労働委員会裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京高裁令和5年(行コ)第141号
文際学園再審査命令取消請求控訴事件 
控訴人  学校法人X(「法人」) 
被控訴人  国(処分行政庁 中央労働委員会) 
被控訴人補助参加人  Z1組合(「組合」)、Z2支部(「組合支部」)(両者を併せて「組合ら」という。) 
判決年月日  令和5年11月22日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、法人による、①平成27年度前期の講師契約において、A2執行委員長が担当することが可能であるとした授業の一部を同人に担当させず、他の非常勤講師に担当させたこと、②平成26年度後期以降、A3組合員にオープンキャンパスにおけるイングリッシュ・コミュニケーションスキルズの体験レッスン及び高校生向け特別授業を担当させなかったこと、③平成27年7月9日に行われたビラ配布(以下「本件ビラ配布」という。)の際の法人職員のうちの一人(以下「本件職員」という。)のA4組合員に対する発言(以下「本件発言」という。)、④平成26年度前期以降の英語ネイティブ非常勤講師の講師会を、集団開催方式ではなく個別面談方式で行ったこと、⑤平成27年10月22日及び平成28年9月8日の団体交渉(以下「団交」という。)において、組合らが求めた日本語の就業規則の全文の写しの交付に応じなかったこと、⑥平成27年11月30日の団交において、A5組合員の学生満足度調査の結果の開示要求に応じなかったこと、の各行為が労組法7条各号の不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事案である。
2 初審東京都労委は、上記②及び⑥が不当労働行為に該当するとして、A3組合員に対するバックペイ、A5組合員に係る学生満足度調査の結果を説明するなどの誠実団交応諾を命じるとともに、これらに係る文書交付及び掲示を命じ、その余の救済申立てを棄却した。
3 法人と組合らの双方は、これを不服として再審査を申し立てたところ、中労委は、初審命令を一部変更し、上記②及び⑥に係る命令の表現適正化に加えて③も不当労働行為に該当するとして、これらに係る文書交付及び掲示を命じ、その余の申立てを棄却した。
4 法人は、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、法人の請求を棄却した。
5 法人は、これを不服として東京高裁に控訴したところ、同高裁は、法人の控訴を棄却した。  
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、控訴人の負担とする。  
判決の要旨  1 当裁判所も、法人の請求は理由がないものと判断する。その理由は、原判決を次のとおり補正し(略)、後記2のとおり当審における法人の補充主張に対する判断を加えるほかは、原判決「事実及び理由」第3の1~5に記載のとおりであるから、これを引用する。

2 当審における法人の補充主張に対する判断

(1)平成26年度後期以降、A3に体験レッスン等を担当させなかったことは不利益取扱いに当たるか(争点1)について

ア 不当労働行為該当性

 法人は、以下の①~④の事情に鑑みれば、法人が、平成25年度後期以降、A3に対して体験レッスン等を依頼しなかったことは、A3に対する不利益取扱いには該当しないし、仮に、これが不利益取扱いに該当するとしても、A3に体験レッスン等を依頼しなかったことには合理的な理由があるから法人に不当労働行為の意思はなく、いずれにせよ不当労働行為には該当しないと主張するが、各事情についての判断は、以下のとおりである。

①法人には、非常勤講師に対して、体験レッスン等を依頼する義務はなく、これを依頼するかどうかは法人の自由裁量に委ねられており、継続的な依頼が保証されるものでもないから、A3に対して体験レッスン等の依頼をしなかったことは不利益取扱いに該当しないとする点について
 体験レッスン等は、講師契約によって非常勤講師への依頼が約束されている授業ではなく、法人が適切であると判断した非常勤講師にその都度依頼する授業であるが、そのこと自体をもって直ちに、A3に対して平成25年度後期以降、少数の例外を除いて体験レッスン等を依頼しなかったことが、不利益取扱いに該当しないこととはならない。

