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4−3.難分解性及び高蓄積性の性状を有する既存化学物質に関する対応

(1) 化学物質審査規制法の下での既存化学物質の管理

未点検の既存化学物質
   [既存点検の実施]
  • 良分解性物質

  • 人健康への長期毒性なしと判定された既存化学物質

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化学物質審査規制法上の規制措置なし


難分解性であることまでが判定された物質
   [蓄積性試験の実施]
難分解性であり高蓄積性であることまでが判定された物質
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  • 化学物質名の公表
  • 開放系の用途における使用の自粛等の要請
  • 長期毒性試験の実施






難分解性であるが高蓄積性でないことまでが判定された物質
   [スクリーニング毒性試験の実施]
【指定化学物質】
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  • 前年度の製造・輸入数量、用途等の届出
  • 合計100t以上の物質名、数量の公表
  • 指導助言





【第一種特定化学物質】
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  • 製造・輸入の許可制(実質禁止)
  • 政令指定製品の輸入の制限
  • 政令で定める用途以外での使用の制限
  • 指定の際の回収等措置命令








【第二種特定化学物質】
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  • 物質又は政令指定使用製品の製造、輸入予定数量及び製造・輸入実績数量等の届出
  • 製造予定数量等の変更命令
  • 技術上の指針の公表と措置勧告
  • 表示義務、勧告
  • 指導助言











(注) 化学物質審査規制法に基づく規制措置については
   
で記載。
          なお、第一種特定化学物質と第二種特定化学物質の枠外の物質に対しては、第一種特定化学物質若しくは第二種特定化学物質に該当すると疑うに足りる理由がある際の製造、輸入又は使用の制限等に関する勧告が適用される。


(2) 難分解性・高蓄積性であるとして公表済みの既存化学物質

官報No CAS No 物質名 構造 公表日
1-436 21908-53-2 酸化第二水銀 構造 1977.11.30
3-2855 36065-30-2 2, 4, 6-トリブロモフェニル(2-メチル-2, 3-ジブロモ)プロピルエーテル 構造 1978.12.12
4-18 92-86-4 4, 4-ジブロモビフェニール 構造 1987.12.28
3-2341一部 6731-36-8 1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3, 3, 5-トリメチルシクロヘキサン 構造 1987.12.28
4-67 57912-86-4 ジペンテンダイマーもしくはジペンテントリマー又はその水素添加物(A:2.4) 構造 1987.12.28
3-3427 1460-02-2 トリアルキル(C=1〜4)ベンゼン
(1,3,5ートリーtertーブチルベンゼン)
構造 1990.12.28
3-2572 595-90-4 テトラフェニルスズ 構造 1992.12.24
5-368 5-3604の一部 3846-71-7 2-(2'-ヒドロキシ-3', 5'-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール 構造 1998.11.30
3-3371 3792-59-4 O-エチル-O-2, 4-ジクロルフェニル-フェニルチオノホスホネート 構造 2002.03.26
3-2254 25637-99-4
3194-55-6
1, 2, 5, 6, 9, 10-ヘキサブロモシクロドデカン 構造 2002.03.26


(3) 「化学物質の製造・輸入量に関する実態調査」の概要

1.概要

 経済産業省は、統計法に基づく承認統計として、原則3年に1度、以下の事項に関する基礎情報収集のために化学物質の製造・輸入量に関する実態調査を実施。

2.調査対象範囲

(1)対象事業所

 全国の化学物質製造・輸入関連事業者 約17,000事業所

   (注1)  事業所・企業統計調査(総務省)の対象事業所(平成13年 約635万事業所)のうち、化学工業、石油精製業、高炉による製鉄業、高炉によらない製鉄業、非鉄金属第1次精錬・精製業、非鉄金属第2次精錬・精製業、各種商品卸売業、化学製品卸売業に該当する事業者。
(注2)  前回調査(平成11年)の調査票回収率は約67%。

(2)対象化学物質

   (注3)  上記のうち、第一種特定化学物質、第二種特定化学物質及び指定化学物質は対象外。

3.調査内容

(4) 化学物質審査規制法に係る試験の実施費用と期間について

  費用(千円) 期間
1. 物理化学性状データ
物理化学的性状試験※1 約600 30〜60日
分配係数試験 600〜1,000 30〜60日
2. 環境中運命
分解度試験 1,400〜2,000 60〜120日
濃縮度試験 6,000〜8,500 120〜180日
3. スクリーニング毒性
変異原性
試験
エームス試験 500〜800 45〜60日
染色体異常試験 1,800〜2,300 60〜90日
28日間反復投与試験 7,500〜9,500 150〜180日
小計 18,400〜24,700  
4. 長期毒性の判定の際の評価項目
慢性毒性試験 114,000 1年6ヶ月
生殖能及び後世代に及ぼす影響に関する試験 45,500〜60,000 3年
催奇形性試験 34,000 1年
変異原性試験※2 4,500 90日
がん原性試験 187,500 3年
生体内運命に関する試験 30,000 6ヶ月〜1年
薬理学的試験 13,000 6〜8ヶ月
小計 428,500〜443,000  

