労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委令和3年(不再)第12号
日本貨物検数協会(組合休暇)不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  X組合(「組合」) 
再審査被申立人  Y協会(「協会」) 
命令年月日  令和5年1月11日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 協会が、組合の書記長の平成30年7月以降(以下「平成」の元号を省略)の賃金から、組合活動による不就労(「組合休」)に係る賃金相当額の控除(「組合休控除」)をしたことが労働組合法(「労組法」)第7条第3号の不当労働行為であり、②同年7月13日及び同月24日の団体交渉における対応並びに③同年8月2日付け団体交渉申入れに応じなかったことが、いずれも同条第2号の不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事案である。
2 愛知県労委は組合の救済申立てを棄却し、組合は、これを不服として、再審査を申し立てた。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  (1) 協会が組合の書記長の30年7月以降の賃金から組合休控除をしたことについて
 協会は、28年4月支給分から、労務を一切提供せず組合活動に従事する組合の書記長に対し、組合休控除をしない取扱い(「本件取扱い」)をしていた。本件取扱いは、協会の組合に対する便宜供与であるとみることができる。便宜供与を与えるか否かについては、原則として使用者の裁量に委ねられているものであるが、本件取扱いを廃止すると組合活動に相当程度の支障が生じ得ることから、本件取扱いの廃止には相当の理由が必要であり、かつ、廃止に当たっては、組合に対しその理由を説明し、十分な猶予期間の付与等の手続的配慮をすることが必要と解される。
(本件取扱いの廃止理由)本件取扱いは、協会の業務に従事することで賃金を得ている協会の他の従業員にとって不公平な状態であったといえる。また、組合に対して経理上の援助を与えるもので、労働組合の自主性・独立性を阻害するおそれがある。以上によれば、本件取扱いの廃止は、これらの問題を解消するためのもので、相当の理由があったというべきである。
(手続的配慮)協会は、29年11月15日の組合との協議において組合休控除をしないことは経費援助に当たるおそれがあることから、書記長の賃金について組合休控除を実施する旨の説明をし、30年7月13日及び同月24日の団体交渉において、①本件取扱いが欠勤については賃金から控除するという原則に反しており、労働協約にもない異常な取扱いであり、②他の従業員から見て不公平であること及び労組法に抵触する経費援助に当たるおそれがあることから、これらの問題を解消するために本件取扱いを廃止して、書記長に対して労働協約に基づく組合休控除を再開したい旨を繰り返し説明している。そうすると、協会は組合に対し、29年11月15日の組合との協議時、30年7月に行われた2回にわたる団体交渉において、本件取扱いを廃止する具体的な理由を説明しており、説明として十分であるといえる。
 また、本件取扱いの廃止については、通告から実際に廃止するまでに7か月の期間があり、組合が本件取扱い廃止に伴う対応策を検討するのに十分な期間があったといえる。
 以上のとおり、協会が行った本件取扱いの廃止は、相当の理由がある上、手続的配慮をしたものであるから、組合の運営に対する支配介入には当たらない。
(2) 30年7月13日及び同月24日の組合休控除を議題とする団体交渉における協会の対応について
 上記(1)のとおり、本件取扱いの廃止に当たり、協会と組合との間で30年7月13日及び同月24日に団体交渉が行われ、この2回の団体交渉において協会は組合に対して本件取扱いを廃止する理由を説明している。その説明内容は、具体的で十分な説明である。このような協会の対応は不誠実なものとはいえない。以上によれば、本件取扱いの廃止を議題とする30年7月13日及び同月24日の団体交渉における協会の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たらない。
(3) 協会が組合の30年8月2日付け団体交渉申入れに応じなかったことについて
 本件取扱いの廃止についての議題は、協会が組合の運営のための経費の支払について経理上の援助を与えるという便宜供与に関するもので、労働組合と使用者との間の集団的労使関係の運営に関する事項であり、かつ、協会において処分が可能なものであるから、義務的団交事項に該当する。
 しかし、30年7月24日の2回目の団体交渉を終えるに当たり、組合と協会の双方が団体交渉の決裂を確認している。そうすると、もはや組合と協会のいずれかの譲歩により交渉が進展する見込みはなく、団体交渉を継続する余地がなくなっていたといえるから、組合からの同年8月2日付けの団体交渉申入れに協会が応じなかったことには正当な理由がある。したがって、組合からの30年8月2日付けの団体交渉申入れに協会が応じなかったことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たらない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
愛知県労委平成30年(不)第9号 棄却 令和3年3月29日
 
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