事件番号・通称事件名 |
東京高裁令和元年(行コ)第142号
更生会再審査申立棄却命令取消等請求控訴事件 |
控訴人 |
医療法人社団X1(「法人」) |
被控訴人 |
国(処分行政庁 中央労働委員会) |
被控訴人補助参加人 |
Z1ユニオン(「組合」) |
判決年月日 |
令和元年10月24日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、法人が、人事考課表を提出しなかった者の人事考課結果
を二段階引き下げる旨の規定(本件規定)を適用し、組合員Aが定年前1年間の2回の人事考課結果がいずれも最下位の評価と
なったことを理由に、再雇用基準を満たしていないとして再雇用しなかったことが、不当労働行為であるとして救済申立てのあっ
た事件である。
2 初審広島県労委は、組合員Aの再雇用を拒否したことが不当労働行為であることを確認し、その余の申立てを棄却したとこ
ろ、法人はこれを不服として再審査を申し立てたが、中労委は、法人の申立てを棄却した。
3 法人は、これを不服として、中労委に対し、再審査申立てを棄却する旨の命令の取消し及び初審広島県労委の命令中不当労働
行為を確認する部分を取り消す旨の命令の義務付け(本件義務付けの訴え)を求めて東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁
は、請求を却下又棄却はした。
4 法人は、これを不服として、東京高裁に控訴したが、同高裁は、控訴を棄却した。 |
判決主文 |
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。 |
判決の要旨 |
1 当裁判所も,原審と同様,本件訴えのうち,本件義務付けの訴え
は不適法であるからこれを却下し,本件訴えのその余の部分に係る法人の請求は理由がないからこれを棄却するのが相当であると
判断する。その理由は,次のとおり補正(編注:補正部分は(略))し,2のとおり当審における法人の主張についての判断を加
えるほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 争点に対する判断」の1から4までに記載のとおりであるから,これを引用
する。
2 当審における法人の主張についての判断
(1) 人事考課に必要な書類の提出拒否と労働組合の行為としての正当性について
組合の人事考課表等の提出拒否活動の目的は,人事考課制度によって,職場内に競争原理が持ち込まれることにより労働者間の
相互扶助が失われるなどして職場環境を悪化させ,その競争で不利な立場に陥った労働者が人事上の不利益を受けることや,過重
労働を誘発させるおそれがあることからこれに反対し,労働者の基本的な労働条件の改善,維持を図るという点にあると認められ
ること,人事考課表等の不提出により当該提出拒否者の人事考課には一定の支障が生じるものの,考課者による人事考課の実施自
体は可能であり,会社による人事考課制度の運営や実施を阻害する効果を有するものとは認められないことからすると,組合員ら
による人事考課表等の提出拒否の目的は組合活動として正当な目的の範囲内にあると認められる。
(2) 本件規定の制定が不当労働行為意思に基づいてされたかについて
会社は,人事考課制度等を巡って労使間の対立が深刻化している状況において,組合員らによる人事考課制度に対する反対活動
の一環である人事考課表等の提出拒否を契機として,人事考課表等の提出拒否者に対して人事評価の最終評価ランクを一律に2段
階引き下げる旨の制裁措置を,内部の規程等の変更も経ない個別の措置として直ちに決定し,病院内で周知し,その後,人事考課
規程を改定し,上記制裁措置と同内容を含む本件規定を設けたものであり,さらに,本件規定の制定後直ちに本件規定を人事考課
表等の提出を拒否した組合員に対して適用して再雇用を拒否したことが認められる。以上によれば,上記制裁措置及び本件規定の
制定は,組合の人事考課制度に対する反対活動を嫌悪し妨害するとともにこれを広く周知して他の職員らの追従を阻止しようとの
意図に基づいてされたものであって,不当労働行為意思に基づいてされたものと認められる。
3 結論
以上によれば,本件訴えのうち,本件義務付けの訴えは不適法であるからこれを却下し,本件訴えのその余の部分に係る法人の
請求は理由がないからこれを棄却するのが相当である。よって,上記と同旨の原判決は相当であり,法人の本件控訴は理由がない
から,これを棄却する。 |
その他 |
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