労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  愛知県労委平成30年(不)第9号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y法人(法人) 
命令年月日  令和3年3月29日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、法人が、①組合の書記長であるAの賃金について、組合活動による不就労に係る賃金相当額の控除(組合休控除)をしない旨の合意を一方的に反故にし、平成30年7月以降の賃金から控除をしたこと、②法人が7月13日及び24日の団交において、Aの賃金について組合休控除をしない取扱いをやめる具体的な理由を説明せず、③団交を打ち切ったことが不当労働行為に当たるとして申立てがあった事案である。
愛知県労働委員会は、申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 法人が、Aの平成30年7月以降の賃金から組合休控除をしたことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たるか(論点1)
(1)使用者が労働組合に対して便宜供与を行っている場合、使用者がこれを廃止するについては、労働組合に対して廃止による不利益を与えてもなお廃止せざるを得ない相当な理由があり、また、廃止に当たっては、労働組合に対し、その理由を説明し、善後措置等について協議し、十分な猶予期間を設けるなどの手続的配慮をすることが必要であると解すべきである。そして、便宜供与の開始に当たりこれらの要件を満たしたといえる場合であっても、当該廃止によって労働組合が重大な不利益を受け、また、使用者が明確に労働組合の弱体化を意図していた等、その動機が明らかに不当であると等の特段の事情が認められる場合には、当該廃止が支配介入に当たると言うべきである。
(2)賃金が本来的に労務の対価として支払われるものであることからすれば、本件取扱いによってAに支給されていた組合休控除に係る賃金相当額というのは、Aとの関係では書面によらない贈与としての実質を有する任意的給付であると言わざるを得ない。組合は、本件取扱いについての合意があったと主張するが、何らかの合意があったとしても、書面によらない贈与の撤回を想定した民法第550条の法意に従い、法人は、本件取扱いによるAに対する組合休控除に係る賃金相当額の支給を撤回することができると解すべきである。
 撤回することが可能である本件取扱いが、労働組合の自主性・独立性を阻害するおそれがあるものであり、従業員間における不公平な状態及び組合間の中立保持義務に反する恐れのある状態を生じさせていたことから、法人は、本件取扱いを解消して組合と協会との間で従前から締結・改定されてきた労働協約の取扱いに戻したのであって、当然法人には本件取扱いを廃止する相当な理由があったといえる。
(3)法人は組合に対し、本件取扱いを廃止する相当な理由について2回の団交において繰り返し説明したといえ、また廃止の通告から廃止までには約7ヶ月間の猶予期間があり、その期間は、組合が本件取扱いの廃止に伴う対応策を検討するのに十分な期間であったといえる。
(4)法人による本件取扱いの廃止は、廃止についての相当な理由があり、手続き的配慮の観点からも十分な対応がされたものであって、廃止による不利益の程度や廃止の動機からも組合に対する弱体化等の効果を持つものとは言えないことから、支配介入には当たらない。
2 Aの賃金からの組合休控除を議題とする平成30年7月13日及び24日の団交における法人の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか(論点2)
 団交の議題に係る回答については必ずしも文書で回答する必要はないところ、団交申入れ及び団交において、組合は文書による回答を求めておらず、また、本件団交における法人の回答や説明の内容が文章によらなければ理解が困難な程度のものであったともいえないことから、組合の主張は採用できない。
3 法人が、組合からの平成30年8月2日付けの団交申入れに応じなかったことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか(論点3)
 平成30年7月24日の団交を終えるに当たり、もはや組合と法人のいずれかの譲歩により交渉が進展する見込みはなく、断交を継続する余地がなくなっていたといえるから、法人が、組合からの同年8月2日付の団交申入れに応じなかった対応には正当な理由があったものといえ、労組法第7条第2号の不当労働行為には当たらない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委令和3年(不再)第12号 棄却 令和5年1月11日
 
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