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1.若年者を取り巻く状況

(1) 高い失業率
 (1) 失業者数、失業率
 近年、若年層の失業者数は増加し、失業率も上昇傾向にある。15〜24歳の失業者数をみると、平成4年(1992年)に約40万人であったものが、平成14年(2002年)には約69万人に増加しており、また、失業率をみると、同じ年齢層で、平成4年に4.5%であったものが、平成14年には9.9%となっている(数字はいずれも年平均)。
 また、若年層の失業率は、15〜19歳で12.8%、20〜24歳で9.3%、25〜29歳で7.1%と全体の水準(5.4%)を大きく上回っている(平成14年平均)。(総務省統計局「労働力調査」、図表1

 (2) 就業率の推移
 人口に占める就業者の割合を示す就業率の推移を15〜24歳についてみると、近年は低下傾向にある(図表2)一方、非労働力人口のうち就業を希望する者の割合をみると、若年層においては他の年齢階級より高い値を示している(図表3)ことから、若年層においては、就業を希望しつつも、仕事を探していない(あきらめている)者が多い可能性がある。

(2) 増加する若年無業者
 (1) 高校卒業者
 高校卒業者は、平成4年(1992年)の約180万人をピークとして、平成14年(2002年)には約130万人に減少している。高校卒業後の進路について平成4年と平成14年を比べると、就職者数が約58万人(その年の卒業者数全体の約32%)から約22万人(同じく約17%)に減少する一方、無業者は、約9万人(同じく約5%)から約14万人(同じく約11%)まで増加している(なお、ここでいう「無業者」とは卒業時に進路未定の者を意味する。)。他方、大学(短大を含む、以下同じ。)進学者数は約60万人で横ばいながら、大学進学率でみると約33%から約45%まで高まっている。(文部科学省「学校基本調査」、図表4

 (2) 大学卒業者
 大学卒業者は、平成8年(1996年)から50万人を超え、平成14年(2002年)には約55万人に達している。大学卒業後の進路について平成4年と平成14年を比べると、就職者数は約35万人(その年の卒業者数全体の約80%)から約31万人(同じく約57%)に減少しているのに対し、無業者は、約3万人(同じく約6%)から約12万人(同じく約22%)まで大幅に増加している。
 ただし、大学卒業者の「無業者」については、留学・研究生となった者や専修・各種学校等入学者計14.6%のほか、国家試験等の就職や進学準備中の者44.1%、純然たる無業者(家事手伝いを含む)10.1%、具体的状況不明22%等となっていることに留意する必要がある。(文部科学省「学校基本調査」、図表5

【注】「無業者」は一般に、いわゆる「失業者」(総務省統計局「労働力調査」における定義は、「調査週において仕事がなく、かつ求職活動を行い、就業可能であった15歳以上の者。過去の求職活動の結果を待っている者を含む」。)に加え、求職意思がありながら、就職をあきらめている者(「労働力調査」における「非労働力人口」の一部)も含む用語である。ただし、ここでの「無業者」は、文部科学省「学校基本調査」において、学校卒業後の進路について、就職・進学等でない者を意味する。

(3) 高い離職率
 (1) 離職率
 雇用保険の被保険者資格の得喪データによると、新規学卒就職者のうち、中卒の約7割、高卒の約5割、大卒の約3割が、就職後3年以内に離職しているが、近年、1年以内の離職率が増加している(図表6)。
 また、本研究会による「若年者のキャリア支援に関する実態調査」(平成15年(2003年)。以下、「若年者キャリア支援調査」。)によると、就職後1年以内の離職率は新規学卒で採用した者よりも中途採用した若年者の方が高くなっており(1年以内の離職率は新規学卒者5.7%、中途採用者7.4%)、逆に、就職後3年以内の離職率は新規学卒で採用した者の方が中途採用した若年者よりも高くなっている(3年以内の離職率は新規学卒者14.5%、中途採用者12.1%)(図表7)。

 (2) 企業規模別・産業規模別の状況
 雇用保険の被保険者資格の得喪データを企業規模別にみると、中小企業の方が大企業よりも若年者の離職率が高い。また、産業別では、建設業、サービス業、小売業・飲食店で平均よりも高い水準となっている。

 (3) 離職理由
 完全失業者に占める自己都合離職者の割合は、15〜24歳では56.4%、25〜34歳では47.7%と他の年齢層に比べ高い水準となっている。(総務省「労働力調査詳細集計」(平成14年(2002年)10〜12月))
 なお、若年者の離職の理由については、離職までの就業期間によって異なる傾向がみられ、1年以内では「仕事が自分に合わない、つまらない」(39.1%)、「賃金や労働時間などの労働条件がよくない」(32.6%)、「人間関係がよくない」(28.3%)が多いが、退職までの就業期間が3年を超える者については、「会社に将来性がない」(36.7%)、「賃金や労働時間などの労働条件がよくない」(32.7%)、「キャリア形成の見込みがない」(31.6%)が多い。(「若年者キャリア支援調査」、図表8

(4) 増加するフリーター
 (1) フリーターの数
 いわゆる「フリーター」の数は、昭和57年(1982年)には50万人であったが、平成4年(1992年)は101万人、平成12年(2000年)は193万人と推計されており、増加傾向にあると考えられる(図表9)。

【注】昭和57年から平成9年のフリーター数と、平成12年のフリーター数は元にしている調査(前者は「就業構造基本調査」、後者は「労働力調査特別調査」を元にしている。)」や対象としているフリーターの範囲が異なり、接続しない点に留意が必要である。具体的には、昭和57年から平成9年については、「年齢は15〜34歳、(1)現在就業している者については勤め先における呼称が「アルバイト」または「パート」である雇用者で、男性については就業継続年数が1〜5年未満の者、女性は未婚で仕事を主にしている者、(2)現在無業の者については、家事も通学もしておらず、「アルバイト・パート」の仕事を希望する者」を指すものとしている。平成12年については、年齢が15〜34歳の卒業者で、勤め先における呼称が「パート・アルバイト」である者(女性については無配偶の者に限定)としている。
【注】平成15年度の「国民生活白書」においては、正社員希望の離職者や派遣社員等も含んだ総称として「フリーター」の語を用い、その数を417万人としている。若年者の不安定就労に係る政策課題を議論する場合においては、正社員希望の離職者等を含まない上記本文の推計値を用いることが適当である。

 (2) フリーターのタイプ分けと、フリーターとなった理由
 フリーターは一様ではなく、幾つかのタイプに分けることができる。
 イ 日本労働研究機構「大都市の若者の就業行動と意識」(平成14年(2002年))によると、先の見通しを立てないままフリーターとなった者(「モラトリアム型」)が47%、正規雇用を志向しながらもやむを得ずフリーターとなった者(「やむを得ず型」)が39%、何らかの明確な目標を持った上で生活の糧を得るためフリーターとなった者(「夢追求型」)が14%となっている(図表10)。
 ロ (株)リクルートリサーチ「アルバイターの就労等に関する調査」(平成12年(2000年))によると、フリーターを辞めて定職に就きたいと思っており、そのために具体的な取組みをしている者(「自己実現型」)が25%、フリーターを辞めて定職に就きたいが、具体的な取組みをしていない者(「将来不安型」)が39%、フリーターを続けたいとする者(「フリーター継続型」)が7%、家庭に入りたいなどその他の者が28%となっている。
 また、フリーターになった理由は、「自分に合う仕事を見つけるため」38%、「自由な働き方をしたかったから」30%、「学費稼ぎなど生活のために一時的に働く必要があったから」26%となっている(図表11

 (3) フリーターの学歴等
 フリーターの学歴をみると、相対的に低学歴である者、または高校や高等教育機関からの中途退学者でフリーターになっている割合が高い。
 また、フリーターである者がどういう経路でフリーターになったかをみると、卒業や中退で学校を離れた時からフリーターになった者が3分の2を占め、この比率は年齢が低い層ほど高い。また、現在フリーターである者の学歴別構成をみると、4割の高卒者、2割の専門・各種卒業者から構成されている。
(日本労働研究機構「若者のワークスタイル調査」平成13年(2001年))

 (4) フリーターの職業生活に対する考え方
 フリーターの職業生活に対する考え方をみると、「正社員として働くことにこだわる」が34.8%、「独立して自分の店や会社を持ちたい」が34.0%であった。
 職業生活において困っていることとしては、「自分の能力・適性にあった仕事が分からない」(21.3%)、「自分が今後どんな仕事をしていけばよいか相談できる機会が不十分である」(21.3%)、「自分の能力・適性が分からない」(20.6%)、「正社員になりたいが、希望する就職先が見つからない」(18.4%)をあげる者が多い。(「若年者キャリア支援調査」、図表12

 (5) フリーターの就労状況
 フリーターの就労状況は、毎日フルタイムで働き正規社員並みのスキルを持っている者から、ほとんど働いていない者まで、様々である。
 フリーターの約6割が年間就労日数200日以上であり、また、1週間に40時間以上就労している者の割合は51.6%となっており、正社員並に働いている者が半数以上を占める状況となっている。((株)リクルート ワークス研究所「非典型雇用労働者調査2001」(平成13年)、図表13
 また、現在の仕事を1年以上続けている者も半数以上を占めており、頻繁に離転職を繰り返しているわけではないが、年収面での正社員との格差は大きい。(日本労働研究機構「就業構造基本調査再分析」平成14年(2002年))
 なお、就業歴をみると、正社員経験を持つ者が53.2%であり、3ヶ月以上の無業経験がある者が4割にのぼった。(「若年者キャリア支援調査」)

 (6) フリーターの能力開発・キャリア形成
 「若年者キャリア支援調査」でパート・アルバイトを多数雇用する企業に雇用されるフリ ーターの能力開発に関わる経験をみると、「マニュアルなしでその都度先輩従業員から業務を学んだ」(47.5%)、「マニュアルに従って業務を学んだ」(31.9%)が多く、「能力開発に関わる経験はない」は16.3%である。
 一方、パート・アルバイトを多数雇用する企業におけるパート・アルバイトの正社員登用の状況をみると、登用の考え・制度「あり」が83.8%であり、うち「人事制度として社員に明示」が23.8%であった(図表14)。

 (7) フリーターに対する企業の評価
 フリーターに対する企業側からの評価をみてみると、企業が中途採用を行う場合のフリーター経歴に対する評価については、フリーター経験があることが採用時に影響「あり」とする企業は33.7%であるが、フリーター経験者の採用実績が「ない」または「わからない」とする企業、企業規模が300人未満の企業では影響「あり」の割合が高い(それぞれ36.4%、34.2%)(図表15)。また、どのようなフリーター経験が企業の採用に影響を及ぼすかという点については、フリーターの通算期間が1年以上である場合や25歳以上でのフリーター経験がある場合に影響があるとする企業が多くなっており、影響を及ぼす理由は、定着、就労意識(特に責任感)、組織への対応力の面での不安などである。(「若年者キャリア支援調査」)
 フリーター自身もこうした厳しい企業の評価を認識しており、およそ半数(49%)のフリーターが、経験や資格がないためにフリーターから離脱して正社員になることが難しいと感じている。(日本労働研究機構「若者のワークスタイル調査」、平成13年(2001年))。
 一方、フリーター経験者を採用した企業は、採用したフリーター経験者の特徴として「態度が特に優れている」(47.1%)、「採用職種と関連した実務経験がある」(43.7%)、「正社員経験がある」(36.8%)等をあげている。(「若年者キャリア支援調査」)

