労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  長崎県労委平成28年(不)第1号
九州商船不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成29年10月23日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社が運航しているジェットフォイルの整備員には組合の組合員が配置されていたが、会社は、これを新たに雇用する陸上従業員でまかなうことを企画した(以下この企画を「本件陸上化」という。)。
 本件は、本件陸上化についての団体交渉に係る会社の対応、会社が本件陸上化により新たにジェットフォイル整備に従事する陸上労働者を雇用するにあたり当該労働者をC1組合に加入させようとしていること、が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、長崎県労働委員会は、会社に対し、誠実団交応諾、特定の労働組合への加入を働きかけることの禁止、文書の交付を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、ジェットフォイル整備員の陸上化について、申立人と誠実に団体交渉を行わなければならない。
2 被申立人は、新たに雇用する又は雇用したジェットフォイル整備員に対して特定の労働組合への加入を働きかけてはならない。
3 被申立人は、本命令書受領の日から2週間以内に、下記の文書を申立人に交付しなければならない。

平成  年 月 日
 組合
  組合長 A1 様
会社              
代表取締役 B1

 当社のジェットフォイル整備員の陸上化についての貴組合との団体交渉での対応が労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であり、当社がジェットフォイル整備員を雇用するにあたり、当該整備員を特定の労働組合に加入させようとしたことが同法第7条第3号に該当する不当労働行為であると長崎県労働委員会で認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないようにします。
4 申立人のその余の請求を棄却する。 
判断の要旨  1 争点1 本件陸上化に関する団体交渉にかかる会社の対応は労働組合法第7条第2号に該当するか
(1)本件陸上化は義務的団交事項か
 労働協約第4条は、会社の「所属船員」がすべて組合員でなければならないなどのユニオン・ショップの約定を定めるものである。
 ジェットフォイル整備員としての適格は、ジェットフォイルの整備をする知識や技能を備えていることであって、必ずしも船員に限られるということではないから、ジェットフォイル整備員が労働協約第4条の「所属船員」に含まれているとまではいえない。
 ジェットフォイルに関しては、乗組員のみならず整備員の労働条件等についても、その全てが会社と組合の協議によって決せられてきたと認められる。つまり、労使双方の了解のもとに20年以上の長期にわたって反復継続してきたのである。
 したがって、このことは労使慣行として尊重されるべきものと認めることが相当である。
 そうすると、ジェットフォイル整備員の労働条件等についても、会社と組合の協議によって決せられることが労使の慣行になっていたと認めるのが相当であり、当事者がこの慣行を破棄するためには、相手方に対し、その理由を示してルール変更のための協議を行う必要があると認めるのが相当である。
 会社がこの慣行を破棄するためには、相手方すなわち組合に対し、その理由を示すなどしてルール変更のための協議を行う必要があると認めるのが相当であり、本件陸上化は、義務的団交事項に該当すると解するのが相当である。
 労働協約第8条は、「会社と組合は、船員の雇用に関する一般方針について必要ある場合は協議をして決める。」と規定している。
 本件陸上化には、ジェットフォイル整備員であった組合員は、ジェットフォイル整備の職を失い、職場が船舶に変更されることになり、必然的に、業務内容の変更及び配置転換等を伴う等の意味があると認められる。
 しかして、組合の組合員である船員の労働条件その他の待遇等の変更であり、「船員の雇用に関する一般方針」に該当すると認めることができるから、本件陸上化は、労働協約第8条の観点からも、義務的団交事項に該当すると解するのが相当である。
 本件陸上化の当初の計画によると、目的として、コスト削減、整備員の固定化によるローテーション問題の解消、現在のメンテ要員の船舶配乗による機関部のバランス調整の3点を挙げているが、これらは、いずれも、会社の運営にとって有用有益なことであり、経営判断事項であると認めることができる。
 しかし、これらの目的を遂げて本件陸上化を実現するには、長期にわたって続いてきた労使慣行や労働者の労働条件に変更を加えなければならないことも明らかである。
