労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  広労委平成28年(不)第3号
西日本旅客鉄道不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成29年10月27日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、会社が行った印刷事業所の廃止が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、広島県労働委員会は、申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 却下に関する主張について
 会社は、①組合は、支配介入の具体的事実について主張、立証を求める当委員会の指示に対応していないこと、②印刷事業所の廃止は会社の裁量であり、また、印刷事業所を廃止しても組合の組織拡大等の活動を妨害することにはならず、不当労働行為に該当しないことは明らかであること、③組合の請求する救済の内容は、労働委員会の裁量の範囲を逸脱するものとして法律上許されず、現実的にも不可能であることから、本件申立てを却下すべきであると主張する。
 ①について、組合が不当労働行為を構成する具体的事実として主張することは、印刷事業所の廃止が強行され、組合の組織拡大を妨害されたなどというものであり、その主張する事実自体は一応労働組合法第7条第3号の要件を満たすものであるから、直ちに却下理由に該当するとはいえない。
 ②について、印刷事業所の廃止が不当労働行為に該当するか否かは、事実関係の認定と評価に関わるものであって、審査を経なければ判断できないものであるから、直ちに却下理由に該当するとはいえない。
 ③について、請求する救済の内容は、労働委員会が当該事案について不当労働行為が成立すると判断した場合、いかなる救済命令を与えることが妥当かを検討する際の目安であって、労働委員会はこれに拘束されることなく、個々の事案に応じた具体的妥当な救済方法を決定する広範な裁量権が与えられているところである。加えて、組合は、印刷事業所廃止の撤回とともに、謝罪文の手交及び掲示を求めているのであるから、申立書に記載されている請求する救済の内容の一部を捉えて、直ちに却下理由に該当するとはいえない。
 以上のことから、会社の却下に関する主張を採用することはできない。
2 不当労働行為の成否について
(1)印刷事業所廃止の理由の合理性
 会社の主張する印刷事業所廃止の理由は、鉄道事業を主体とした社員運用を行うことを目的とし、印刷事業所の社員の年齢構成や他支社における印刷業務の状況等を踏まえたものと認められ、加えて、障害者雇用の推進という会社の方針に基づくものでもあることから、抽象的かつ漠然としたもので合理性がないとの組合の主張は採用することができない。
(2)反対運動等に対する組合嫌悪及び報復の意図の存否
 組合は、印刷事業所廃止の真の理由は、会社が、反対運動等を通じ、印刷事業所の社員の多数が組合に加入する趨勢にあることを恐怖し、組合を嫌悪したことから、印刷事業所の廃止が強行され、A2組合員を報復のため配転したのであり、これらは組合の組織拡大を妨害することを狙ったものである旨主張する。
 しかし、組合から、反対運動等を通じ、印刷事業所の社員の多数が組合に加入する趨勢にあったことについて疎明はなかった。
 また、会社は、組合と6回にわたり団体交渉を行っていること、面談でA2組合員に3度にわたり異動希望先を聴取していること、異動後のA2組合員の労働条件に不利益変更がないこと等からすると、会社が、組合を嫌悪した事実や、A2組合員に報復するために配転した事実があったと認めることはできない。
 さらに、組織拡大を妨害されたとすることについて組合から疎明はなく、本件審査におけるA2組合員の供述からも、その事情をうかがうことはできない。
(3)まとめ
 以上のとおり、印刷事業所の廃止は、組合が主張するように合理性がないとはいえず、また、組合を嫌悪し、その弱体化を図る目的をもってなされたものであると認められる特段の事情も認められないから、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当しない。
 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
広島地裁平成30年(行ウ)第16号 棄却 令和元年5月8日
広島高裁令和元年(行コ)第15号 棄却 令和元年11月22日
最高裁令和2年(行ツ)第48号 棄却 令和2年3月24日
 
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