(5) 学卒労働市場の状況
 (1) 新規高卒者
 新規高卒者について、求人数の推移をみると、バブル及びその崩壊による求人数の大幅な増減がみられた後、いったん減少が落ち着いたが、近年、再び減少傾向が強まっている(図表16)。求人数では平成9年(1997年)3月卒52万人から平成14年(2002年)3月卒の24万人に、求人倍率は平成9年3月卒の1.80倍から平成14年3月卒の1.32倍に落ち込んでいる。
 就職率では平成9年3月卒の98.5%から、平成14年3月卒の94.8%に低下している。(職業安定局調べ(各年6月末の数値))
 また、300人以上の大企業への就職割合は平成9年の30.4%から平成12年(2000年)の27.7%に低下している。(職業安定局調べ)
 更に、高卒直後の正社員入職率をみると、男性で平成5〜8年(1993年〜1996年)卒の58.7%から平成9〜12年卒の35.1%に、女性で平成5〜8年卒の56.5%から平成9〜12年卒の47.1%に落ち込んでおり、アルバイト等の不安定な雇用形態が増加していることがうかがわれる。

 (2) 新規大卒者等
 新規大卒者及び新規短大卒者について求人倍率の推移をみると、平成5年(1993年)には大学卒1.91倍、短大卒0.88倍であったのが低下傾向で推移し、平成15年(2003年)(短大卒は平成14年(2002年))には、大学卒1.30倍、短大卒0.51倍となっていおり、新規高卒者ほどではないが、依然厳しい状況を続けている。((株)リクルート ワークス研究所「大卒求人倍率調査」)

(6) 地域間格差の状況
 若年者の雇用・就業に係る都道府県別の状況をみると、15〜24歳の失業率が最低5.5%〜最高20.8%(「就業構造基本調査」平成14年(2002年)9月)、高校新卒者の就職内定率が最低61.8%〜最高99.0%となっており、地域間格差は大きくなっている(職業安定局調べ(平成15年(2003年)3月末現在内定率))。

(7) 企業内におけるキャリア形成の状況
 (1) 若年者キャリア形成の方針
 若年者キャリア形成の方針をみると、「若年者に積極的に高度な仕事にチャレンジさせる」については「積極的に取り組んでいる」が33.9%である。ただし「指導力のある上司の下に若年者を配置する」「若年者の希望や適性に応じた仕事を任せる」「若年者に積極的に高度な仕事にチャレンジさせる」「若年者に積極的に権限を委譲する」のいずれについても、「取り組んでいるが十分でない」が40〜50%にのぼる。(「若年者キャリア支援調査」、図表17

 (2) 企業の教育訓練投資の推移
 30歳未満正社員1人あたりの教育訓練投資の過去3年間の推移について、「変化なし」が多い(48.6%)が、全体の傾向としては、減少よりむしろ増加傾向にある(増加27.4%、減少7.5%)。これについては、企業が正社員の採用数を絞り込んだ結果として、一人当たりの教育訓練投資の水準が変化なしあるいは増加傾向を示したものとも考えられる。

 (3) 正社員のキャリア形成に係わる取組み
 また、正社員のキャリア形成に関わる取組みをみると、「ラジオ・テレビ・専門書・パソコンなどによる自学自習を行っている」(28.5%)、「自分のキャリアプランを踏まえた配置・昇進、仕事を希望している」(22.4%)、が多くなっている。一方「特に何もしていない」という回答が約3割にのぼった。(「若年者キャリア支援調査」)

(8) 就業形態の多様化
 (1) 就業形態の多様化
 就業形態の多様化が中長期的に進展しており、1990年代後半以降やや加速している。正社員は昭和60年(1985年)の3,999万人から平成14年(2002年)3,489万人に減少している一方、パート・アルバイトは昭和60年の799万人から平成14年の1,023万人に、派遣・契約社員・嘱託等は昭和60年の156万人から平成14年398万人にそれぞれ増加している。(総務省統計局「労働力調査」)
 企業の非正社員の活用理由をみるとコスト削減要因が大きく増加している。また、正社員の雇用需要が厳しい中で、やむをえず非正社員となる者が増加している。(日本労働研究機構「企業の人事戦略と労働者の就業意識に関する調査(企業調査)(平成15年(2003年))」)

 (2) 派遣労働者について
 派遣労働者数については全体数で43万人、15〜34歳層で28万人(うち、女性が23万人、82%)となっている(平成14年(2002年)平均)。(総務省統計局「労働力調査」)
 若年者の働く意識が変化したため、正社員や派遣といった就業形態にこだわりがなくなり、自分のやりたい仕事、できる仕事で選ぶ傾向が増えてきており、派遣労働も若年労働者の働き方の選択肢となっていると言える。
 派遣労働者について能力開発に関わる経験をみると、派遣会社でのOff-JT、OJTを受けた者が多いが、「何も受けていない」が33.8%であった。一方、キャリア形成に係る取組みとして、「教育訓練機関への通学、通信教育の利用等により能力や資格を身につけている」をあげる者が26.4%であった。(「若年者キャリア支援調査」)

 (3) 請負労働者について
 近年、若年者で請負労働者【注1】として就労するものが増えつつある。製造現場の生産工程にいわゆる「構内下請」として入る請負事業者に数ヶ月程度の契約期間で雇用されることを繰り返す場合や、引っ越しサービス業務や販売支援業務等を請け負う事業者に1日又は数日の契約期間で雇用されることを繰り返す場合その他多様なパターンが存在するが、その実態は必ずしも十分に把握されていない。
 請負労働に従事している若年者の年齢層は20代が多く、30代になると請負労働から撤退する若年者が多く、中には前歴フリーターという者も多い。請負労働者については、能力開発の機会の充実が課題である。
 こうした請負労働に対する需要は市場動向に対応して短期的に変化しやすい性格のものであるため、雇用関係も短期的かつ不安定なものとならざるを得ないが、一方で、正社員就業ができない、又は正社員就業に対する魅力を感じない若年者の当面の受皿として機能している面もあり、今後更に的確な状況把握が必要である。

(9) 仕事をしていない若年者の特徴
 (1) 仕事をしていない若年者の状況
 仕事をしていない若年者(学生、主婦は除く)の現在の状況をみると、「求職活動中」が43.7%、「資格取得や留学のため勉強中」が22.9%であり、「特に何もしていない」は14.3%である(図表18)。関心を持っていること、熱心に取り組んでいることは「あり」「なし」半々であり、熱心に取り組んでいることの例としてコンピューター・インターネット関係、資格取得、趣味教養などがあげられた。
 交友関係がある人、相談相手ともに「親」「学校時代の友達」が多いが、困ったことを相談する相手が「いない」という者が約2割であった。(「若年者キャリア支援調査」)
【注】同調査はインターネットモニターによる調査であることに留意が必要である。

 (2) 仕事をしていない若年者の学校生活
 学歴は、大学卒・中退者が34.9%と最も多いが、全体として中退率が高いのが特徴である。学校生活の状況をみると、信頼できる先生が「いなかった」とする割合が40.4%にのぼる。一方成績については、5段階で「上のほう」とする者が22.3%と正社員と比較しても高くなっていた。(「若年者キャリア支援調査」)

 (3) 仕事をしていない若年者の就業歴、求職活動状況
 就業歴については、正社員経験「あり」が64.5%であり、学卒(中退)直後の状況は「正社員就職」が43.5%である。なお、将来の職業生活については「非正社員でも構わない」とする者が43.9%を占めている。
 また、求職活動状況については「求職活動をしたことは一度もない」者が20.4%であり、その理由としては「人づきあいなど会社生活をうまくやっていける自信がないから」(33.6%)、「健康上の理由」(29.3%)、「ほかにやりたいことがあるから」(28.3%)が多い。(図表19「若年者キャリア支援調査」)

 (4) 仕事をしていない若年者に対する企業の評価
 仕事をしていない若年者に対する企業側からの評価をみてみると、企業が中途採用を行う場合の無業経験に対する評価については、無業経験があることが採用時に影響「あり」とする企業は49.1%であった。(図表20)。また、どのような無業経験が企業の採用に影響を及ぼすかという点については、通算無業期間が1年以上である場合、直近の無業期間が1年以上である場合や25歳以上での無業経験がある場合に影響があるとする企業が多くなっている。(「若年者キャリア支援調査」)

 (5) 仕事をしていない若年者の職業能力自己評価
 職業能力の自己評価を学歴別に正社員と比較すると、基礎学力はいずれの学歴においても「優れている」とする割合が高く、知識・技能は高校卒/中退者で「劣っている」の割合が、大学・大学院卒/中退者で「優れている」の割合が高い一方、態度(協調性、積極性、責任感、規律、コミュニケーションなど)および経験・経歴については、いずれの学歴においても「劣っている」の割合が高くなっていた。(「若年者キャリア支援調査」)

 (6) 仕事をしていない若年者が職業生活に関して困っていること
 職業生活に関して困っていることについては、仕事が見つからないこと、何らかの事情(心身の健康上の理由、人間関係への不安、無職期間の長さ)により働けないこと、やりたいことが分からない、どんな仕事に向いているのか分からないという不安をあげる者が多くなっている。(「若年者キャリア支援調査」)


2.問題点
 こうした若年者の雇用・就業上の問題点を放置すれば、次のように本人の問題にとどまらず、我国の経済・社会にとっての大きな問題を発生させかねない。
 1つ目として、若年期に修得すべき職業に関する知識や技能を修得できないことにより、当面の就職困難をもたらすだけでなく、将来にわたっても本人の能力不足、不安定就労を招来する。
 2つ目として、若年者の能力蓄積不足、不安定就労状況の長期化は、将来にわたり国全体の技能・技術レベルの向上を阻害し、我国の唯一の資源である「優秀な労働力」という強みを失わせ、成長力の低下や社会の衰退をもたらす。
 3つ目として、こうした若年の不安定就労の長期化は、家庭を持ち、子供を生み・育てる生活基盤の形成を妨げ、社会の一層の少子化を進行させる。
 4つ目として、今後、若年期に能力蓄積ができた者とできなかった者の間に、経済格差の拡大や、それが世代間で繰り返されることによる子孫を含めた階層化の恐れ、さらには、社会不安の増大の懸念もある。


3.原因分析
 ここでは1.で見た若年者をめぐる状況の原因について、労働需要側である企業側の要因、労働供給側である若年者側の要因、労働市場システムその他の要因の3つの観点から分析する。

