概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委平成24年(不再)第67号 昭和ゴム外2社不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人
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X1組合 X2組合 |
再審査被申立人
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Y1会社、Y2会社、Y3会社
(Y1会社はY4会社が会社分割によりY2、Y3、Y5を設立し、純粋持株会社となったもの。その後Y2はY5を合併、Y3はY6と合併し、商号を変更した) |
命令年月日 |
平成29年2月23日 |
命令区分 |
一部変更 |
重要度 |
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事案概要 |
1 本件は、①投資事項に関するX2の12項目要求、会社分割に関する団交、21年夏季一時金の支給、組合有給休暇の締結拒否及びX2が設置した立看板の撤去にかかるY4の各対応について、②会社分割後の団交申入れへのY1の対応について、③22年春闘要求及び夏季一時金に係る会社分割後のY2,Y3,Y5の対応について、④組合執行委員長を22年10月に昇格させなかったことについて、⑤21年8月及び22年4月の抗議活動に対する懲戒処分等について、これらの各行為が不当労働行為であるとして救済申立てがされた事案である。
2 初審の東京都労委は、懲戒処分に関する部分を救済し、その余については、いずれも不当労働行為には該当しないとして救済申立てを棄却したところ、組合及び会社はこれを不服として再審査を申し立てた。なお会社が再審査を申立てた懲戒処分に関する部分については、再審査手続中の和解認定により失効した。 |
命令主文 |
1 初審命令を次のとおり変更。
Y4が21年夏季一時金の成績査定率の協議を一方的に打ち切り同一時金を支給したことについてY2及びY3に文書交付を命ずる。
2 その余の本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 X2の12項目要求の内容は、企業の経営方針に関わる事項であり、労働条件等の組合員の待遇と直接関連するものではなく、過去の協定との関係でも義務的団交事項とはいえず、Y4が団交事項でないなどとして応じなかったことは、団交拒否には当たらない。
2 Y4は、会社分割までの十数回に及ぶ団交等において、X2の理解を得るべく相応の努力をしていたとみることができ、X2の要求の態度にも鑑みると、Y4の会社分割に関する団交は不誠実であったとはいえない。
3 一時金において10パーセント以内の成績査定率は労使慣行であったとはいえないが、交渉を尽くさないまま協議を一方的に打ち切り、X2の頭越しに一時金を支給したことはX2の団交権を妨げ支配介入に当たる。
救済方法としては、会社分割等により組合員の雇用関係を包括的に承継したY2及びY3が正常な労使関係を回復すべき地位にあるものとして、上記行為が不当労働行為に当たると認められた旨及びかかる行為を繰り返さないようにする旨の文書をX1、X2に交付することを命じることをもって足りる。
4 組合有給休暇は労使慣行になっていたとはいえず、Y4は、X2に対する弱体化の意図に基づいて年間40日分の組合有給休暇に関する協定の締結を拒否したとは認められず、支配介入に当たらない。
5 X2の看板設置は組合活動として行き過ぎたものであり、Y4やY1が看板を撤去したことは、組合弱体化の意図があったとは認められず、支配介入に当たらない。
6 団交申入事項の投資事項については会社分割後の新たな事項であり、また、会社分割については会社分割前のY4による団交において行き詰まりの状況に達し団交義務を負わなくなっていたものであり、Y1が投資事項や会社分割に関するX2の団交申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団交拒否に当たらない。
7 Y2、Y3、Y5が、22年の春闘要求及び夏季一時金についての提案書を提示したことは、交渉方法として許容され、組合活動の妨害を意図した支配介入には当たらない。
8 22年の春闘要求及び夏季一時金交渉において、就業時間内に団交を行うことが労使慣行になっていたとは認められない中で、団交が開催されなかったことについてY2、Y3、Y5のみに責めを負わせるのは適切ではなく、Y2、Y3、Y5の対応が正当な理由のない団交拒否には当たらず、また不誠実団交であったと認めるべき事情もない。
9 Y1の関与は、子会社に対する管理・監督の域に留まるものであり、基本的労働条件について、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的な支配があったと推認できる事情があるとは認められず、Y1が、22年の春闘要求及び夏季一時金についての団交申入れに対し、子会社3社の従業員の使用者ではないとして応じなかったことは正当な理由のない団交拒否に当たらない。
10 X2組合執行委員長が昇格試験において提出した作文は課題を充足していたとは認められず、Y5が22年10月に同人を昇格させなかったことには合理的な理由があり、不利益取扱い及び支配介入に当たらない。 |
掲載文献 |
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