労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日本郵便 
事件番号  都労委平成26年不第8号 
申立人  郵政非正規ユニオン 
被申立人  日本郵便株式会社 
命令年月日  平成27年11月10日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   平成22年4月から被申立人会社のA郵便局で期間雇用社員(契約期間6か月)として勤務していたX2は、24年4月17日、通勤途上で交通事故により負傷し、同日以降、勤務できなくなった。同年8月23日、同郵便局の課長Y3がX2に電話をかけ、このままの状態では契約更新は難しい旨を通告したが、Y3から報告を受けた課長Y2は、同年10月以降についても契約を更新することを決めた。X2は、8月24日、申立人組合に加入し、組合は同人の組合加入を会社に通知した。25年2月26日、Y2がX2に電話をかけ、雇用契約について話をしたいとして、自宅に行く旨伝えたが、X2が組合同席で話を聞きたいと述べたところ、Y2は4月1日以降の雇用契約の更新はしないこと及び「雇止め予告通知書」を郵送すること等を伝え、電話を切った。3月12日及び同月25日、X2に対する雇止め予告通知の撤回等に関する団交が開催されたが、25日の団交において会社は、これ以上の進展は見込めないとの判断に至った旨の文書を読み上げ、団交を打ち切り、退席した。X2は3月31日付けで雇止めとなり、組合は4月1日以降、重ねて団交の継続を申し入れたが、会社はこれに応じなかった。
 本件は、①会社がX2を雇止めとしたこと、②Y2がX2に電話をして雇止めを告げるまでの一連の経緯、③2回の団交における会社の対応、④会社が団交を打ち切り、その後、団交に応じていないことは不当労働行為に当たるか否かが争われた事案である。
 東京都労委は会社に対し、文書の交付・掲示及び履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人日本郵便株式会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人郵政非正規ユニオンに交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に、楷書で明瞭に墨書して、被申立人会社晴海郵便局の従業員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
年  月  日
  郵政非正規ユニオン
  執行委員長 X1 殿
日本郵便株式会社
代表取締役 Y1
   当社が、平成25年3月12日及び同月25日に開催された貴組合の組合員X2の雇止めに関する団体交渉において誠実に対応しなかったこと、及び同月25日をもって団体交渉を打ち切り、その後貴組合の申し入れたこの議題を含む団体交渉に応じなかったことは、東京都労働委員会において、いずれも不当労働行為であると認定されました。
   今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
   (注:年月日は文書を交付又は掲示した日を記載すること。)

2 被申立人会社は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
3 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 組合員X2を雇止めにしたことについて
 X2が申立人組合に加入する前の平成24年8月23日、被申立人会社のA郵便局の課長Y3がX2に電話をした際、9月末日での雇用契約終了を了承するよう求めており、会社は、X2の組合加入前から、同人の職場復帰の見通しが立たないまま、出勤できない状態にあった場合には契約更新を行わない姿勢を示していたことが認められる。また、会社は、25年2月末日の時点において、X2の4月以降の契約更新の可否を判断する必要があったといえるが、同人が2月に提出した診断書によれば、職場復帰できる状態にまで回復していなかったことが認められる。
 以上の事実に照らせば、会社がX2の勤務実績がなく、復帰の見通しも立たないとして、同人の契約更新を不適当と判断したことは特に不自然とはいえず、また、同人の欠勤が長期にわたり、復帰の見通しが立たない場合には契約更新を行わないという会社の姿勢は、同人の組合加入の前後で変化していないと認められるのであるから、本件雇止めは同人が組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとはいえない。
2 会社のA郵便局の課長Y2が25年2月26日にX2に電話し、雇止めを告げるまでの一連の経緯について
 Y2がX2に電話をかけ、雇止めを通告したことは、会社が決定した当該雇止めについて就業規則及び従前の運用に沿って通知したものにすぎず、このような連絡・通知をすること自体はX2や組合の同意、あるいはこれらの者との交渉・協議が当然に予定される性質の行為とはいい難い。そして、X2が長期間にわたり欠勤し、A郵便局において雇止め予告を行う機会がないこと、及び雇止め予告は使用者が労働者に対して行うべきものといえることも考慮すれば、Y2が「雇止め予告通知書」を郵送する方法をとったことには一応の相当性が認められる。また、Y2はその際、X2に雇止めを認めさせようとする言動やこの問題を組合に相談させないように働きかける言動など、組合の関与を排除した中でX2に雇止めを認めさせようとするものと評価できる具体的な事実は認められない。そして、会社はその後、組合との団交の開催に向け、速やかに対応していたことが認められ、実際に団交を行っている。
 これらのことからすると、2月26日のY2の一連の行為をもって、会社において決定した雇止めをX2に通知することを超えて、組合の関与を排除して同人に雇止めを認めさせようとしたものとみることはできず、したがって、組合活動を妨げることを意図したものとまでは評価できない。よって、Y2が同日、X2に電話し、雇止めを告げるまでの一連の経緯が組合に対する支配介入に当たるとまではいえない。
3 団交における会社の対応について
 会社は2回の団交において、X2の雇止めに関する根拠や理由について一応の説明はしているものの、組合の質問や主張に対して実質的に回答しておらず、第2回団交においては、当初から交渉の進展状況にかかわらず、打ち切る意図をもって臨み、実際に打ち切ったことすら窺えるのであるから、組合の納得や理解を得るべく努力する姿勢をもっていたと評価することはできず、団交の推移全体をみれば、団交における会社の対応は不誠実であったといわざるを得ない。
4 団交を打ち切り、その後、団交に応じていないことについて
 前記3で判断したとおり、会社は2回の団交において、組合が求めている説明も組合の質問に対する実質的な回答も行っておらず、会社の説明が十分に尽くされていたとはいい難い。また、会社は、団交の進展状況にかかわらず、打ち切ることを決めて第2回団交に臨んでいたことが窺えるのであるから、議論が行き詰まった状況に至ったと判断した旨の会社の主張は採用することができない。したがって、会社が団交を打ち切り、その後も団交に応じなかったことは、正当な理由のない団交拒否に当たる。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成27年(不再)第55・56号 一部救済 平成29年9月20日
東京地裁平成29年(行ウ)第573号 全部取消 平成30年12月20日
東京高裁平成31年(行コ)第10号 全部取消 令和元年7月11日
 
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