(1) 企業側の要因
 (1) 若年者の雇用機会の減少
 まず、我が国経済の厳しい状況の下で、企業の先行き不安感が払しょくされず、新規学卒者の採用に対する企業の姿勢が慎重になっており、若年者の雇用機会の減少が生じているものと考えられる。また、厳しい経営環境の企業においては、中高年の雇用維持のために若年者の採用が抑制されているとの指摘もある。
 特に、高卒者について、これまで雇用の主たる受け皿となってきた製造業が、生産拠点の海外移転等により雇用吸収力を減少させている。
 また、仕事内容の高度化に対応し、高度な職業能力を有する人材を求める一方、単純な仕事はパート・アルバイト等を活用するというように、人材ニーズが二極化しており、若年者、とりわけ高卒者の正規雇用の機会が減少している。

 こうした採用に関する厳しい状況は、無業者、若年者、フリーター等の増加の直接の原因となるほか、正社員としての就職に際してのミスマッチを発生させ、早期の離転職を増加させていると考えられる。さらには、こうした厳しい状況をみて、正社員就職を早期にあきらめる者の増加や就職を希望する学生・生徒の学ぶ意欲に悪影響を与え、次にみる就業意欲の減退や職業意識の希薄化の一因となっている恐れがある。

 (2) フリーター、無業経験者に対する企業の厳しい評価
 フリーターや無業の長期化が、若年者のキャリア形成に及ぼす影響は大きい。若年者キャリア支援調査では、フリーターや無業を1年以上にわたり継続していた場合や25歳以上でのフリーターまたは無業経験がある場合に企業の評価が厳しくなり採用に影響を及ぼしている状況が明らかになった。こうした企業の評価が変わらないとすると、フリーターや無業を長期にわたり継続している場合には、それだけで能力向上が阻害される上に、将来的にもキャリアアップの可能な就業機会を得るチャンスがきわめて小さくなり、職業生涯を通じてキャリアアップが困難で、不安定な就業環境におかれる恐れが強くなることを意味している。

(2) 若年者側の要因
 (1) 企業や学校から見た若年者の意欲の問題
 企業や学校からは、若年者の就業意欲の低下や、職業意識の希薄化が指摘されている。
 新卒者(高卒・大卒含む)の採用に関する企業への調査によると、新卒者を予定通り確保できなかった理由として「いい人材がない」が約3割となっており、最近の採用に関する悩みとしては、「学生の就業意識の低下、やる気のなさ、学力の低下、危機感がない」を挙げる企業が62%(66社のうち41社)となっている。(東京商工会議所「新卒者等採用動向調査について」(平成14年(2002年)3月)
 また、高校卒の無業者が増えている原因に関する高校に対する調査結果によると、「生徒の意欲が低下しているため」(83.7%)、「生徒が働かなくとも生活していけるため」(71.9%)が、多くなっており、「求人が不足しているため」(59.6%)を大きく上回っている。なお、学校卒業後、正社員の仕事に従事しなかった者に対して、その理由を尋ねた調査においては、「就職口がなかった」や「就職口はあったが自分が希望する条件に合わなかった」という理由だけでなく、「正社員の仕事に就く気がなかった」との回答がかなりの比重となっている。(旧労働省「若年者就業実態調査」、平成9年(1997年)、図表20)。
 一方、大学や短大に対する調査結果でも、就職意欲のない学生が増えている理由として、「働かなくても生活していけるため」(67.0%)、「自分に向く仕事が分からないため」(66.8%)、「甘やかされているため」(59.5%)等が上位である。また、就職意欲はあっても就職ができない学生が増えている理由としては、「自分に向く仕事が分からないため」(67.2%)、「社会人として必要な基礎的な訓練ができていないため」(63.5%)、「基礎的な学力が不足しているため」(51.6%)、「社会性が欠けているため」(50.0%)となっており、「就職機会がないため」は、34.9%と低い割合に留まっている(図表21)。
 なお、大学への進学率は、高卒者にとって魅力のある多様な働き口の不足が原因であり、実学向きの者も、適性にかかわらず大学に進学しているとの指摘もある。また、親の意識も大学進学偏重であるという問題があり、これが結果として、大卒無業者の増加につながっているものと考えられる。

 (2) 学校側から見た若年者の能力(学力)の問題
 高卒の無業者が増えている原因についての調査では、学校側の認識として、上記のように「生徒の意欲」を問題視するものが圧倒的である一方、「生徒の学力低下のため」とするものは28.6%で、それほど高いものではない。また、企業側の調査によると、採用の際、高く評価するポイントとして、「明るい、元気、協調性などの性格面の良さ」を挙げるものが、一般職、技術職ともに90%超で圧倒的であり、「勉強の成績が良い」を挙げるものは、一般職47.5%(第3位、「適性検査」の次)、技能職28.6%(第5位、「欠席日数」、「リーダーシップ」、「適性検査」の次。)に過ぎない(労働省委託「高等学校の就職指導に関する調査」平成12年(2000年))。
 今後、知識社会に対応した問題発見・解決能力等実践的な能力を育てる教育への転換を図っていく必要があり、こうした新たな教育への要請に対応するため、教員の養成・研修等教育体制の整備が課題である。
 ただし、全体的な傾向として、学区内の学力が就職状況と関連しており、普通科高校で、入学してくる生徒の学区内での偏差値が低い学校は、「無業者」の出現率が高い傾向にある。これは、単に「生徒の学力」のみならず。それと比例した学校側の全体的な進路指導体制や就職支援体制の影響も大きいものと考えられる。

(3) 労働市場システムその他の要因
 (1) 高卒の就職慣行の問題
 まず、学校システムの問題として、指定校制、校内選考、一人一社制といった高卒者の就職慣行は、求人数の激減、求める人材要件の変化等により、見直しが必要な状況にある一方、有効に機能する労働市場システムは、いまだに形成されていない、ということがある。
 こうしたシステムのもとでの就職状況から、次の事実が確認されている。
 まず、高卒就職者が企業に採用される割合が低下してきている。特に、普通科、家庭科での落ち込みが大きい。一方、工業科、商業科では減少しているものの、職業に結びつく専門的な職業教育が行われおり、他の学科に比べ実績企業数、実績企業就職率ともに相対的に高い。また、大企業就職率が減少し、県内の中小企業への就職が増えている。
 また、学力の高い学校、就職指導方針が明確で、就職指導を積極的に展開する方針をとっている学校、学校内での「選考・推薦」に関して厳格に行っている学校、求人の実情を良く理解している学校ほど就職率が高い。
 さらに、無業者、フリーター等の発生は、大都市部で比率が高い。その発生は、「求人全体の状況」や「優良企業からの求人状況」と無関係で、非正規雇用の機会に比例する。
 卒業後の目標について明確な意思表示ができない者は、進路決定の遅延によりスケジュール化した就職システムに乗り遅れ、無業化していることから、早期からの職業に関する意識づけが重要である。なお、この傾向は普通科の「進路多様校」(大学・短大への進学、専修学校への進学、就職という進路が均等にある高校)において特に顕著である。

 (2) 学卒後の就職支援の仕組み等が不十分であることによる問題
 次に、若年入職者の入職経路をみると、新規学卒者については19歳以下層では公共職業安定所が、20歳〜24歳層では学校がそれぞれ大きな割合を占めているが、学卒後未就業者については、公共職業安定所・学校ともに割合が小さくなっており(図表22)、学卒後の就職支援の仕組みが十分整備されていないことが考えられる。
 また、企業の求める人材要件が変化しているにもかかわらず、現状では、企業が求める人材要件や実際の職場に関する生の情報が、若年者に十分に伝達されるシステムとなっておらず、特に、個人のキャリアを重視し、キャリア意識を涵養する職業教育や、就職に当たっての職業情報の提供、指導・助言等の機能が欠けている、という問題が考えられる。
 さらに、失業者、無業者、フリーターについては、キャリア・コンサルティング【注2】や教育訓練等の支援を受ける機会が乏しい。
 加えて、高校中退者や、十分な基礎学力を獲得せずに卒業した者に対する学び直しの機会を提供する機能も十分ではない。

 (3) 能力・資質のミスマッチの問題
 近年、大学卒の採用については、一般に、即戦力志向が強まっているとされ、学生にも資格取得に熱心に取り組む傾向がみられる。
 しかしながら、企業側は、実際には、潜在能力の高い人を採用する傾向が依然強く、必ずしも即戦力を重視しているわけではない。資格についても、資格保有者を優先的に採用する企業は少数で、「無いよりはあるほうがよい」という程度のものが多い。
 また、学校側と企業側の学生の能力・資質についての評価を比較すると、「自分の意見や考えを明確に表現できる」こと、「性格が明るい」こと、「相手の状況を考慮して話ができる」ことは、双方とも高い評価であるが、企業側において、「新しいことへの関心が高い」、「国際的な感覚を身につけている」が高く、学校側の評価は必ずしも高くない反面、学校側の評価する「自分の適性や能力を理解している」、「就職したい産業や従事したい仕事内容が明確である」は企業側で学校の半分の評価しか得ておらず、学校側と企業側で学生の能力・資質評価についての乖離がみられる。


4.若年者のキャリア形成支援施策推進のポイント
 以上のような現状認識、問題意識及び原因分析を踏まえ、今後、若年者のキャリア形成支援についての施策推進のポイントについて検討を行うこととする。
 現在のように安定した職業に就かずにフリーターや無業者となっている若年者が増加している状況をこのまま放置しておけば、若年期における職業能力の蓄積不足、雇用の不安定化によって、将来の我が国を支える人材確保を阻害し、経済の成長力の低下、経済的格差の拡大、社会不安の増大など種々の社会的弊害の発生につながり、大きな国家的、社会的損失を生む恐れがあることは、既に2.で指摘したとおりであり、こうしたフリーター、無業者を生じさせる環境、社会構造の問題点を明らかにした上で、これを解決するための効果的な政策出動を行う必要がある。
 「若年者に対する支援施策の充実は、逆に若年者を甘やかす結果となり、フリーター化、無業化を助長するのではないか」といった意見もある。フリーターや無業者一般を就職やキャリア形成が困難な者として社会的な弱者とみなし、かつ、仮に、雇用保険のような事後的なセーフティネットの水準が手厚すぎる場合には、フリーターや無業の長期化につながることとなり、こうした指摘がまさに当てはまる恐れがある。
 このため、若年者問題への対応に当たっての基本的な姿勢としては、若年者の職業行動や意識の背景となる状況を的確にとらえ、教育、人材育成、雇用を中心とする我が国の社会システムの構造改革に関わる問題として対処していくことを第一義とし、併せて現在生じているフリーター等を安定就業に誘導する対策を講じていくという政策的スタンスをとることが必要と考えられる。
 そこで、以下においては、若年者を取り巻く諸要因が若年者の職業選択や職業意識に様々な影響を及ぼすことを通じて、フリーターや無業者の増加をはじめとする若年者の雇用・就業に関わる問題を引き起こしている状況を若年者のキャリア形成に係る基本的視点として整理するとともに、これを踏まえた施策推進の方向性及び関係者の役割について検討することとする。

