労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]

概要情報
事件番号・通称事件名  東京都労委平成27年(不)第94号
シェーンコーポレーション不当労働行為審査事件 
申立人  X1組合(「組合」)・X2支部(「支部」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和元年8月6日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   平成26年6月1日、会社が経営する英会話学校に勤務する有期雇 用の外国語講師である組合の組合員らは、支部を結成し、会社に通知した。
 組合らは、組合員の無期雇用契約への転換等を求めて会社と団体交渉を行ったが、交渉が進展しないため、11月11日からス トライキを開始し、以後、断続的に組合員の時限指名ストライキを続けている。
 組合員A3は、会社が英会話の授業の講師派遣契約を締結しているC1社に派遣され、英会話の授業を行っていたが、ストライ キを実施したところ、27年1月、会社から、C1社の担当を外すと通知された。2月以降、会社から同人への授業の依頼が減少 した。
 組合員A4は、木曜日に、フランチャイズ校である、C2校の授業を担当していたが、26年10月、生徒からの苦情等を理由 に、同校の担当を外された。その後、A4がストライキを実施したところ、同人の担当する授業コマ数が減少し、27年7月に は、コマ数がゼロとなった。
 組合員A5は、27年5月、フランチャイズ校のオーナー(「FCオーナー」)であるB2から、A5の上司であるB3教区長 が、B2に対し、A5を解雇するための理由は何かありませんかと発言したことを聞いた。
 A5は、27年6月、B2から講師変更の要請があった等の理由により、C4校からC5校へ配置転換となった。10月には、 C5校の木曜日の授業の担当からも外された。
 組合員A2は、28年4月9日の有給休暇を申請し、会社の承認がないままに休暇を取得したところ、4月11 日付「最終警告書」を交付された。
 A2は、28年11月から12月にかけて長期間の有給休暇を申請し、会社が同人の有給休暇は残っていないとして承認しない 中で、休暇を取得したところ、会社は、29年2月28日付けで同人を雇止めとした。
 本件は、以下の6点が争われた事案である。
(1) A3をC1社の担当から外したこと、同人に対する仕事の依頼回数が減少したことは、組合員であること又は正当な組合 活動を行ったことを理由とする不利益取扱い及び組合らの組織運営に対する支配介入に当たるか否か(争点1)。
(2) A4の授業コマ数が減少したことは、組合員であること又は正当な組合活動を行ったことを理由とする不利益取扱い及び 組合らの組織運営に対する支配介入に当たるか否か(争点2)。
(3) 27年5月頃、A5の上司であるB3教区長が、B2に対し、A5を解雇するための理由を探している旨発言した事実が あったか否か、事実があった場合に組合らの組織運営に対する支配介入に当たるか否か(争点3)。
(4) A5をC4校からC5校へ配置転換したこと及び同人のC5校における木曜日の授業を外したことは、組合らの組織運営 に対する支配介入に当たるか否か(争点4)。
(5) A2に対し、欠勤を理由に28年4月11日付「最終警告書」を交付したことが、組合員であることを理由とする不利益 取扱い及び組合らの組織運営に対する支配介入に当たるか否か(争点5)。
(6) A2に対する29年2月末日付けの雇止めは、組合員であること又は正当な組合活動を理由とする不利益取扱し、及び組 合らの組織運営に対する支配介入に当たるか否か(争点6)。

 東京労働委員会は、会社に対し、(1)の一部及び(5)の行為を不当労働行為であるとし、(5)の行為を無効とするととも に、文書の交付を命じ、その余の申立を棄却した。 
命令主文  1 被申立人会社は、申立人組合及び同支部の組合員であるA2に対 する平成28年4月11日付「最終警告書」をなかったものとして取り扱わなければならない。
2 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合らに交付しなければならない。

 年 月 日
組合
執行委員長 A1 殿
支部
執行委員長 A2 殿
会社         
代表取締役 B1

 当社が、貴組合らの組合員A3氏に対し、平成27年2月以降、業務の依頼回数を減らしたこと、及び同A2氏に対し、28年 4月11日付「最終警告書」を交付したことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
(注:年月日は文書を交付した日を記載すること。)

