ月】
当事者の部署配属年数【2年0ヶ月】
発生場面 【人工呼吸器】
(薬剤・製剤の種類) 【           】
発生内容 【医療用具(機器)の故障】
発生要因-確認 【呼吸器の点検はしていた】
発生要因-観察 【ナースコールが鳴りすぐに訪室した】
発生要因-判断 【アンビューで対応した すぐ医師に報告した】
発生要因-知識 【機器については知識を得ていた】
発生要因-技術(手技) 【           】
発生要因-報告等 【主治医にベルコールし当直師長に連絡、翌日病棟師長に報告】
発生要因-身体的状況 【休憩時間でスタッフが3人だった】
発生要因-心理的状況 【すぐに駆けつける余裕があった】
発生要因-システムの不備 【          】
発生要因-連携不適切 【          】
発生要因-勤務状態 【          】
発生要因-医療用具 【          】
発生要因-薬剤 【          】
発生要因-諸物品 【          】
発生要因-施設・設備 【           】
発生要因-教育・訓練 【          】
発生要因-患者・家族への説明 【          】
発生要因-その他 【           】
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【間違いが実施されたが、患者に影響がなかった事例】
備考【                   】

 ■ ヒヤリ・ハットの具体的内容
2004年4/18日13:00呼吸器装着中の患者の家族からナースコールがあり訪室すると、呼吸器の気道内圧の上昇・下限のランプと作動不良ランプが点滅しアラームが鳴っていた。気道内圧のメーターは0になっており呼吸器が作動しておらず患者がチアノーゼをおこしていた。

 ■ ヒヤリ・ハットの発生した要因
メーカーから次回の機械の点検日は2002年10/5の予定になっていたが点検をしていなかったためか?

 ■ 実施したもしくは考えられる改善策
すぐ側に置いたあったアンビューバックにつなぎ換え対応し、Spo2が99%まで上昇し患者も落ち着いた。ナースコールを押して他のスタッフを呼び、自発呼吸のある患者であった為ジャクソンリースに変更した。主治医にベルコールしすぐに電話連絡あり、状況説明を行い指示にて他の呼吸器を同設定で用意してつなぎかえた。呼吸器変更後もSpo297%あり患者の状態は落ち着いていた。当直師長に連絡し、翌日病棟師長に報告した。呼吸器のメーカーから提示されている点検日は守るべきであった。



専門家からのコメント


 ■ 記入方法に関するコメント
人工呼吸中の警報と患者モニタについて
家人によるコールで訪室していますが、モニタ機器の警報を確認する医療者の配置は、適切だったのでしょうか。警報を聞き取ることが可能な音量設定だったのでしょうか。パルスオキシメータによる連続モニタは行っていたのでしょうか。また、心電図テレメータによるモニタは行っていたのでしょうか?それらの記載がありませんでした。
生体情報モニタは、人工呼吸器の警報と共に二重の安全対策となります。
人工呼吸器の条件設定と患者管理について
訪室時の人工呼吸器の状態は、「作動不良ランプが点滅し警報が鳴っていた。」とありますが、人工呼吸器設定条件の記載がなく、気道内圧0だけでは装置の故障か、回路はずれによるリーク警報か判別することができません。実施された用手換気による人工呼吸、応援者のコール、主治医への報告、別装置への変更は適切な対応であったと思いますが、個室管理の人工呼吸器使用患者に対する緊急時の手順等が記載されていると改善策を立てやすいと思います。
保守点検について
今後人工呼吸器の定期点検を行うべきとしていますが明確な方針が示されていません。

