議事内容
○齋藤部会長
時間になりましたので、ただいまから「第17回中小企業退職金共済部会」を始めます。今日から使用者側委員の吉川委員の後任として、讃井委員が選任されておりますのでよろしくお願いいたします。
○讃井委員
使用者側の讃井です。よろしくお願いいたします。
○齋藤部会長
今日の議題はお手元にお配りしてありますとおりですが、いちばん最初に議題1として、いわゆる「付加退職金の支給率を定める件の諮問について」始めたいと思います。それでは事務局からご説明をお願いいたします。
○蒲原勤労者生活課長
お手元の資料1と資料2をご参照ください。新しい先生もおられますので改めてご説明いたします。一般の中小企業退職金制度においては、基本退職金に加えて、前年度の財政状況に応じて付加退職金を支給する制度になっております。毎年その付加退職金を支給するための算定基礎となる率を定めることになっており、これが審議会付議事項となっております。資料1のように、毎年こういう形で率を決めたいということです。今回は、これからご説明いたしますが「支給率を0としたい」ということで諮問したいと思っております。
以下、資料2に基づき簡単にご説明いたします。1頁。説明の所にもありますが、平成14年度の一般の中小企業退職金共済事業の給付経理の見込みは、約210億円の欠損金が出る見込みです。これに従って平成15年度の、先ほど申しました付加退職金の計算の前提での支給率を0にするということです。参考までに、ここ数年見込みが赤字で、ずっと0が続いている経緯があります。
2頁。付加退職金を簡単にご説明いたします。下の箱の所に書いてありますが、一般中退の前年度の給付経理において利益が生じるという場合には、その利益の見込額を原資として、一般中退で計算しております基本退職金に加えて、一定の付加退職金を支給するという制度です。
2にありますとおり、その額については、付加退職金の額は個々人について計算するわけですが、その時点で仮に退職したと仮定した場合に、いくらもらえるか、という退職金額を個々人ごとに計算します。ここでは「仮定退職金額」となっておりますが、これに一定の率を掛けることになっております。上の図で説明しますと、毎年、付加退職金の可能性があるわけで、毎年、前年度の剰余に応じて付加退職金の計算の率を決めます。個々人にとっては、毎年剰余が出ていれば少しずつ積み上がっていきます。この図でいきますと、基本退職金というのが実線で、納付掛金、納付年数に応じて上がっていく形になっております。毎年、理論的には少しずつ付加退職金が付く可能があり、付加退職金と基本退職金を合わせると、この図では点線のラインで上昇していくという制度です。
今回の率についてですが、付加退職金の支給率を具体的にどう算定するかということです。左の所に書いてありますとおり、毎年、損益の見込額を出すわけですが、当期利益金が仮に出たという場合ですと、これを財源として、これを右の方の網がけの部分にもってくると、実は、これを分子と置き、先ほど申しました個々人ごとに計算した、仮に退職した場合にもらえるだろう退職金の額の加入者全体の分を分母にもってきて、一定の率を算出する計算方法をしております。
今回平成15年度の率については平成14年度の見込みをベースにするわけですが、ここの当期利益金が約210億円の赤となっており、付加退職金に回す原資がプラスではないということです。ちなみに、この斜線の間の所に「利益の見込額の1/2が付加退職金の原資」と書いてありますが、昨年、一般中退についてご議論をいただいたこの場で、この付加退職金の計算のときには、生じた利益金の半分は累積欠損の解消に充て、半分は付加退職金の財源に充てるという議論がなされて、そういう方針になっております。ただし、今回はもともと赤字で付加退職金の原資は0です。したがって、平成15年の支給率は0になるということです。
次の頁は、その前提となります平成14年度の見込額ということで、当期純利益金の、上から3番目の欄を見ますと、いちばん右の所に約210億円の赤字となっております。以下、関係条文を付けておりますが、以上のようなことで、平成15年度の率は0に定めたいということです。
○奥田勤労者生活部長
それでは、私の方から、大臣から当審議会に対します諮問文をお渡しいたします。
(部会長に答申を手交)
○齋藤部会長
それでは、ただいまのご説明について、何か、ご意見なり、ご質問なりありましたらどうぞ。特にご発言がないようですので、ご了承ということにさせていただきまして、諮問されておりますので、これについて答申をしたいと思います。「厚生労働省(案)は妥当と認める」ということで答申をさせていただきたいと思います。よろしゅうございますか。
では、そういうことにさせていただきます。お手元に案を配ってください。
(答申案配付)
○齋藤部会長
それでは、そういうことで答申をさせていただきたいと思います。
(生活部長に答申を手交)
○齋藤部会長
次に議題2に移ります。建設と林業の問題ですが、事務局から資料に基づいてご説明をお願いいたします。
○蒲原勤労者生活課長
建設業と林業についての財政状況について、ご議論いただくために資料3と資料4のご説明をいたします。まず資料3です。この資料の構成ですが、前回建設と清酒と林業の3つについて、現行ベースのままで推移したらどうなるか、という試算を出しました。そのときの議論を踏まえ、今回建設業と林業について、仮に予定運用利回りを一定の形で下げていったときに、その将来推計はどうなるかという資料をお出しして議論をいただきたいと思っております。
それぞれ3枚あります。この前に申しましたケースが3つあります。1つのケースは、14年度以降プラスで成長するパターン。2番目のケースは、14年度、15年度がマイナス成長、それからプラスに成長するというケース。3番目は、14年度、15年度、16年度、17年度はマイナス成長で、それからプラスというケースです。このように3つのパターンを作っており、建設業について3枚、林業について3枚の資料がお手元に用意されています。
それでは建設の1頁からご説明いたします。いちばん上の所は前回お出ししたベースで、運用利回りが現行のまま4.5%のときにどうなるかというものです。前回の、過年度分になりますが、3段目の当期利益金のところと、累積剰余を2つ横に見ていただきたいのです。前回ご説明しましたとおり、当期利益金はずっと赤が続いています。それに伴って累積剰余が減っていって、平成18、19年度については、累積剰余が底をついて赤になってしまう、という状況があったわけです。
そこで今回の試算においては、この予定運用利回りを4.5%から0.5%刻みで引き下げていった場合どうなるのかというものを試算しました。4.0%、3.5%、3.0%、2.5%、2.0%と、それぞれ15年10月にそういう形に下げた場合にどうなるかという試算です。2番目の表で4.0%の所の当期利益金の欄をご覧ください。ここを見ますと当期利益金、単年度で見ますと、4.0%の場合でも、ずっと単年度赤字が続いています。その下の3.5%の欄、これも同じく当期利益金のところをご覧ください。ここもずっと、若干1つありますが、基本的には赤が続いています。次の3.0%になりますと、ここは平成15年度からプラスになっております。2.5%、2.0%の所、3.0%で当期利益を出すということでしたので、2.5%、2.0%の所よりもプラスが高まっています。ケース1として、いちばん経済が良くなるという前提の場合には、3.0%ぐらいで毎年のフローでプラスが出てきています。
次はケース2です。14年度、15年度が、名目でそれぞれマイナス、それ以降はプラスという場合です。同じく4.0%、3.5%を見ますと、4.0%の場合は当期利益金はずっと赤になっています。3.5%の当期利益金は、やはりずっと赤になっています。3.0%の場合の当期利益金のところは、15年度は若干赤が出て、16年度、17年度、18年度と黒字になりますが、平成19年度の段階でまた赤が出るという状況です。他方2.5%までに下げた場合の当期利益金は、平成15年度以降はプラスとなっており、2.0%まで下げれば、そのプラスがより大きくなってくるという状況です。このケース2を見ますと、3.0%だと若干赤が出てくる部分があって、2.5%まで下げれば、完全に毎年毎年は黒字になるという状況です
ケース3の場合は、経済成長がより良くないということで厳しくなってくるわけですが、4.0%のところの当期利益金を見ますと、すべて赤です。3.5%の所では、やはり当期利益金は赤です。3.0%では15年度は赤で、16年度、17年度、18年度は黒になりますが、19年度は赤となって、先ほどのケース2と同じようなパターンですが、生じている赤の額は大きくなっておりますし、黒の部分も少なくなっているという状況です。そこで2.5%に引き下げた場合、ここの当期利益金は、15年度は若干、赤がありますが、16年度以降はプラスになってきています。最後に2.0%に変更した場合ですが、ここまでくれば当期利益金も完全に黒となっております。ケース2に比べると、やはりケース3の方が財政的に悪い状況が出てきています。以上が建設業についての0.5%刻みの資料です。
