労働委員会裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京地裁令和3年(行ウ)第561号
アウトソーシング救済命令取消請求事件
 
原告  株式会社X(「会社)」 
被告  国(処分行政庁 中央労働委員会) 
判決年月日  令和4年9月9日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、組合が、派遣元の会社及び派遣先のC1会社に対し、組合員A2の労働問題についての団体交渉を申し入れたところ、会社及びC1会社のいずれも団体交渉に応じなかったことが労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するとして、救済申立てがあった事案である。
2 初審神奈川県労委は、会社が本件団体交渉申入れに応じなかったことは労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するとして、団体交渉応諾及び文書の手交を命じ、その余の救済申立てを棄却したところ、会社は、これを不服として再審査を申し立てた。
3 再審中労委は、会社の再審査申立てを棄却した。
 
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
 
判決の要旨  1 A2の労働問題についての団体交渉に係る会社の対応が労組法7条2号(団交拒否)に当たるかについて
(1) 本件団体交渉申入れにおける団体交渉事項について
ア 本件団体交渉事項は、A2がC1への派遣期間中に会社から解雇されたことを前提に、当該解雇を撤回すること及びC1に働き掛けてA2の職場復帰を早期に実現させるように努めることを求めるものと解される。
イ(ア) この点、会社は、A2に対し、本件個別契約の解除を告知し、他の就業先を提示する一方で、本件雇用契約に関しては、会社においてA2を解雇するものではない旨を繰り返し説明したものと認められ、本件団体交渉要求書の送付時点において、会社がA2との本件雇用契約を解除した事実は認められない。
(イ) しかし、本件団体交渉要求書は、その記載上、会社において、①平成30年12月28日にA2に対して本件個別契約の解除を告げたこと、及び②平成31年1月9日に、前年12月末を終期とする契約書を作成し、従前の契約書を破棄する旨提案したことを、解雇に係る本件組合及びA2の主張の根拠としていることが明らかである。
 そして、上記①については、会社は、本件個別契約の解除後、A2に対する賃金を支払っておらず、新たな就業先に就業しない限り収入の喪失をもたらすなどの点で、A2にとっては解雇と同様の不利益が生じたものと解される。特に、外国人であるA2にとっては、言語表現の理解の面でも、労働者派遣制度に関する理解の面でも、本件個別契約の解除を実質的に解雇と同一のものとして理解することにはやむを得ない面がある。
 また、上記②については、会社において、契約上の終期の変更により、本件雇用契約を平成30年12月末日限り終了させる意向を表明したものといえ、「契約書の破棄」との表現を併せ考えると、A2にとっては、実質的に契約解除の趣旨として受け止める契機となるものといえる。
(ウ) 以上の事情を考慮すれば、本件団体交渉事項は、全体として、前記(イ)のとおり、本件個別契約の解除や、終期変更による本件雇用契約の終了(「契約書の破棄」)に係る会社の提案を前提として解雇の存在を主張し、これに対する救済として、会社に対し、解雇の撤回のほか、C1への働きかけによる早期の職務復帰の実現を要求したものであり、本件個別契約の解除により実質的な不利益を受けるA2の立場を基準とすれば、相応の根拠を有するものというべきである。
 本件団体交渉申入れについては、そもそも、解雇の存否につき、会社と本件組合の間に立場の相違があり、双方の立場及び見解の説明が団体交渉の中心的な内容となることが、会社にとっても当初から想定されていたものというべきである。この点で、本件団体交渉要求書は、会社に対し、当該説明を要求する趣旨を含むものと解するのが相当である。
ウ 前記イ(ウ)で述べた本件団体交渉事項は、A2の待遇に関する事項で、かつ、原告が実行したり説明したりすることが可能なものであるから、義務的団交事項に当たる。

(2) 労組法7条2号(団交拒否)該当性
 会社は、本件回答書により「解雇の事実がない以上、団体交渉は不要である」旨を回答したのみで、その後、本件救済申立てに至るまでの50日間、本件組合に対し、団体交渉の日時等の条件についての協議を含めて何らの連絡をしていない。
 したがって、会社の上記対応は、正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。

(3)以上のとおり、A2の労働問題についての団体交渉に係る会社の対応は労組法7条2号(団交拒否)に当たり、不当労働行為が成立する。

2 以上によれば、会社の対応が労組法7条2号の不当労働行為に該当し、不当労働行為が成立するとした本件命令の判断は正当であり、本件命令に取り消すべき違法はない。

3 結論
 よって、会社の請求は理由がないから棄却する。
 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
神奈川県労委平成31年(不)第1号 一部救済 令和2年7月28日
中労委令和2年(不再)第31号 棄却 令和3年9月15日
東京高裁令和4年(行コ)第270号 棄却 令和5年3月28日
 
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