労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成28年(不再)第70号
更生会不当労働行為再審査事件
再審査申立人  Y法人 
再審査被申立人  X組合 
命令年月日  平成30年3月7日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 Yは、人事考課表を提出しなかった者の人事考課結果を二段階引 き下げる旨の規定(以下「二段階引下規定」という。)を適用した結果として、定年前1年間に行われた2回の人事考課結果がい ずれも最下位の評価となったことを理由に、組合員Aは再雇用基準を満たしていないとして再雇用しなかったことが不当労働行為 である
として、救済申立てのあった事案である。
2 初審広島県労委は再雇用しなかったことは不当労働行為であることを確認し、その余の申立てを棄却したところ、Yはこれを 不服として、再審査を申立てた。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 二段階引下規定について
 二段階引下規定は、人事考課表不提出者に対して、最終評価ランク決定の段階で目標評価三項目分を評価不能として不利な評価 をしたことに加えて、最終評価を二段階引き下げる二重に不利な評価を行うものである。そして、それは、給与額や賞与額という 重要な労働条件のみならず、定年後の再雇用にも重大な不利益を及ぼすものであるが、それを緩和する段階的な適用や措置は想定 されていない。
 このような規定が導入されたのは、人事考課制度に反対していた組合が人事考課表提出拒否闘争を開始したことを契機とするも のであり、人事考課制度をめぐる労使関係の対立が堅調となる中で行われたものであった。そして、単に人事考課表の提出拒否を 防止するための措置としては不相当に重い規定を何らかの段階的適用や緩和措置を検討することなく導入するにあたって、Yは同 規定の適用対象者が事実上くX組合員のみであることを十分認識していたといえる。
 同規定は、Xの人事考課制度に対する反対運動を嫌悪したYが人事考課表を提出しない組合員を狙い撃ちにして殊更に重い不利 益を与え、特に再雇用との関係では、再雇用拒否により組合員がYから排除される結果をもたらすことを認識・認容した上で定め たものと認めるのが相応である。
 会社は本件配置転換後の賃金について、各団体交渉において説明しており、提示された賃金額には一応理由がある。また、会社 が、本件賃金減額分が障害年金によって補填されると考えていても、そのことが直ちに不合理であるともいえず、このことのみか ら本件賃金減額が恣意的に過剰に減額したものとは認められない。さらに本件配置転換後の賃金について団体交渉において協議し ており、配置転換に伴う労働条件の変更に係る就業規則の規定に反するものとまではいえない。
 よって、本件配置転換及び本件賃金減額が不当労働行為であるとはいえない。
2 組合員Aに対する二段階引下規定の適用について
 1のとおりであるから、組合員Aの再雇用を拒否することは、Aの評価が同規定適用前において、再雇用基準を満たさないもの であった場合を除き、不当労働行為に当たる。
 この点Yは二段階引下規定の適用の有無にかかわらず、再雇用基準を満たしていなかったと主張する。しかし、Yがその証拠と して提出した資料は初審救済申立て後に作成したものであり、かつAの定年前考課当時に作成された資料等により裏付けが十分さ れているとはいえず、その記載にはAに交付された人事考課表の写しと食い違いが見られ、信用性に欠ける。またYはAの仕事ぶ りについての証言等に係る立証も何らしていない。
 他方XからはAの仕事ぶりが良好であったとの証拠が提出され、その記載内容は具体的であり、特に不自然、不合理なところは ない。また、Aについては、定年前考課より前の人事考課表の記載にも不正確さやずさんさが散見されることなどを併せ考えれ ば、法人の主張は採用することができない。
 以上によれば、再雇用拒否は二段階引下規定の適用によって再雇用の要件を満たしていないとしてなされたものであるから、不 当労働行為に当たる。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
広労委平成27年(不)第5号 一部救済 平成28年11月29日
東京地裁平成30年(行ウ)第161号 却下・棄却 平成31年3月27日
東京高裁令和元年(行コ)第142号 棄却 令和元年10月24日
 
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