労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京都労委平成27年(不)第93号
文際学園不当労働行為審査事件 
申立人  X1組合、X2組合 
被申立人  法人Y 
命令年月日  平成30年8月7日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、下記①~⑥の争点について不当労働行為の成否が争われた事件である。
① 法人とA2との27年度前期の講師契約において、同人が担当可能とした月曜日から水曜日までの3時限目のイングリッシュ・コミニュケーション・スキルズ(ECS)の授業について、同人と契約せず、他の非常勤講師に依頼したことは、組合員であることを理由とする不利益取扱いに当たるか否か。
② 26年度後期以降、法人がA3に対して、オープンキャンパスにおけるECSの体験レッスン及び高校生向け特別授業を依頼しなかったことは、組合員であることを理由とする不利益取扱いに当たるか否か。
③ 27年7月9日のビラ配布に際して、法人職員B2がA5に対して発言した内容は、支配介入に当たるか否か。
④ 26年度前期以降、法人が、英語ネイティブ非常勤講師に対する講師会を集団開催方式で行わなくなったことは、支配介入に当たるか否か。
⑤ 27年l0月22日及び28年9月8日の団体交渉において、組合らが日本語の就業規則の写しの交付を求めたことに対する法人の対応は、不誠実な団体交渉に当たるか否か。
⑥ 27年11月30日の団体交渉における、法人によるA4の担当授業に関する学生満足度調査についての説明は、不誠実な団体交渉に当たるか否か。

 東京都労働委員会は、法人がA3に対し、26年度後期及び27年度前期に、オープンキャンパスにおけるECSの体験レッスン等の依頼を行ったものとして取り扱うこと、同人に対するバックペイ、⑥についての誠実団交応諾、②及び⑤についての文書の交付及び掲示等を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人法人は、申立人X1組合及び同X2組合の組合員A3に対し、平成26年度後期及び27年度前期に、オープンキャンパスにおけるECSの体験レッスン及び高校生向け特別授業の依頼を行ったものとして、その賃金相当額を支払わなければならない。
2 被申立人法人は、申立人組合らが組合員A4の担当コマ数に関して団体交渉を申し入れたときは、学生満足度調査の結果を説明するなどして、誠実に応じなければならない。
3 被申立人法人は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合らに交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に楷書で明瞭に墨書して、被申立人法人の日本外国語専門学校の教職員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
                記
               (略)
4 被申立人法人は、第1項及び前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
5 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 A2が担当可能としたECSの授業を他の非常勤講師に依頼したことについて
 同一クラスの木曜日と金曜日の2コマをA2が担当し、月曜日から水曜日までの3コマを別の非常勤講師が担当するという取扱いが、直ちに不自然な取扱いであるとまではいえない。
 A2の27年度前期の担当コマ数は、26年度と同じく12コマであるから、同人は、コマ数減の不利益は受けてない。加えて、A2の担当コマ数は非常勤講師の平均コマ数を上回っており、同人が非組合員に比して不利益を被っていたということもできない。
 法人がA2を殊更に不利益に取り扱ったとみることは困難であるから、当時の対立的な労使関係等を考慮したとしても、法人が27年度前期の授業の割当てにおいて、A2が月曜日から金曜日までの5コマ全てを担当可能としたクラスにつき、月曜日から水曜日までの3コマを他の非常勤講師に担当させたことは、組合員であるが故の不利益取扱いであるということはできない。

2 A3にECSの体験レッスン及び高校生向け特別授業を割り当てないことについて
 学校の教育理念や教育方針の理解が必要となる学生募集業務であるため、非常勤講師よりも先に専任教員に依頼するとの法人の方針に照らすと、学期ごとの講師契約を反復継続して学校の教育理念や教育方針を相当程度理解しているA3等の直接契約の非常勤講師に依頼せず、法人と直接契約を結んでいない派遺契約の非常勤講師への依頼を増やしていることは、矛盾である。
 そうすると、専任教員への依頼を増やしたのも、派遣契約の非常勤講師への依頼を増やしたのも、組合員である直接契約の非常勤講師への依頼をしないためであるとみざるを得ない。
 高校生向け特別授業(英会話セミナー及び冬期プレップスクール)について、開設されたクラス数が少ない中、毎年度継続して相当数を担当したA3が、25年6月7日に組合らが支部結成と同人の組合加入を法人に通知した後の25年度後期以降、法人から高校生向け特別授業の依頼を全く受けていないことは、不自然である。
 このことについて、法人は、25年度以降、開設クラス数が減ったこと、学生募集の観点からより適切な人材がいたこと、参加希望者の入学希望学科を担当する教員に依頼するのが望ましい等を主張する。しかし、法人の主張する理由により、A3に在校生向け特別授業の依頼をする頻度が減ることはあり得るとしても、それまで毎年度継続して相当数を担当してきた実績のあるA3への依頼が、25年度後期以降はゼロとなっている不自然さを説明したものとしては、合理的であるとは認め難い。
 それまで授業担当の実績があったA3に対する、ECSの体験レッスン、英会話セミナー及び冬期プレップスクールの依頼が、全て同じ25年度後期以降に一斉になくなっているという時期的整合性をみると、依頼がなくなった契機は、25年6月7日の支部結成や同人の組合加入の通知であるとみざるを得ず、また、その後も同人に対し一切依頼しない取扱いを変えていないことは、同人が組合員であることを理由とした不利益取扱いであるというべきである。