(1) 若年者のキャリア形成支援施策に係る基本的視点
 (1) 若年者の職業選択行動、意識の変化
 若年者のキャリア形成支援施策を推進する前提として、若年者の職業選択行動、意識の変化をどう捉えるべきか。
 まず第一に、キャリア形成に係る目標の喪失、職業意識の希薄化により、能力向上、キャリアアップに向けた意欲を高められない若年者が増えていることがあげられる。
 その最も大きな要因は、正社員就職の機会の減少に加え、従来の「新卒就職→終身雇用」の雇用慣行、キャリアモデルの崩壊の下で、これに代わる労働市場のシステム整備が遅れ、正社員のキャリアに対する先行き不透明感が増していることである。こうした正社員の雇用保障に関する不確実性の増大や現実の職場でのキャリア形成に係る環境の悪化により、若年層においては技能・技術や専門性の早期獲得、短期での自己実現可能な仕事への志向の高まりがみられ、例えば、専門性を高める働き方として正社員よりも派遣社員を志向する若年者も増加している。その一方では、従来の正社員就職とは異なった形でのキャリアも指向しつつも自らの新たなキャリアの在り方を発見できない者、自分が何をしたらよいかわからない若年者が増加しており、これがいわゆるモラトリアム型のフリーター等の増加となって現れている。これが従来のような正社員就職をすることは、少なくとも自らの自己実現に向けた欲求を満たすものではないが、これに代わる選択肢を見いだせずに「自分探しの長い旅」を続ける若年者の増加につながっていると考えられる。
 また、現実にも、正社員としての就職が専門性の獲得や発揮につながりにくくなっていることが指摘できる。すなわち、若年者の採用の減少により、若年正社員が極めて多忙でかつキャリアアップにつながる仕事を任せられることが少なくなっていること、また、上司、先輩社員等も自らの業務の処理に忙しく、若年者を指導したり、重要な仕事を任せることにより自ら育つ機会を与えたりすることが困難となっている等、従来の我が国の企業の強みであった企業内での上司−部下、あるいは先輩−後輩の関係の下での人材育成機能が減退しつつある。
 なお、若年者にフリーターを選択させるもう一つの要因として、短期的には確実な収入につながる非正規の労働需要がサービス産業を中心として急速に増大しており、まさに労働力需給が一致することによって若年層における非正規就業への移行が生じていることが挙げられる。
 しかしながら、これは一種の悪循環という側面がある。すなわち、若年層が移行している非正規就業は、それを継続することによっては的確なキャリア形成が困難である上に、不安定な雇用形態で就労している場合が多く、将来の経済社会を担う人材の確保・育成という観点からは問題視せざるを得ない。このため、適切な政策対応を行うことにより、こうした悪循環の鎖を断ち切る必要がある。

 また、何のために働くかという「働く意義」についての意識の変化も進んでいる。若年層におけるキャリア意識の多様化の下で、収入の獲得、生活の維持や企業内での地位、成功よりも、より幅広い自己実現の観点から多様な働き方を選択する傾向が強まっている。
 このこと自体は、社会の成熟の現れという面があると考えられるが、能力蓄積の不足や雇用の不安定化を招く原因となっているとすれば、多様な働き方に対応した社会システムの整備に向けた一定の政策対応が必要となってくると考えられる。

 種々の社会的環境の変化が若年者の職業選択行動や意識に影響を与えている。その中には、職業探索期間の長期化や就職に至る経路の複線化など、社会の構造変化、複雑化に伴う変化として、政策遂行上の前提条件とすべきものがあると同時に、職業意識の希薄化や過度に長期にわたる自分探し等キャリア形成上問題があり、是正する必要のある部分もみられるところである。キャリア形成上問題のある職業選択行動や意識の改革を、若年者への直接的なアプローチにより促すことのみによっては、根本的な対策とはなりにくいと考えられ、むしろ、こうした行動や意識を生み出す原因を明らかにし、そこへの効果的なアプローチを行っていくことが不可欠である。また、その際には、従来の雇用・就業システムへの回帰を目指すのではなく、現在進行している社会的な構造変化や若年者の就業意識の変化、多様化に対応した新たなシステム整備の視点を持つことが重要である。

 (2) 長期フリーター、無業者の増加により発生する問題
 なぜフリーター、無業者の増加が社会的に問題であり、政策対応を通じてこれを抑制することが必要なのか。これについては、次のように整理することが適当である。
 若年者に対する非正規労働の需要がコンビニエンスストアやファーストフード業界等主にサービス産業を中心に増大しており、こうした労働力が当該産業を支えていることから、こうした非正規労働者の存在自体を否定することは適当ではない。しかしながら、これらの業務の内容をみると、職務内容が比較的単純であり、それを長く続けても現実のキャリアアップ、能力向上につながりにくいことから、若年者がこうした職務を長期に続けることで、若年期における能力向上、キャリアアップの機会を逸してしまう恐れがある。また、企業内で正社員と同様のキャリアアップの仕組みが適用されることも少なく、さらには、中途採用に関しても、長期フリーター、無業者に対する企業の厳しい評価という現実がある。これが国全体としての人材の確保・育成の観点からマイナスの効果を及ぼすものであり、マクロの視点からの政策介入が必要となると考えられる理由である。

 (3) フリーター、無業者への支援
 上記のような、フリーター、無業の長期化の社会的な問題を踏まえ、フリーター、無業者に対するキャリア形成支援の仕組みを整備することが必要である。
 まず、他の明確な職業上の目標の実現を志向しながら、当面の生活維持のためにフリーター就業を行っている者(「夢追い型」)や、正社員就職のための求職活動を行いながら生活維持のためのフリーター就業を行っている者(「やむを得ず型」)等については、職業上の目標を明確に有している者(後述の「目標既設定型」)であり、当該本人にとって、フリーター就業は一時的又は緊急避難的な意味を持つことから、これらの者に対しては、一般的には、通常の就職支援や能力開発の機会が利用しやすいように配慮するなどの政策的対応で足りることが多いと考えられるが、適職に到達するために要する期間があまりに長期化することは、円滑な職業能力蓄積の視点からも回避すべきであり、現実の労働市場の状況を踏まえた職業生活設計を支援することが必要である。
 一方、将来の職業的な目標がないか、あいまいなままでフリーター就業や無無業を継続し、何らかの意識改革をしなければそのまま長期にフリーター就業や無業を継続する恐れのある者、又は、すでに長期にフリーター就業や無業を継続している者について、早期に、就業意識を高め、長期のフリーター就業や無業を脱却して、より能力向上、キャリアアップにつながりやすい就業に移行させることが重要となる。
 その際には、常用雇用のみならず、実習や就業体験、トライアル雇用【注3】等の多様な受け入れの在り方を模索、活用していくことが必要となろう。
 さらに、フリーターに対する労働需要の大きい産業、企業においては、フリーターの長期化の社会的な弊害を認識し、フリーターの長期化を防ぎ、キャリアアップに導くことを、その社会的な役割として明確に認識しつつ、取組みを進めることが必要であると考えられる。
 現に、フリーター就業や無業を選択している若年者についても、こうした将来にわたるデメリットを勘案した合理的な行動として長期のフリーター就業や無業を選択しているものとは到底言い難く、こうしたデメリットについても若年者に対し情報提供するとともに、キャリアアップに問題のある長期のフリーター就業や無業の選択を可能な限り行わないように誘導していく必要がある。
 一方、企業においても、若年者の育成を社会全体の重要課題としてとらえ、特に、現下のフリーター、無業者に対する対策の重要性を認識しつつ、フリーター、無業の経歴を有するものであっても、働く意欲のある者については、産業界全体として、様々な受け皿を確保する方向で積極的な取組みが求められる。

 (4) 高校中退者への対応
 フリーター、無業者の発生要因として、特に注目しなければならない部分として、高校中退比率の増加がある。高校中退者は、高校生の総数自体が現象する中でも、年間約10万人程度が継続して発生しており、中退者の比率は高まる傾向にある。
 高校中退者については、企業への正規就職は極めて困難であり、その多くが、フリーターや無業に陥っているものと考えられる。
 このため、まず、学校教育の機能として、高校中退者を減少させる努力が必要であることは当然であるが、現実に発生する中退者については、次のような対応を行うことで、フリーター、無業化を防止し、又は、フリーター、無業から安定就職への移行の促進を図っていくことが必要である。
 具体的には、まず、高校中退者が就職に必要な基礎的な能力を獲得する機会の確保である。これについては、まず高卒レベルの基礎的学力の付与のための「学び直し」の機会の提供が不可欠である。高校中退者が参加しやすいプログラムを準備するとともに、能力修得の結果を公的に証明する仕組みの整備が重要である。
 こうした基礎的学力を修得した上で、継続的なキャリア・コンサルティングを行いつつ、必要な職業訓練、就職支援、職場定着支援のプロセスに誘導することが必要である。
 こうした取組みの効果的な推進のためには、地方公共団体が中心となって学校と公共職業訓練施設等の相互連携の強化、情報共有等を進めるとともに、個々人の状況やニーズに見合ったきめ細やかな支援プログラムの提供に務めることが有効であると考えられる。

 (5) 若年者に対する対策実施における特別なアプローチの必要性
 若年者の雇用対策は、一般の就職困難者に対する対策とは異なるアプローチを必要とするいくつかの視点がある。

 必要な施策別のタイプ分けの必要性
たとえば、障害者や高齢者など、就業に関して不利な状況におかれていることが通常であると認識できるグループに対する施策については、そのグループ全体を対象とした支援プログラムを適用しやすいのに対し、若年者については、若年者一般が要支援者というわけではなく、また、フリーターや無業者についても、自らの意思でそれを選択している場合には、施策の対象とするか否か、また、どのような施策を適用するかについて、やむをえずフリーターや無業者になっているものや積極的な求職活動をしているものとは異なる対応が考えられる。このため、フリーターや無業者については、いくつかの観点からのタイプ分けを行った上での対応が必要である。
 具体的には、フリーター、無業者については、施策対応の観点から次のようなタイプ分けが可能ではないかと考えられる。

(1) 目標既設定型(夢追い型+やむを得ず型)
  「一定の目標を持ちながらも、フリーターとなっている者」
〔考えられる施策対応〕
 ・ キャリア・コンサルティング=無理な目標設定でないか、本人の適性、本人の目標へ向けての努力をチェック、次のステップへ誘導する。
 ・ 企業委託訓練、トライアル雇用、デュアルシステム【注4】等の実践的訓練により、目標への結びつけになるステップを作る。

(2) 職業探索型
  「自分の適職が何であるかを探索ないし不安に思い、フリーターとなっている者」
〔考えられる施策対応〕
 ・ キャリア・コンサルティング=自らの志向、適性、能力と見合った分野を考えるための体験や知識の習得を行い、目標の絞り込みを行うように誘導する。
 ・ インターンシップ【注5】、ジョブシャドウイング【注6】、ヤングジョブスポット【注7】における自主的活動等を通じた実体験を実施する。

(3) 組織不信等モラトリアム型
  「企業や組織に対する不信感を持つか、性に合わないと感じる等により、当面フリーターを続けたいと思っている者。」
〔考えられる施策対応〕
 ・ キャリア・コンサルティング=自らの志向、適性、能力と見合った分野を考えるための体験や知識の習得を行うように誘導する。
 ・ ボランティア、企業、SOHO【注8】等の実体験機会の拡大を促進する。