 ■ 改善策に関するコメント
改善策に「人工呼吸器メーカーの提示する点検日を守るべきであった」とするだけでは足りないと思います。人工呼吸器の警報設定、生体情報モニタ、装置の保守点検について以下を参考に改善策を立ててください。
警報設定の意義
警報設定は、人工呼吸器を使用する患者ごとに行い設定値を外れたときに確実に作動し、医療者の耳に届く音量とすることが重要です。この療法に関わる医療者は、以下の各警報の意義を理解し認識を共有し警報発生時の対応方法を決めておく必要があります。
最低分時換気量、最低気道内圧、無呼吸、低電圧の警報は、救命的警報である。
最高分時換気量、最高気道内圧、頻呼吸の警報は、合併症予防の警報である。
呼吸回路への一時的操作によって警報が作動しても警報設定を解除しない。
人工呼吸療法中に呼吸器作動の一時的な中止に伴って警報解除を行った場合は、その場で必ず復旧させる。
生体情報モニタの有用性と緊急時安全対策
人工呼吸中の患者モニタとして、動脈血酸素飽和度や呼気中炭酸ガス濃度をモニタするパルスオキシメータやカプノメータの併用は、人工呼吸器のトラブルなどによる換気不良の早期発見に役立ちます。また、医療者の目の届かない病室などで人工呼吸器を使用する場合は、心電図テレメータによる心電図波形、呼吸波形、心拍数のモニタを必須とすべきです。また、
緊急時に備えて用手換気バッグを装置のそばに常備しておくことも重要です。
保守点検に関すること
この事例では、院内の保守管理体制が不明です。生命維持管理装置である人工呼吸器のメーカー指定の点検期日を1年以上見過ごしていたことは大きな問題です。人工呼吸器を含めた医療機器の保守点検は、医療機関における業務であることが医療法に規定され、製造(輸入販売)業者も必要な安全対策を講じることが薬事法に規定されています。
現在、医療機関における医療機器の保守管理を、その専門職である臨床工学技士が主体的に行い得るように医療機器管理室の整備事業が進められています。人工呼吸器を含めた各種の医療機器を適切に保守管理し安全への取組みをさらに進めることが患者の安全確保につながります。それともに生命に関する影響が大きい機器の一覧リストを作成し、機器が適切に保守されているかどうか、経営責任者が一目で分かるようにします
【参考資料】
「生命維持装置である人工呼吸器に関する医療事故防止対策について」
(平成13年3月27日、医薬発第248号)
「医療スタッフのための人工呼吸療法における安全対策マニュアル」Ver.1.05
平成14年11月、社団法人日本臨床工学技士会、http://www.iijnet.or.jp/JACET/
「人工呼吸器安全使用のための指針」
平成16年12月8日、日本呼吸療法医学会人工呼吸安全管理対策委員会編http://square.umin.ac.jp/jrcm/page018.html



 
事例9510 (シリンジポンプ交換時の三方活栓のロック)
発生部署(入院部門一般) キーワード(機器一般)

 ■ 事例の概要(全般コード化情報より)
発生月【 月】 発生曜日【金曜日】曜日区分【平日】発生時間帯【14時〜15時台】
発生場所【病室】
患者の性別【  】 患者の年齢【  歳】
患者の心身状態【手術後】
発見者【     】
当事者の職種【看護師】
当事者の職種経験年数【0年2ヶ月】
当事者の部署配属年数【0年2ヶ月】
発生場面 【           】
(薬剤・製剤の種類) 【           】
発生内容 【           】
発生要因-確認 【           】
発生要因-観察 【           】
発生要因-判断 【           】
発生要因-知識 【           】
発生要因-技術(手技) 【           】
発生要因-報告等 【           】
発生要因-身体的状況 【          】
発生要因-心理的状況 【          】
発生要因-システムの不備 【          】
発生要因-連携不適切 【          】
発生要因-勤務状態 【          】
発生要因-医療用具 【          】
発生要因-薬剤 【          】
発生要因-諸物品 【          】
発生要因-施設・設備 【           】
発生要因-教育・訓練 【          】
発生要因-患者・家族への説明 【          】
発生要因-その他 【           】
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【間違いが実施されたが、患者に影響がなかった事例】
備考【                   】