次は林業についてです。同じように縦長の長い紙で3枚付いています。林業は現在予定運用利回りが2.1%ですので、これを概ね0.5%刻みということで、1.5%の場合、1.0%の場合、0.5%の場合、現行ベースに比べて3つのケースを想定し試算をしております。2.1%の概ねの傾向は前回申したとおりですが、1.5%に変更した場合の当期利益金は、16年度以降は気持黒字で、大体トントンという状況になっています。1.0%まで変更すると平成14年度以降は黒字基調になっています。もちろん0.5%まで下げれば、その黒字は非常に増てくるという状況です。以上はケース1の場合です。
ケース2の場合は、1.5%の場合の当期利益金は△がずっと続いており、1.5%まで引き下げても毎年毎年赤字が続きます。それでは1.0%に下げると、当期利益金はプラスが続いています。フローだけを見ると、ここでは一応黒字になっているという状況です。この状況を少し詳しく説明しますと、平成13年度において、林業については累積欠損が23億円あるということです。実は責任準備金が、その2つ上に載っていますが、持つべき額が188億円、それで累積欠損が23億円ということです。
非常に大まかな数字を言いますと、今、林退は160億ぐらいの資産を持っています。1.0%の欄のところの平成19年度を見ますと、累積欠損が21億から22億出ております。このとき資産は大体140億ぐらいになっております。平成13年度、足下のところで160億円の資産を持っていて23億の累積欠損、これが平成19年度になると140億ぐらいの資産を持っていて21億〜22億の累積欠損という状況になっております。
私どもは、単に当期利益金がプラスということだけでいいのか、もう少し累積欠損の制度に対する重み、負担感というところを少し見る必要があるのではないか、この辺りを是非、本日ご議論いただければと思っております。
以下、0.5%に変更した場合、当期利益金は平成15年以降一応黒字になります。この場合は、累積欠損も23億から17億にかなり減るという状況になっています。
林業のケース3の場合は、1.5%に変更した場合の当期利益金は、毎年、赤字となっております。一方、1.0%まで下げますと、16年度、17年度、18年度は黒字になりますが、平成19年度は赤です。もちろんケース2で申しました、いわば累積欠損の制度に対する負担はケース2より悪くなっていますので、その辺りは重くなっていると考えられます。0.5%まで下げれば当期利益金は、毎年かなり黒字が出て、累積欠損も23億から18億で、かなり減るという状況になります。
以上、建設と林業について、それぞれケースごとに、かつ、利回りを0.5%刻みに下げた場合の資料をご説明いたしました。
続いて、今回の議論に関係する資料で前回、田勢委員の方から話が出ました関係で、資料4を併せてご説明いたします。資料4は「他の共済制度における予定運用利回りの状況」です。実は我々の制度と似ております制度で、小規模企業共済制度、これは事業主側の共済制度ですが、これについては経済産業省の方で議論がされており、現在2.5%になっておりますが、これを1.0%に引き下げるべきだということで方向が出されております。この制度というのは小規模事業者に対する共済制度ですが、我が中退法と似ていて、小規模企業共済法という法律で大きな枠組みが作られており、事務費等において国庫補助が行われております。資産総額は約7兆。これも累積欠損がありますが7兆に対して3,600億程度の欠損という状況になっております。
一方、特定退職金共済制度というのがあります。この制度は、事業主が商工会議所等の税務署の承認を得た団体と契約をして一定の共済制度を作るというものです。ただ、この給付設計については、それぞれの団体によって異なっており、予定運用利回りの方は1%から1.5%ぐらいと、それぞれ個々に違っている状況です。もちろん、小規模企業共済制度と違い、ここからいろいろな事務費がかかり、給付に回るものは若干差し引いたものになっていると思われます。
私ども事務局としては、本日、建設業と林業について、荒々の0.5%刻みのものではありますが、これをベースに制度の長期的な安定のために、どういう形で利回りを考えたらいいのか、その辺りを是非、委員の先生方にご議論をいただきたいと思っております。
○齋藤部会長
ただいまのご説明について、ご質問なり、何なりございましたらどうぞ。
○桜井委員
林業の話、先ほどの一般中退の話と、非常に累積赤字の額を見てゾッとします。建退の場合は、今、何とか累積剰余金を保持している。そういう中で直近の、昨年暮あたりに経済の見通しが政府の方で出ていますが、他の民間機関のものも含めて、どういう感じなのかを教えていただきたいのです。それと、昨年一般中退の利回りを変えていますが、当時見込みと実績との乖離はどのぐらいあるのかを教えてください。
○蒲原勤労者生活課長
現在、経済財政諮問会議の方で将来5年にわたっての数字を出しています。大体の名目値を言いますと、実は今年1月に、この5年分の将来見通しが改訂されています。改訂前の荒々の感じを申しますと、2003年度までに集中的な構造改革をやり、2004年度から2%の真ん中ぐらいの成長になる、というのが改訂前でした。例えば、16年度、17年度、18年度辺りの数字を見ますと、2%プラスアルファぐらいの成長はあったのですが、今回集中改革期間も1年延びますし、全体的な経済の回復も少し後ろに遅らすということになりました。
それで、改定後の所を見ますと、先ほど「16年度、17年度、18年度が2%プラス少し」と言いましたが、例えば平成16年度は0.5%です。これはすべて名目です。17年度から1.5%、18年度は2.2%になっております。改訂前の数字に比べますと、1%プラスアルファぐらい、名目値で低くなっております。
あと民間についてですが、長期を出しているところはそんなに数は多くなく、一昨年に出した長期見通しと、昨年末に出した長期見通しを比べると、一昨年に出た将来5年の伸び率よりも1%ぐらい低くなっています。口頭で言うのも何ですので次回にはきちっとした数字を出したいと思っておりますが、概ね見通しの改定で悪くなってきているという状況です。
○桜井委員
ケース3は17年度までは名目マイナスですか。
○蒲原勤労者生活課長
はい。14年度はマイナス2%、15年度はマイナス2%、16年度はマイナス2%、17年度はマイナス0.8%です。
○辻村委員
この試算を見ますと、制度を維持するためには、やはり引き下げもやむを得ないかなという気持ちでおります。特に建退の方は日額300円という証紙を貼っておりますが、20日で1年働いても、また10年というスパーンで見ても100万に届かない退職金制度です。これでは建設産業で働く労働者の福祉のために、どれだけの貢献をしているのか極めて疑問であります。
そういう点では、今回予定利回りが下がってくるということで、極めて不十分な制度に、また小さくなっていくわけですから、やはり掛金の引上げという問題も併行して論議をしていかないと、本当の意味で、この産業で働く労働者の福祉向上につながらないのではないか。私ども九州の組合、あるいは労働者の実態を見ましても、やはり建退の制度は極めて貧弱と言わざるを得ないと思っております。ご出席の委員の方々の退職金、あるいは、職場で働いている皆様方の退職金との実態とも鑑みていただければ、10年働いて100万の退職金にならないという制度は、やはり改善していくべきではないか。そういうことも並行して論議をしていただきたいと思っておりますので、意見として述べさせていただきます。
○都村委員
今の辻村委員の意見に私も同感する部分があります。今、失業率が非常に高止まりの状態の中で、この退職金共済制度の持つ意味は今まで以上に大事になっている、非常に重要になっていると思います。本当であれば、今はこの中小企業退職金共済制度の更なる充実が必要な時期だと思います。10年働いて100万にならないというのは非常に厳しいです。特に都道府県別の失業率がいつも月末に発表されますが、中小企業の非常に多い所が異常に失業率も高いです。ですから、この制度の持つ意味は、これは今までも大事だったわけですが、一層重要な時期だと思います。ただし、金利とか株価の低い状況が続いていて、実際の運用利回りが予定運用利回りを下回っているということで、非常に財政状況が厳しいわけです。
今、将来推計をご説明いただいたわけですが、制度の健全性を考えたら見直すことはやむを得ないと私も思います。ただし、いくつかの考慮すべき点があるのではないかと思います。加入者が減少してくれば財政を圧迫するわけですから、何とか加入促進策に力を入れるのが第1点です。