(4) 能力不足型
  「能力の不足により、フリーターや無業者になっている者(長期的にフリーターを続けることによって年齢の割には職業能力が身に付いてない者を含む。)」
〔考えられる施策対応〕
 ・ キャリア・コンサルティング=自らの志向、適性、能力と見合った分野を考えるための体験や知識を習得するとともに、必要な能力開発を行うように誘導する。
 ・ 目標設定、日本版デュアルシステム等による実践的訓練

(5) 意欲欠如型(主として無業者)
  「働く意欲の欠如(家庭に入りたいと思っている者を含む。)により、フリーターや無業者になっている者」
〔考えられる施策対応〕
 ・ 他人とのコミュニケーションの自信がない等によりハローワーク等の従来の支援機関の利用を躊躇しやすい者の支援窓口として、ヤングジョブスポット等を整備する。
 ・ 基礎的能力の付与、補習教育、プレ訓練(マナー、社会性訓練)
 ・ キャリア・コンサルティング=自らの志向、適性、能力と見合った分野を考えるための体験や知識の習得を行うように誘導する。
 ・ ボランティア、企業、SOHO等の実体験を実施する。

 若年者が特定の施策対象となることによる悪影響の問題
 上記のようなタイプ分けを行って、施策対応を行う場合にあっても、特定の施策を具体的な個人に適用するにあたっては、さらに注意が必要である。
 すなわち、特定の個人が一定のフリーター等のタイプに分類され、それに対応した支援策の対象になっていることが明らかになること自体が、当該若年者に対する職業上の評価を低下させ、その就職を困難にさせるという効果が生じる恐れがある。このため、個々の若年者に施策を適用する場合には、こうしたマイナスの効果が回避できる支援の仕組みとする必要がある。
 具体的には、特定の要素でカテゴライズされた若年者に対する施策をパッケージ化して適用するのではなく、個々の若年者に対するキャリア・コンサルティングを通じて、当該若年者に必要な支援施策を取捨選択し、いわばオーダーメイドでコーディネートしていくことが必要であり、施策メニューの整備に当たっても、可能な限りユニット化して個別の若年者ニーズに合わせて施策メニューを組み合わせしていくことができるようにすることが必要である。

 (6) 男女がともに能力を発揮するための環境整備
 雇用の分野全体において女性が能力を発揮できる雇用環境の整備が進んでいるが、若年者のキャリア形成においても、男女の均等な機会と待遇の確保を推進したり、仕事と育児等の両立を支援することにより、男女がともに能力を発揮し、キャリアを形成する環境を整えることが重要と考えられる。
 育児後などにキャリア形成の再開を希望する場合、生涯に渡ってキャリア形成ができるような長期的キャリア展望を若年期に持っていたか否かがその成否に大きく影響する。このため、教育訓練や相談等により円滑な職場復帰や再就職支援をする必要性はもちろんのこと、キャリア中断の前に、一定の専門的知識・技術を習得し、また長期的なキャリア展望できるような経験、ローテーションを意識して積ませることや、若年者本人も早いうちから専門的知識・技術の習得や資格取得を心がけることが重要である。

(2) 若年者のキャリア形成支援のための施策
 若年者の適職探索期間の長期化や就業に至る経路の複線化に対応して、これまでの学校卒業即雇用という仕組みだけでなく、各個人の能力、適性に応じ、試行錯誤を経つつも、職業的自立を可能とする仕組みが必要である。
 また、技術革新の進展などの中で職務が高度化し、専門的知識・技能の他、問題発見・解決能力等のような変化に柔軟に対応できる能力が一層重要になっている。
 こうした構造的変化の下で、若年者問題の根本的解決のためには、若年者に対する職業能力開発機会の抜本的な拡充を図るとともに、労働市場システム、教育訓練システムの全般的改革が必要である。

 (1) 若年者に対する職業能力開発の充実
 若年者の能力開発については、従来、新卒採用を前提として、企業がその主たる役割を担ってきた。しかしながら、近年において、経営環境の悪化等から、企業が若年者に対して行う能力開発については、いわゆるコア社員への集中的な能力開発投資を行う傾向が強まり、社員一律の教育訓練への投資は減少傾向にある。採用方針も、新卒採用から即戦力採用への移行が生じている。
 こうした状況の下で、若年者の能力向上を図り能力のミスマッチの解消を通じて安定就職に結びつけるためには、以下のような対応が必要となってくると考えられる。

 企業が若年者に求める能力要件の明確化
 第1に、企業が若年者に対し、どのような能力を求めているかについて、具体的に明確化を図る必要がある。
 求める能力が明確でなければ、若年者が就職をめざしてどのような能力開発目標を掲げて努力すればよいかわからない。従来の新規学卒の採用慣行の下であれば、学校での学業成績を基準として応募企業が決められてきており(一人一社制)、まず学業に努力するという目標を持つことができるというメリットが、また、企業も指定校制等により一定の学力水準の生徒が継続して採用できるというメリットがあった。
 しかしながら、企業の採用方針について、個々人の有する能力をより慎重に吟味して採否を決定するという方向転換が進む中において、求める能力の内容を具体的に示されないままで就職活動の段階での企業による選別が厳しくなることとなれば、生徒の学ぶ意欲、能力向上意欲を更に著しく減退させる恐れがある。
 したがって、新卒求人が量的に縮小し、かつ、個々人の能力をより厳しく吟味して採用するという方向性の下では、どのような人材を求めるかを具体的に明らかにし、その人材要件に基づいて採用を行うということが、今後における企業の重要な社会的使命になってくると考えられる。
 なお、新たな産業分野や職種に係る能力要件については、企業や業界における明確化に向けた主体的な取組みが行われにくい部分であるが、むしろ、こうした新分野こそ若年者の新たな雇用就業機会として有望であり、社会的により能力要件の明確化に向けた取組みを進め、若年者の就業を促進する必要があると考えられる。

 若年向けのキャリア・コンサルティングの推進
 次に重要な点が、上記イの取組みによって明確化された能力要件を踏まえつつ、個々の若年者の能力開発目標、キャリア設計を具体化するプロセスに対する支援である。
 従来の雇用慣行の下では、どういう会社に入るかという目標がキャリア目標として重要であり、それ以降のキャリア形成については、会社主導型であるため、入社以前から自らの具体的なキャリア計画を明確化しておく必要性は必ずしも大きくはなかった。しかしながら、今後、労働移動が増大する中では、労働者自らがキャリア設計を行い、それに沿った職業選択、主体的な能力開発を通じてキャリア形成を行っていく必要がある。キャリア形成の方向を決める主体が企業から個人へと移行しているわけである。これを円滑に進める仕組みとしては、学校段階からのキャリア教育を強化し、学生生徒が自らのキャリア選択を行うという意識を高めるとともに、キャリア・コンサルティングを受けられる機会を確保し、労働市場における様々な情報を提供しつつ、その職業生活設計と職業選択の支援を強化する必要がある。
 このためには、若年者向けのキャリア・コンサルティングを担う人材や組織を官民で積極的に育成する必要があるとともに、こうした人材・組織を活用して学生・生徒がきめ細かなキャリア・コンサルティングを受けることができる仕組みを整備するべきである。
 現在、キャリア・コンサルタントについては、平成14年度から5年間で5万人の養成が国の目標となっており、具体的な養成に当たっては、国が専門家の意見を聞いて策定した能力基準を踏まえ、官民の教育訓練機関において教育訓練コースが運営され、かつ、民間による能力評価・認証がなされているが、学生・生徒等の若年者に対して行うキャリア・コンサルティングを適切に行うためには、現行の能力基準では、若年者の職業意識の啓発や自己理解プロセスの支援や学習・能力開発支援の手法等に関する部分が必ずしも十分ではないと考えられる。
 このため、学生・生徒等の若年者向けのキャリア・コンサルタントに求められる能力要件を明確化した上で、民間を主体とした養成を推進するとともに、こうした若年向けのキャリア・コンサルタントの学校等における積極的な活用やハローワーク等への若年者ジョブサポーター【注9】等としての効果的な配置、さらには、若年者のキャリア形成を支援するNPO等における自主的な若年向けキャリア・コンサルタントの活動の促進が、今後重要となってくるものと考えられる。
 なお、アメリカにおいては、教育、学校及び職業に関するカウンセラーが、1998年(平成10年)の時点で18万2,000人となっており(「Occupational Outlook Handbook 2001」(米国労働省))、また、その相当数が学生・生徒に対するカウンセリングに従事しているといわれているところであり、我が国の労働市場において、今後、個人の自立的なキャリア選択の必要性が高まるにつれて、学生・生徒に対するものを含め、キャリア・コンサルティングの重要性が増大するものと考えられる。

 若年者向けの実践的な職業能力開発機会の充実(日本版デュアルシステムの導入等)
(イ)日本版デュアルシステム
 次に、こうした若年者個々人のキャリア形成の目標が明確化された上で、若年者の実践的な職業能力の開発・向上を可能とする仕組みづくりが課題となる。
 若年者の職業能力開発については、若年者が企業に受け入れられて実践を通じた能力向上を図ることがもっとも効果的である。この意味で、雇用あるいは実習という形で若年者が企業の現場で就業や体験をすることの重要性は一層強調すべきである。
 しかしながら、一方で、企業が若年者を育成する能力が減退してきている傾向も認められる。これについては、不況による能力開発投資の減退、コア人材への能力開発投資の集中化といった人材育成に対する企業の姿勢の変化に加え、人員削減や採用抑制による社員の繁忙化等による会社組織自体の人材育成力の減退が上げられる。こうした中で企業が対応できない部分を単純に従来型の公共職業訓練の受皿拡大等により代替することは困難であり、若年者の実践的な職業能力開発機会を確保していくためには、若年者が企業現場との接点をできるだけ多く持ちながら効果的に能力向上をしていくことができる新しい枠組みづくりに取り組むことが不可欠である。
 特に高卒者については、雇用の場が大幅に減少している中で、卒業後に本格的雇用に至らない層についても、企業現場に触れながら企業の求める能力を着実に身につけていくことができる機会を拡大していくことが必要であると考えられる。具体的には、企業と教育機関をコーディネートし、企業実習と一体となった教育訓練を行うとともに、修了時に実践力の能力評価を行う仕組みが想定される。

(ロ)公共職業訓練
 公共職業訓練については、従来は学卒者向けの長期訓練や学卒未就職者向けの民間委託訓練を除き、若年者向けに特にコーディネートした訓練コースは用意されていなかった。しかしながら最近の若年者雇用の状況を踏まえ、平成14年度補正予算から、職業意識啓発や企業実習を組み込んだ若年者向けの職業訓練コースが設定されているほか、フリーター等を対象に「プレ訓練」(職業意識啓発や就業に係る基礎的知識の付与を目的に、民間訓練機関等を活用して実施される講習。)も行われている。若年者の特性を踏まえたこのような職業訓練コースの整備を、民間教育訓練機関や企業と連携・協力しつつ一層推進することが必要である。

