概要情報
事件番号・通称事件名 |
広島地裁平成30年(行ウ)第16号
西日本旅客鉄道不当労働行為救済命令取消請求事件 |
原告 |
X労働組合(「組合」) |
被告 |
広島県(同代表者兼処分行政庁 広島県労働委員会) |
参加人 |
Z株式会社(「会社」) |
判決年月日 |
令和元年5月8日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、会社の行った印刷事業所の廃止が、労組法7条3号の不当労働行為に該当するとして救済申立てがあった事件である。
2 広島県労委は、本件申立てを棄却した。
3 組合は、これを不服として、広島地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、組合の請求を棄却した。 |
判決主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
判決の要旨 |
1 印刷事業所(本件事業所)の廃止が,労組法7条3号に当たるかどうかについては,そもそも,企業がある事業所の廃止を行うか否かは,本来的に営業の自由の範囲内に属し,当該企業が専権的に決定し得る事柄であるから,その変更が経営判断として合理性を有する場合には,専ら,労働組合を嫌悪し,その活動に打撃を与える目的をもってされたものであるなどの特段の事情のない限り,ある事業所の廃止それ自体が不当労働行為となることはないと解するのが相当である。
2 本件事業所の廃止は,主として,本業である鉄道業に人的資源を集約するとともに,障害者雇用を担う特例子会社の活用を図ることを目的とする会社の経営判断に基づいて決定されたことが認められ,その理由にも合理性がある。
3 組合の主張等について検討する。
(1) 組合は,本件事業所の廃止に合理性がない理由として,我が国の資本主義国家としての沿革等,本件事業所の経営状態,外注化すべき事業の有無につき,本件事業所以外の事業について調査したかどうか明らかにしないことなどを挙げるが,本件事業所の廃止に合理性がないこととの関連性が明らかではなく,その理由に当たらない,あるいは本件事業所の廃止の合理性が失われるものではないので,主張は採用できない。
(2) 組合は,広島県労委が主張立証責任の緩和を考慮していないと主張するが,労働組合法7条3号該当性の判断につき,組合の主張立証責任を緩和すべき根拠がないので,主張は採用できない。
(3) 組合は,本件事業所の廃止の真の目的が,本件事業所に所属していた社員の社外への放逐であると主張するが,本件事業所の社員18名が鉄道業又は出向先への異動となり,退社した者が存在しないことを踏まえれば,本件事業所の廃止の真の目的が,これに所属していた社員の社外への放逐であったことは認められない。
組合は,本件事業所の廃止の目的は,組合員の本件事業所内の組織拡大運動を妨害することにあり,会社は,専ら,組合を嫌悪し,その活動に打撃を与える目的をもって廃止したものであると主張するが,組合が挙げる証拠によっても,本件事業所の廃止の前後において,組合の組織拡大が見込まれる状況が存在したことを認めるに足りず,組合の指摘によっても,本件事業所の廃止が,専ら,組合を嫌悪し,その活動に打撃を与える目的をもってされたものであるとは認められない。
組合は,組合員の配転先を指摘して,本件事業所の廃止が,専ら,組合を嫌悪し,その活動に打撃を与える目的をもってされたものであると主張するが,組合員の希望が拒絶されたという事情はないので,何らかの違法性があることもうかがえず,会社の本件事業所廃止の目的の認定に影響を与えるものではない。
(4) 広島県労委での審査において,組合は6通の準備書面や証拠を提出していること,同労委は,組合及び会社に対して主張が十分であるか確認するなどの釈明権を行使していること,同労委が,第7回調査において,組合及び会社に対し,現時点において主張を尽くしているか否かを尋ねたところ,組合がこのほかに主張はない旨回答したことが認められるのであり,このように進められた手続に指摘すべき瑕疵や審理不尽は認められない。また,本件命令に係る命令書の記載に,本件命令が違法であることを基礎付けるに至る程度の理由不備があるともいえない。 |
その他 |
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