労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委令和元年(不再)第49号
権田工業不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  Y会社(「会社」) 
再審査被申立人  X組合(「組合」) 
命令年月日  令和3年8月4日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、会社と組合との間で行われた、退職金に関する平成30年4月2日の団体交渉(「4.2団交」)及び一時金等に関する同年7月13日の団体交渉(「7.13団交」)における会社の対応が、労働組合法(「労組法」)第7条第2号の不当労働行為に該当するとして、救済申立てがあった事件である。
初審兵庫県労委は、4.2団交及び7.13団交における会社の対応は、いずれも労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するとして、誠実団体交渉応諾を命じたところ、会社は、これを不服として再審査を申し立てた。 
命令主文  1 本件再審査申立てを棄却する。
2 初審命令主文を変更し、文書手交を命じる 
判断の要旨  ⑴ 4.2団交における会社の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為当たるか。
ア会社は、4.2団交の冒頭において説明した特定退職金共済(「特退共」)の積立基準の内容について、同団交の途中やその後の団交等において、訂正や変更を繰り返している。会社が、訂正や変更を繰り返さざるを得ない不正確な説明を行ったことは、団交を徒に混乱させ、実質的な交渉の進展を損なう不誠実な対応であったといわざるを得ない。
イまた、組合が、団交申入書において、特退共への加入時期の取扱いが人によって異なっており、その基準が分からないなどと疑問点を予め明らかにしていたにもかかわらず、会社は、積立基準について不正確な説明を行った上、同基準どおりに積み立てられていない理由や、人によって適用が異なっている理由を説明せず、しかも、各組合員の入社日や特退共加入日さえ調べておらず、回答に必要な資料も用意していなかった。このような会社の対応からは、組合の疑問点を解消して理解を得ようとする姿勢がうかがえず、誠実な対応であったとは到底評価できない。
ウさらに、組合が、積立基準について定めた就業規則等の提示を求めたのに対し、会社は、提示を拒否し、就業規則等の存否や根拠規定の有無さえも明らかにしなかった。積立基準に関する会社の説明が不正確である上に、組合が矛盾を指摘し質問しても会社から回答がない状況からすれば、組合が根拠規定を確認しようとするのは当然といえるにもかかわらず、就業規則等の提示を拒否し、その存否さえも明らかにしようとしなかった会社の対応は、組合の理解を求める姿勢を著しく欠く不誠実なものというほかない。
エ以上のとおり、4.2団交において、会社が、積立基準について不正確な説明をしたこと、組合員の退職金について積立基準どおりに積み立てられていない理由等を説明しなかったこと、積立基準につき定めた就業規則や根拠規定の開示を拒否し、その存否さえ明らかにしなかったこと等は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。
⑵ 7.13団交における会社の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。
ア 7.13団交を迎えるに当たり、未解決の交渉事項が数多くあったことから、組合は、同団交の議題を何にするかにつき、会社に何度も照会していたが、会社は、同団交までに何ら回答しなかった。このため、組合は、同団交の前日、一時金等3点の議題を指定したが、会社はこのことを了知していながら、同団交において、組合の抗議、制止にもかかわらず、組合が指定した3点以外の議題についても説明を続けた。会社のかかる対応は、議題を絞って効率的に団交に臨もうとする組合の意向を無視し、自己の考えに固執して交渉を行おうとする独善的な態度というべきであり、不誠実なものと評価せざるを得ない。
イまた、会社は、一時金に関する従前の団交においては、会社の業績等の資料を組合に提示してその内容を書き写させていたが、7.13団交においては、これを口頭で読み上げるだけで、組合が何度求めても資料は提示せず、組合との間で、会社が読み上げた各項目と数値の対応関係等の確認が繰り返された。多岐にわたる項目と数値等を口頭で羅列する会社の対応は、組合が正確な理解に基づき的確に交渉を行うことを妨げるものであり、他方で、従前の団交において資料提示による特段の支障があったとも認められないことからすると、会社が口頭での開示に固執したことは、不誠実な交渉態度と評価せざるを得ない。
ウさらに、会社は、製造原価の内容や経常利益が赤字になった原因等について、組合の質問に対し具体的に回答せず、組合が回答の根拠となる資料の開示等を求めても、「是々非々で判断する」と述べるのみであった。こうした対応からは、組合の理解を求める姿勢を見出せず、不誠実な対応というほかない。
エ以上のとおり、7.13団交において、会社が、組合が指定した交渉議題以外の議題についても組合の抗議にもかかわらず説明を続けたこと、経営資料の口頭開示に固執したこと、製造原価等に関する組合の質問に具体的に回答しなかったこと等は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
兵庫県労委平成30年(不)第2号・30年(不) 第7号 全部救済 令和元年9月10日
東京地裁令和3年(行ウ)第501号 棄却 令和5年6月22日
東京高裁令和5年(行コ)第197号 棄却 令和5年12月20日
 
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