(ハ)民間ベースでの教育訓練
 更に今後においては、若年者に対する民間ベースでの教育訓練についても、企業の求める人材要件等も踏まえつつ、解決能力等の実践的能力の向上、更にはコミュニケーション能力といった社会人として基礎的なスキルの獲得等、幅広い雇用開発ニーズに対応した教育訓練コースが整備されていくことが期待される。なお、教育訓練の目的や内容、受講後の就職や資格取得状況等、教育訓練の効果についての情報が的確に開示され、若年者自身が自らの受講すべき教育訓練を適切に選択できるような仕組み作りが必要である。現在、教育訓練給付の指定講座については、こうした情報をインターネットを通じて広く提供するシステムが運用されているが、教育訓練機関自らが、こうした情報を積極的に開示することを、社会的な取組みとして一層促進していくことが重要であると考えられる。

(ニ)ITの活用
 IT化の進展に伴い、ITを活用した学習、教育訓練のツールとして、e-ラーニング【注10】のシステムやコンテンツの開発が進んでいる。e-ラーニングは、時間や能力に合わせた学習が可能であること、到達度の管理等の点で有効であることから、職業訓練の分野においても導入が進んでいる。若年者はITに対する習熟度が比較的高い層であり、その有効性は高いと考えられることから、上記の職業能力開発機会の確保に当たっては、e-ラーニングの活用にも留意すべきである。さらに、情報提供、キャリア・コンサルティング、適性検査、能力評価などの各分野においても、ITの活用が望まれる。

 (2) 労働市場システム、教育訓練システムの全般的改革の必要性
 高卒者の進路選択の仕組みの改革
 高卒者に対する求人が減少している中で、就職が困難な者を学校教育や実習等の更なる教育訓練プロセスに誘導することは一定の合理性を有する施策であると考えられる。
 すなわち、これにより、当面のフリーター化、無業化が避けられるという消極的な意味と、当該就職困難の理由が能力の不足、ミスマッチである場合には、その不足を補い、ミスマッチを解消させ、教育プロセス終了後の安定就職を促進する効果が期待できるという積極的意味が認められるからである。
 しかしながら、上述の消極的な意味においては、フリーター化、無業化を一定期間先延ばしにするだけの効果しかなく、結局は当該教育訓練プロセス終了後のフリーター化、無業化を避けられないばかりか、能力不足、ミスマッチがさらに拡大し問題を悪化させる恐れさえある。
 したがって、就職困難者を更なる教育訓練プロセスに誘導するとしても、その内容が、その者の適性、希望や将来の職業生活設計等に照らして適切な就職、能力向上、キャリア形成が可能なものとなっているかどうかを厳格に吟味していく必要がある。
 現状では、高校卒業時の就職困難者が次善の選択として大学進学を選択している傾向がみられるが、こうした選択が、上記のような消極的な意味での効果しかないのか、積極的に能力不足、ミスマッチを補うこととなるのかについての検証が必要であり、消極的な意味のウエイトが大きいと認められる場合には、高校卒業時点において、将来のキャリア形成につながる新たな受け皿を用意していく必要がある。

 職業探索期間の長期化等に対応した多様なキャリアルートの整備
 社会の複雑化等に伴い、職業探索期間が長期化し、また、職業に至る経路の複線化が進むと考えられる中で、キャリアとして価値のある多様な適職探索の在り方とその選択を支えるシステムの整備を行い、もって、多様なキャリア選択ができ、かつ、やり直しの可能な社会を構築していく必要がある。
 今後の若年者のキャリア選択のあり方としては、引き続き、新規学卒就職が大きなウエイトを占めるものの、それ以外の就職ルートについても様々なものが生まれてくると考えられる。
 例えば、学校卒業後、いったんは非正規就業に就いた上で、一定期間、自らのキャリア設計の明確化、能力開発等を経た後に正規就職を目指す場合や、高度な専門能力の習得と発揮を目指して派遣社員としてのキャリア形成を選択する場合等多様なキャリアルートが今後とも拡大していくことが予想される。
 また、企業への就職以外の選択肢(SOHO、起業等)も拡大するとともに、いったん企業に就職してから起業、独立を目指す場合も多くなってくると考えられる。
 企業内においても、社内公募制等により、個人の自発的なキャリア選択を支援する仕組みが発達し、個人の主体的な選択を繰り返しながら適職に到達することが可能になることにより、企業に就職することの魅力も再び向上してくることが期待される。
 一方、現状では、新規学卒時に正規就職できなければ、安定就職への道が険しい状況にあり、新規学卒即就職以外のキャリアルートの選択が、若年者にとって著しく不利になる場合も多くなっている。これは、様々な構造変化への対応能力に欠ける従来の就職、職業選択のシステムを維持し続けていることの結果であり、若年者向けの新たな労働市場整備を積極的に進め、新規学卒就職以外にも多様な適職選択ルートを社会的に確立していく必要があると考えられる。
 さらに、その際には、職業能力評価制度の整備を含む能力を機軸とした労働市場整備を行い、企業もこれにより客観化された能力を基礎として採用活動を行うなどにより、年齢やフリーター経験者であること等の表面的な経歴等による職業選択上の不利益を解消し、フリーター、無業者を含めた若年者の適職選択の機会を拡大していくことが重要である。

 なお、我が国の学卒就職システムは、新卒者採用〜終身雇用という日本型の雇用システムの入り口として重要な機能を有してきたが、最近における中途採用市場の拡大、学卒求人、特に高卒求人の減少の下で、従来の就職システムを維持していくことは、学卒就職における求人、求職のミスマッチを一層増大させ、学卒者の就職に対する意欲の減退、就職後における不適合の拡大をもたらし、若年層の雇用を不安定化させる原因になりつつある。
 こうした状況への対応策として、学卒市場と既卒者市場を意識的に近づけ、融合させていくことが有効ではないかという考え方がある。
 すなわち、既卒者については、即戦力採用として一定の能力、経験を採用基準としている企業が多いと考えられが、これは、大多数の若年者が学卒即就職している時代の中途採用の考え方であり、企業が中途採用に対する意識を改め、学卒者と既卒者を同等に取り扱うようにすることで、労働市場としての規模を拡大し、ミスマッチの発生が抑制されるのではないか。現状では、高卒求人の減少により生じる需給のミスマッチがさらに高卒求人の減少を促し、さらにそれが高卒者の就職希望をも減退させるという悪循環が生じており、高校卒市場のみの改革でこうした悪循環を断ち切ることが困難になっており、中途市場との融合が有効ではないかという考え方である。
 こうした考え方に対しては、「新卒市場の求人と中途市場の求人とは必ずしも競合しておらず、新規高卒市場の閉鎖性がむしろ高卒者の雇用機会を狭めているのであり、両市場の融合は有効ではないか」という肯定的な意見、「現時点で新規高卒市場と既卒者市場を政策的に融合させることは、新規学卒者の選別をより厳しくし、高卒者のフリーター化、無業化を助長してしまうのではないか」という否定的な意見のほか、「日本版デュアルシステムを推進していけば両市場は自然に融合するのではないか」という意見等が出されたところである。本研究会としては、今後における重要な論点として指摘しておくこととしたい。

 労働市場インフラの整備
(イ)受給調整機能の強化
 ハローワークにおける若年者の需給調整機能を強化することが重要であり、特に、就職困難な若年者については、フリーター、無業の予防等の観点から、ジョブサポーター等によるマンツーマンの就職支援体制の整備が求められる。

(ロ)若年者の特性を踏まえた身近な支援窓口の整備
 職業探索の過程にある若年者、特に、フリーターや無業者については、一定の職業能力を持っていながらコミュニケーション面での自信がないことなどにより、ヤングハローワーク等通常の職業相談機関の利用を躊躇する若年者も少なくないと考えられる。また、主体的な求職活動に取り組む前提として、職業選択に関する動機付けや適性発見を必要とし、従来の職業相談等の仕組みのみでは対応が困難な者も多くなっていると考えられる。
 このため、ヤングハローワーク等による若年者の求職活動や能力開発に対する支援に至る前段階での支援の仕組みとして、若年者自身の主体的な取組みを通じて職業意識の啓発や適性発見を促するための相談・支援のための身近な窓口の整備を行っていく必要がある。具体的には、厚生労働省が、平成14年度補正予算から実施しているヤングジョブスポット事業等、若年者が自らの職業探索、就職活動に主体的に取り組むことを側面から支援する形のサービスを若年者のキャリア支援を行うNPO等とも連携を図りつつ充実させていくことが有効であると考えられる。

(ハ)能力要件の明確化と学卒・若年向け職業能力評価・公証システムの整備
 能力を軸とした求人・求職システムを広範に機能させるためには、企業が若年者に求める人材の能力要件を明確化し、これを集約して学校や学生に提示する仕組みづくりを進めるとともに、新たに学卒・若年者向けに実践的職業能力を評価・公証する仕組みを整備することが適当である。こうした評価・公証制度は、若年者がキャリア目標を設定したり、企業が採用の目安を設定したりする際に有用である。
 なお、若年向けの評価・公証制度については、技能系職種については技能検定3級対象職種の拡大、事務系職種についてはビジネスキャリア制度の枠組みを活用して社会人基礎レベルの評価試験の整備に係る検討がそれぞれ進められている。
 また、能力評価の結果を、これまでの学習歴や就業歴と併せて記録することにより、能力を持ち運びできる仕組み(キャリア・パスポート)の整備を行い、キャリア・コンサルティングや求職活動に効果的に活用していくことも有効であると考えられる。

(3) 施策推進に当たっての各関係者の役割
 以上の施策推進の方向性を踏まえ、それぞれの関係者の役割を整理すると次のようになると考えられる。各関係者が、それぞれの役割を主体的に果たすとともに、関係者相互の的確な連携・協力を図っていくことが肝要である。

 (1) 企業の役割(若年者を受け入れ、育てる主体としての責務)
 若者を一人前の職業人に育て上げ、次代を担う人材として確保していくことは、社会の維持発展のために不可欠な機能である。こうした機能をどのような主体が担うかについては、それぞれの時代における就業構造にもよるが、現代社会においては、多くの個人に働く場を提供するのは企業であることから、企業が若年者を育てる主体としての重要な社会的使命を担っているといえる。
 具体的には、まず、企業一般に求められるものとして、若年者に対する雇用、職業体験、実習の場の積極的な確保、若年者に求める能力要件の明確化、能力を基準とした採用、若年者の雇用管理の改善等を通じた職場定着の促進、自立した職業人の育成(職業的自立)の観点からの職務配置、能力開発、キャリア・コンサルティング等のキャリア形成支援等が考えられる。
 更に、フリーターを多数雇用する企業については、これらに加えフリーター就業の長期化によるキャリア形成上の問題にかんがみ、フリーター就業の長期化防止に取り組む必要がある。フリーターを多数雇用する企業に求められる取組みとして、雇用するフリーターに対する社内でのキャリアアップの仕組みの整備(正社員登用の制度化と実効ある運用の確保など)、社外でのキャリア形成に向けたキャリア・コンサルティングサービスの利用についての指導勧奨の実施等が考えられる。
 上記のような企業の取組みを促進するためには、若年者の育成を産業界全体の社会的使命として認識し、個々の企業の取組みを積極的に促進すること、また、国としても、こうした取組みに対し、具体的な取組みの在り方に関する指針やモデルの提示、好事例の普及等により支援することが必要である。