第2点は、被共済者にこの制度を徹底的に知らせる、周知させて、就労実績に見合った掛金納付が確保されるようにする。健康保険制度においても、医療の必要が生じた場合にその給付が受けられるかどうかということで、やはり手帳に証紙を貼っているわけです。貼っているのですが、これは健康保険ですから労使折半で保険料を出すわけです。事業者がたくさん出す部分もあるのもありますが。
証紙を貼っているのですが、必ず賃金をもらう場合には、その証紙を貼ってもらう。もし証紙による納付ができない場合には、事業主が例外的に現金で納付をすることも行われています。特定業種退職金共済制度の場合に、それぞれの加入者本人が手帳を持っていて、賃金の支払いごとに事業主に共済証紙を貼ってもらっているようなのですが、事業主がその共済手帳を保管している場合もある。いずれにしても、きちんと働いた日について証紙が貼られるようにと。突然参入してくる労働者もいるでしょうから、やはり制度について徹底的に周知させるのが大事ではないかと思います。
第3点は、今、経済見通しの発表がありましたが、政府、民間のどちらを見てもそんなに明るくはないのですが、もし将来、景気の低迷から抜け出せれば予定運用利回りを引き上げる、ということをはっきり書いてもいいのではないかと思います。いずれにしても中小企業が日本を支えているのであって、中小企業が元気にならない限り日本経済の回復はないと思います。ですから、これは中小企業全体についてなのですが、早く効果のある中小企業に対する政策的な対応が根本的に必要なのではないかと思います。
○佐藤委員
前回も申し上げましたので繰り返しはいたしませんが、建設業の就業者数の減少は非常に激しく、ピーク時と比べると何十万単位で減っています。それだけ参入しやすいし出て行きやすい産業だということかもしれません。屋賃の実態も、うちの組合で調査すると、熟練して一定の技能労働者でも、45歳よりもちょっと上で1日1万7,000円もつかない、これは何もかも含めてです。それで就業日数は21日から20日という実態です。それで建設の投資額は減っていく、もう激しい勢いで減っています。業者も非常な競争にさらされていると思いますが、そのもとで働いている労働者の雇用というのは、もう不安定どころではない。
北海道である研究者が路上生活者の調査をしたところ、建設産業に従事していた人たちがいちばん多いという調査結果が出ています。私はこの会は、基本的には建退共、特退、あるいは中退が健全運営されるように指示をすべきところであるけれども、そういった労働者の生活、あるいは老後の生活も含めて、今、盛んに言われているセーフティネット論の中でどういう役割を果たすのかということも、しっかり考えていただかなければいけないと思います。
林業についてちょっと申し上げますと、例えば山持ちの、昔は旦那衆だったのですが、そういう人たちがどういうことを言うかと言うと、「今、コンビニで買う水より材木の方が安いのだ」、あるいは「大根の方が高くて材木の方が安いのだ」と言われる。事実そうなのです。そういう産業に誰が来るか。それで妥当なところとして皆様が見て、予定運用利回り「0.5%」というところへ仮に落ち着くのだとすると、日本はもう林業も切り捨てるのか、建設業も、衰退したまま放っておくのか、私はそういう観点で議論しないといけないと思います。皆さんは前回おっしゃったから大体意見も分かっているわけですが、もう暗い話ばかりしていて、ここは勤労者生活部が所掌している部会であって、もう少し労働者に対する配慮というものが見えていいのではないか。
あと、細かいことでは掛金の話であるとか、若干の国庫補助の問題のことであるとか、そういった問題についてはまた改めて議論したいと思います。今日は部長もお見えですから、今日提起されている産業について、今の部長の職責から見てどのように考えておられるか、少し述べていただきたいと思います。
○奥田勤労者生活部長
まず建設業については、佐藤委員からお話がありましたように、特に公共投資はこれからかなり減っていくという厳しい状況におかれるだろうと思っております。私どものこの制度は、建設業で働いておられる方が、建設業から退職されるときに何がしかの退職金がお渡しできるようにということでこの制度があるわけです。この制度そのものは、建設業の就業者は今、600万人弱となっていると思いますが、そのうち230万人ぐらいでしょうか。相当高い割合でのカバーをしている制度です。
そういう点からしますと、建設労働者の生活の安定に大きな役割を果たしていると思っております。そういう観点からしまして、私どもこの制度を今後とも維持していきたいという思いが強くあり、今回、ご提案を申し上げておりますのも、過去の運用の結果、累積がまだ黒字ですので、その点では、この制度そのものについては明日にも危ないということはないわけです。最初に課長からも申し上げましたとおり、経済情勢を今後考えますと、ケース1、ケース2、ケース3という形でお示しをしておりますが、去年一般中退を議論していたときは、ケース2が最もあり得るケースだということで議論をしておりましたが、最近のいろいろな現状分析によりますと、ケース2とケース3の間ぐらいといいますか、かなりケース3に近いといいますか、デフレが単に日本だけではなく世界的な傾向であることが、かなり明確になってきているということですと、経済情勢についてはケース3にかなり近い状況でこの制度全体を見直ししていく必要があるだろうと。そういう形で安定性を維持していくということが、建設労働者にとって大切な建退共を守っていくという観点から非常に大事ではないかと思っております。
また林業についても数字をお示しいたしましたが、こちらの方もこれまでの林業政策の中で非常に熱心に取り組んできておられるわけです。林退の見込みについては、確かに労働者が非常に高齢化しており、私ども林退に加入しておられる人たちの年齢構成等も十分考慮しまして、これからの退職率も年齢構成を反映した形で計算をしてみました。また加入者については、地球温暖化対策として林業の見直し、ということを今、林野庁の方で非常に熱心に進められておりますので、そういった観点を入れながら制度の将来像を考えているわけです。林業にとってもこの「林退共」は非常に大事な制度であるということは、林野庁ともども私どもも同じ認識でおります。そういう観点から、この制度について、まさに持続可能な制度として、今こそ建て直さないといけない、というふうに考えております。その点で0.5%という非常に厳しい数字までお示ししているわけです。
現実には、他の制度と比べて明らかに林退共が劣っているということになりますと、加入をしていただくこと自体が非常に困難になりますので、そういったことも考えながら、他の制度と比べての魅力度というものも勘案しながら、しかしその一方で、この制度が破綻をしないようにと、今まさに真剣に考えなければならないだろうと思っております。そういう観点から経済情勢についても、私はあまり楽観的に考えるのではなくて、今、制度が置かれている状況からしますと、かなり厳しめに見ながら制度の再設計をして、先ほどお話がありましたように、経済情勢が好転してきましたら、これは審議会でご議論をいただいて、機動性な見直しを行う、そういう形で、この制度運営を行っていくのが今いちばん大事ではないのかなと考えております。
ちょっと長くなりましたが、両制度とも雇用が、いわば不安定である形での働き方をされておられる方たちにとって非常に大事な制度であるということで、非常に苦しい選択にになるわけですが、何とか制度を安定的に運用していくためには、利回りをどう見直したらいいかという点についてご検討を皆様にお願いをしたいと考えているわけです
○齋藤部会長
ほかに何かありますか。
○山路委員
確かに持続可能な制度にしなければいけない、というのは大前提だと思います。これを見ますと、数字の上では建退に比べると林業は相当シビアな数字が出ていると思います。歴史的な経過、年齢構成等の違いでこのようになっているのでしょうが。特に林退を見ると1.0%でもなかなか厳しい。0.5%でも、ようやく黒になるかどうかということです。国庫補助を度外視すれば、それだったら自分で国債か何か買って運用した方がまだましではないか、0.5%ぐらいの利率だったら、という意味では魅力ある商品にはなり得ないのではないかと思います。この点はどう考えられるのか。それと、基本的なことですが、なんでこんなひどいことになってしまったのかを、併せて教えてください。
林業に関して言えば、確かに奥田部長が言われたように、若干風向きが変わってきて、雇用対策の中で森林保全、環境保全ということで、若干政府の直接雇用で各地で雇用が増えています。従来の森林業者を根本的に見直そうという話になっています。聞くところによると和歌山で200人雇用されたり、そういう形でこれからは、おそらくその流れが多少強くなっていくのではないか。そういう意味で、是非その方向を強めていただきたいと思います。一生懸命やっておられると思いますが、折角林業の中で新たな若い雇用が出てきたわけですから、この人たちをどういうふうにこの中退金の中に組み込んでいくのかを、もうちょっときちんと考えていただきたいと思います。その辺のところも改めて伺いたい。
