概要情報
事件番号・通称事件名 |
福岡高裁平成31年(行コ)第14号
九州商船不当労働行為救済命令取消請求控訴事件 |
控訴人 |
X1株式会社(「会社」) |
被控訴人 |
長崎県(同代表者兼処分行政庁 長崎県労働委員会) |
判決年月日 |
令和元年10月31日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、①会社が,C1組合(船員によって組織される組合)の
組合員たる船員が担当していたジェットフォイル(JF)の整備業務を,新たに雇用する船員ではない陸上従業員に担わせること
(整備員陸上化)を計画した際に行われた会社とC1組合との間の団体交渉における会社の対応が労組法7条2号の不当労働行為
に該当し,②会社が,整備員陸上化の実施に当たって陸上従業員を新規雇用した際に,同従業員をC1組合とは別のC2組合に加
入させようとしたことが労組法7条3号の不当労働行為に該当するとして,救済申立てがあった事件である。
2 長崎県労働委員会は,会社の行為がいずれも不当労働行為に該当すると判断して,会社に対して,(1)JF整備員の陸上化
について、C1組合と誠実に団体交渉を行わなければならないこと,(2)新たに雇用する又は雇用したJF整備員に対して特定
の労働組合への加入を働きかけてはならないこと,(3)文書交付を命じ,その余の請求を棄却した。
3 会社は,これを不服として,長崎地裁に行政訴訟を提起したところ,同地裁は,会社の請求を棄却した。
4 会社は,これを不服として,福岡高裁に控訴したところ,同高裁は,会社の控訴を棄却した。 |
判決主文 |
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。 |
判決の要旨 |
1 当裁判所も,本件救済命令は適法であり,会社の請求は,いずれ
も理由がないものと判断する。
その理由は,次のとおり補正((注)争点部分で補正があった争点(2)(整備員陸上化に関する団交における会社の対応が労
組法7条2号の不当労働行為に当たるか)に係る部分のみ要旨を記載)するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第3の1及び2
に記載のとおりであるから,これを引用する。
○ 会社の主張について
(ア) C1組合から整備員陸上化に関する団交申入れがされたのは,平成28年3月18日が最初であるから、同日以前は整備
員陸上化について誠実交渉義務を負わないなどと会社は主張するが,C1組合は,平成27年12月14日,会社と整備員陸上化
を議題とする本件団交1を行い,整備員陸上化のメリットに関する資料等の提出と具体的内容の説明を求め,協議を継続する意向
であったことが明らかであるから,会社が本件団交1以降の整備員陸上化に関する団交においてC1組合に対し誠実交渉義務を負
うのはいうまでもない。
(イ) 仮にC1組合による団交拒否の事実があるとしても,労組法上,団交応諾義務を負うのは使用者のみであるから,誠実交
渉義務を負う使用者とそれを負わない組合とを同列に論じることはできない。本件団交1当時,整備員陸上化の平成28年4月1
日からの実施は,必ずしも同日からの実施に拘泥しなければならない状況にはなかったといえ,本件団交1以降,自己の主張の根
拠を具体的に説明したり必要な資料を提出したりして,C1組合の理解と納得に基づく合意形成の可能性を模索すべきであった。
よって,会社の主張する平成27年8月ないし11月のC1組合による団交拒否を理由として会社が本件団交1以降の団交におけ
る誠実交渉義務を軽減ないし免除されることにはならない。
(ウ) 平成28年2月及び3月,C1組合が会社の整備員陸上化に関する協議の申入れを拒否したことを客観的に裏付ける資料
などはなく,会社が団交をしようという意思があるのであれば,本件団交2以降の各団交においても協議を行うことができたはず
であるので,会社の主張する平成28年2月ないし3月のC1組合による団交拒否を理由として同年4月以降の団交における会社
の誠実交渉義務が軽減ないし免除されることにはならない。
(エ) 使用者の団交における対応が誠実であったか否かは,団交が行われた回数のみで判断されるものではなく,会社は,C1
組合との間でほとんど協議が行われていない段階で整備員陸上化の実施に着手するなど,整備員陸上化に係る会社の計画どおりの
実施に拘泥していたことに照らせば,平成28年4月以降に10回以上の団交が行われたという事情を考慮しても,会社がC1組
合との間で誠実に交渉し,合意達成の可能性を模索したとはいえない。
(オ) 20年以上もの長期にわたりC1組合員である船員のみが整備員に配置されてきたという経緯等に鑑みれば,新規雇用さ
れたJFの整備員は全てC1組合員であるなどのC1組合の主張内容がC1組合の主張として明らかに不合理で,会社の誠実交渉
義務を軽減ないし免除するようなものであったということはできない。
2 結論
よって,会社の各請求をいずれも棄却した原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,これを棄却する。 |
その他 |
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