3 被申立人会社は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
4 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 A3をC1社の担当から外したこと、A3に対する仕事の依頼回 数が減少したことについて(争点1)
ア A3をC1社の担当から外したことについて
 授業が予定どおり開始されない理由がストライキであったとしても、授業が予定どおり開催されないことを理由とする顧客から の担当講師変更の依頼に会社が応じることは、業務上の必要性に基づく対応であるといえるから、会社が、C1社の講師変更依頼 に応じて他の担当講師を派遣し、結果的にA3を同社の援業担当から外すことになったことは、業務上の必要性によるものであっ たといわざるを得ない。
 そして、会社は、A3に6割の休業手当を支給し、満額ではなくても一定の賃金保障を行う配慮をしており、これに対して、組 合も一定の理解を示していたのであるから、会社が、C1社の担当講師を変更してA3を同社の担当から外したことは、同人が組 合員であることや組合活動を理由とする不利益取扱い、又は組合らの組織運営に対する支配介入であるとまでいうことはできな い。
イ A3に対する仕事の依頼回数が減少したことについて
 A3は、C1社における授業を開始する前の26年4月以前においても、ほぼ毎月法人営業部の業務を行っていたところ、会社 は、同人がC1社の担当を外れた後の27年2月から4月まで、同人に業務を全く依頼せず、5月から12月までの間に、ソシア ル・イベント等の業務を5回依頼したものの、うち1回はイベントが中止となり、1回は、同人が勤務できないと会社に伝えてい た日曜日であった。C1社の担当を外れたという事情があったとしても、このようにA3への仕事の依頼回数が極端に減少したこ とは、不自然である。
 毎月の業務量を契約で定められていないパート講師であっても、従来行っていた仕事の依頼を、組合ら活動等を理由にして減ら したのであれば、不当労働行為が成立し得るというべきである。
 そして、会社は、A3に対し、27年2月以降、講師の仕事を一切依頼しなくなり、これまでより少ない頻度でソシアル・イべ ント等の業務のみを依頼していることの合理的な理由を説明していないのであるから、同人に対する仕事の依頼回数が減少したの は、同人が26年12月から27年1月にかけてストライキを行ったことを理由にしたものであるとみざるを得ない。
 したがって、27年2月以降、A3に対する業務の依頼回数が減少したことは、同人がストライキを行ったことを理由とする不 利益取扱いに当たるとともに、ストライキを抑制することにより組合らの弱体化を企図した支配介入にも該当する。

2 A4の授業コマ数の減少について(争点2)
ア 会社がA4をC2校での木曜日の授業から外したのは、生徒からのクレームが多いとして、同校のFCオーナーから講師変更 の要請があったためである。
 そして、顧客であるFCオーナーからの要請は、10月2日からの講師変更であったが、会社は、同日には講師を変更せず、 A4の要求を受け入れて授業観察を行っていること、その授業観察の結果は良好とはいえなかったこと、及び10月2日からの講 師変更が行われなかったことについて、FCオーナーから強い不満が寄せられていたこと等を考慮すれば、会社がA4をC3校で の木曜日の授業から外したのは、業務上の必要性によるものであったといわざるを得ない。
イ 6月16日の後、会社は、C3校での授業をA4に依頼しなくなり、7月以降の同人の授業コマ数はゼロとなったが、これ は、同人が頻繁にストライキを実施するようになった4月以降も会社は同人に仕事を割り当てていたところ、ストライキによる度 重なる授業不開催によって、同人の援業の生徒の多くは、他の講師の援業に移っていったためである。
 会社が、ストライキの実施を直接の理由として講師を授業から外したのであれば、それは、不当労働行為になり得るといえる。 しかし、会社はストライキ実施後も相当期間A4に授業を割り振っていたものの、その間に生徒が他の講師の授業に移り、A4の 授業に生徒が集まらなくなってしまった以上、会社がC3校での火曜日の援業からA4を外したのは、業務上の必要性によるもの であったといわざるを得ない。
ウ したがって、会社がA4をC2校での木曜日の授業から外したこと、及び同人をC3校での火曜日の授業から外し、27年7 月以降の同人の授業コマ数がゼロとなったことは、同人が組合員であることや組合活動を理由とする不利益取扱い、又は組合らの 組織運営に対する支配介入であるということはできない。