○蒲原勤労者生活課長
魅力の点ですが、確かに率だけを考えると、0.5%になるとかなり低くなると思いますが、今後、財政試算などを細かくやっていく中で、その魅力も、また他制度においてもらっている額との関係も、これから見ていく必要があると思います。ただ、ある程度率が低いといっても、国の助成なり、あるいは地方が単独で助成しているという所があります。もう1つは、この制度は外部に積み立てられていて確実にもらえるといったメリットもありますので、利率以外にずいぶんメリットがあると考えております。
もう1つ、「なぜこうなったのか」というのは実は前回も出たわけです。1つ大きいのは、この制度はかなり遅い時期に発足したということがあります。建退は昭和39年にできまして、いわば非常に高金利の時代にかなり余裕を持って運営していた蓄積が、今まできているというのがありますが、林退の方は昭和50年代後半にできたということで、もう利回りが回らない時期になってきている、ということで蓄積が少なかった。蓄積が少ない中で、この手の共済制度はそうなのですが、一旦赤字にちょっとでも落ちてしまうと、言ってみれば累積赤字が生じると、本来そこにあるべきものが入ってこなくなってきて、かなり雪だるま式に転がっていくというところがあると思います。
そういった意味では、これは一般論ですが、制度運営上累積赤字を生じないようにする、あるいは、累積赤字があれば、なるだけ減らしていくということを一生懸命やっていかなければいけないと思っています。
林業の関係ですが、実は先ほど部長からありましたが今回林業について推計するに当たり、かなり林野庁と調整をいたしました。我々も林野庁の言葉を聞くと、「今度は緑の雇用で増えますよ」ということは最初聞いていたのですが、根拠がないまま考慮に入れてしまうと、また見通しを誤ると思い、財政的な根拠もずいぶん聞きました。例えば今年度の補正予算でも、約100億ですが、まさに緑の雇用対策を入れているとか、あと来年度の予算でも、これは地方財政措置ですが、約100億程度の額を組んでいるということです。これは恒久措置として組んでいるということでした。そうしたことで財政的な枠組みのもとで、これだけ新規の就業者を入れてくるという話がありました。
もう1つは、地球温暖化対策の関係で政府全体での対策がありますし、農水省としても、将来に向けての方針を出している。そうした中で、やはり将来きちんとした林業労働者を増やしていくという方針が明らかに出ているということがありました。そのようなことを踏まえて、我々としては根拠があるということで、そこは考慮していこうと。あとは、それを具体的にどう実行するかということですが、これは今、林野庁とこれから調整しようと思っています。従来、加入促進では林業団体との連携によるものだとか、広報とかもありますが、一方で前回から説明しましたとおり、建設ではいろいろな仕事を発注するときに、これの加入をチェックしているわけです。例えば林業の世界でも、そのようなことができないのかどうか。もう少し確実に、今より林業就業者が確実に入ってくるような仕掛けを林野行政の中に入れられないかと、こんなことも、今、林野庁と相談しようかと思っています。
いずれにしても、具体的な加入促進をこれからやっていきたい。また、そうであるからこそ林退の推計に、ある程度の加入者が入っているので、そこは林野庁も「一緒にやりたい」と言っておりますので、一生懸命やっていきたいと思っております。
○勝委員
今、お話をいろいろ伺いまして、それぞれのご意見はもっともだと思います。まず財政状況を考える上で予定運用利回りが非常に重要なポイントになるわけです。この部会でこのところずっと予定運用利回りの引下げを議論されてきたわけです。例えば建退共にしても林退共にしても、これから運用利回りをどうするかということを話し合う場合には、やはり何か基準というか、どういう形で予定運用利回りを決めるのかという、ある意味でのルールみたいなものを作った方がいいのではないかと思います。
といいますのは、こちらで何パーセントという数字を出すのではなく、例えばフローで赤字が出ているというのと、あと、剰余金をどの程度の水準にするのか、ということが非常に重要だと思います。先ほど「破綻」という話もありましたが、健全性を維持するためには、例えば銀行で自己資本率があると、これは分母が総資産で分子が自己資本であるわけですが、それと同様、こういった退職金制度にしても、準備金を分母にして、剰余金が分子にくると、ある程度のバッファーと言いますか、ファンド的な形のものがあるというのは理想の姿なのではないかと思います。建退共というのはかなり黒字が維持されているわけですが、その中でも、ある程度フローで単年度で赤字が出ても、剰余金は、準備金に対して、ある程度の比率は確保できるような制度にするべきだと思いますし、そのような形で利回りを決めていくのが理想的なのかと思います。
もう1点は先ほど林業の話も出ましたが、せっかく産業別にこのような制度があることを考えると、産業の特性といったものを勘案しなければいけないと思うわけです。先ほどから話が出ているように、林業というのは非常に重要な産業であるし、環境問題の絡みから見ても、これからその部分をある程度政策として押し上げていかなくてはならないと考えたとき、ただ財政状況だけで林業の利回りを0.5%まで引き下げていいのかという問題も出てきます。清酒はある程度健全であるわけですが、これもある意味では文化の継承という面から考えても、この部分は保護というか、考慮していかなくてはならないのではないかと考えます。
1点は準備金、剰余をある程度確保するような制度にすることを考えることと、もう1つは産業ごとの特性というか、政策との絡みでその産業をどうするかという点を考えていかなくてはならないのではないかと思います。
○讃井委員
初歩的な質問で大変恐縮なのですが、1つは「建設業と林業の給付経理の将来推計」の図表で、数字が業種によって違うということはどうしてなのかということを伺いたいと思います。特に金銭信託は数字が違います。もう1点は運用利回りの軌道的な変更と先ほど部長が言われたのですが、現在は建設が4.5%となっていますが、これまでの歴史の中での運用利回りというのは、ある程度軌道的に変化をしてきたのでしょうか。その点について伺いたいと思います。
○蒲原勤労者生活課長
簡単にお答えできるのは後者の方ですが、運用利回りはその時々の経済状況と、むしろそれを踏まえた、将来5年間の財政見通しをして変えてきております。例えば、建設は4.5%ですが、その前はもっと高かったですし、林業ももっと高かったです。基本的にはかなり高いところから、だんだんと落としてきているという流れになっています。実は落とすときの前提で、例えば建設では昭和39年設立当時が6%であり、その後昭和50年に6.25%、昭和61年に6.6%、平成10年に4.5%となっており、高いところから少し落ちてきている状況です。他のものも、時期は違いますが落ちてきています。これはそれぞれの状況に応じて、5年間なりの見通しを出してやってきているのですが、最近では当初の見通し以上にかなり金利が下がるということがあり、下げてもなかなか財政が好転しないという状況になってきています。
金銭信託については、それを構成する各資産ごとの利回りはそれぞれ1つに置いているのですが、建退の場合と林退の場合は金銭信託の中身の資産の構成が違っているわけなのです。これはどのくらいの利回りを目指すのか、あるいはどのような運用受託機関を選ぶのかというところで違ってきているのですが、資産の構成が違うことによって、結果的に金銭信託の仕上がりの全体部分が違ってきているということです。
○讃井委員
最初に答えていただいたこととの関係になりますが、ちょっと、今の日本の経済情勢からいくと成績表としては非常にふるわないわけですが、景気が回復すれば、運用利回りは、また上がるということもあり得るということだと思います。そうすると、今いちばん考えなければいけないのは、制度として長く維持できるものをきちんと守っていくことではないかと思います。現在の足下の状況に照らして、運用利回りを変えていくというのは当然のことと考えます。
○佐藤委員
おっしゃることは非常によくわかるのですが、今300円の証紙を貼っているわけで、労働者から見ると、月額で6,300円積立ててもらっているわけです。今、日本において退職金というのは賃金の後払いとしての労働債権として、ある程度定着しているのです。今日ここにいらっしゃる皆さんが退職されるときはもう1つ桁が上の金額をもらうと思うのです。期間雇用、日々雇用の人たちのことを考えると、出入りが激しいから平均すると10年で100万に満たないというものにしかならないわけです。単一商品であり、事業主が300円の証紙を買って貼る、その前は260円だったと思うのですが、その金額そのものが、今、言われている経済情勢なり、我々全体の、国民的な生活の度合いというか所得の問題から考えて、適切な金額を設定しているのかという問題も議論しなければいけないのではないかと思うのです。安かろう悪かろうで恩恵的な退職金だと言うのならば、これだけの皆さんにお集まりいただいて議論するほどの価値がなくなってくると思うのです。