 したがって、本件陸上化を会社の経営判断事項であることをもって義務的団交事項に該当しないとすることはできないと解する。
(2)団体交渉にかかる会社の対応は労働組合法第7条第2号に該当するか
 会社が団体交渉を拒否したことは一時的にはあったが、その対応は継続されていると認められるものではない。
 したがって、団体交渉の内容はともかくとして、会社が団体交渉を拒否したと認めることはできない。
 本件陸上化が開始されるまでの間に実質的な協議が行われた労務委員会は、平成27年12月14日の1回だけということになる。そして、そこでは、組合が移行計画の年数、安全性の確保及び船員の職域確保等について質問するとともに、移行に伴う要員計画及び移行のメリット等の資料提出を求め、引き続き協議することになったことが認められるから、会社は、組合から求められている資料を揃えるなどした上で、更に労務委員会を開催して組合との協議を継続するべきであったと認められる。
 しかるに、平成27年12月14日の労務委員会から本件陸上化が開始された平成28年4月1日までの間に陸上化に関する実質的な協議が行われた労務委員会が開催されたことはないのであるから、本件陸上化が開始された同日までに関しては、会社が組合に対して本件陸上化に関する団体交渉について誠実に対応したと認めることはできない。
 本件陸上化に関し、会社は組合と合意するか否かに関係なく実施することに決めていたこと、実際に組合との労務委員会の協議の経過に関係なく実施したこと、本件陸上化開始後の労務委員会においても本件陸上化の推進を会社の決定事項であると主張し続け、組合との実質的協議をしなかったこと、コスト削減は本件陸上化の重要な要素であったはずであるが、組合のその旨の申し出に対して真摯に対応しなかったことなどを認めることができるから、会社は、本件陸上化を組合との協議の経過や結果に関係なく強行する意思を有していて、そのとおりに実施に移したと認めるのが相当である。
 会社は、組合の団交拒否の主張に対して、会社が組合に平成27年夏頃から何度も協議を求めるなどしていたのに、組合が長期間にわたって協議を拒否したという事実がある旨主張する。
 本件陸上化に関する初めての労務委員会が開催された平成27年12月14日より前の出来事については、その後に労務委員会が開催された事実がある以上、それ以前のことは開催するまでの経緯の一部に過ぎないから、これをもって団体交渉が成立しなかったと認めることはできない。
 次に、平成27年12月14日以降のことについても、その内容は、出張のため連絡が取れなかったとか、移行計画書を受け取らなかったのでテーブルの上に置いてきたというだけのものであって、組合が実質的に協議を拒否したと認めるだけの実質があると認めることはできない。
 平成27年12月14日の労務委員会の後の流れをみても、会社は、同日の労務委員会に続く労務委員会を開催して協議を継続しようとした事実を認めることはできない。
 したがって、協議拒否に関しては、組合ではなく会社の方に問題があったというべく、会社の反論には理由がない。
 よって、当委員会は、本件陸上化に関する団体交渉にかかる会社の対応は、労働組合法第7条第2号に該当すると判断する。
2 争点2 会社は新たに雇用するジェットフォイル整備員をC1組合に加入させようとしたか、そのような会社の行為は労働組合法第7条第3号に該当するか
 会社は、本件陸上化により新たに雇用するジェットフォイル整備員の労働組合加入問題に関して、C1組合に加入させることを会社の方針として、事前にその旨をC1組合に説明し、新たに雇用したジェットフォイル整備員にC1組合に加入するよう働きかけたこと、結果として6人がC1組合に加入したこと、他方で組合への加入に関しては説明することを含めて何らなされていないことなどが認められる。
 このことは、会社に組合を嫌悪する意思があったか否かに関わらず、従業員の労働組合加入問題に関して中立であるべき会社が中立でない行動をとったということに外ならならないし、相対的な加入人数の問題として、組合とC1組合とに不公平、不均衡が生じたことに外ならない。
 組合の提起したコスト問題を退けて、「確かにコスト論も大きなファクターであるが、その組合をどちらに入れるかと言うのもまた、会社としては大きな問題でもあるし。」などと発言したこと等を総合すれば、会社が意図した本件陸上化には、新たに雇用するジェットフォイル整備員をC1組合に加入させることも含まれていたと認められる。
 そして、そのような意図が会社にあったと認められる以上、会社には組合嫌悪意思があったと認めるのが相当である。
 よって、当委員会は、会社が本件陸上化によって新たに雇用するジェットフォイル整備員をC1組合に加入させようとしたと認定し、そのような会社の行為は労働組合法第7条第3号に該当すると判断する。 
掲載文献   

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