我が国における長期休暇の意義について
(休暇制度の意義について)・・・資料1
○ | 我が国でも、物の豊かさよりも心の豊かさを求める傾向が強まるなかで、個人を企業に依存した存在として捉えることや、家族との関係だけで個人の生活を捉えることはますます困難になりつつある。 |
○ | このような中で、自らの生き方を主体的に選択した個人が安心・納得した生涯を送るためには、企業との関係を保ちながらも、家庭や地域社会との連帯を深めながら社会参加することにより、仕事と生活のバランスを確保することが重要である。 |
○ | 休暇制度には、精神的肉体消耗を回復させるとともに、人たるに値する社会的文化的生活を営むための時間的余裕を保障する機能がある。
これは、個人が仕事と生活のバランスを確保する上で不可欠なものであるが、より長期の休暇であればその効力はより大きなものとなると考えられる。 |
(現行の長期休暇制度と新たな長期休暇制度との関係について)
・・・資料2
○ | 我が国の長期休暇は、取得目的別に設けられている各種の休暇制度が、運用において結果として長期にわたったものであり、その効果も個別の休暇制度の目的との関係で認知されるにとどまり、長期休暇自体の効果としては認知されてはいない。
しかしながら、これらの長期休暇を見ると、各々の制度の取得目的に沿った実践を通じ、仕事と生活の関係、あるいは仕事そのもののあり方の見直しが行われ、これが休暇を取得した個人のその後の生涯における仕事と生活のバランスの確保に寄与しているものと考えられる。このように、既存の各種の長期休暇に共通する効果に着目すると、新しい長期休暇制度のあり方が認識できるのではないか。
すなわち、長期休暇は、個人が自らの生き方・働き方を主体的に見直すために用いるのであれば、現行の休暇制度が想定する目的に限らず、個人がその生涯にわたり仕事と生活のバランスを確保することを通じて、個人、ひいては企業及び経済社会に大きな効用をもたらすことにつながるのではないか。 |
(長期休暇制度の個人にとっての意義)・・・資料3・資料4
○ | 変化の激しい経済社会の中で、個人にとっては、自らの職業生活を企業に委ねることのリスクが高まり、自らの職業生活を将来にわたって主体的に形成していくことが求められている。
また、現在、心の豊かさを重視する傾向が強まる中で、個人にとっては、自ら生き方、働き方を選択できることの重要性はこれまで以上に大きくなっていると考えられる。
長期休暇制度は、個人が自らの生き方・働き方を見直すという明確な目的のもとに取得した場合には、取得期間中の経験そのものが個人の充実感を高めるとともに、将来的にも自らの仕事と生活のバランスを確立し、ひいては安心・納得した職業生活の実現に寄与することとなる。 |
(長期休暇制度の企業にとっての意義)・・・資料3
○ | 企業にとっても、個人が、長期休暇を通じて生き方・働き方の見直しを行うことにより、業務に取り組む意欲が高まる結果、生産性の向上が期待できる。また、個人が長期休暇を通じて、業務では得られない知識、経験等を得て、企業に多様性をもたらし、当該企業に新たな付加価値を生み出す素地を作り出す効果も期待できる。
こうした効果は、一部企業では、留学の実施などを通じて既に認識されているものと考えられる。
企業にとっての長期休暇制度は、人材への投資と考えられ、一定のコストやリスクを伴うものと考えられるが、以上の効果が一般的なものとして検証・認知され、適切な枠組みのもとに実施できる環境が整えば、将来的に企業が人材投資の一環として定着することもありうるのではないか。
また、投資という観点からは、優秀な人材を獲得するという面でも、そのような企業の姿勢は有利に働くのではないか。 |
○ | また、近年は、社会の価値観が多様化する中で、企業は経済的利益の追求だけでなく、社会の多様な価値との調和が求められるようになってきている。このため、個人が自らの幸福を追求する自由の実現が社会的な要請として広く認識される中で、企業がこれを社会的責任として支援する際の手段の一つとして、長期休暇制度も位置づけられるのではないか。 |
(長期休暇制度の経済社会にとっての意義)
○ | 人材が付加価値を生む現代においては、個人が意欲を持ってその能力を最大限発揮することが我が国経済社会の活性化に資するものである。また、その効果は、経済活動のみならず、様々な社会貢献活動にも反映され、社会的価値を増大させることにつながるものと考えられる。 |
○ | さらに、ヨーロッパと同様に少子高齢化が進行している我が国において、長期化する職業生活の中で、個人がその能力を最大限に発揮することが今後ますます重要になると考えられる。その観点からは、生涯を通じて効果的に時間配分を行う仕組みを用意しておくことは今後必要になるのではないか。 |
○ | 上記のように個人がその能力を最大限発揮するためには、十分な環境整備が必要である。このためには今後様々な取組が必要になるが、長期休暇制度についても、その中の一つの方策として位置づけることができるのではないか。 |
(長期休暇制度の導入の必要性について)
○ | このように、長期休暇制度は、個人の生き方・働き方の再構築の機会を提供することを通じて、個人の職業生活を充実させ、企業・経済社会の活性化をもたらすものと考えられることから、我が国にも長期休暇制度を導入する必要があるものと考えられるのではないか。 |
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