その点について私は課長から説明を聞いたのですが、単一商品であることは法律事項だということでした。ところが、委員の方々はご承知ですが、前の一般中退をやった終わりに、要するに特退の掛金日額の上限を800円まで決めたわけです。本当にそのような労働者が大切なのだと、産業が大切なのだと、そして制度も維持しなければならない、そこの噛み合うところが非常に難しいのですが、今の300円の掛金が適切に、その時代に適応してきたのかと考えると、私たちはそうは思わないわけです。私は一般の中退の議論をしたときも、前回も申し上げましたが、あれは事業主の選択によって、労使の合意によって、一定の掛金の幅があるわけです。3万円ぐらいまで払えるところもあるのです。特定業種退職金共済制度においては、これがないわけです。日々雇用だし職場が変わるわけですからなかなか難しいと言われるかもしれませんが、掛金日額そのものについて、退職金が妥当なものであるのかどうか、運用の問題は非常に重要だし、継続性の問題ということを何も否定はしていません。しかし、すぐその議論でいってしまえば、フローでも赤字は出ないようになどというところで合意されれば、うんと下がってしまうわけです。そんなことだけでは私は足りないから、やはりそれなりの討議としての提案が事務局側からあって然るべきだと思います。
○野澤委員
関連して、私も今回初めて委員になり、初めて委員になったからこうだという言い方はしたくないのですが、運用利回りは引き下げる方向で検討せざるを得ないだろうということははっきりわかっているのです。問題は過去からのずっと引き続いて持っている課題にはどのようなものがあるかということだと思います。佐藤委員はよく頭の中に全部入っていますから、1を言えば2、3、4と出てくるのですが、我々はそのことがよくわからないわけで、先般も労側だけで集まり、いわゆる清酒の関係や林業の方にも集まっていただき、それぞれがどうなのかという意見も聞かせていただきました。
申し上げたいのは、このような運用利回りを下げるということになると、その産業に関わる方は、それ以外はどうなのだと、客観的なものを含みながらこうなるとか将来こうなるということを、やはり付けて話をしないと落ちるところに落ちないわけです。利回りだけはこうだということになると、それだけではちょっと落ちないということになります。そのような意味でいうと、前回の部会の後、資料5で出してある中身も含めて、このことを含めて私は大切ではないかと思うのです。今の日程も次は2月26日、3月といただいていますが、言うならば、私は労側もいろいろ意見はあるかもしれませんが、1つはこれを見直すと、それも上げるではなく下げるということで見直すということなわけです。様々なケースが書かれていますが、少なくとも奥田部長から出たように、現実、我々が肌で感じているのは、ケース2から3の間というか、厳しい目で見なければならないということであります。しかし、残されている課題とか今後についてどうなのかというようなことについても、併せて議論が必要だと思います。今、進め方を含めて利回りだけを片付けて、その次にまだ時間があるから次ということではなく、佐藤委員にもお願いしているのですが、頭の中にあるものとか過去の歴史を含めて、あるものは一旦整理をして書類か何かで出してもらいたいのです。委員の皆さん方も共通でどのような意見があるかということ、使用者側についても使用者側から見てどのような意見があるのかということを少しすり合わせしながらやっていかないと、当該の産業と全く関係ないところも我々委員としてはあるわけです。ただ、私は委員として、「素人でわかりません」とは言いにくいので、やはりいろいろ勉強しようということで資料作りをお願いしていますので、部会の場の進め方を含めて、少し周辺も固めながら、予定運用利回りの見直しをどう落とすかについての議論が成り立つように部会長にもご配慮いただきたいと思います。
○奥平委員
先ほどから、どうしてこのようなひどい結果になってしまったのかが皆さんから出ているのですが、過去において、私どもが審議会で決定しても、制度的に実行されるまでに1年も1年半近くもかかってしまうという状況がありました。今の社会情勢の動きはものすごく速いわけですから、その間にどんどん状態が悪くなり、その差がひどくなり、このような状態になってきたということは大変反省させられることだと思います。制度も変わり、ここで決まったことが早く実行に移されることになったわけですから、なるべく現実に合った議論をし、早く決めていただくということになれば、多少好転するのかと思います。
佐藤委員の言われることはすごくよくわかるのですが、現在、社会事情が悪過ぎるので、経営者側がそれに対して対応できるかどうか、そのような体力があるのかどうかについてはちょっと私にはわかりませんが、大変難しい問題だと思うのです。
手法として、証紙がきちんと貼られているかどうかということはきちんとしていかなければいけないと思うのです。しなければならないことをまず改善し、大きい問題については皆さんで討議したらいいのではないかという感じがいたします。
○齋藤部会長
利回りの問題はいろいろあるかと思いますし、それが中心になるのでしょうが、それ以外に、やはり周辺の問題が大事なことだろうと思います。この前もそれを巡って周辺の問題が少し出ていたかと思いますので、取りあえず、この前宿題となった資料について説明してください。
○蒲原勤労者生活課長
今、部会長が言われたように、我々も最終的には労働者がいくらもらえるかということがポイントになってくると思うのです。利回りは制度安定のために非常に大事ですが、併せて、そのためのいろいろな業務の運営において、改善すべきところはきちんとやっていくべきで、総体としての姿を描きたいと思っております。そのような中で追加の説明をお願いいたします。
○河野勤労者生活課長補佐
建退共制度に関連して、前回の部会で委員の方々から求められた点について、資料5として示してありますので説明いたします。
1頁は「経営事項審査における建退共制度の加点状況」です。経営事項審査は建設業許可を所管する国土交通大臣又は都道府県知事が、それぞれの許可に係る建設業者で公共工事の入札に参加しようとする者について、経営規模の認定、経営状況の分析、その他経営に関する客観的事項を審査し、受注者を決定する際の指標とされているものです。建退共制度の加入については、審査項目の1つである「労働福祉の状況」において加点されることになっています。2番目は平成13年度においての経営事項審査を受けた建設業者のうち、建退共制度に加入していることで加点評価を受けた建設業者を示してあります。※の所ですが、平成13年度末における許可業者数が57万1,388社、このうち経営事項審査を受審した業者は19万4,686社で、このうち建退共に加入していることで加点を受けた業者が11万3,005社で、割合としては58.04%となっています。総受審業者のうち、大臣許可を受けている事業者は8,093社あり、加点を受けているものが5,845社、72.22%になっております。都道府県許可事業者は18万6,593社で、加点を受けているものが10万7,160社、57.43%となっています。
次頁は勤労者退職金共済機構における建退共事業に係る相談状況等について示してあります。相談内容を事業主からの問合わせと労働者からの問合わせに分けて示してあります。事業主からの問合わせについては、共済証紙関係あるいは制度に係る加入・脱退関係について多く相談をいただいております。具体的には、「証紙はどの程度購入したらいいのか」、あるいは「証紙が余った場合はどうしたらいいのか」といったような相談を受けており、それぞれ右に書いてあるような回答をしております。また、「加入対象者はどうなるのか」といった相談もあり、右にあるような回答をしております。労働者からの問合わせについては退職金請求に関するものが多く、手続きあるいは支給日についての問合わせをいただいております。次頁以降は平成11年度から直近までの相談内容別の相談件数を示してあります。毎年度、大体2,000件を少し超えるぐらいの相談がありますが、詳細な説明は省略いたします。
7頁に移ります。北海道函館市及び帯広市は、建退共制度に関して他の発注者にない対応をしていただいているので紹介したいと思います。通常、発注官庁においては、上の斜めの所のものですが、「掛金収納書」として証紙を購入した旨の書類を出していただいております。これは全都道府県、市町村の一部で実施していただいています。両市においては、下の下線を引いている所ですが、工事完成届と合わせ、下請け雇用労働者も含めて証紙の貼付実績を提出していただき、証紙がきちんと貼付されているかというところまで発注者に確認してもらっているという仕組みです。
