労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成27年(不再)第55・56号
日本郵便(晴海郵便局)不当労働行為再審査事件
再審査申立人  X組合(第55号) 
再審査申立人  Y会社(第56号) 
再審査被申立人  Y会社(第55号) 
再審査被申立人  X組合(第56号) 
命令年月日  平成29年9月20日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要  1 本件は、①組合員Aに対する雇止め予告通知の撤回要求に関する団交における会社の対応(第2回団交をもって打ち切ったことを含む)、②Aに対する雇止め、③Aに対する雇止め後に雇止めの撤回要求やAに対するパワハラに係る謝罪要求等に関する団交の申入れに応じなかったこと、等が労組法第7条第2号の不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労委は①及び③は不当労働行為に当たるとして、文書交付及び文書掲示を会社に命じ、その余の申立てを棄却したところ、X及びYはこれを不服としてそれぞれ再審査を申し立てた。
 
命令主文  本件初審命令主文を変更し、③のAに対するパワハラに係る謝罪要求に関する団交の申入れに応じなかったことに係る文書交付及び文書掲示をYに命じ、Yのその余の再審査申立て及びXの再審査申立てを棄却する。
 
判断の要旨  1 本件雇止め予告通知の撤回要求に関する団交におけるYの対応の労組法第7条第2号該当性
 Aは平成24年4月17日、深夜勤務を終えて帰宅する途中、通勤災害に遭い、その後同年9月19日の1日のみ出勤した以外は、平成25年3月31日付けで雇止めとなるまでの間に出勤しなかった。
 Yは団交において、雇止め予告通知の撤回要求には応じられないと回答した理由について、就業規則の根拠条文を提示しつつ、Aの平成24年10月1日付け雇用契約に係る雇用契約期間中において勤務実績が1日もないことや、仮に雇用契約期間途中の解雇であったとしても、通勤災害については、労働基準法第19条の規定のような制限はないと認識している等を説明している。そして、労働契約法第19条の規定に基づき、通算雇用契約期間あるいは雇用契約の更新回数について一定の条件を満たしさえすれば、Aのような期間雇用社員も無期契約労働者である正社員と同じ扱いとなるとのXの主張に対しても、本件雇止めについて、同規定により法制化されたいわゆる雇止め法理の趣旨を踏まえたとしても、Aが労務提供を全くしていないことは同規定にいう「客観的に合理的な理由」に当たる旨説明している。これに対し、Xは具体的な反論等を行うことなく、同規定に関する自らの見解を主張し続け、これを受け入れるよう迫る姿勢に終始し、雇止め予告通知を撤回するよう要求するのみであった。
 このようなXの交渉態度に鑑みれば、Yの対応はXの主張に対して相応の説明を尽くしたものと認められるとともに、他にYの対応が不誠実であったと評価しうる事情や経緯も存しないことから、Yが団交を打ち切ったことには、正当な理由がないとはいえない。
2 本件雇止めの労組法第7条第1号該当性
 Yは平成24年8月30日にAの組合加入通知を受ける前の同月23日の時点で、既に同年9月以降もAから職場復帰の見通しが一定程度示されない限りは、平成25年4月1日付けの雇用契約の更新は行わない旨の方針を有していたところ、現に職場復帰の見通しが立たない状況が続いたため、Aの雇用契約の更新を行わなかったものと認められること等から、YがAに対し、組合に加入したことや組合員であることの故をもって、本件雇止めをしたとまでは認めることはできない。
3 本件雇止め後の団交拒否の労組法第7条第2号該当性
 ア 本件雇止めの撤回要求に関する団交拒否について
 本件雇止めが実行された後にその撤回を要求するものであること以外は、実質的に本件雇止め予告通知の撤回要求と同一内容であると認められ、YはXに対して相応の説明を尽くしている。25年5月7日にAの通勤災害が認定されたところ、上記1の団交において、Aのけがは通勤災害であることを前提として協議が行われていること等から、新たな事情とは認められない。したがって、団交の申入れに応じなかったことは、正当な理由がないとはいえない。
 イ Aに対するパワハラに係る謝罪要求に関する団交拒否について
 Aが所属していた郵便局の管理者は、24年8月23日にAの自宅に電話し、けがの治癒の状況や職場復帰の見通しについて事情聴取した際、Aは4か月出勤していないが在籍しているため欠員とはならず、要員不足のまま欠員補充ができないなどと発言した。これに関しYは、パワハラの事実はないと書面で回答したのみで、団交の申し入れに応じなかった。Yは前記1の団交において一定の説明は行ったものの、Aの「私が働かない限り新しい人員を雇えないから迷惑だっていうことをいわれたんです」との発言等に対してAが言うような表現はしていないと答えたのみであり、発言に至る経緯や趣旨等を十分に説明しなかったのであるから、この点に関する団交が実質的に尽くされていたともいえない。したがって、団交の申入れに応じなかったことには正当な理由はない。
4 以上によれば、前記3イは不当労働行為に当たるがその余は不当労働行為には当たらず、前記1及び3アが不当労働行為に当たるとした初審判断は相当でない。
 前記3イの救済方法としては、本件経緯等の事情を考慮し、文書掲示及び文書交付をYに命じるのが相当である。

 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
都労委平成26年不第8号 一部救済 平成27年11月10日
東京地裁平成29年(行ウ)第573号 全部取消 平成30年12月20日
東京高裁平成31年(行コ)第10号 全部取消 令和元年7月11日
 
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