労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成31年(不)第2号・令和元年(不)18号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y市(「市」) 
命令年月日  令和2年11月30日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、市が、①組合が発行する機関紙について、特定の記事を掲載しないよう求め、記事の内容を理由に組合事務所の明渡しを求めたこと、②組合事務所の使用許可に関する平成31年1月4日付け団体交渉申入れに応じなかったこと、がそれぞれ不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
 大阪府労働委員会は、会社に対し、①について支配介入及び②について正当な理由のない団体交渉の拒否に当たる不当労働行為であるとして、団交応諾とともに、文書の手交を命じた。 
命令主文  1 被申立人は、申立人が平成31年1月4日付けで申し入れた団体交渉に応じなければならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
 年 月 日
組合
  執行委員長 A 様
市       
市長 B
 当市が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
(1)平成30年12月27日付けで組合事務所の明渡しを求めたこと(3号該当)。
(2)貴組合が平成31年1月4日付けで申し入れた団体交渉に応じなかったこと(2号該当)。

 
判断の要旨  1 争点1(組合ニュースに関して行った市の対応は、組合に対する支配介入に当たるか。)
ア 組合は、組合ニュースに関して行った市の対応について、①特定の記事を掲載しないよう求めたこと、②記事の内容を理由に組合事務所の明渡しを求めたこと、をもって不当労働行為であると主張する。
イ まず、市が、特定の記事を掲載しないよう求めたとの組合主張についてみる。
 行政財産である職員会館の管理者の立場として、総務部長、職員課長又は市総務部管理職職員が組合事務所に架電又は訪問したといえる。
 しかし、総務部長、職員課長又は市総務部管理職職員が組合事務所に架電又は訪問して、組合と具体的に組合ニュースの記事についてどのようなやり取りをしたのか、具体的な事実の疎明がなく判然とせず、上記指摘の事実のみでは、直ちに市の対応が支配介入であったとまではいえない。
ウ 次に、記事の内容を理由に組合事務所の明渡しを求めたとの組合主張について
(ア)市は平成30年度の職員会館の目的外使用許可に当たり、その利用目的に平成28年度許可書と同一の「組合事務所としての利用(職員の勤務条件の維持改善及び職員の福利厚生の活動に限る。)」との条件を付して許可したことが認められる。
 職員会館は行政財産であり、地方自治法第238条の4第7項で、行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができるとされていることから、職員会館の管理者である市が、行政財産である職員会館の使用を許可するに当たり、その目的に沿った必要な条件を付すことに、直ちに問題があるとはいえない。そうすると、職員会館は、職員の福利厚生の増進に寄与することを設置目的としており、組合事務所としての利用のため、行政財産の目的外使用許可を行うに際し、その利用目的に「組合事務所としての利用(職員の勤務条件の維持改善及び職員の福利厚生の活動に眼る。)」として利用目的を限定すること自体は、問題があるとまではいえないと考えられる。
 そして、職員会館の使用許可書には、使用者が使用許可物件を使用目的以外に使用したときや使用者が許可の条件に違反したときには使用許可を取り消されることがある旨の記載が認められ、職員会館の管理権眼を有する市が、使用目的以外の用途に用いたと確認したときに、使用許可の取消手続に入ること自体に手続上の問題があるとまではいえない。
 もっとも、組合が使用目的の範囲内で組合事務所を使用しているかの確認に当たって市が採った対応や、市が組合に対し組合事務所の明渡しを求めた理由によっては、不当労働行為となり得る場合がある。そこで、市の対応の内容、手続、組合活動への支障の程度について、以下検討する。
(イ)そもそも、組合事務所の明渡しは、労働組合の活動や運営に少なからぬ影響を与える可能性があることから、使用者は労働組合に対し、組合事務所の明渡しを求めるときは、明渡しによる不利益を与えてもなお明渡しを求めざるを得ないという、相当な理由が必要であるというべきである。