3 B3教区長の発言について(争点3)
 B3の発言については、C4校や他校での悪評を聞いてA5が解雇されるのではないかと心配するB2に対し、B3が、A5に 解雇されるような理由があるのかと尋ねたにすぎないとも考えられ、必ずしも、B3がA5の組合活動を嫌悪し、同人を解雇する ために、その理由を探そうとして発言したとまでみることはできない。
 したがって、B3の発言が、組合らの組織運営に対する支配介入に当たるということはできない。

4 A5の配置転換等について(争点4)
 講師の質によって自らの経営に直接影響を受ける面のあるFCオーナーからの要請を受け、同オ-ナーが指摘する講師の評判や 実績を考慮して、講師変更の要請に応じることは、業務上の必要性に基づく対応であるといえる。加えて、B2の要請は新年度か らの講師変更であったが、会社は、B3が面談を行うなどしてA5への指導を行った上、6月に配置転換を行っており、FCオー ナーの講師変更要請に直ちに応じたのではなく、A5に改善の機会を与えていたことがうかがわれる。そうすると、結果的に、会 社が、A5をC5校へ配置転換したことは、業務上の必要性によるものであったといわざるを得ない。
 また、A5は、月給制の常勤講師であり、配置転換をしても授業数や賃金が減少するわけではなく、異動に伴う実質的な不利益 は特に認められない。
 したがって、会社がA5をC4校からC5校へ配置転換したことが、組合らの組織運営に対する支配介入に当たるということは できない。
 また、会社は、木曜日の授業について、C5校でA5が担当する生徒が減少し、同人の授業コマ数が減少したことから、同人を C6校に異動させた。
 27年6月から9月にかけて、C5校の生徒から苦情が相次いだ事実が認められ、実際に、他の講師の授業に移るなどした生徒 が多く、A5の授業コマ数が減少したのであるから、苦情の存在自体を否定することはできないし、担当する生徒が減少し、授業 コマ数が減少した以上、会社が、同人を異動させたのは、業務上の必要性によるものであったといわざるを得ない。そして、月給 制の常勤講師であるA5は、異動しても賃金は変わらないこと等も考慮すれば、会社が同人をC5校の木曜の授業から外し、C6 校に配置転換したことが、組合らの組織運営に対する支配介入に当たるということはできない。

5 A2への「最終警告書」について(争点5)
 A2の有給休暇申請について、会社は、同人の組合加入前の対応と異なり、2か月前を過ぎた申請を認めず、申請をした日に勤 務しなかった同人に対し、従来の「非解雇処分」の手順とは違う異例の対応をしており、このことに合理的理由は見当たらないこ とから、このような会社の対応は、同人が組合員であることや、組合らが団体交渉で取り上げて、同人の有給休暇取得が組合らの 要求事項ともなっていたことによるものであるとみざるを得ない。
 したがって、会社がA2に対し、「最終警告書」を交付したことは、同人が組合員であるが故の不利益取扱いに当たるととも に、組合員に異例の処分を行うことにより組合らの弱体化を企図した支配介入にも該当する。

6 A2の雇止めについて(争点6)
 会社の制度とは異なる有給休暇を主張して、一方的に欠勤を続けたA2を会社が雇止めとしたのは、会社秩序を維持するための やむを得ぬ措置であったというべきであり、同人が組合員であることや組合活動を理由とする不利益取扱い、又は組合らの組織連 営に対する支配介入であるということはできない。 
掲載文献   

[先頭に戻る]


顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委令和元年(不再)第50号 棄却 令和4年7月6日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約659KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダ ウンロードが必要です。