概要情報
事件番号・通称事件名 |
東京都労委平成29年(不)第51号
JR東海不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X1組合、同X2地方本部及び同X3分会 |
被申立人 |
Y1会社(「会社」) |
命令年月日 |
令和元年7月16日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
1 A4は、会社に勤務する従業員であり、X3分会の組合員である。平成28年9月、A4が入院手術のため年次有給休暇取得を申請し、これが付与された後、会社のB2助役は、A4に診断書の提出を求めた。
X2地方本部は、会社に対し、年休取得に理由の明示及び診断書の提出は必要がないと抗議したが、会社は、診断書の提出は必要であると述べた。
9月21日、A4は、会社に対し、診断書の提出を求めることには納得することができないとして、会社の制度にのっとり苦情申告をしたが、この申告は却下され、苦情処理会議は開催されなかった(「本件診断書提出間題」)。
11月1日、X2地方本部は、会社に対し、年休取得時に診断書の提出を求める根拠を明らかにすること等を議題とする団体交渉開催を申し入れた。11月24日、会社は、X2地方本部の申入事項は、X1組合と会社との基本協約第250条に規定する6項目の団体交渉開催事項に当たらないので団体交渉は開催しないが、A4の求める苦情処理会議を開催したいとの見解を示した。
12月19日、29年2月3日及び3月9日、X1組合は、会社に対し、本件診断書提出問題に関する団体交渉申入れを行ったが、会社は、団体交渉事項に当たらないとしてこれらいずれにも応じなかった。
2 7月14日、X1組合らは、当委員会に本件不当労働行為救済申立てを行った。
3 本件申立て後、X1組合と会社との間で毎年定期的に行われている新賃金及び夏季手当交渉並びに「協約改訂交渉」において、本件診断書提出問題について労使双方でやり取りがあった。
4 本件は、①X2地方本部が28年11月1日付けで、また、X1組合が12月19日付け、29年2月3日付け及び3月9日付けで申し入れた団体交渉に、会社が応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否か、②本件申立て後、定例の交渉において、本件診断書提出問題について団体交渉が実施されていることから、本件申立ての救済利益が失われているか否かが争われた事案である。
東京都労働委員会は、会社に対し、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるとして、速やかな対応とともに、文書の交付・掲示を命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人会社は、申立人X1組合及び同X2地方本部から、組合員が私傷病を理由として年次有給休暇を取得する際の診断書の取扱いについて団体交渉の申入れがあった場合には、これまでの解説書等の内容とは異なる会社の基本協約や就業規則等の解釈について、その異なる理由を、根拠資料等を示して具体的に説明するなどして、速やかにこれに応じなければならない。
2 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人X1組合、同X2地方本部及び同X3分会に交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートルX80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に、楷書で明瞭に墨書して、会社本社、Y2事業本部及びY3所内の従業員の見やすい場所に、10日間掲示しなければならない。
記 年 月 日
X1組合
中央執行委員長 A1殿
X2地方本部
執行委員長 A2殿
X3分会
執行委員長 A3殿
会社
代表取締役 B1
当社が、貴X2地方本部からの平成28年11月1日付け並びに貴X1組合からの12月19日付け、29年2月3日付け及び3月9日付けの団体交渉申入れに応じなかったことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
(注:年月日は文書を交付又は掲示した日を記載すること。)
3 被申立人会社は、前項を履行したときは、当委員会に速やかに文書で報告しなければならない。 |
判断の要旨 |
1 会社が団体交渉に応じなかったことは正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否か
本件診断書提出問題について、会社は、苦情申告、幹事間折衝及び本件申立て後の定例の団体交渉という手続の全体にわたり、個別の団体交渉義務を免れる程度にまで誠実に対応したということはできず、実質的な団体交渉が行われたものと評価することはできない。
したがって、X2地方本部からの28年11月1日付け並びにX1組合からの12月19日付け、29年2月3日付け及び3月9日付けの団体交渉申入れに対する会社の対応は、いずれも正当な理由のない団体交渉拒否に当たるといわざるを得ない。
2 救済利益が消減したとの会社の主張について
本件申立て後の定例の団体交渉における会社の対応は、それまでの説明と同様、X1組合らの合理的な疑義に対し、昭和63年解説書からの解釈の変遷やその内容、理由の合理性等を示さない姿勢に終始しており、誠実な団体交渉が尽くされたとは評し難いものである。そして、本件診断書提出問題に関連する現行の基本協約及び就業規則の規定に関する、会社による解釈は、文理から離れたものといわざるを得ないところ、会社は、本件申立て後の定例の団体交渉においても、自らの解釈を一方的に告げることを繰り返すのみで、X1組合らに、その解釈の根拠や合理性を示して説明をしていないのであるから、本件の救済利益は失われていない。 |
掲載文献 |
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