(ウ)組合ニュース記事の内容に28.5.31市書面で示した基準に違反する政治的要素が含まれ、当該記事を掲載した組合ニュースを職員会館内の組合事務所で作成・印刷したことが職員会館の使用目的に付した条件に反するとして、組合に対し、30.12.27市通知書を交付して、平成30年度の使用許可を取り消すことになる旨、即刻自主的に職員会館から退去することを求める旨等を通知した市の対応は、必要最小限の手続とはいえず、組合事務所の明渡しを求めるに足る相当な理由も認められず、また、組合ニュースの作成・印刷する場所を問題とする市の主張に疎明はないのであって、組合事務所の明渡しを求めることで、結果的に組合活動を萎縮・弱体化させるものであるといえる。
エ したがって、市が組合ニュースの特定の記事を掲載しないよう求めたとの組合主張については、やり取りについての具体的な疎明がなく、直ちに支配介入があったとまではいえないものの、組合が組合事務所で政権や特定政党への批判的な記事を掲載した組合ニュースの印刷・発行を繰り返したとして、市が組合事務所の明渡しを求めたことは、組合活動を萎縮・弱体化させる支配介入に当たり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。
2 争点2(31,1.4団交申入れに対する市の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たるか。)
ア 組合の31.1.4団交申入れに対し、市は、31.1.9市回答書にて、地公法の趣旨に照らして応じられない旨回答したことが認められ、市は団交に応じていない。
イ このことに関し、市は、まず、市の行政財産である職員会館の一部を組合の組合事務所として目的外使用を許可することは、市の施設管理権に基づく管理運営事項に関するものであるとし、地方公共団体の管理運営事項は、地公労法第7条ただし書きで交渉の対象とすることができない旨規定されている旨主張する。
(ア)まず、地公労法第7条ただし書きは、管理運営事項は団交の対象とすることができない旨定めているところ、管理運営事項とは、住民の総意によって信託され、法令によってその義務、権限を定められた地方公共団体の当局者の責任によって行うもので、具体的には、労働組合との団交によって決定すべきものではないとする趣旨により、団交を行うことができない事項とされていると解される。
 しかし、管理運営事項と職員の労働条件等に関連する事項は、表裏の関係に立つことが少なくなく、労働者の団結権及び団交権を認めた意法の趣旨に照らし、団体的労使関係に関する事項については、管理運営事項そのものでない限り、原則として義務的団交事項となると解するのが相当である。
(イ)以上を踏まえ、31.1.4団交申入れについて検討すると、行政財産である職員会館の目的外使用を許可するか否かの判断そのものについては、管理運営事項に該当する。
 しかし、組合が31.1.4団交申入れを行ったのは、市が組合ニュースの記事を理由に、平成30年度の組合事務所の使用許可を取り消すことになる旨、即刻自主的に職員会館から退去することを求める旨等を30.12.27市通知書により通知してきたことに抗議するためといえる。そして、31.1.4組合要求書兼団交申入書には、交渉議題として、職員会館の使用について、平成28年度以降、条件が付された理由、組合ニュースがこの条件に適合するかどうかに係る基準やその運用、条件違反とした具体的な組合ニュースの特定、通告をなすに至った理由、別組合との取扱いの違い、組合事務所を供与しないことによる不利益の回避等についての説明や協議を求めていること等が記載されていることが認められるが、これは、組合は職員会館を昭和46年から50年近く組合事務所として使用しているところ、その組合事務所の明渡しを求められたことにより、今後の組合と市との団体的労使関係を形づくる組合事務所のあり方や、そのための許可条件について団交を申し入れたというべきである。
(ウ)そうすると、31.1.4団交申入れの議題は、職員会館の目的外使用許可そのものを対象にしたとみることはできず、組合との団体的労使関係に影響を及ぼす事項も含むことから、義務的団交事項に当たるというべきであり、市は、組合との団体的労使関係に影響を及ぼす範囲において、組合との団交に応じるべきであり、この点に係る市主張は採用できない。
ウ 次に、市は、組合現業支部が平成22年4月1日付けで市と締結した「労働協約書」及び同協約書に基づく「団体交渉の実施の細目に関する協定」では、「管理運営事項が労働条件と関連を有する場合に、その限りにおいて交渉の範囲とするものとする。」と規定されており、行政財産の目的外使用は労働条件と関連しないことから、このことからも組合との団交には応じられないとも主張する。
 しかしながら、本件団交申入れの交渉事項は、前記イ判断のとおり、義務的団交事項に当たる以上、市の主張は失当である。
エ 以上のとおりであることから、市は、正当な理由なく31.1.4団交申入れに応じなかったというべきであって、かかる市の対応は労組法第7条第2号に該当する不当労働行為である。  
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