②平成24年度にA3への体験レッスン等の依頼が多くなった原因は、その時期に体験レッスン等を依頼できる専任教員及び非常勤講師が少なかったからにすぎず、その依頼頻度のみによって、法人がA3を高く評価していたと推認することは誤りであり、法人は、A3について、学生募集行事についての適性はそれ程高くないと評価していたとする点について
 法人は、A3に対して、平成23年度から平成25年度前期まで、体験レッスン等を継続的に依頼しているのであり、その回数は他の講師と比較しても多かったものであり、体験レッスン等の学生募集行事が法人への入学を検討している高校生やその保護者に対して法人に係る情報や体験を伝える貴重な機会であることに照らせば、平成24年に体験レッスン等を依頼できる専任教員及び非常勤講師が少なかったという事情があったとしても、法人が、A3に対して体験レッスン等を依頼するに際し、A3が学生募集行事に対して適性を有していると評価していなかったとは考え難い。
 そして、法人は、A3に対しては、平成25年6月以降、急激に依頼を減少させ、同年9月以降、全く依頼をしなくなったものであるところ、組合らは、平成26年9月3日、平成25年前期と比べてA3ら組合らの組合員の担当するコマ数が減っているとして抗議し、コマ数を減らした理由等を質問したのに対して、法人は、講師から提出されたアベイラビリティ・シートを参考にして、授業と担当する講師の調整を行うが、非常に複雑なものであるから、あらかじめ、講師の希望どおりに授業が依頼されることを保証するものではない旨を十分に伝えてあるなどと回答したものの、その際、A3らの適性については具体的に言及していないことが認められ、平成25年6月ないし同年9月頃にA3の学生募集行事への適性が失われたというべき事情を認めるに足りる証拠もない。

③平成25年度前期のA3の担当数が、結果として平成24年度前期よりも少なかったのは、A3の都合によるところが大きい上、専任教員と非常勤講師とでは担当する業務内容や職種が異なるのであるから、平成25年度後期以降、主として専任教員が体験レッスン等の学生募集行事を担当するようになったことは不自然かつ不合理なことではなく、法人における専任教員の採用状況及び依頼状況に照らせば、平成25年度後期以降、A3に対して依頼しなかったことには合理的な理由があり、少なくともA3が組合らの組合員であることを理由とするものではないとする点について
 平成24年度以前は、非常勤講師が体験レッスン等の多くを継続的に担当し、専任教員が担当する割合は少なかったのであり、平成26年度以降も、新たに採用した非常勤講師や派遣契約の非常勤講師に対する依頼が一定数あることをも考慮すれば、体験レッスン等を常時専任教員が担当する必要性が高かったことを認めることはできず、その必要性が平成25年度後期以降、急に高まるような事情が生じたことをうかがわせる証拠もない。
 しかるに、平成25年度後期以降、体験レッスン等の専任教員の担当割合は大幅に増加していること、平成25年度後期は、A3らが法人に対し組合支部結成通知をした平成25年6月7日の次の半期であることからすれば、平成25年度前期にA3が体験レッスン等を担当した数が少なかった原因がA3の側にあったことを勘案しても、平成25年度後期以降にA3に対して体験レッスン等を依頼しなかったことに合理的な理由があるということはできず、A3が組合らの組合員であることを理由とするものであると推認するのが相当である。

④平成26年度後期については、労使間で団交における言語について協定書が締結され、団交が定期的に行われている時期であり、労使関係は緊張状態と評価されるものから脱していたことなどに鑑みれば、法人が、平成25年度後期以降、A3に対して体験レッスン等を依頼しなかったことは、A3に対する不利益取扱いには該当しないし、仮に、これが不利益取扱いに該当するとしても、A3に体験レッスン等を依頼しなかったことには合理的な理由があるから法人に不当労働行為の意思はなく、いずれにせよ不当労働行為には該当しないとする点について
 組合らは、平成26年に入っても、前件事件(注:平成25年に、法人が組合に加入したA1を雇止めしたことが不当労働行為に当たるとして救済申立てした事件に、組合らのB2高田馬場校舎正門前でのビラ配付を法人の複数職員が妨害したとして救済申立てを追加した事件)に関する救済を申し立てたり、法人との間で団交を繰り返して授業コマ数の減少について抗議したりするなど、法人と組合らとの間の労使関係は緊張状態が継続していたのであるから、労使間で団交における言語について協定書が締結され、団交が定期的に行われていたとしても、労使関係が緊張状態から脱していたということはできない。