3 法人職員B2のA5に対する発言について
 B2の発言内容は、正社員になりたいと言ったA5に対して、「こんなことをやっていたら無理に決まっている。」、「恥ずかしくないの?」と述べるなど、A5が行っていたビラ配布による組合活動を否定するものであるし、組合加入を訴えるA5に対し、「郷に入っては郷に従え。」と発言するのは、組合活動をするなという意味に受け取られてもやむを得ないものである。
  B2の上記発言は、それ自体不穏当なところがあるものの、一般職員である同人は、法人の利益代表者又はそれに近接した地位にある者であるとはいえず、同人の発言に法人の関与があったとは認められないから、上記発言は、使用者の行為であるということができず、支配介入には当たらない。

4 講師会について
  講師会が、支部が同僚に組合活動を周知し、呼び掛けることのできる契機となっていたような事実があったとすれば、その機会が失われる結果となったというべきではあるが、法人がそのような講師会における組合の勧誘活動を認識し、これを妨げようとしていたとまで認めるに足りる事実があるとはいえないし、本来、講師会という業務の場における組合活動は、組合らに当然に認められるものではなく、また、講師会の前後の時間等における組合への勧誘活動であっても、法人が、組合らに対して、組合活動の機会として保障すべきものであるということはできない。
 集団開催方式の講師会では英語非常勤講師予定者に伝達したい内容が一人一人に十分説明できたか、講師予定者が理解しているかを確認することが困難であると感じたため、個別面談方式に変更したという法人の変更理由には、それ相応の合理性が認められることを考慮すると、法人が殊更に組合活動を妨害する意図をもって個別面談方式に変更したとまでいうことはできない。
 したがって、法人が英語ネィティブ非常勤講師に対する講師会を集団開催方式で行わなくなったことは、組合らの運営に対する支配介入には当たらない。

5 27年10月22日及び28年9月8日の団体交渉において、組合らが就業規則の写しの交付を求めたことに対する法人の対応について
 27年10月22日及び28年9月8日の団体交渉において、組合らが日本語の就業規則の交付を求めたのに対し、法人は、就業時間内の閲覧を認めており、大切な書類の一つとして情報管理しているから、交付については、組合員に限らず全従業員に認めない方針であると回答し、組合らが、非開示条項の同意や労働協約締結による第三者への非開示などの対応策を提案しても、これを拒否している。
 法人の対応は、健全な労使関係を構築する上で、必ずしも妥当なものであるとはいい難いが、法人は、就業規則の写しを交付しない方針やその理由について、一応の説明を行っており、法人が就業規則の写しの交付を拒否したことにより、団体交渉の進行が阻害されたといった事実は認められない。
 29年11月13日の団体交渉において、組合らが、コマ数の保障及び給与制度等の具体的な要求事項に関連して、当該部分の就業規則の内容を説明してほしいと要求したのに対し、法人は、就業規則の再契約、賃金及び解雇に関する条項を読み上げる等している。
 したがって、組合らが具体的な交渉事項を指摘して、それに関連する就業規則の内容の説明を求めた場合には、法人は、交渉事項に関連する限りで、就業規則の該当箇所の条文を読み上げるなど、少なくとも団体交渉に必要な範囲内では就業規則の開示に応じる姿勢であったということができる。
 以上のことから、法人の対応は、不誠実な団体交渉に当たるとまではいえない。
6 27年11月30日の団体交渉における法人によるA4の担当授業に関する学生満足度調査についての説明について
 学生満足度調査の結果は、A4のコマ数減の直接の原因であり、今後、契約不更新の理由ともなり得るものであることを考慮すると、少なくとも法人は、A4のコマ数減の理由や今後同人が改善すべき点等について、組合らが理解できるよう、学生満足度調査の結果の十分な説明に努める必要があったというべきである。そして、学生満足度調査そのものを開示しなくても、A4の具体的な点数や講師全体の中での順位等を示したり、調査結果を要約して同人の評価の全体的な傾向を説明するなど、法人のいう開示に伴うリスクを回避しつつ、コマ数減の理由として必要な範囲で調査結果の説明を行うことは、十分に可能であったと考えられる。
 したがって、27年11月30日の団体交渉における法人のA4の担当授業に関する学生満足度調査についての説明は、不誠実な団体交渉に該当する。 
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