労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成27年(不)第67号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y1会社、Y2会社 
命令年月日  平成29年10月2日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、①被申立人Y2会社が、申立人組合員1名に対し、組合加入通知後、皆勤手当を支給せず、また、ダンプカー乗務からミキサー車乗務に配置転換し、その後、運転乗務から外して除草作業等を命じ、さらに、出勤後すぐに帰宅を命じて賃金を減額したこと、②被申立人Y1会社及びY2会社が、Y1会社に雇用されていた申立人組合員2名に対し、Y2会社への転籍を命じたこと、が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、大阪府労働委員会は、Y2会社に対し、①の行為をそれぞれなかったものとしての取扱い、原職復帰、バックペイ、①について文書の手交・掲示、Y1会社に対し、②について文書の手交・掲示を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人Y2会社は、申立人組合員A2に対し、①平成27年1月分から、皆勤手当の支給をやめたこと、②平成27年3月2日にダンプカー乗務からミキサー車乗務へ配置転換したこと、③平成27年3月23日以降、同年9月4日に休業を命じるまでの間、専ら除草等の作業を命じたこと、④平成27年9月4日に翌週からの休業を命じ、賃金を減額したことを、それぞれなかったものとして取り扱い、ダンプカー乗務又は同乗務相当職に復帰させるとともに、同人がダンプカー乗務に就労していれば得られたであろう、皆勤手当を含む賃金相当額と既払額との差額を支払わなければならない。
2 被申立人Y2会社は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交するとともに、縦2メートルX横1メートル大の白色板に下記の文書と同文を明瞭に記載して、本社正面玄関付近の従業員の見やすい場所に2週間掲示しなければならない。

年 月 日
 組合
  執行委員長 A1 様
Y2会社              
代表取締役 B1

 当社が行った下記(1)から(4)の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。


(1)貴組合員A2氏に対し、平成27年1月分から、皆勤手当の支給をやめたこと。
(2)平成27年3月2日に貴組合員A2氏に対し、ダンプカー乗務からミキサー車乗務へ配置転換を命じたこと。
(3)平成27年3月23日以降、同年9月4日に休業を命じるまでの間、貴組合員A2氏に対し、専ら除草等の作業を命じたこと。
(4)平成27年9月4日に貴組合員A2氏に対し、翌週からの休業を命じ、賃金を減額したこと。

3 被申立人Y1会社は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交するとともに、縦2メートルX横1メートル大の白色板に下記の文書と同文を明瞭に記載して、本社正面玄関付近の従業員の見やすい場所に2週間掲示しなければならない。

年 月 日
 組合
  執行委員長 A1 様
Y1会社              
代表取締役 B1

 当社が、平成27年9月1日に、当時貴組合員であったA3氏及び同A4氏に対し、当社からY2会社への転籍を命じたことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
4 被申立人Y2会社に対するその他の申立てを棄却する。
 