 以上によれば、法人の上記主張は、いずれも採用することができない。

イ 救済方法

 法人は、以下の①~④の事情に鑑みれば、平成24年度前期から平成25年度前期までの直近3期のA3に対する依頼実績の平均を基に賃金相当額の支払を命じるのは不当であると主張するが、各事情についての判断は、以下のとおりである。

①救済命令は、不当労働行為を受けたことに対する救済を主眼とするものであり、不利益取扱いを受けた個人の経済的被害を超える金額について使用者に支払を命じることは、救済の趣旨を超えて、使用者に対する懲罰になりかねないところ、A3に対して過去の依頼実績と同様の依頼がされることについては、法律上も事実上も何らの保証がされていないのであるから、平成24年度前期から平成25年度前期までの直近3期の依頼実績に依拠して賃金相当額の支払を命じることは不合理であるとする点について
 訴訟において労働委員会の救済命令の内容の適法性が争われる場合においては、裁判所は、労働委員会の裁量権を尊重し、その行使がその趣旨、目的に照らして是認される範囲を超え、又は著しく不合理であって濫用にわたると認められるものでない限り、当該命令を違法とすべきではないものと解されるところ、法人が非常勤講師に対して体験レッスン等を依頼する契約上の義務がないことを考慮しても、A3に対する直近3期の依頼実績は、不当労働行為の開始直前のものであって、不利益取扱いがなかったとした場合の同人への依頼状況や、依頼した場合の賃金を推認する上で、基本的に依拠すべき事情というべきである。

②非常勤講師に対する体験レッスン等の依頼数は、極めて不確実かつ流動的なものであり、また、専任教員の担当数が増加したことは、法人の不当労働行為意思を原因とするものではないから、賃金相当額の支払を命じるに当たっては、少なくとも実際に非常勤講師に依頼した体験レッスン等の数を基にすべきであるとする点について
 体験レッスン等に係る非常勤講師の担当割合が減少したことは、法人の不当労働行為を行う意思を原因とするものであるというべきであり、賃金相当額の支払を命じるに当たり、実際に非常勤講師に依頼した体験レッスン等の数を基準としないことが、直ちに不当であると断じることはできない。

③平成24年度から平成27年度までを通してみれば、英会話セミナーの実施クラス数が一概に激減しているとはいえないとしても、各コースの実施日数自体は減少しているとする点について
 平成26年度以降、英会話セミナーの実施クラス数や実施日数が減少しているという事情があるとしても、その経緯及び原因は具体的に明らかになっているとはいえず、その減少の程度も著しいとまでいえないこと、B2校の学生数自体は増加し続けていることに照らせば、上記事情を考慮しないことをもって、直ちに不当であるということはできない。

④非常勤講師は、契約上の通常授業以外の時間に兼業することが禁止されていないこと、A3において、体験レッスン等が実施された日程に、現実に体験レッスン等を担当することが可能であったことを疎明すべきであることなどからすれば、直近3期のA3に対する依頼実績の平均を基に賃金相当額の支払を命じるのは不当であるとする点について
 体験レッスン等が実施された日程について、A3が現実に体験レッスン等を担当ができなかったというべき事情を認めるに足りる証拠はないのであるから、非常勤講師は契約上の通常授業以外の時間に兼業することが禁止されていないこと、A3において、体験レッスン等が実施された日程に、現実に体験レッスン等を担当することが可能であったことを疎明していないことという事情があるとしても、これらの事情を考慮しないことをもって、直ちに不当ということはできない。

 したがって、法人の上記主張も、いずれも採用することができない。

(2)本件発言は組合らに対する支配介入に当たるか(争点2)について

 法人は、以下の①~③の事情に鑑みれば、本件ビラ配布時において、B2校職員らは組合らの組合員らによるビラ配布を監視、妨害する目的で見守り等を行っていたという事実はなく、本件発言は本件職員の個人的発言であることが明らかであると主張するが、各事情についての判断は、以下のとおりである。