 (2) 学校の役割(実践力、人間力を育てる主体としての責務)
 地域社会の教育機能が低下した現在、従来地域社会が持っていた機能を含め、若年者の実践力、人間力を育てる広い意味での教育機能について、今後、学校が担うべき役割が高まってくるものと考えられる。
 すなわち、学校教育においては、職業探索期間の長期化や就業に至る経路の複線化に対応し、若年者が、各個人の能力、適性を踏まえた上でキャリア設計、職業選択を行い、自立した職業生活を営むことを可能とするキャリア教育、進路指導の実施が求められる。その一環として、総合学習の活用や特別の枠組みにより職業体験学習をカリキュラムに的確に位置付けることや、卒業するための必修単位として認定することにより、これまで以上に職業体験機会を拡大すべきである。
 また、工業・商業高校、高等専門学校等の実学ルートの拡大や、現行の工業・商業高校のカリキュラム内容を産業界で求められる技術・技能に対応した見直しの実施など、実学教育の充実に努めるべきである。
 さらに、技術革新の進展などの中で職務が高度化し、専門的知識・技能の他、問題発見・解決能力等のような変化に柔軟に対応できる能力が一層重要になっていることから、産業で求められる能力を考慮したカリキュラムを実施するよう努めるべきである。また、実践的能力を育てる仕組みの整備として、基礎学力、社会常識、職業生活に必要な基礎的知識の付与や中退者等に対する学び直しの機会の拡充が必要である。
 なお、これらの教育を実施するうえで、教員の資質向上や学校の教育体制の充実に取り組むだけでなく、必要に応じ、学校外の機関や外部の専門的人材(キャリア・コンサルタント等)との連携にも留意すべきである。なお、地域の企業やその団体が、学校の行うキャリア教育、職業体験等に対する積極的な協力を行うことが重要である。このため、地域の企業と学校を結びつけ、学生・生徒に効果的な職業体験プログラムを提供する仕組みの整備が不可欠である。

 (3) 国の役割(若年者のキャリア形成を支える社会システムづくりを進める主体としての責務)
 新たな若年労働市場システムの整備
 国は、若年者の円滑なキャリア形成を阻害している社会的な構造(システム)の改革を進める観点から、既にみたような職業探索の長期化・複線化に対応した実践的能力開発の仕組みの整備(日本版デュアルシステムの導入等)、若年者に求められる能力要件の明確化、職業能力開発・公証制度の整備等を効果的に進めることにより、年齢やフリーター経験者であること等の表面的な経歴等による職業上の不利益のない能力を機軸とした若年労働市場の整備を行っていく必要がある。

 若年者の新たな就業分野の開拓と効果的な誘導
 若年労働者を求める最も有力な分野は、新規成長分野であり、職業意識の高い若年者が新たな産業分野を支えることにより、更なる雇用の場が生み出されるという好循環を作り上げていく必要がある。
 このため、国においてもサービス分野等における新たな人材ニーズを早期に把握し、学生・生徒を含む若年者に職業意識の向上、キャリア目標の明確化、能力開発への積極的取組みの促進等を図っていくことが必要であると考えられる。

 若年者のキャリア形成を支える主体の育成、活用 若年者の個々の適性やニーズに対応し、個人別のきめ細かなキャリア支援が可能な仕組みの整備に努めるべきである。
 このため、次のように、若年者のキャリア形成を支える主体の育成、活用に取り組む必要がある。
 ○ 多様な受皿や仕組みを整備して若年者を育てる企業(ユースフレンドリー企業)のモデル化
 ○ 地域において若年者支援を行うNPO等の育成
 ○ キャリア・コンサルタントの効果的な活用
 キャリア・コンサルティングを効果的に進めるための体制づくり(学校その他の関係機関における活用の促進等)
 ○ 若年者による自発的なキャリア形成のためのネットワークづくり

 企業の取組みの推進(若年者のキャリア形成支援に対する企業の取組みに係る指針の策定)
 国は、若年者のキャリア形成に対する企業の社会的使命についての認識を高め、具体的なキャリア形成支援のための取組みに結びつけるための施策として、若年者のキャリア形成支援に対する企業の取組みに係る具体的な指針を策定・公表し、その周知徹底を図ることが適当である。
 すなわち、指針においては、雇用や実習の場の提供を通じた若年者の能力向上機会の拡大、企業内におけるキャリア形成支援、長期的な観点からの人材育成、企業内の職務に係る能力要件、キャリアルートの明示(従業員、求職者のみならず、学校、学生・生徒に対しても開示)、若年者向けの労働市場づくり(職業能力評価制度、日本版デュアルシステムの構築等)への協力等について、できるだけ具体的なガイドラインとして示すことが有効である。なお、指針の周知と併せて、若年者のキャリア形成支援について先進的な取組みを進めている企業の事例等を幅広く提供していくことが重要である。
 また、業界団体等に対しても、同様の観点から連携、協力を求めていくことが必要である。
 さらに、フリーターを多数雇用する企業に対しては、フリーター就業の長期化を防止するための必要な措置(社内におけるキャリアアップの仕組みの整備、社外でのキャリア形成に向けたキャリア・コンサルティングの実施・配慮)について、具体的な方向付けを行っていくことが必要であり、これについても、指針等の形で周知していくことが適当であると考えられる。
 なお、上記の指針については、労働者のキャリア形成支援に資するものであることから、職業能力開発促進法に基づく厚生労働大臣の指針の内容にも反映させることを検討することが適当である。

 (4) 地方公共団体等の役割(地域の実情に応じた若年者支援のネットワークづくりの主体としての責務)
 若年者の雇用・就業環境は、地域ごとの違いが大きくなっており、上述の各施策の推進に当たっては、こうした地域事情を踏まえた施策のウエイト付けを行うとともに、これを担う関係機関、関係者の連携・協力のための効果的なネットワークづくりを進めていく必要がある。
 その際には、施策の対象者である若年者が、学校段階から職場定着に至るまでの継続した支援を受けられる仕組みづくりを行うことを基本として、都道府県や地域のNPO等が中心となって、地域の関係行政機関、事業主団体、学校その他の教育訓練機関、キャリア・コンサルティングやキャリア教育、職業体験等を担う多様な団体、企業、個人をネットワークしていくことが必要である。
 また、都道府県及び市町村が有している若年者支援のための各種の事業や施設等の政策資源をこうしたネットワークづくりにも有効活用していくことが考えられる。
 こうしたネットワークを活用して、高校中退者等も含め、支援対象となる若年者を幅広くかつ継続的に把握、支援できる枠組みを作るとともに、個々の若年者に対するキャリア・コンサルティング等の支援、若年者の実習を受け入れる企業等の開拓、若年者のキャリア支援のための多様な情報提供等、地域のニーズに応じた多様なサービスを提供していくことが考えられる。
 なお、地方公共団体がその自治事務として従来から実施している若年者に対する公共職業訓練についても、その内容をより実践的なものへと充実させるとともに、上記若年者支援のネットワークの下に明確に位置づけていくことが期待される。


まとめ

 若年者キャリア問題の当事者は他ならぬ若年者自身である。本研究会ではこれまでに様々な観点から支援方策について検討を重ねてきたが、いずれも若年者本人が自覚を持って自己のキャリア問題に取り組むことが大前提であることは言うまでもない。
 こうした認識の下、今までに考察してきた若年者を取り巻く状況変化とこれに対応した施策推進の観点を改めて大括りに整理すると、若年者に対するキャリア形成支援のための施策は、次のようにまとめられる。
(1) 雇用機会や実習機会の拡大
 若年者に対する求人、とりわけ高卒求人の大幅に減少している。このため、能力のミスマッチの解消や新規分野への的確な誘導による雇用機会の拡大や本格雇用に至らない者についての実習機会の拡大のための仕組みの整備を図る必要がある。
(2) 労働市場システムの整備
 若年者の適職探索期間の長期化、就業に至る経路の複線化が進行しつつある。このため、卒業時点のみならず、在学中から職場定着に至るまでの一貫したキャリア支援が可能となる労働市場システムの整備を図る必要がある。
(3) 多様な教育訓練機会の確保
 若年者に求められる職業能力の高度化、質的変化が生じている。このため、これに対応した多様な教育訓練機会を確保する必要がある。
(4) 職業観、勤労観の醸成
 若年者が職業観、勤労観を醸成できる職業体験機会が不足している。このため、これらの的確な養成を図るための職業体験機会の拡大やこれを踏まえたキャリア教育の充実を図る必要がある。

 本報告書については、厚生労働省の研究会であるという意味での制約もありその内容は、雇用・能力開発施策を中心としたものとなっている。しかしながら、若年者のキャリア形成支援については、教育政策や産業政策における取組みとの連携なくしては、いずれの政策もその目的を達することは困難であり、本研究会の議論においてもその重要性を指摘するとともに、教育政策や産業政策の在り方についても多くの意見が出されたところである。
 この意味で、先般、「若者自立・挑戦プラン」が、厚生労働大臣、文部科学大臣、経済産業大臣、経済財政政策担当大臣により構成される若者自立・挑戦戦略会議において取りまとめられ、今後、関係府省の連携、産業界の取組みの強化の方向性が示されたことは重要な意義をもつものであり、本報告書においても、学校段階から職場定着に至るまでの一貫した支援の実現や、行政分野相互の連携強化に期待する意味で、教育政策、産業政策等との関わりについても可能な限り言及したところである。
 若年問題への国民的関心が高まる中で、関係府省においても若年キャリア形成の問題に関する検討が行われているところであり、本研究会での成果を含め、これらの取組みの成果が、今後、省庁の垣根を越えた総合的、体系的な若年者のキャリア形成支援へと結びついていくことを強く願うものである。



自分の将来に漠然と思いを馳せるあなたへ
〜 研究会から若者へのメッセージ 〜

あなたが今、楽しんでいることは何ですか?

  スポーツ、音楽、映画、ショッピング・・・。何であっても、その周りには、楽しんでいるあなたのほかに、それを考え出している人、それを創っている人、それを売っている人、それをコーディネートしている人など、数えきれないほどの人が関わっています。ある場面での売り手がある場面では買い手として楽しみ、ある場面での創作者がある場面では見る側から楽しむ。それが社会です。

いまの自分に満足していますか?

  広い社会の中で、あなたはいま、どういう位置にあるのでしょうか。あなたにできることは何でしょうか。「社会の一員」として、自分に何ができるかを考えたとき、「仕事」に思い当たりませんか。
 時には楽しむ側、時には楽しませる側。その役割交代にあなたも参加していますか。

あなたにとって仕事とは?

  一人前になれば自分で生計を立てることは当然です。それに加えて、自分の適性や能力に適した仕事を経験しながら、自分の能力を伸ばしていくこと(キャリア形成)ができれば、もっと刺激のある、楽しい毎日が手に入るのではないでしょうか。

若年期を過ぎたとき、自分がどうなっているか、想像できますか?