 ■ ヒヤリ・ハットの具体的内容
全身麻酔で手術を受け、帰室される。手術室からのシリンジポンプを使用していたので、シリンジポンプを交換した。その際に、三方括栓をロックし、セッティングした。V.Sチェックに訪室した際、閉塞ランプが点灯していた為に、シリンジルート確認をしたが、原因となるものがないと判断し、開始ボタンを押した。OPE後チェック時にも再び閉塞ランプが点灯していたが、。V.Sチェック時同様に判断し、開始ボタンを押したが作動しなかった為、先輩に確認依頼し、三方括栓がロックされたままであることを指摘され、事故発覚となる。

 ■ ヒヤリ・ハットの発生した要因
思い込みによるルート確認の怠りがあった。他の時間処置が必要な患者さまのことを考えていた為に、自分にゆとりがなかった。

 ■ 実施したもしくは考えられる改善策
ルート確認の徹底。本体から刺入部までの一連の流れを追い、しっかり薬剤が入っているかの確認。刺入部の状態の観察。一つ一つの事に集中して業務を行う。



専門家からのコメント


 ■ 記入方法に関するコメント
当事者の経験年数は、2ヶ月とありますが、教育内容や業務配分、先輩看護師等の支援体制についての記載があると、より改善策につながる分析が可能になります。

 ■ 改善策に関するコメント
新人看護師の教育支援体制の強化と有効なチェック方法の検討
 本件は、2度の閉塞アラームにも関わらず、シリンジポンプが作動不能になるまで、三方活栓のロックされていることに気付かなかった事例です。当事者の経験年数は、2ヶ月とあり、「他の時間処置が必要な患者さまのことを考えていた為に、自分にゆとりがなかった。」とあります。帰室直後に先輩等のダブルチェック体制がとれなかったことも、時間が経過した一要因となるでしょう。また、業務配分や、この当事者の看護師の手術やシリンジポンプを扱った経験数はどのくらいだったでしょう。シリンジポンプの機器については、使用手順を説明するだけでなく、触って実際に動かしてみる等の演習を含めた効果的な研修が必要です。また、輸液ポンプ・シリンジポンプにおいては、新人が起こしやすいヒヤリ・ハット事例を中心に、(1)薬液注入開始時、(2)ポンプ交換時、(3)薬液注入一時停止後の再開時、(4)シリンジ交換時等の段階と各段階でどこをどのように(例.ルートをたどる等)確認するのか教育訓練し、医療機器使用時はチェックリスト等で確認していく必要があります。
 特に、手術帰室時は指示の変更や処置の変更、時間観察等時間切迫の状況が生じやすく、過誤率は高くなります。したがって重要な薬剤のルートやシリンジの交換については、一人がチェックするのではなく、立場を変えた看護師等の人によるダブルチェック体制をとるよう考えることも重要です。
三方活栓の使用の再検討
 三方活栓の使用は感染管理の点から、使用を控えクローズドシステムのコネクタの導入なども検討されています。針や三方活栓などの接続器を試用するよりも細菌感染の機会の減少だけでなく、針刺し事故の減少などにも有効とされています。
医療機器の中央一括管理による業務の効率化
 「手術室からのシリンジポンプを使用していたので、シリンジポンプを交換した」という記述から、恐らくポンプ等の医療機器の管理が各部署単位であったことが予測されます。そのため、手術より帰室直後のポンプの交換という作業が必要となったのでしょう。もし、これが中央での一括管理となっていれば、このような場合のポンプ交換の作業が不必要となり作業の無駄もなくなります。普段当たり前の業務としてやっていることを、再度、安全管理の視点から見直し、システムを改善することで業務の無駄を無くすことがないか考えることも重要です。



 
事例13590 (ヘパリン注入ポンプの操作ミス事例)
発生部署(透析部門) キーワード(機器一般)