次頁に移り、前回の部会で報告いたしましたように、現在納付方法について実験等を行い、検討中です。具体的には、先ほどからもお話があるように、証紙を貼るという方式ですが、そうでない方式について勤労者退職金共済機構においてモニター実験を実施するなどして、考えられる具体的な仕組みについて検討を行っているところです。実験については次頁で紹介いたします。昨年10月より順次実施していますが、主体としては16企業4つの事務組合・任意組合で実施されています。詳細は次頁以降の資料で説明しますが、方式としては「ICカード方式」、「OCR方式」でそれぞれで行っており、実施場所は資料にあるように、全国いろいろな場所です。工事の種類としても、トンネル工事、住宅工事、道路補修工事等、様々な工事で実施しています。
次頁は現在行っている実験について図示しているものです。現行は事前に金融機関で証紙を購入し、就労に応じて手帳に貼るといった、事前に掛金を納付する方式ですが、現在行っている実験は、事業主の皆様の証紙を手帳に貼るという事務を簡素化する観点から、就労実績を勤労者退職金共済機構に報告してもらい、事後に掛金を納付してもらうという方式です。具体的に図で説明すると、上の(1)ですが、掛金を引き落とす口座引落しを考えておりますので、口座登録してもらい、実際の建設現場の企業にカードがある場合、ICカードないしは磁気カードになるかと思いますが、現場において、被共済者の皆様に就労時にカードを機器に通していただき、現場においてパソコンで就労日数を集計することとします。さらに、就労日数をフロッピー等で共済契約者へそれぞれの現場から報告してもらい、左の中程の(4)ですが、就労日数をe-mailで勤労者退職金共済機構建退共本部に送信いただくこととします。
これに基づき、建退共本部から掛金額、引落日の通知を共済契約者へ連絡し、掛金を口座から引き落とします。さらに(7)ですが、建退共本部から雇用企業ごと、被共済者ごとに掛金積立の実績を通知します。また、被共済者、つまり労働者の皆様がそれぞれの掛金の積立実績を確認する方法ですが、建退共から事業主、つまり共済契約者を通じていく場合もありますし、(8)のように、それぞれ労働者からの問合わせに、建退共本部で対応する場合もあります。つまり、このICカード方式というのは、現場での就労実積の集積をカードで行うものであります。
次頁にはOCR用紙による就労報告方式があります。機器、カード等がない場合、就労実積について、右の下の方ですが、雇用企業ごとにOCR用紙に就労日数を記入していただき、その情報が共済契約者を通じて建退共本部に伝わり、その後はカード方式と同様、掛金が引き落とされることになります。次頁に移り、建退共制度の場合は事務組合・任意組合でやっていることがあるわけですが、基本的には、すでに説明した2つの場合と同様、就労日数を事務組合・任意組合から建退共本部に報告いただき、掛金を引き落とす仕組みになります。
以上が今の実験の仕組みになります。8頁に戻り、今後についてですが、厚生労働省においては、現在、勤労者退職金共済機構で行っている実験結果を踏まえて、就労実績に見合った掛金の納付が確保されることを要件として、現行の証紙方式のメリット・デメリット、新たな納付方法の合理性・経済性を考慮しながら、中長期的課題として取り組んでいくこととしています。その際の主な論点ですが、事務的に簡素で合理的なものであるか、制度の適正履行に資するものであるか、コストが実現可能なものであるか、労働者が企業間を移動することに対応できるか、元請・下請関係に対応できるか、中小・零細企業は対応できるかといったことがあるのではないかと考えております。
建退共制度に関しては以上です。資料6は前回、委員より質問があった関係で、「勤労者退職金共済機構における資産運用体制」のうち、1頁中程に書いてあるように、基本ポートフォリオの作成あるいは基本方針等について助言を得る「ALM研究会」及び「資産運用検討委員会」、左の下の方ですが、資産運用の実績を評価する「資産運用評価委員会」の外部の専門家の具体的な委員名簿を3枚付けてありますのでご参照ください。
○桜井委員
新たな掛金の納付方法の件ですが、平成が始まってからずっとこの納付のあり方は議論されてきているのです。直近では平成11年に新たな研究会を勤労者退職金共済機構の中で開いています。OCRなどを取り入れて、いかにして貼付を労働者がきちっと確認できるかどうかについてはいろいろな議論をしてきたのです。現在、それを受けて私どもの業界も協力しています。モニターもやっているとのことでしたが、いつまで行うのですか。
○河野勤労者生活課長補佐
平成15年度まで実験予定です。
○桜井委員
先ほど委員からもあったように、労働者自身がよくわかっていないということがあると思うのです。例えば、ICカードなどを渡すことによって周知が徹底する、自分の退職金がよくわかるといったことがいちばん確実だと思います。今のように、何かわけのわからない目安で証紙を購入し貼付させていくやり方、それで先ほどの函館のようなチェック機関が入ってくるというのは無用な労力を使っているところがあると思いますし、ちょっと時代遅れではないかというのが今のやり方に対する批判なのです。
中長期的な課題のようなことを言われても、ちょっと業界としては困りますし、これについては早急に方向性を出していただきたいと思います。もちろん、平成15年度の試行が終わったときにはメリット・デメリットはあるでしょうが、先ほど挙げられたような8頁の主な論点、6項目ありますが、「コストが実現可能かどうか」という点のみで、後は今のやり方でもすべて当てはまる問題なのです。したがって、コストの問題も含めて、機会があったら方向性を出していただきたいと思います。
○佐藤委員
要するに、経済状況、あるいは国民の所得の状況、勤労者の給与の状況等を踏まえて考えた場合、建退共の証紙の確保というか、積立の金額が適正に行われてきたかどうかということだと思うのです。以前は260円でしたが、現在、300円というのが21日で1カ月計算するのです。それが常識的に考えて適切なものなのかどうかという部分はかなり重要な問題だと思いますし、再度言いますが、一般中退の議論をした最後の審議会の中で、上限額を上げるということで一致し、皆さん賛成されたわけです。私はそのことがあるので、はっきり言って、上げることを前提に準備をされたのだと思っていました。ところが、今回はそのような議論は全く出そうにありません。こちらから提起することになりますが、それが経済状況に正しく反映していたかどうかをお答えいただきたいと思うのです。
もう1つは資料についてです。私はそのようなことに関わっているからちょっと知っているだけのことですが、建退共に加入していて加点されている、この割合のことです。これを見て、皆さんはどのように思われるかわかりませんが、経営審査事項の審査を受けるというのは、公共工事または公共工事に準ずる公団・公社等の指名願いを出すことが前提になっているわけです。そのような業者がここの数だけ経審を受けて、なおかつ、加点をするというのです。はっきり言えば、加点という言葉ですから建退共に入っていなければ外すというところまではまだいっていないかもしれません。しかし、大臣許可についてはかなり広範囲に事業がやれる、大手ゼネコンや中堅ゼネコンと考えていいかもしれません。ところが、よくご存じのとおり、今、建設投資は年間57兆円ぐらいのうち4割は公共工事と言われています。7割の発注者が誰かというと、地方自治体なのです。誰がやっているのかと言えば、都道府県の許可業者です。
許可には大臣と都道府県、営業範囲の問題でそのようなことがあるのと、特定と一般と言って、いくらか下請負に出せるかということを定めた特定建設業、一般建設業という分類があり、それぞれ請けているわけです。数字がないことは残念ですが、この割合を見て、これでいいのだということにはなかなかならないと思うのです。加入の問題や貼付の問題についてこれから検討していかなければならないという議論は私も一生懸命やりたいと思います。毎月、建退共から事業の概要が送られてきます。今日、帯広とか函館の例が出されましたが、北海道、今、数字を持っていたらちょっと見ていただきたいのですが、全体のどれだけを占めるでしょうか。その部分までを質問にします。
○蒲原勤労者生活課長
