労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件番号・通称事件名  中労委令和2年(不再)第59号
枚方市不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  X組合(「組合」) 
再審査被申立人  Y市(「市」) 
命令年月日  令和5年1月18日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 組合は、年度ごとに、市の行政財産である職員会館の一部を組合事務所として使用する目的外使用許可を受けていたところ、平成28年度以降、市は、使用許可に際し、「職員の勤務条件の維持改善及び職員の福利厚生の活動に限る。」(「本件許可条件」)との条件を付した。
 本件は、市が、①本件許可条件に反する行為が繰り返し行われているなどとして組合事務所の明渡しを通告したこと(「本件通知」)、②本件許可条件を付した理由や本件通知に至った理由の説明を求める団体交渉(「本件団体交渉申入れ」)に応じないこと、③組合機関紙に特定の記事の掲載を控えるよう求めたり、その記載内容・表現を理由として組合事務所の明渡しを求めたりしたことが不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事案である。
2 初審大阪府労働委員会は、上記①、②及び③の一部について不当労働行為であると判断し、市に対し、団体交渉応諾及び文書手交を命じたところ、組合はこれを不服として再審査を申し立て、市は大阪地方裁判所に行政訴訟を提起した。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  (1) 組合機関紙に特定の記事の掲載を控えるよう求めるなどしたことについて
 本件許可条件の内容は、市職員の福利厚生の増進に寄与するという職員会館の設置目的を踏まえたものであり、一定の妥当性があるところ、市が問題視する記事は、直ちに職員の勤務条件の維持改善や福利厚生の活動に当たるとは言い難く、組合が当該記事を含む組合機関紙を組合事務所内で作成等したことは、本件許可条件に違反したとみる余地がある。そうすると、市が、当該組合機関紙の作成等は本件許可条件に違反すると判断した上で、組合に対し、職員会館において、職員の勤務条件等に密接に関連付けることが困難な活動や、特定の政党・個人を名指しで批判することをしないよう求めたことには市なりの論拠があるものといえ、このような市の行為が妥当でないとまではいえない。
 また、市は、別組合に対しても、その機関紙の記事の内容に対して口頭注意を行ってきており、市が組合に対して特定の記事の掲載を控えるよう求めた行為が組合活動の萎縮・弱体化を意図してされたことを推認させる事情もない。
(2) 組合機関紙の記載内容を理由に直ちに組合事務所の明渡しを求めたことについて
 ①組合は、いわゆる混合組合であり、労働組合の組合活動に関連し、表現の自由の範囲において一定の政治的意見を表明することが全く許容されないわけではないこと、②市が問題視する各記事の各組合機関紙に占める割合が必ずしも大きくないこと、③組合事務所の明渡しが組合活動に与える影響は極めて大きく、組合活動に直接的な支障を生じさせるおそれがあることに鑑みれば、当該組合機関紙を組合事務所内で作成等したことを理由として、直ちに組合に対して組合事務所の明渡しを求めることは、組合の不利益が余りに大きく、そのような不利益を与えてもなお組合事務所からの明渡しを求めざるを得ない相当な理由があったとはいい難い。
 また、市は、下記(3)のとおり、本件団体交渉申入れに係る団体交渉を拒否した上、組合事務所の明渡しを求める理由について具体的な説明をしていないなど、組合に対する手続的配慮は極めて不十分であったといわざるを得ず、別組合が発行した機関紙の記事内容が本件許可条件違反であると判断しながら、組合事務所の明渡しを求めていないことからすると、組合と別組合との間で本件許可条件違反があった場合の取扱いに差異があることも否定し難い。
 そうすると、市が、組合が組合事務所で政権や特定政党への批判的な記事を掲載した組合機関紙の印刷・発行を繰り返したとして、組合事務所の明渡しを求めたことは、組合の組合活動を萎縮させ組合の弱体化を図るものであって、労組法第7条第3号の支配介入に該当する。
(3) 本件団体交渉申入れに対する市の対応について
 本件団体交渉申入れの交渉事項は、①本件許可条件を付した理由、②組合機関紙が本件許可条件に適合するかどうかに係る基準やその運用、③本件許可条件違反があると判断した理由、④本件通知に至った理由、⑤組合に対してのみ本件通知をした理由、⑥組合事務所を供与しない場合の善後策等についての説明や協議を求めるものであり、行政上の管理運営事項について協議を求めるものではなく、組合が便宜供与として市から目的外使用許可を受けて使用してきた組合事務所の使用に関するものである。このような組合活動に関する便宜供与やそのルールに関する事項も集団的労使関係の運営に関する事項であり、かつ、市において説明や協議が可能なものであるから、義務的団交事項に当たる。
 そうすると、市が本件団体交渉申入れを拒否したことは正当な理由がなく、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。 
掲載文献   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成31年(不)第2号・令和元年(不)18号 全部救済 令和2年11月30日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約455KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。