※1: 物理化学的性状試験は、融点、沸点、蒸気圧、蒸気圧、解離定数等
※2: スクリーニング毒性の二試験に小核試験を追加

備考: (1)費用については、国内の複数の試験研究機関の標準料金等に基づく
(2)被験物質の性状により費用は変わることがある。
(3)期間については、準備期間等を含む標準的な場合。


(5) 欧米における難分解性・高蓄積性物質に対する取組状況

(1) 米国における取組(TSCAにおけるPBT(難分解性、高蓄積性、毒性)物質)

 1999年にTSCAの新規化学物質の審査においてもPBTカテゴリーが定められ、難分解性、蓄積性及び毒性に関する評価に基づき審査・規制が行われることとなった。各性状毎にそれぞれ3段階に区分され、P2B2T2又はそれ以上のPBTスコアを持つ化学物質は規制の対象とされる。 具体的には、
 
P2B2T2: 製造は許可されるが同意指令によって規制される。
P3B3T3: 適切な規制方策を計画するのに十分な試験が行われるまで生産が禁止される。
P2B2以上でT1: 規制されない。
 とされている。
 なお、人健康に係る毒性については、反復経口投与毒性・生殖発生毒性併合試験等の結果により評価することとされている。

<PBTのクライテリア>
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P(分解性)1: 水中半減期60日未満、2:60日〜6ヶ月、3:6ヶ月超
B(蓄積性)1: 濃縮倍率1000未満、2:1000〜5000、3:5000以上
T(毒性)  1: 低い懸念、2:中程度の懸念、3:高い懸念





(2)欧州における取組

 現行の審査・管理制度においては、PBT物質に対する特段の措置は設けられておらず、他の化学物質と同様に有害性及びリスクの評価に基づく管理が行われている。
 なお、昨年2月に公表された「将来の化学物質政策の戦略」(欧州委員会作成白書)において提案された新たな審査・管理制度では、POPs物質(昨年5月に採択された残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約の基準を満たすもの)に対しては、新規化学物質か既存化学物質かを問わず極めて懸念の高い物質として認可制度の対象とするとされており、現在、POPs物質以外のPBT物質を対象とする具体的な制度の検討が行われている。また、毒性を要件とせず難分解性・高蓄積性を有する化学物質に対する管理の在り方についても併せて検討されている。


(6) 長期毒性の評価の前段階に用いられる試験方法の例(OECDテストガイドラインによる)

○慢性毒性の評価関係

 慢性毒性を明らかにする慢性毒性試験(1年以上にわたり被験物質を実験動物に投与)の前段階として、以下の試験法が用いられる。

28日間反復投与毒性試験

 実験動物に被験物質を28日間連続投与したときに現れる生体の機能及び形態等の変化を観察し、被験物質の一般毒性を明らかにするための試験。

反復経口投与毒性・生殖発生毒性併合試験

 雌雄の実験動物(一世代)に対して、交配前期間、交配期間、妊娠期間、授乳期間に渡って被験物質を連続投与し、生体の機能及び形態等に対する一般毒性と生殖能や後世代の発生に及ぼす生殖・発生毒性を同時に検出するための試験。投与期間は交配能力により決まるが、28日間反復投与毒性試験よりも長い。

90日間反復投与毒性試験

 実験動物に被験物質を90日間連続投与したときに現れる生体の機能及び形態等の変化を観察し、被験物質の一般毒性を明らかにするための試験。90日間連続投与することにより、離乳後の成熟・成長期から成人期に至るまでの間の暴露で現れる毒性に関する情報が得られ、標的器官と被験物質の生体への蓄積の可能性についても示される。

○生殖・発生毒性の評価関係

 生殖・発生毒性を明らかにする生殖発生毒性試験(多世代にわたり被験物質を実験動物に投与)の前段階として、以下の試験法等が用いられる。

生殖・発生毒性スクリーニング試験

 雌雄の実験動物(一世代)に対して、交配前期間、交配期間、妊娠期間、授乳期間に渡って被験物質を連続投与し、生殖能や後世代の発生に及ぼす影響を検出するための試験。

反復経口投与毒性・生殖発生毒性併合試験

 上記のとおり。

○発がん性の評価関係

 がん原性試験(実験動物としてラットを用いる場合には24ヶ月以上、マウスを用いる場合には18ヶ月以上にわたり被験物質を投与)で示される発がん性を予測するため、以下の試験法等が用いられる。

変異原性試験:細菌を用いる復帰突然変異試験(エームス試験)

 ネズミチフス菌及び大腸菌を使用し、復帰突然変異コロニー数の計測により突然変異誘発性を評価する。

変異原性試験:ほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験

 チャイニーズハムスター繊維芽細胞株等を使用し、染色体異常を持つ細胞の出現率等により染色体異常誘発性を評価する。



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