基本的なところからまとめてお話ししたいと思います。1つは佐藤委員や野澤委員から、運用利回りの議論もさることながら、他に合わせてやるべきではないかという意見がありましたが、私どももこの制度については、最終的には建設労働者なり特定業種の労働者が退職したとき、お金をいくらかもらって、それがセーフティーネットになるというのがポイントだと思っております。その意味で言うと、制度の将来にわたる安定という点では運用利回りは大事なことだと思いますが、おっしゃるとおり、最終的な額との関係では日額の問題というのは1つあると思います。ただ、ご承知のとおり、日額の問題は、法律上、範囲は定められており、上限までは決まっているのですが、具体的にどの額に設定するかについては、勤労者退職金共済機構の方で事業主のいろいろな意見を聞きながら決めるという制度的な枠組みになっております。もちろん労働者の側に立ち、掛金の引上げは、額が上がれば退職金も上がるといった意味では望ましいと思いますが、一方で費用を負担する側というものがありますので、そこにおける議論をよくよく見ていかなければならないと考えます。
伝え聞くところでは日額を事業主側がどう設定するかという際の前提で、公共事業との積算との関係があるという話もあり、その辺は国土交通省ともいろいろ相談していきたいと思っております。運用利回りと合わせて、いろいろな業務改善はあるべきだと思っております。これについては、前回以来、いろいろな適正貼付あるいは適正な加入促進についての資料を出していますし、今回も出しております。日額の話は今は省きますが、私どもとしては、運用利回りと合わせていろいろな業務改善という点についてはできるところをいろいろやっていきたいと思っています。いわば3本柱ということで最終的なところを考えていきたいと思っております。
個別の話になりますが、まず桜井委員からあった納付方法の点について、今年度、来年度でモデル的に動かしてみるということなので、やはりそのところの判断を見て、コストはおそらく少ない部分があるかと思いますが、一方で本当に就労実積報告が取れるかどうかという辺りのメリット・デメリットをよくよく見て、ただし結論はきちっと出していかなければならないと考えております。
○桜井委員
期間労働者でも定住型が大半を占めてきているのです。これまでは移動するという考え方で証紙だったと思うのですが、その形式は本当に検討していただきたいと思います。
それから、先ほどの資産運用と日額を混同されてやられると、我々は非常に困るのです。やはり、資産運用は責任準備金に影響するだろうという感じでやってほしいのです。日額の話ですが、意識はしなければならないし、バランスを見なければいけないと思います。しかし、この場でいくらと決定できるわけではないのですから、その辺はよろしくお願いしたいと思います。
○蒲原勤労者生活課長
佐藤委員の質問に対してですが、今、出している加点の状況については、大臣許可と都道府県許可しかなくて、実は他のいろいろな切り口で、今話が出た特定工事とそうでないものをそれぞれ分けて出ないかという話があったのですが、国土交通省に聞きましたところ、それがないということだったのでこのようにしかできなかったものです。
それから事業者の加入状況ですが、労働者側で言うと全国で220〜230万の加入者がいますが、例えば北海道の加入状況は28万人となっております。また、事業主ベースで言うと、16、17万事業主が建退に加入されていますが、1万事業者という数字になっております。
○佐藤委員
北海道が全体の制度の1割を占めているということになります。私は帯広、函館の例を出してほしいと言ったわけですが、これは以前からやっていたのではなく、最近このようなことを始められたわけです。北海道という非常に厳寒の地で、雪が降れば仕事ができない所でも加入者数、被共済者数が多いわけです。全体の1割を占めるということは、先ほど示された資料5の7図によると、発注官庁、私は主に市町村だと思うのですが、ここでは帯広、函館ですが、完成届と合わせて下請労働者の分も貼ったかどうかということをちゃんと見るとなっているのです。そして、今これを全国に波及しようとしているわけです。私たちもそれぞれの自治体にこのようなことを要求しているのです。
先ほど証紙の購入の目安がいい加減だという発言がありましたが私はそうは思わないのです。公共工事の場合、発注者は一定の目安に基づいて建退共の証紙を購入し、何人工で働くかということを計算して目安を出しているわけですから積算に入っているのです。その問題については改めて議論したいと思いますが、曖昧になるかどうかということを言っても、私はやはりそれなりに改善方策や、ここでも議論されましたし、若干下げられたわけですが、それはいい加減ではないと思っています。公共工事に関しては全体の4割ぐらいを占めていて、その分は積算されている、もう少し遡って言わせてもらえば、経審を受けている業者の中で加点がない業者が、全体トータルすると3割から4割あるという状況について、やはりこの制度上の問題が潜んでいると思うのです。
納付の問題も非常に難しいことだと思いますから、これから議論したいと思いますが、いみじくも北海道のことを言ったのは、それは労働者の意識の問題もありましょうし、そこの自治体の考え方の問題もあるだろうと思うのです。その点に関しては、我々としては7頁の図を単純に見ないで、しっかりとかみしめて見るべきではないか、ということを述べたかったために北海道の例を挙げたのです。
○桜井委員
そもそもこれは返納規制というか、証紙を買ったら返せないわけで、ここにも問題があると思うのです。我々としては、余ったものは返したいが返納できないのです。これは法律なのですか。
○河野勤労者生活課長補佐 省令で買い戻しの場合は要件を定めております。
○桜井委員
それは労働者保護の観点からいろいろなところで縛ったのだと思うのですが、そのようなことよりも、やはり納付のあり方の報告書に基づいて現在やっているモニターのものを真剣に考えていただかないと、この議論はいつまでも続くことになります。あくまでも目安なのか、強制的に買わされているとか、直轄はそうではないが、地方公共団体に行くと、そのような所が依然としてあるという話は聞いております。
○河野勤労者生活課長補佐
今買い戻しができないという話がありましたが、省令によって買い戻しができる場合を定めており、特定業種退職金共済契約が解除されたとき、被共済者となるべき者を雇用しなくなったときと限定をしております。基本的には、制度の前提として、発注者側から見ると別の見方になるのかもしれませんが、必要な分を見込んでいただき、証紙を買っていただき貼ってもらう、事前納付の仕組みなので、余ったり、あるいは足りなかったりする場合もあるかと思いますが、そうであれば、加入者あるいは対象となる労働者がいる限り貼る機会があるわけですから、そのときに使っていただくという考え方でこの制度を運営しているということです。工事、工事で精算をすべきではないかというのが発注者から見た意見になるのかもしれませんが、現行においては、今述べたような考え方でやっております。
○辻村委員
運用の問題と基本的な制度の問題が入り組んでいるので、もう1回制度の基本のところに戻りたいと思うのですが、どの産業のどの企業でも、やはり退職給与というコストはそれぞれ負担をしているし、かかっているわけですから、それが300円の証紙という、10年働いても100万円にならないという点、これが適正なのかどうかをちょっと調べてもらいたいと思います。それぞれの産業で、どのくらいの退職給与の負担を企業がしているのか、佐藤委員が一桁違うと言われましたが、あまりにも実態からかけ離れている点にもメスを入れてほしいと思います。予定利回りが下がるということは退職金が下がるわけですから、根本的に300円という掛金を、少なくとも林退は450円に引き上げたわけですから、そのような形の努力、制度改善をしていく姿勢を検討すべきではないかと思います。是非とも、産業、企業における退職給与のコストの問題については資料を出していただきたいと思います。
○長谷川委員
資産運用について健全な資産運用をするというのは、一般中退のときもそのような議論をしましたし、当然だと考えます。この議論はこの議論できちっとしなければならないと思います。
もう1つは、労働者から見ると、予定運用利回りを下げるということは現状よりも悪くなるわけですから、その点については労働者にすれば問題なわけです。しかし、この経済状態なり、この制度が安定的ではないということは将来にわたって非常に不安ですからきちっとしなければならないと思います。
一方で、制度の見直しの必要、改善があるのかないのかの問題ではないかと思うわけです。
佐藤委員からは、例えば掛金額を上げることだってあるのではないか、しかし経営者にすればこの経済状態で非常に困難だという話がありますが、そうだとすれば、建設労働者の福祉向上とかそのような人たちに対するフォロー、セーフティーネットは政府としては何ができるのか、林業労働者に対してはどのようにするのかという問題があると思います。林業労働者に対しては、今、緑を守ろうという環境の保全という立場から、雇用の創出がいろいろな形で行われており、そのような意味では規模の拡大による効果が出てくるだろうということも出されてきたと思うのです。建退に対してはどうするのか、建設労働者に対する福祉向上をどう図るかということがもう少し検討されなければならないのではないかと思います。