 ■ 事例の概要(全般コード化情報より)
発生月【 月】 発生曜日【金曜日】曜日区分【平日】発生時間帯【 時〜 時台】
発生場所【透析室】
患者の性別【  】 患者の年齢【  歳】
患者の心身状態【床上安静中,障害なし】
発見者【     】
当事者の職種【看護師】
当事者の職種経験年数【 年 ヶ月】
当事者の部署配属年数【 年 ヶ月】
発生場面 【           】
(薬剤・製剤の種類) 【           】
発生内容 【           】
発生要因-確認 【           】
発生要因-観察 【           】
発生要因-判断 【           】
発生要因-知識 【           】
発生要因-技術(手技) 【           】
発生要因-報告等 【           】
発生要因-身体的状況 【          】
発生要因-心理的状況 【          】
発生要因-システムの不備 【          】
発生要因-連携不適切 【          】
発生要因-勤務状態 【          】
発生要因-医療用具 【          】
発生要因-薬剤 【          】
発生要因-諸物品 【          】
発生要因-施設・設備 【           】
発生要因-教育・訓練 【          】
発生要因-患者・家族への説明 【          】
発生要因-その他 【           】
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【間違いが実施されたが、患者に影響がなかった事例】
備考【                   】

 ■ ヒヤリ・ハットの具体的内容
スイッチを入れているにもかかわらず、ヘパリン注入ポンプが作動しておらず、未注入にて経過し1時間毎のチェックでま見落としてしまい、血液回路内が凝血してしまい返血できなかった。

 ■ ヒヤリ・ハットの発生した要因
透析機器の修理体制時間チェックのマンネリ化

 ■ 実施したもしくは考えられる改善策
透析器械の修理時間毎のチェックは可能な限り、別の看護師が行う注入している際はヘパリンポンプが点滅しているので確認する思い込みをなくす



専門家からのコメント


 ■ 記入方法に関するコメント
具体的内容について
「スイッチを入れている」と書かれていますが具体的な部分を記入したほうが良いでしょう、抽象的表現では透析装置本体なのか、ヘパリン注入ポンプなのか、それとも両方なのかわかりません、また、「未注入にて経過」と記入されていますが、最初の点検はどうだったのか、いつ固まったのかを時間経過を追って記入してあると分析しやすくなります。

実施したもしくは考えられる改善策について
改善策には「別の看護師が行う」「思い込みをなくす」などの代替的方法、心理的方法を記入するのも良いでしょうが、手順、方法等の具体的な形で示すと良いと思われます。

記入に関して
記入に関して具体的にわかるように記入しましょう。
事故状況が発生した後のことでも、「ヘパリンポンプが点滅しているので確認する思い込みをなくす」という記載の意味が、よく分かりません。

 ■ 改善策に関するコメント
定期点検の必要性について
透析装置などの生命維持装置は少なくとも1回/1年以上は定期点検を行わなければなりません。今回の事例で「スイッチを入れているにもかかわらず、ヘパリン注入ポンプが作動しておらず」と報告されています。定期点検を実施していればこのようなエラーは防止できます。また、ポンプの場合、ほとんどの機器がギヤーの噛み合わせで作動します、部品の劣化、破損等の発見も定期点検で把握できますので実施しましょう。点検に関しては臨床工学技士、メーカーの方々に行ってもらい、何時、誰がどんな内容の点検をしたか記録を残すことが大事です。
機器の作動状況について
具体的な内容から見ると最初から作動していなかったのか、途中から作動しなくなったのか状況把握ができません、透析装置の多くは通常スイッチをいれると自動的に注入が開始される仕組みであるが、注入速度がゼロ設定になっていれば、このような事例が報じる可能性あります。また、本来の血液透析装置を用いていたのか、それとも、血液浄化装置を用いて、ヘパリンポンプだけを違う物で使用していたかはわかりませんが、開始時の点検についても指差し確認、声だし確認等を行い、安全確実に実施されていることを確認しましょう。とかく、ルーチン作業ではマンネリ化する傾向になります。 それを防ぐ意味でもダブルチェックを義務づけて2重、3重の密度の濃い点検体制を整えることがエラーをしても回復できる手段です。
委員会等の設立
臨床工学技士、医師、看護師、事務職員をメンバーとする、「機器保守契約検討委員会」を組織して生命に関する影響が大きい機器を選出し、機器保守が、院内スタッフまたは業者によってきちんと行われるような体制とする。

ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 健康・医療 > 医療 > 医療安全対策 > 第12回 記述情報の分析について > 記述情報分析事例

ページの先頭へ戻る