第13回 記述情報の分析について
1) |
収集期間
平成16年8月25日より平成16年11月23日まで
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2) |
施設数(カッコ内は前回の実績):(第13回収集締め切り時 現在)
参加登録施設 |
: |
1,259施設 |
( |
1,235) |
報告施設数 |
: |
445施設 |
( |
506) |
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3) |
収集件数
区分 |
件数(カッコ内は前回の実績) |
総収集件数 |
13,088件 |
(16,878) |
空白、重複件数 |
1,382件 |
( 2,460) |
有効件数 |
11,706件 |
(14,418) |
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記述情報の収集から報告までの流れは、以下の通りである。
(1) |
参加医療機関より、(財)日本医療機能評価機構へ報告される |
(2) |
評価機構より、無効事例や重複事例が削除された事例が厚生労働省医政局総務課医療安全推進室に送付される |
(3) |
(2)の事例を東京都立保健科学大学(事務局)に送付する |
(4) |
事務局は(2)のデータから、毎回のテーマに関連した記述情報を抽出し、その事例に関連した検討班のリーダーに分析対象候補事例として送付する |
(5) |
各検討班内で(4)のデータからさらに、分析対象事例を選定し、コメントを作成(分析)する |
(6) |
分析された事例は、班代表者会議によって検討され、加筆修正を経て確定する |
(7) |
検討された分析事例は、分析事例集および事例概要として整理され、事例検討作業部会に報告される |
医療事故を防止する観点から、報告する医療機関が広く公表することが重要と考える事例について、発生要因や改善方策などを記述情報として収集した。
収集されたヒヤリ・ハット事例より、分析の対象に該当するものを選定し、より分かりやすい表記に修文した上でタイトルやキーワードを付した。
また、専門家からのコメントとして、事例内容の記入のしかたや記入の際に留意すべき点などを「記入方法に関するコメント」として、また報告事例に対する有効な改善策の例や現場での取り組み事例、参考情報などを「改善策に関するコメント」として述べた。
さらに、コード化情報として報告されたデータを重要事例情報に付加し、事象そのものや事象の背景をより正確に把握した上で分析を行なった。
収集された事例から、分析し公開することが有用な事例を選定した。選定の考え方は以下の基準によった。
(1) |
ヒヤリ・ハット事例の具体的内容や発生した要因、改善策がすべて記載されており、事例の理解に必要な情報が含まれていること。 |
(2) |
次のいずれかに該当する事例であること。
・ |
致死的な事故につながる可能性がある事例(重大性) |
・ |
種々の要因が重なり生じている事例(複雑性) |
・ |
専門家からのコメントとして有効な改善策・参考になる情報が提示できる事例(教訓性) |
・ |
他施設でも活用できる有効な改善策が提示されている事例(汎用性) |
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(3) |
なお、個人が特定しうるような事例は除く。 |
これまでと同様に、各事例にタイトル及びキーワードを付した。キーワードは以下のリストから選択した。
■発生場所
大項目 |
分類項目 |
外来部門 |
(1) |
外来部門一般 |
入院部門 |
(2) |
入院部門一般 |
(3) |
救急部門 |
(4) |
集中治療室 |
(5) |
手術部門 |
(6) |
放射線部門 |
(7) |
臨床検査部門 |
(8) |
薬剤部門 |
(9) |
輸血部門 |
(10) |
栄養部門 |
(11) |
内視鏡部門 |
(12) |
透析部門 |
事務部門 |
(13) |
事務部門一般 |
その他 |
(14) |
その他 |
|
|
手技・処置など
大項目 |
分類項目 |
日常生活 の援助 |
(1) |
食事と栄養 |
(2) |
排泄 |
(3) |
清潔 |
(4) |
移送・移動・体位変換 |
(5) |
転倒・転落 |
(6) |
感染防止 |
(7) |
環境調整 |
医学的 処置・ 管理 |
(8) |
検査・採血 |
(9) |
処方 |
(10) |
調剤 |
(11) |
与薬(内服・外用) |
(12) |
与薬(注射・点滴) |
(13) |
麻薬 |
(14) |
輸血 |
(15) |
処置 |
(16) |
吸入・吸引 |
(17) |
機器一般 |
(18) |
人工呼吸器 |
(19) |
酸素吸入 |
(20) |
内視鏡 |
(21) |
チューブ・カテーテル類 |
(22) |
救急処置 |
(23) |
リハビリテーション |
情報と 組織 |
(24) |
情報・記録 |
(25) |
組織 |
その他 |
(26) |
その他 |
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○ |
3ヵ月間の報告期間で収集された件数は13,088件であった。平成16年4月より対象医療機関が全医療機関に広げられ、参加登録施設が約5倍に増加したことに伴い報告施設数も増加し、従来の約10倍近い事例が収集された。 |
○ |
今回の報告期間に収集された13,088件のうち、11,706件が有効な報告であった。 |
○ |
報告内容の記述についても情報量・内容ともに充実した事例が増加しており、この事はヒヤリ・ハット事例報告への組織的な定着・浸透が伺える。 |
○ |
発生件数割合が高い手技・処置は、以下のとおりである。従来と同様で、与薬(点滴・注射、輸血)、与薬(内服・外用、麻薬)、転倒・転落に関する事例は依然として発生割合が高い。また、検査に係わる事例も1割を超える件数が報告されていた。これらの中には、臨床検査部門、放射線部門等からの報告もあり、院内全体での報告体制が確立されてきていることが伺われる。
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与薬(点滴・注射、輸血)に関する事例 |
2,689 |
(23.0%) |
与薬(内服・外用、麻薬)に関する事例 |
1,958 |
(16.7%) |
転倒・転落、抑制に関する事例 |
2,192 |
(18.7%) |
チューブ・カテーテル類に関する事例 |
923 |
( 7.9%) |
検査に関する事例 |
1,298 |
(11.1%) |
食事、栄養に関する事例 |
682 |
( 5.8%) |
器機および器機操作に関する事例 |
384 |
( 3.3%) |
*(%)は、その他1,587件を含む全事例に対する割合
|
|
○ |
上記の分類の他、「その他」の中には、前回同様、無断離院・離棟、安静度が守られない事例、職員対応に関した事例などが含まれていた。他に、患者の記録や書類が違う患者のカルテの中に挟まっていた事例、看護師1名で同時に患者2名を手術室へ入室させた事例、薬品庫の鍵を紛失した事例などがあった。中でも、今までにおこった医療事故の要因が繰り返されているような事例があり、教訓が生かされるような方策の検討も必要であると考える。 |
*SPDとは、病院内において
、使用されるすべての物品を集中管理し、計画的に配送するため物品倉庫、中央材料室等と供給部門と
を組織的、構造的に集約化を図ることで、業務の効率化や専門職員、特に看護師から「雑務」を取り除き専門職としての仕事に専念させることを意図した物品管理システムである。(国立病院・療養所の独立行政法人における財政運営と効率化方策に関する懇談会(第7回)より、URL:
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/07/s0726-9c.html)