前回、一般中退の予定運用利回りを引き下げ、健全な運用を図ることと同時に、制度の中で改善する方法があるのかということも並行的に議論されたわけですから、今日、使用者側も我々労側もいろいろな知恵を出し、公益委員の方々からも非常に貴重な意見が出されていますので、できれば事務局はそれらを勘案しながら、制度の中でいろいろな見直しとか検討すべき課題があるかどうか、整理して次回出していただきたいと思います。
○田勢委員
皆様の意見は大変参考になりましたが、この世界だけではなくもう少し広く見ていただきたいと思います。例えば、私は中小企業の世界にいるわけですが、個人事業主は退職金などというものはございません。今日潰れたら退職金などはなくて、個人破産、自己破産をして身ぐるみはがされるだけであります。先ほど資料を出していただいたように、小規模企業共済制度は2.5%から1.0%に下げますが、これは余裕のある方が自分で自分のための退職金を自分で払うわけです。先ほどから100万円は少ないのではないかという議論がありましたが、働き方には非常に多様なものがあるわけで、常用雇用で年収1,000万、2,000万もらっている人が自分で掛金を払い、給与のいわば後払い部分としてもらう退職金とするならば数千万くることもあるでしょうし、そうでないものもあります。あるいは、この建退共のような仕組みもあり、様々なものがあるわけですから、何か金額だけを取り上げて、安いとか高いとかという議論は偏ったものと考えます。
一方、先ほど述べましたが、中小企業者の中には破産をすればそれで終わりということもあり、いわば自己退職をしても別に退職金が出るわけでもなく、様々なものがあるわけです。
そのような議論は参考にもなりましたから続ければいいと思いますが、今、ここで喫緊の課題としてあるのは、すでにみんなの合意で定まった仕組みがあり、今動かなくなってきているので、取りあえず、ここできちんと対応をしなければならないということです。このタイミングで世の中はどんどん動いているわけですから、先ほど奥平委員からも出ましたが、今やらなければ手遅れになるから、まずそこを決めるべきではないかと思うのです。他の議論があるのはわかりますし、佐藤委員等が言われたことは我々も議論したいところですが、そのようなことはまた諮問をいただきしっかり議論すればいいと思うのです。取りあえず1つやることを整理し、次の課題をまた整理し、議論を進めていくべきだと考えます。
特に、私は数字を見て林業を心配しているのですが、累損が一番いいケースでも19年度でまだ解消されていないということなのです。これは今の世の中で考えれば、金融庁が入るわけではないが、完全に破綻懸念先であり駄目です。この後伸ばしても、いい数字が出てくる、プラスになることは見えないわけです。10年経って累損が解消されなければ、こういった組織はもう終わりというのが今の常識であります。にもかかわらず、他の議論をしようということではなく、ここでまずはこの決論を出していただきたいと思います。別に佐藤委員が言われたことを否定するつもりは全くなく、それはそれでやればいいと思うのですが、まずはここに1度議論を集中して収斂していただきたいと思います。これが私たち委員に課せられたいちばん大きな命題だと思います。
○都村委員
先ほど説明いただいた資料5について2点ほど質問いたします。1点は納付方法の検討は大変重要だと思うのですが、新しい対応を考える際には実態の把握が必要だと思うのです。掛金の納付について、公共工事と民間工事の両方において、被共済者側と事業主側に対して実態調査が今まで行われたことがあるのかどうかをお尋ねしたいと思います。もしあれば、次回で結構ですのでその内容についてお知らせいただきたいと思います。行われていないのであれば、それは非常に必要なのではないかと思います。
2点目は相談についてです。相談機能の強化というのは非常に重要なポイントだと思うのですが、資料では相談件数は大体年間2,000ぐらいということで、他のサービスの相談などと比べると少ないような気がします。相談というのは被共済者と事業主の両方からあると思うのですが、身近なところで相談窓口が開かれているのかどうか、どのような形で相談の場が設けられているのかについて教えてください。
○河野勤労者生活課長補佐
1点目の実態調査についてですが、平成10年に1度調査をしております。前回、課長からもお答えし、田勢委員からも指摘がありましたが、直近の状態は把握していないことではありますが、次回、前回の調査の結果について資料としてお出ししたいと思います。
2点目の相談の体制についてですが、内訳で示していますように、勤労者退職金共済機構本体と東京と大阪で受けております。連絡先、電話番号等についてはパンフレット、あるいはホームページ等でお知らせしていますが、周知が十分かどうかというのは少し検証しないといけないかと思います。
○小山委員
議論の進め方の問題で意見が若干違っているものがあるかと思うのですが、そもそもこの運用利回りを下げていくということは、労働者の立場から見れば、退職金を下げるという話なのです。大体予定されていて、自分はこのくらいもらえるのかと思っていたのを下げられるわけですから、普通の契約で言えば、途中で契約変更されることになります。言い方は悪いですが、今、生保の問題でいろいろやっていますが、それは詐欺に遇ったようなものではないかと言う人もいるわけです。それだけ自分がもらえる退職金というものの重さという視点から是非考えていただきたいと思うのです。この制度の議論というのはわかりますから誰も否定していません。しかし、そのことを議論するためには、下げられる労働者の立場に立って、この制度が将来どうなるのか、またどう改善さるのかということがなければ、給付が下がってくるということについて納得できるわけがないわけですから、そこはセットで議論をしていかなければ、数字の蛇行だけで議論をしても労側としては合意形成できないことになってしまいます。そのことについては、是非事務局も他産業の退職金の実態等をきちっと数字で出していただきながら、制度の改善点とセットで必ず議論していただかなければ、これ以上進まなくなると思います。
○野澤委員
以前、労側が集まったときもそうだったのですが、掛金については事業主が全額負担ということを前提にしてという話もあり、様々な検討について労側を排除しているわけではないと思うのですが、労使が共同でこれをどうしていくかとかについて、土壌になっていないような気がしているのです。もし誤解ならば誤解だとおっしゃってくださればいいのですが、少なくとも、お金の負担は経営側であったとしても、これを維持なり改善していくことについては、やはり厚労省も中心になりながら、時には仲介を取りながらでも制度をどう維持、改善していくかについて、お互いディスカッションする場を持つことが大変重要ではないかと思います。
桜井委員も言われたように、300円をいくらにするとかというのは、ここで決めたからといってすぐ決まるわけではないのです。やはり長年の積み重ねの中で、いろいろなことを検証しながらこうしようと、その代わり個別の単価についても引き上げてもらうところは引き上げてもらわなければいけないですとかということが合間って出てくるわけです。そのような意味では、私はこれを機会に、使側だから使側だけで議論すればいいという狭い感覚ではなくて、お金を出したものを活かす、そのためには労側の意見も聞きながらやっていくというようなことがこの業務改善の中で日常的なコンタクトとして業界としても必要ではないかと痛切に感じております。今後の改善ということで、是非使側の協力もお願いしたいと思います。
○齋藤部会長
これからの方向として、次回は26日に予定されているかと思いますが、もう少し将来利回りの状況について計算をしていただき、詳しい数字を出していただきたいと思います。もう1つは、周辺の問題について今日いろいろと議論がありましたが、当部会の所掌に入るところもありますし、所掌以外のところもあるだろうと思いますので、少し論点なり方向なりを事務局で整理していただき、それを基にして、次回引き続き議論したいと思います。
○田勢委員
この資料は0.5%刻みでできていますが、ちょっと微妙なところがあるので、もう少し刻みを小さくしていただき、どの辺が落ち所というのが何となく見えてくるような細かさにしていただければありがたいと思います。
○都村委員
このような形で見直しが行われた場合、1人当たり平均でどのくらいになるかという点も出していただければと思います。
○齋藤部会長
本日は以上で終わらせていただきます。今日の議事録の署名委員を長谷川委員と桜井委員にお願いしたいと思います。本日はどうもありがとうございました。
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