①本件職員は、雨模様の昼休みで人の出入りも激しい中、組合らの組合員らが道路上で学生を引き留めて話しかけていることは、学生に対して迷惑を掛ける行為であると感じたことから、本件発言に至ったものであり、本件ビラ配布を非難・妨害する意図はなかったとする点について
 原判決「事実及び理由」第3の4(3)ウにおいて認定説示のとおり、本件職員は、ビラ配布をしたら正社員になれない、嫌なら法人を辞めたらいい、このようなことをして恥ずかしくないのかなどと繰り返し発言しているのであって、学生に対して迷惑を掛ける行為であると感じたことから本件発言に至ったという法人の主張はやや不自然であり、むしろ、これらの発言は、法人に本件ビラ配布を非難・妨害する意図があったことと整合するというべきである。

②A4は、当初より、本件職員から不適切な言動を引き出してそれを記録することを意図して本件職員に関わりをもったことが推認されるのであり、組合らの組合活動に萎縮効果が及ぶことはなく(実際に、A4はその後もビラ配りをしている。)、また、本件発言は、A4以外の本件発言を聞いていない組合らの組合員らに対して萎縮効果を与えることはないとする点について
 原判決「事実及び理由」第3の4(3)ウにおいて認定説示のとおり、A4がスマートフォンを手に持って撮影していた時間は短時間であり、同人が本件職員を挑発的な態様でスマートフォンを近づけて撮影したりしたとの状況があったということはできないのであるから、A4に本件発言を誘発するような挑発行為があったと認めることはできない。
 そして、本件発言は、単にビラ配布を非難する内容であるにとどまらず、ビラ配布等の組合活動をすることにより法人の講師としての身分に不利益が生じることも示唆する内容のものであったのであるから、組合らの組合員らに対し、組合活動としてのビラ配布へ参加することに対する萎縮効果を生じさせるおそれがあり、また、職員を含むB2校関係者らに対しても、ビラ配布が違法な行為であるかの印象を与え、ビラを受け取ることや組合らに加入することに対する萎縮効果を生じさせるおそれがあったということができる。

③B2校では、組合らによるビラ配布が行われる前から、正門前でチラシやパンフレットを配布する団体があった場合には、正門前の安全管理の一環として、職員らによる見守りを行っているのであり、組合らの組合活動を妨害する目的で、組合らの組合員によるビラ配布のときだけ見守りを行っているわけではない上、B4校長はビラの配布を阻害するような行為をしないよう事前に注意しており、前件事件と本件ビラ配布との間には、B2校職員らの行為の態様に大きな差異があったことなどからすれば、本件ビラ配布時において、B2校職員らは組合らの組合員らによるビラ配布を監視、妨害する目的で見守り等を行っていたという事実はなく、本件発言は本件職員の個人的発言であることが明らかであるとする点について
 前件事件において支配介入行為をした本件職員を含む数人の法人職員らは、本件ビラ配布の際、正門前に参集し、B2校の生徒を含む多数の歩行者が車道の広い範囲を通行したり、車両が通過したりする状況にあったにもかかわらず、車道で生徒の誘導を行うような行動をすることがなかったものであり、本件職員その他の法人職員らの一連の行為は、組合らのビラ配布を監視、妨害をする目的でされた組織的な行為というべきである。
 また、B4校長が事前に、ビラの配布を阻害するような行為をしないよう注意していたことを認めるに足りる的確な証拠はない。
 そのような中で、本件職員がビラ配布を非難し妨害する趣旨の本件発言をしたのであるから、本件発言は、法人の指示又は関与に基づいたビラ配布の監視、妨害をする組織的な行動の一環というべきである。

 したがって、法人の上記主張も、いずれも採用することができない。

(3)本件団交において、学生満足度調査についてのA5の結果の開示請求に応じなかったことは、不誠実な団交に当たるか(争点3)について

 法人は、以下の①~③の事情に鑑みれば、それまでの団交において、学生満足度調査の具体的なポイント数を開示できない理由を説明し、組合らの要求に応える努力をしてきたというべきであり、本件団交における対応に不誠実な点はないと主張するが、各事情についての判断は、以下のとおりである。

