労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委令和2年(不再)第31号
アウトソーシング不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  Y会社(「会社」) 
再審査被申立人  X組合(「組合」) 
命令年月日  令和3年9月15日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、組合が、派遣元の会社及び派遣先のC1会社に対し、組合員Aの労働問題についての団体交渉を申し入れたところ、会社及びC1会社のいずれも団体交渉に応じなかったことが労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するとして、救済申立てがあった事案である。
2 初審神奈川県労働委員会は、会社が本件団体交渉申入れに応じなかったことは労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するとして、団体交渉応諾及び文書の手交を命じ、その余の救済申立てを棄却したところ、会社は、これを不服として再審査を申し立てた。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  (1)本件団体交渉申入れの交渉事項は、Aが会社に解雇されたものと理解した上で、①会社に対し解雇の撤回を求め、併せてこれに関する会社の見解の説明を求めるものと、②会社に対し、C1会社に働きかけてAの職場復帰を早期に実現させるように努めることを求め、併せてこれに関する会社の見解の説明を求めるものと解され、Aの待遇に関する事項で、かつ、会社が実行したり説明したりすることが可能なものであるから、義務的団交事項に当たる。
 したがって、Aの雇用主である会社は、本件団体交渉申入れに対し、原則として速やかに団体交渉に応じて、労使双方が同席する場で、交渉事項に関する会社の立場ないし見解を組合に直接伝達して協議及び交渉を行う義務を負うものと解される。
 しかるに、会社は、本件回答書により「解雇の事実がない以上、団体交渉は不要である」旨を回答し、その後、本件申立てに至るまでの50日間、組合に対し、団体交渉の日時等の条件についての協議を含めて何らの連絡をせず、団体交渉に応じていない。したがって、本件団体交渉申入れに対する会社の上記対応は、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるというべきである。
(2)ア会社は、Aを解雇しておらず、雇用契約が継続しているから、解雇の撤回という交渉事項は、会社が処分可能なものではなく、義務的団交事項に当たらないから、本件団体交渉申入れに応じなかったとしても、不当労働行為に当たらないと主張する。
 しかし、上記(1)で述べたとおり、解雇の撤回を求めるとの交渉事項は、義務的団交事項に当たる。しかるところ、会社は、Aとの雇用契約の途中解除に関する組合の認識が誤りであるというのであるから、本件団体交渉申入れに応じて、団体交渉の場で、組合に対し会社の見解を示して説明すべきであった。したがって、会社の上記主張は採用することができない。
イ会社は、本件がAの勤怠が原因となりC1会社から労働者派遣契約を解除された事案であって、会社がAをC1会社で就労させることを実現できる立場にないとし、早期の職場復帰という交渉事項は、会社が処分可能なものではなく、義務的団交事項に当たらないから、本件団体交渉申入れに応じなかったとしても、不当労働行為に当たらないと主張する。
 しかし、上記(1)で述べたとおり、早期の職場復帰という交渉事項は、義務的団交事項に当たる。しかるところ、会社は、Aの勤怠が原因となりC1会社から労働者派遣契約を解除されたもので、会社はAをC1会社で就労させることを実現できる立場にないというのであれば、本件団体交渉申入れに応じて、団体交渉の場で、会社の立場ないし見解を示して、その根拠を具体的に説明すべきであった。したがって、会社の上記主張は採用することができない。
ウ会社は、本件回答書について、Aを解雇した事実がないことの事実確認を促し、組合からの連絡を求めるための事務折衝としての性質のものであるとし、組合が事実確認をした上で、改めて団体交渉の必要性があると申し入れていれば、当然に団体交渉に応じていたのであるから、会社は団体交渉を拒否していないと主張する。
 しかし、本件回答書にはその旨の記載はなく、記載文言の全体を通覧してもそのような趣旨を読み取ることはできないから、会社の上記主張は採用することができない。
(3)以上によれば、本件団体交渉申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団体交渉拒否であり、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
神奈川県労委平成31年(不)第1号 一部救済 令和2年7月28日
東京地裁令和3年(行ウ)第561号 棄却 令和4年9月9日
東京高裁令和4年(行コ)第270号 棄却 令和5年3月28日
 
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