判断の要旨  1 争点1(Y2会社が、平成27年1月分から、A2組合員に対し、皆勤手当を支給しなかったことは、組合員であるが故の不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるか。)について
 Y2会社は、Y2会社への復帰により皆勤手当が支給されなくなったと主張するが、そもそも、A2組合員がY1会社に出向していたと認めるに足る疎明も、Y2会社に復帰したと認めるに足る疎明もない。また、何らかの配置転換や業務内容の変更が行われたとの疎明もないのであるから、Y2会社の主張は採用できない。
 また、Y2会社は、皆勤手当を支給しなくなったのは、A2組合員が皆勤でなくなったからである旨も主張するが、平成27年1月にA2組合員が皆勤でなかったとの具体的な事実の疎明もなく、かかる主張は採用できない。
 そうすると、Y2会社がA2組合員に対し、入社以来平成26年12月分まで支給していた月額1万円の皆勤手当を、同27年1月分からやめたことには合理的理由は認められない。
 Y1会社の代表者とY2会社の代表者はB1社長で、同一であること、当委員会は、Y1会社に対し、救済命令を交付していること、が認められ、Y2会社も組合を好ましからざる存在とみていたことが推認できる。
 Y2会社がA2組合員に対し皆勤手当の支給をやめたのは、同人の組合加入通知がなされた平成27年2月7日からわずか3日後のことである。また、Y2会社は、事前に、A2組合員に説明したとの疎明もなく、一方的に皆勤手当の支給をやめている。そうすると、Y2会社が平成27年1月分からA2組合員に対し、皆勤手当の支給をやめたのは、A2組合員の組合加入を嫌悪したが故のものといわざるを得ない。
 以上のことからすれば、Y2会社は、入社以降、一貫してY1会社の業務に従事してきたA2組合員に対し支給してきた皆勤手当の支給を、組合加入通知の3日後に支給された平成27年1月分から、何ら事前説明することなく、やめたのであって、かかる会社の対応は、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるといえ、また、A2組合員の組合加入通知を受けた直後に、同人の皆勤手当の支給をやめることによって、組合活動を萎縮させ、組合の弱体化を図ったものといえる。したがって、Y2会社が、A2組合員に対し、平成27年1月分から、皆勤手当の支給をやめたことは、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為である。
2 争点2(Y2会社が、平成27年3月2日以降、A2組合員に対し、ダンプカー乗務からミキサー車乗務に配置転換を命じたことは、組合員であるが故の不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるか。)について
 A2組合員は、主にダンプカー運転手として就労することを前提として採用されたといえる。また、Y2会社が、本件配転を行うに当たって、A2組合員に対し、事前に本人の意向を確認したり、その理由を説明したとの事実の疎明もないことから、A2組合員は、一方的に、業務の異なるミキサー車乗務に変更されたといえ、かかる配置転換をされたことについて、精神的不利益がなかったとはいえない。
 ミキサー車乗務を命じられる平成27年3月2日までに、A2組合員が体調不良となったり、健康状態が特段の考慮を必要とする状況であった等との疎明もない。
 以上のとおりであるから、Y2会社がA2組合員をミキサー車乗務へと変更した理由の主張はいずれも採用できず、Y2会社がA2組合員に対し、ダンプカー乗務からミキサー車乗務に配置転換を命じたことに合理的な理由はない。
 さらに、Y2会社と組合との関係についてみると、Y2会社が、組合及びA2組合員を好ましからざる存在とみていたことが推認でき、本件配転は、不当労働行為に当たると判断される皆勤手当の支給をやめたことに続いてなされたもので、組合を嫌悪した対応といえる。
 以上のとおり、本件配転については、合理的な理由はなく、組合を嫌悪したY2会社がA2組合員を不利益に取り扱い、もって、組合活動を萎縮させ、組合の弱体化を図ったものといえ、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為である。
3 争点3(Y2会社が、平成27年3月23日から同年9月4日まで、A2組合員に対し、除草作業等の作業を命じたことは、組合員であるが故の不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるか。)について
 A2組合員は、これまでの経験や保有している免許を生かすことのできない作業を命じられ、精神的・身体的不利益を受けたといえる。
 平成27年3月23日以降、Y2会社において、運転業務や土木作業が乏しかったとの疎明はなく、同日以降、除草作業を命じられた従業員は、A2組合員の他にもいたものの、専ら除草作業をしていたのはA2組合員のみであったことが認められ、かかる業務命令に合理的な理由は認められない。
 次に、Y2会社と組合との関係をみると、本件作業命令は、不当労働行為に当たると判断される皆勤手当の支給をやめたこと等に続いてなされたもので、組合を嫌悪した対応といわざるを得ない。
 以上のことからすると、Y2会社がA2組合員に専ら除草等の作業を命じたことに、合理的な理由はなく、A2組合員を組合員であるが故に不利益に取り扱い、もって、組合活動を萎縮させ、組合の弱体化を図ったものといえ、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為である。
4 争点4(Y2会社が、平成27年9月7日以降、A2組合員に対し、帰宅を命じ、賃金を減額したことは、組合員であるが故の不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるか。)について
 Y2会社の従業員だけではミキサー車運転手が足りない場合、B1社長やY1会社の従業員が乗っており、すぐに帰宅を命じられているのは、A2組合員のみであることからすると、A2組合員に従事させられる業務がなくなったということはできない。
 さらに、A2組合員に対する休業命令は、平成27年2月の同人の組合加入通知後であり、不当労働行為に当たると判断される皆勤手当の支給をやめたこと等に続いてなされたもので、Y2会社がA2組合員のみに休業を命じ、賃金を減額し、すく゛に帰宅を命じていることは、組合を嫌悪した対応といわざるを得ない。
 したがって、Y2会社が、A2組合員に対し、翌週からの休業を命じ、賃金を減額したことに合理的な理由はなく、A2組合員を組合員であるが故に不利益に取り扱い、もって、組合活動を萎縮させ、組合の弱体化を図ったものといえ、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為である。
5 争点5(会社らが、平成27年9月1日、A3元組合員及びA4元組合員に対し、Y1会社からY2会社への転籍を命じたことは、組合員であるが故の不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるか。)について
 A3元組合員及びA4元組合員は、本件転籍時にはY1会社の従業員であって、本件転籍に関し、Y2会社が、A3元組合員及びA4元組合員の労働組合法上の使用者に当たるとの具体的な主張及び疎明はない。
 したがって、この争点に関して、Y2会社に対する申立ては棄却する。
 ①B1社長は、Y2会社及びY1会社の代表取締役であること、②A2組合員は、Y2会社に雇用されたものの、Y1会社の業務をしていたこと、③本件転籍前後で、転籍されたミキサー車運転手6名の仕事内容は変わっていないことが認められ、本件転籍が行われる前から、両社は、業務を明確に区分して行っていたとはいえない。そうすると、本件転籍を行うことについて合理的理由があるとはいえない。
 14.12.12協定書で、労働条件の変更等について組合と事前協議し労使合意の上、円満に行うことを定めているにもかかわらず、Y1会社は、その手続を履践しておらず、14.12.12協定書を軽視ないし無視するものといえる。
 また、Y1会社が組合を好ましからざる存在とみていたことが推認できる。
 さらに、平成27年9月1日に本件転籍が行われた3か月後の同年11月30日に、現にA3元組合員及びA4元組合員が2名とも組合を脱退しており、本件転籍により組合活動に影響があったといわざるを得ない。
 以上のことからすると、Y1会社が行った本件転籍は、組合の組合員をY2会社の従業員とすることにより、労働条件を決定する上で、14.12.12協定書の保護を受けられなくし、もって、組合員を不利益に取り扱うとともに、組合を無視ないし軽視し、組合の弱体化を図るものであって、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為である。
 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪地裁平成29年(行ウ)第205号 棄却 平成30年9月26日
大阪高裁平成30年(行コ)第124号 棄却 平成31年3月14日
最高裁令和元年(行ヒ)第201号 上告不受理 令和元年8月20日
 
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