①学生満足度調査は、学生自身が評価者であり、その主たる目的は、より充実した授業を提供するための参考資料とすることであるから、再度講師契約をするかしないかの判断に直接結びつくものではなく、学生満足度調査のポイント数のみで再契約の可否を判断することはないとする点について
 原判決「事実及び理由」第3の5(1)において認定説示したとおり、学生満足度調査の結果は、法人が非常勤講師と次期の講師契約を締結するか否かを判断し、契約を締結した際のコマ数を検討するに当たっては、重要な役割を果たしたものと認められるのであり、A5は、同調査の結果如何によっては、次期のコマ数の減少はもとより、講師契約そのものが締結されない可能性があったのであるから、組合らがこの点の情報開示を求めたことには、相応の理由があったというべきである。

②学生満足度調査の結果を非常勤講師に開示しない理由については、本件団交よりも前に、学生満足度調査の正確性を担保し、回答者である学生に対する心理的影響等を考慮して、調査結果を第三者に開示しないことを前提として当該調査を実施していること、非常勤講師が学生に対して、当該調査に関連して不適切なアプローチをする懸念があることなどである旨を説明し、具体的なポイント数について開示をしない代わりに、英語ネイティブ非常勤講師における当該組合員の順位を開示しているとする点について
 原判決「事実及び理由」第3の5(3)アにおいて認定説示したとおり、学生満足度調査の結果を非常勤講師に開示することにより想定されるリスクは具体的・現実的なものであるとはいい難く、上記のとおりその開示の必要性が高いことからすれば、上記リスクを回避する工夫をしつつ、A5の具体的なポイント数や講師全体の中での位置付け等を説明することは、十分可能であったというべきである。

③組合らの組合員らは、自らの改善点を知るためにフィードバックを求めており、具体的なポイント数や講師全体の中での自己の位置付けについて大きな関心がある様子を示しておらず、B4校長は授業の改善がなければ再契約は難しいと述べていたことから、学生がA5の授業のどこに不満を持ち、どこに満足しているかを知ることの方が重要であったところ、それについては、それまでの団交(平成27年7月2日実施)において開示していたことといった状況の下で、本件団交においてA5の具体的なポイント数や講師全体の中での位置づけを示さなかったとしても、直ちに不誠実な対応であるとはいえない。法人は、それまでの団交において、学生満足度調査の具体的なポイント数を開示できない理由を説明し、組合らの要求に応える努力をしてきたというべきであり、本件団交における対応に不誠実な点はないとする点について
 原判決「事実及び理由」第3の5(2)において認定説示したとおり、法人は、A5の学生満足度調査の結果の開示に関し、平成27年5月29日の団交では、同調査におけるA5の正確なポイントは公開するつもりはないと述べたこと、組合らが、同年9月27日付けの組合らの要求において、同調査に係る組合らの組合員全員の結果及び非常勤講師全員の平均値を開示するように求めたにもかかわらず、法人は、いずれも従前どおり公開しない旨回答したこと、組合らが、本件団交において、改めてA5の学生満足度調査のポイントを尋ねたのに対し、法人が、具体的には答えられない、平成26年度後期も平成27年度前期も悪かった旨を答えるとともに、開示しないのは法人の方針である旨を述べ、組合らが改めて開示しない理由を尋ねたにもかかわらず、法人は、とにかく開示しないことを決めている、具体的な特定はできないが開示にはいろいろなリスクがある、以前には開示していたが結果的に効果がなかったなどと回答するにとどまっていることが認められるのであるから、結局のところ、本件団交における法人の交渉態度は、組合らの要求や主張に対して、これを理解、納得させることを目指して誠意をもって対応したものと評価することはできない。

 したがって、法人の上記主張も、採用することができない。

3 結論

 以上によれば、法人の請求は理由がないから棄却すべきであり、これと同旨の原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから棄却する。  
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成27年(不)第93号 一部救済 平成30年8月7日
中労委平成30年(不再)第45・46号 一部変更 令和3年8月4日
東京地裁令和3年(行ウ)第503号 棄却 令和5年4月10日
 
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