労働委員会裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京高裁令和4年(行コ)第270号
アウトソーシング救済命令取消請求控訴事件 
控訴人  株式会社X(「会社」) 
被控訴人  国(処分行政庁 中央労働委員会) 
判決年月日  令和5年3月28日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、組合が、派遣元の会社及び派遣先のC2会社に対し、組合員A1の労働問題についての団体交渉を申し入れたところ、会社及びC2会社のいずれも団体交渉に応じなかったことが労組法7条2号の不当労働行為に該当するとして、救済申立てがあった事案である。
2 初審神奈川県労委は、会社が本件団体交渉申入れに応じなかったことは労組法7条2号の不当労働行為に該当するとして、団体交渉応諾及び文書の手交を命じ、その余の救済申立てを棄却した。
3 会社は、これを不服として、再審査を申し立てたところ、中労委は、会社の再審査申立てを棄却した。
4 会社は、これを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、会社の請求を棄却した。
5 会社は、これを不服として、東京高裁に控訴したところ、同高裁は、会社の控訴を棄却した。
 
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
 
判決の要旨  1 当裁判所は、原審と同様、本件団体交渉申入れの交渉事項は、義務的団交事項に当たり、A1の労働問題についての団体交渉に係る会社の対応は、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるところ、会社の本件再審査申立てを棄却した本件命令に違法はないと判断する。その理由は、次のとおり補正し(略)、当審における当事者の主張に対する判断を加えるほかは、原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の1ないし3のとおりであるから、これを引用する。

2 当審における当事者の主張に対する判断

(1) 会社は、本件団体交渉申入れについて、本件団体交渉要求書における団交指定日よりも前に、本件回答書(組合に対し、「A1を解雇した事実はなく、団交は不要と考える」旨の文書を送信)により誠実に回答をしていること、会社は、A1を解雇しておらず、このことは会社担当者の説明によりA1も理解していたことから、A1の労働問題についての団体交渉に係る会社の対応は団交拒否に当たらない旨主張する。
 A1は、C2で就業ができなくなったことに関する会社担当者の説明に納得せず、本件雇用契約の終期の変更にも応じていなかったのであり、C2で就業ができなくなったことをもって解雇と捉えていたものとうかがうことができ、このことは会社においても容易に認識し得たところ、会社としては、上記A1の認識が法的に誤っているというのであれば、その旨を団体交渉の場において、本件組合ないしA1に説明するべきであり、本件回答書において回答したことをもって団体交渉義務を免れることにはならない。


(2) 会社は、本件団体交渉申入れから既に約4年が経過していること、本件雇用契約は令和元年6月30日に期間満了により終了していること、A1は平成31年2月以降、他の会社を転々として稼働しており、会社への復職の意思がなく、中労委における手続にも参加しておらず、本件組合の組合員であることすら判然とせず、本件組合も本件訴訟に訴訟参加していないこと、会社は、中労委における調査中、令和3年2月24日付けで本件組合から改めて団体交渉の申入れがされたため、これに応ずる旨回答したものの、その後本件組合からは何の連絡もなく、団体交渉は実施されなかったことなどから、会社と本件組合との間でA1の労働問題について団体交渉をする必要性が喪失した旨主張する。
 しかしながら、本件団体交渉申入れから既に4年が経過し、本件雇用契約が期間満了により終了し、A1が他の会社で稼働しているとしても、A1が既に会社ないしC2への復職の意思を失っているとまでは認め難い。
 また、A1が中労委における手続に参加していないことや、本件組合が本件訴訟に訴訟参加していないことは、A1の労働問題についての団体交渉に係る会社の対応が団交拒否に当たるとの判断を左右しない。
 さらに、会社は、中労委における調査中、令和3年2月24日付けで本件組合から改めて団体交渉の申入れがされたところ、これに応ずる旨回答しているものの、本件組合の指定日である同年3月17日は差支えであるとし、本件組合側に日程の変更を要求した上、これに対する回答がなかったとして、結局、団体交渉を実施しておらず、上記経緯をもってしても、会社と本件組合との間でA1の労働問題について団体交渉をする必要性が喪失したとはいえない。
 したがって、会社の上記主張は採用することができない。


(3) その他、会社が主張する事情は、いずれも当裁判所の判断を左右せず、会社の本件再審査申立てを棄却した本件命令に違法は認められない。


3 結論

 よって、会社の請求を棄却した原判決は相当であり、会社の本件控訴は理由がないから、これを棄却する。
 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
神奈川県労委平成31年(不)第1号 一部救済 令和2年7月28日
中労委令和2年(不再)第31号 棄却 令和3年9月15日
東京地裁令和3年(行ウ)第561号 棄却 令和4年9月9日
 
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