概要情報
事件番号・通称事件名 |
長崎地裁平成29年(行ウ)第16号
九州商船不当労働行為救済命令取消請求事件 |
原告 |
X1株式会社(「会社」) |
被告 |
長崎県(同代表者兼処分行政庁・長崎県労働委員会) |
判決年月日 |
平成31年3月26日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、①会社が,C1組合(船員によって組織される組合)の
組合員たる船員が担当していたジェットフォイル(JF)の整備業務を,新たに雇用する船員ではない陸上従業員に担わせること
(整備員陸上化)を計画した際に行われた会社とC1組合との間の団体交渉における会社の対応が労組法7条2号の不当労働行為
に該当し,②会社が,整備員陸上化の実施に当たって陸上従業員を新規雇用した際に,同従業員をC1組合とは別のC2組合に加
入させようとしたことが労組法7条3号の不当労働行為に該当するとして,救済申立てがあった事件である。
2 長崎県労働委員会は,会社の行為がいずれも不当労働行為に該当すると判断して,会社に対して,(1)JF整備員の陸上化
について、C1組合と誠実に団体交渉を行わなければならないこと,(2)新たに雇用する又は雇用したJF整備員に対して特定
の労働組合への加入を働きかけてはならないこと,(3)文書交付を命じ,その余の請求を棄却した。
3 会社は,これを不服として,長崎地裁に行政訴訟を提起したところ,同地裁は,会社の請求を棄却した。 |
判決主文 |
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
判決の要旨 |
争点(1)
(会社は,整備員陸上化の実施に関し,C1組合との間で団交義務を負うか。)
整備員陸上化とは,C1組合に所属する船員籍の従業員(既存整備員)が担当してきた整備員の業務を新規雇用整備員に担わ
せ,既存整備員については乗船業務に配置転換するものであるから,既存整備員であるC1組合員の業務内容(勤務場所)に影響
を与えるのは明らかである。また,C2組合に所属する新規雇用整備員にJF整備業務を担わせる整備員陸上化は,従前,JF整
備業務を担ってきた既存整備員をJF整備業務から除外することになり,既存整備員であるC1組合員の業務範囲に影響を与える
ものである。したがって,整備員陸上化の実施は,組合員である労働者の労働条件その他の待遇に関する問題として,会社とC1
組合との間の義務的団交事項に該当する。
争点(2) (整備員陸上化に関する団交における会社の対応が労組法7条2号の不当労働行為に当たるか。)
会社は,C1組合との間で,平成27年12月14日の団交において初めて整備員陸上化に関する団交を行い,その際,C1組
合から,整備員陸上化の実施によりC1組合員の職域が減少することについての懸念が示されるとともに,整備員陸上化に関する
資料提出と説明が求められたにもかかわらず,これを提出せずに,C1組合との間での協議が十分に行われていない中,平成28
年4月から整備員陸上化の実施に着手したものである。そして,本件救済申立ての後も,会社は,整備員陸上化の実施に向けて新
規雇用整備員の採用や,既存整備員の配転を含む人事異動を発令するなどし,また,会社は,労働委員会による協議の勧奨を受け
るまでは,C1組合の団交申入れを拒絶しており,その後実施された団交においても,整備員陸上化の実施の中止を求めるC1組
合に対し,整備員陸上化を計画通り実施する旨を繰り返し述べるにとどまっている。
以上の経過に照らせば,会社は,平成28年4月1日以降,整備員陸上化を順次実施することという会社の内部において決定さ
れた方針に拘泥し,整備員陸上化の実施の是非あるいは実施方法につき,C1組合との間で誠実に交渉し,合意達成の可能性を模
索したとはいえないから,会社には,整備員陸上化に関し,誠実交渉義務違反があった。
争点(3)
(会社は,新規雇用整備員をC2組合に加入させようとしたか。加入させようとした場合,この行為は労組法7条3号の不当労働行為に当たるか。)
C2組合との協約条項によっても,会社の陸上従業員はC1組合員等を除きC2組合員でならなければならない旨を合意してい
るにとどまるのであるから,新規雇用整備員がC2組合に加入しなければ,同人を雇用することができなくなるわけではなく,新
規雇用整備員がC1組合に加入することも可能であることに照らせば,会社が新規雇用整備員に対して,陸上従業員はC2組合に
加入するのが通常である旨の説明を行った上で,組合加入の意思確認を行うという説明等は,会社内の特定の組合であるC2組合
への加入を促す行為であり,客観的にみて,組合の運営に対する介入と評価せざるを得ず,支配介入に該当する。 |
その他 |
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