概要情報
事件番号・通称事件名 |
東京高裁平成31年(行コ)第93号
昭和ゴム外2社不当労働行為救済命令一部取消請求控訴事件 |
控訴人 |
X1労働組合X2地方本部 |
控訴人 |
X1労働組合X3地方本部 X4労働組合(「組合」) |
被控訴人 |
国(処分行政庁 中央労働委員会) |
被控訴人補助参加人 |
Z2株式会社(「Z2会社」) |
被控訴人補助参加人 |
株式会社Z3(「Z3会社」) |
被控訴人補助参加人 |
Z1株式会社(「Z1会社」) |
判決年月日 |
令和元年8月1日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、①会社分割前のZ1会社が、平成21年夏季一時金につ
いて、成績査定率を20%に変更する旨提案し、組合との協議を一方的に打ち切って、成績査定率を20%として組合員に対して
同年夏季一時金を支給したこと、②平成22年の春闘要求及び夏季一時金について、Z1会社が、組合からの団交申入れについ
て、子会社3社(Z2会社、C1会社及びC2会社)の従業員の使用者ではないとして応じなかったことが不当労働行為であると
して、救済申立てがあった事件である。
(注)Z1会社は、上記の組合に対する成績査定率の変更の提案の後に、会社分割によりZ2会社、C1会社及びC2会社を設立
して、これら3社と従前からの子会社Z3会社の純粋持株会社となった。同会社分割により組合の組合員と会社分割前のZ1会社
との雇用契約は、子会社3社のいずれかに承継され、Z1会社の従業員には組合の組合員はいなくなった。その後、Z2会社が、
平成24年、C1会社を吸収合併し、Z3会社が、平成26年、C2会社を吸収合併した結果、Z1会社の子会社はZ2会社及び
Z3会社のみとなり、Z1会社は、Z2会社及びZ3会社の純粋持株会社となった。
2 東京都労委は、上記①及び②に係る申立てを棄却した。組合らは、これを不服として再審査を申立てたところ、中労委は、①
について不当労働行為の成立を認め、今後同様の行為を行わない旨の文書の手交を命じ、②について再審査申立てを棄却した。
3 Z2会社及びZ3会社は①に関する救済命令の取消を求め(甲事件)、組合らは②に関する再審査申立て棄却命令の取消しを
求め(乙事件)、それぞれ東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、会社、組合の請求をいずれも棄却した。
4 組合らは、これを不服として東京高裁に控訴したが、同高裁は、控訴をいずれも棄却した。 |
判決主文 |
1 本件各控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は控訴人らの負担とする。 |
判決の要旨 |
1 当裁判所も,組合らの請求はいずれも理由がないものと判断す
る。その理由は,次のとおり原判決を補正し(注:補正部分(略)),当審における組合らの補充主張に鑑み,次項において補足
判断を付加するほか,原判決の「事実及び理由」中の第3の1(2)及び(3)並びに3に説示するとおりであるから,これを引
用する。
2 補足判断
(1)純粋持株会社が,その役員を子会社の役員と兼務させることにより,子会社の経営に対する支配力を有しているとしても,
このような支配は役員の派遣等を通じた間接的なものであり,このことをもって,直ちに純粋持株会社が子会社の労働条件決定等
に対して現実的かつ具体的に支配,決定をすることが可能な地位にあることを基礎付けるものということはできない。そし
て,Z1の役員の派遣等を通じた子会社3社の経営に対する関与が,グループ内子会社に対する経営戦略的観点から行う管理,監
督の域を超えるものと認めるに足りないことは,原判決が説示するとおりである。また,人事労務委員会の目的,契約等の定め及
び委員の構成等に照らすと,Z1が人事労務委員会を通じて子会社4社の労働条件の決定等に関与することが制度上予定されてい
たとは認められず,実際にも,Z1が子会社4社の労働条件の決定等に関与していたことを認めるに足りる証拠はない。
したがって,Z1の社内役員が子会社3社の役員を兼任していたことや,人事労務委員会の構成員にZ1の主要役員が含まれて
いたことなどの事実をもって,Z1が子会社3社の従業員の基本的な労働条件等について子会社3社と部分的とはいえ同視できる
程度に現実的かつ具体的に支配,決定することができる地位にあったと認めることはできない。
(2)本件会社分割が組合との団交を避ける目的で行われたことを認めるに足りる的確な証拠はなく,仮に本件会社分割の目的の
一つに含まれていたとしても,そのことによって,Z1の労組法7条の使用者性についての前記判断が左右されるものとは認め難
い上,本件会社分割後,組合と子会社4社との間で団交が行われており,組合の団交が本件会社分割によって妨げられていると評
価すべき事情もうかがわれないから,本件会社分割の目的等を理由としてZ1の労組法7条の使用者性を肯定することはできな
い。
(3)労組法7条が団結権の侵害に当たる一定の行為を不当労働行為として排除,是正して正常な労使関係を回復することを目的
としていることに鑑みると,同条の使用者とは,雇用主のほか,労働者の基本的な労働条件等について雇用主と部分的とはいえ同
視できる程度に現実的かつ具体的に支配,決定することができる地位にある者をいうと解するのが相当である。純粋持株会社が上
記の地位にはないにもかかわらず,純粋持株会社と子会社との間に組織的な支配ないし従属関係があることをもって,純粋持株会
社に子会社の従業員が組織する労働組合との団体交渉の主体たる地位があると認めることは,労組法7条の上記趣旨に照らし,そ
の予定する適用範囲を超えるものであって相当でない。,本件において,Z1は,子会社3社の従業員の基本的な労働条件等につ
いて,雇用主と同視できる程度の現実的かつ具体的な支配力を有しておらず,その決定に関与すべき地位にあったものとも認めら
れない以上,Z1は子会社3社の従業員との関係において労組法7条の使用者には当たらないとする前記判断が左右されるもので
はない。 |
その他 |
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