事件番号・通称事件名 |
兵庫県労委平成30年(不)第2号・30年(不)第7号
不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合(「組合」) |
被申立人 |
Y会社(「会社」) |
命令年月日 |
令和元年9月10日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
|
事件概要 |
本件は、会社が、組合の組合員A1、同A2及び同A3の退職金に
関する団体交渉並びに平成29年冬一時金及び平成30年夏一時金に関する団体交渉において誠実に対応しなかったことが、労働
組合法第7条第2号の不当労働行為に該当するとして、救済申立てがあった事案である。
兵庫県労働委員会は、会社に対し、いずれも誠実交渉義務に反するとして、誠実な団体交渉を命じた。 |
命令主文 |
被申立人会社は、申立人組合との団体交渉において、次の対応をしな
ければならない。
1 申立人組合の組合員A1、同A2及び同A3の退職金に関する団体交渉において、同人ら3人の特定退職金共済制度の加入時
期の判断理由を具体的に説明し、誠実に交渉すること。
2 平成29年冬一時金及び平成30年夏一時金に関する団体交渉において、平成30年11月19日開催の団体交渉において提
示した業績等の資料の内容について、具体的に説明し、誠実に交渉すること。 |
判断の要旨 |
1 A1ら3人の退職金に関する団体交渉における会社の対応は、不
誠実な団体交渉に該当するか。(争点1)
平成30年4月2日の団体交渉において、会社の就業規則の開示それ自体を拒否する態度は、組合に対し、誠実に対応しようと
する姿勢があるとは見受けられない。
また、会社には、就業規則等に特定退職金共済制度の運用方法等について規定がなく、従業員ごとに掛金の積立て開始の時期等
に差が生じているのであるから、A1ら3人のそれぞれの特定退職金共済制度の運用方法について、組合が理解できるよう、資料
を提示するなどして明確に説明する必要があると考えられるところ、A2ら3人の積立金等の内訳は、本件の調査期日における会
社の釈明に至り、ようやく具体的な説明がされた。
以上のことなどから、平成30年4月2日の団体交渉における会社の対応は、団体交渉に真摯に対応し組合の理解を求めるもの
とはいえず不誠実なものであり、労組法第7条第2号に該当する。
2 平成29年冬一時金及び平成30年夏一時金に関する団体交渉における会社の対応は、不誠実な団体交渉に該当するか。(争
点2)
平成30年7月13日の団体交渉において、組合の異議にもかかわらず、あえて指定された3点の議題以外の申入事項に回答し
たことは、要求事項を絞って効率的に団体交渉に臨もうとする組合の態度を無視するものであり、不誠実であると評価せざるを得
ない。
また、同日の団体交渉において、B社長は、会社の経営資料の数字を口頭で読み上げたが、前回までの一時金に係る団体交渉で
は経営資料を提示し、組合が書き写していた。このような対応からは、会社が、団体交渉で組合が正しく理解し、少しでも納得す
ることを目指すという姿勢をうかがうことができない。
さらに、会社は、製造原価の内容や経常利益が赤字になった原因等についての組合の質問に対しても具体的に説明せず、文書回
答や回答の根拠となる資料の開示についても是々非々で判断すると述べるのみで、組合の理解を求める姿勢が全くみられない。
以上のことなどから、会社の平成30年7月13日の団体交渉における対応は、誠実交渉義務に反し、労組法第7条第2号に該
当する。 |
掲載文献 |
|