  キャリア形成にとって、若年期はその土台を作り上げる大事な時です。後になるほど軌道修正は難しくなります。自分の適性や能力に合った仕事は何か、どのようなキャリアを歩むことが自分にとって最適か。誰もが抱く疑問です。仕事に就いてみて、チャレンジし、困難にぶつかり、成し遂げた達成感を味わう。そうした経験の中ではじめて、自分の適性をつかみ、能力をのばしていくこともできるのではないでしょうか。いまのその機会を逸しないでほしい。

待っていても「青い鳥」は見つからない。自信を持って第一歩を。

  人生の軌道修正に「遅すぎる」という言葉はありません。あなたが、自分の職業生活について、何をしてよいか分からなかったり、能力を向上させる必要がでてきたり、様々な問題に直面した場合のために、各種の相談窓口や様々な支援プログラムも用意されています。
 キャリアはあなた一人で積むのではありません。社会には、若者の職業生活を応援する人たちがいて、支援の制度がありますので、あなたも勇気と自信を持って、自分の職業生活を歩んでください。



困ったときの相談窓口


 あなたが様々な問題に直面したときのために国が用意している各種の相談窓口です。あなたが抱える問題をしっかりサポートしますので、まずは、気軽にアクセスしてみてはいかがでしょうか。

○キャリア形成支援コーナー
  キャリア形成支援コーナーは、雇用・能力開発機構(厚生労働省所管の特殊法人)の都道府県センター内に開設されており、労働者等を対象として、キャリア・コンサルティング(労働者の希望・適性・能力を踏まえ、今後のキャリア形成の方向等の提示)の実施、自己啓発又は能力開発のためのプランの提示等、キャリア形成に関する相談等を行っております。(お問い合わせは、雇用・能力開発機構の各都道府県センターまで。)

 【連絡先】
 各センターの場所は雇用・能力開発機構のHP:http://www.ehdo.go.jp/の「所在地情報」で調べることができます。
  北海道センター   011-261-5308    滋賀センター   077-525-9293
青森センター 017-777-1234 京都センター 075-681-5350
岩手センター 019-625-5103 大阪センター 06-6264-2362
宮城センター 022-257-2009 兵庫センター 078-360-1983
秋田センター 018-836-3187 奈良センター 0742-24-2680
山形センター 023-647-0303 和歌山センター 073-432-1532
福島センター 024-522-6931 鳥取センター 0857-29-8313
茨城センター 029-221-1294 島根センター 0852-31-2305
栃木センター 028-634-1193 岡山センター 086-231-3666
群馬センター 027-235-6102 広島センター 082-248-1532
埼玉センター 048-838-7746 山口センター 083-932-1010
千葉センター 043-248-7766 徳島センター 088-654-3311
東京センター 03-3816-8164 香川センター 087-841-5757
神奈川センター 045-212-4723 愛媛センター 089-947-6677
新潟センター 025-240-0531 高知センター 088-872-2112
富山センター 076-433-2219 福岡センター 092-262-2114
石川センター 076-222-1741 佐賀センター 0952-26-9481
福井センター 0776-25-1990 長崎センター 095-821-8131
山梨センター 055-232-1160 熊本センター 096-386-5102
長野センター 026-224-8071 大分センター 097-536-5040
岐阜センター 058-265-5822 宮崎センター 0985-22-0771
静岡センター 054-253-5765 鹿児島センター 099-227-5455
愛知センター 052-221-8754 沖縄センター 098-862-3213
  三重センター   059-226-9966

○ヤングジョブスポット
  ヤングジョブスポットは、フリーター等若年者が多く集まる都市部に設置されており、フリーター等若年者に対し、(1)職業に関する情報交換を行える場の提供、(2)職場見学、職業に関するディスカッション等、自主的なグループ活動の支援、(3)インターネット、ビデオ等を活用した職業に関する情報の提供、(4)適職選択・キャリア形成に関する相談等を行っております。

 【連絡先】
 ヤングジョブスポットさっぽろ「フォルテ」
  〒060-0003 札幌市中央区北3条西3丁目 シグマ北3条ビル2階
 TEL:011-222-5840
 ヤングジョブスポットせんだい
  〒980-0021 仙台市青葉区中央3−1−24 荘銀ビル6階
 TEL:022-723-1724
 しごとふれあい広場埼玉
  〒330-0854 さいたま市大宮区桜木町1−9−4 エクセレントビル大宮7階
 TEL:048-640-4500
 しぶや・しごと館
  〒150-0041 渋谷区神南1−21−1 日本生命渋谷ビル5階
 TEL:03-6415-4510
 ヤングジョブスポットよこはま
  〒220-0004 横浜市西区北幸2−1−22 ナガオカビル2階
 TEL:045-317-2009
 しごとふれあい広場あいち
  〒450-0003 中村区名駅南2−14−19 住友生命名古屋ビル23階
 TEL:052-533-7551
 しごとふれあい広場梅田
  〒530-0015 大阪市北区中崎西2-4-12 梅田センタービル12階
 TEL:06-6485-6160
 しごとふれあい広場アメリカ村
  〒542-0086 大阪市中央区西心斎橋1-6-8 トムズハウス4階
 TEL:06-6241-8711
 しごとふれあい広場ひろしま
  〒730-0013 広島市中区八丁堀16-14 第二広電ビル3階
 TEL:082-212-0688
 ヤングジョブスポットおきなわ
  〒900-0013 那覇市牧志2-4-11 TKビル1階
 TEL:098-864-1588

○ヤングワークプラザ等
  フリーターや若年失業者等を対象に、一人一人の適性等を踏まえ、個別支援方針を策定し、マンツーマンでの職業相談や就職活動実践のための講習等を実施するとともに、企業に対する採用の働きかけ、職場定着指導等を実施しています。
  ・ヤングハローワーク
〒150-0041 渋谷区神南1−21−1 日本生命渋谷ビル5階
TEL:03-3770-8609
HP:http://www.younghw.jp/
 ・よこはまヤングワークプラザ
〒220-0004 横浜市西区北幸1−11−15 横浜STビル16階
TEL:045-322-8609
 ・ヤングワークプラザあいち
〒450-0003 中村区名駅南2−14−19 住友生命名古屋ビル23階
TEL:052-589-6363
HP:http://www.aichi-rodo.go.jp/kankei/docs/6a-1.html
 ・ヤングサポートプラザ
〒530-0001 大阪市北区梅田1−1−3 大阪駅前第3ビル28階
TEL:06-6442-7266
HP:http://www.gakusen-unet.ocn.ne.jp/gakusen-homepage/index.htm
 ・ヤングワークプラザ神戸
〒651-0088 神戸市中央区小野柄通7−1−1 日本生命三宮駅前ビル3階
TEL:078-252-8611
HP:http://young-work-kobe.jp/

○学生職業総合支援センター、学生職業センター、学生職業相談室
  大学、短期大学、高等専門学校、専修学校等の学生を対象とした就職支援のための専門窓口です。ホームページからの求人情報等各種情報の提供、専門的な職業相談、セミナー、就職面接会等の開催等を実施しています。)
  ・学生職業総合支援センター(東京)
 ・学生職業センター(海道、宮城、愛知、大阪、広島、福岡)
 ・学生職業相談室(その他40府県)
各連絡先は、HP:http://job.gakusei.go.jp に掲載-

○「私のしごと館」
  若い人たちが早い時期から職業に親しみ、自らの職業生活を設計し、将来にわたって充実した職業生活を過ごすことができるよう、様々な職業に関する体験の機会や情報を提供するとともに必要な相談・援助等を行っています。 、就職面接会等の開催等を実施しています。
 〒619-0282 関西文化学術研究都市(京都府 精華・西木津地区)
TEL 0774-98-4510
HP:http://www.shigotokan.ehdo.go.jp

○ハローワークインターネットサービス
  全国のハローワークで受理した求人のうち、事業主の方がインターネットへの掲載に同意したもの全てについて検索できます。また、ハローワークのご利用方法や各種雇用対策等についても紹介しています。
 HP:http://www.hellowork.go.jp

○しごと情報ネット
  仕事をお探しの方々が、インターネットを活用して、民間の職業紹介事業者、求人情報提供事業者、労働者派遣事業者、ハローワークの参加機関が保有する求人情報を、インデックス情報として一度に検索できるサイトで、それぞれの機関にアクセスしやすくすることによって、仕事探しを支援しています。
 HP:http://www.job-net.jp



 【注1】請負労働者
 請負とは、民法632条による「請負契約」に定められるものであり、注文主との請負契約(注文)に従い、受注者が自らの業務として自己の裁量と責任のもとに仕事の完成にあたり、報酬を得る形態のものをいう。
 ここでいう請負労働者とは、受注者に雇用された上で、注文主の事業所、又は請負契約において指定された場所で就労するものである。派遣労働と異なり、注文者の指揮命令を受けず、受注者(雇用主)の指揮命令のみに従って就労するものである。

 【注2】キャリア・コンサルティング
 労働者が、その適性や職業経験等に応じて自ら職業生活設計を行い、これに即した職業選択や職業訓練の受講等の職業能力開発等を効果的に行うことができるよう、労働者の希望に応じて実施される相談をいう。

 【注3】トライアル雇用
 学卒未就職者等の若年失業者を短期間の試行雇用として受け入れる企業に対する支援を行い、その後の常用雇用への移行を図る事業(「若年者トライアル雇用事業」)で、厚生労働省が平成13年12月から実施している。

 【注4】デュアルシステム
 ドイツにおいては、16歳から18歳の若年者を対象として職業学校の教育と企業内訓練を並行して行い、修了試験を経て職業資格を付与する仕組みがあり、デュアルシステムと呼ばれ、技能労働者としての実践的能力の育成システムとして社会的に確立している。

 【注5】インターンシップ
 就業実習。仕事の現場で実務に接することにより業務内容への理解を深めるとともに、職業意識を醸成することを目的として実施される。

 【注6】ジョブシャドウイング
 職場見学の一種。米国では広範な業種において実施されているキャリア教育の手法。学生が興味のある職業で働いている人に影のように密着し、職務内容、社会における位置づけ、学業と実務のつながりを学ぶ機会となっている。

 【注7】ヤングジョブスポット
 フリーター等若年者が集中する都市部において、職業に関する情報交換の場の提供や自主的なグループ活動(職業に関するディスカッション・職場見学、職業人への取材等)の支援、適職選択・キャリア形成に関する相談を行うために厚生労働省(雇用・能力開発機構)が平成14年度3月以降、設置しているもの。

 【注8】SOHO
 Small Office/Home Officeの略称。非雇用のテレワーカー、独立した小規模事業者及び個人事業者、在宅、副業型ワーカーを指す。業務でインターネットなどIT、デジタル情報通信を積極的に活用する「時間と場所に制限されな新しいワークスタイル」とされる。

 【注9】ジョブサポーター
 ハローワークに配置され、学校との連携の下、新規学卒者等に対し、就職活動準備から職場定着までの一貫したきめ細やかな就職支援を行う専門の相談員。

 【注10】e-ラーニング
 情報技術によるコミュニケーションネットワーク等を使った学習・職業訓練のこと。


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