労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  昭和ホールディングス  
事件番号  都労委平成21年(不)第81号  
申立人  全労連・全国一般労働組合東京地方本部(X)、全労連・全国一般東京・千葉地方本部昭和ゴム労働組合(Y)  
被申立人  昭和ホールディングス株式会社(T)、昭和ゴム株式会社(U)、ショーワスポーツ株式会社(V)  
命令年月日  平成24年10月16日  
命令区分  一部救済  
重要度   
事件概要   平成21年5月28日、被申立人会社らの前身である会社Sは申立人組合Y(以下「組合」)に対し、同社を持株会社(被申立人会社T)とし、子会社4社(同U及びVを含む。)を新設することを内容とする会社分割を行う旨通知した。以後、組合は団交において会社分割に反対し、組合員らが朝礼で抗議するなどしたが、Sは同年10月1日、分割を実施した。その後、組合との団交は子会社が合同で応じるようになり、持株会社Tは団交に応じていない。
 本件は、(1)会社分割前におけるSによる①対外投資に関する団交の拒否、②会社分割に関する団交での対応、③夏季一時金の成績査定率の変更、④組合活動のための「組合有給休暇」の廃止、(2)会社分割後における⑤Tの団交拒否、並びに被申立人会社らによる⑥春闘要求及び夏季一時金を議題とする団交における対応、⑦組合の立看板の撤去(一部は会社分割前)、⑧「春季労使交渉に関する提案書」の提示、⑨組合員らに対する懲戒処分の実施、⑩組合執行委員長の昇格の不実施が不当労働行為に当たるか否かが争われた事案である。
 東京都労委はU及びVに対し、1 上記⑨の懲戒処分をなかったものとして取り扱うこと等、2 履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。  
命令主文  1 被申立人昭和ゴム株式会社及び同ショーワスポーツ株式会社は、申立人全労連・全国一般労働組合東京地方本部及び同全労連・全国一般東京・千葉地方本部昭和ゴム労働組合の組合員らに対して別表1及び別表2のとおり実施した平成21年11月27日付及び23年7月27日付懲戒処分をなかったものとして取り扱い、組合員らに対して、これらの処分がなければ支払われるべきであった賃金相当額と既に支払済みの賃金との差額を支払わねばならない。
2 被申立人昭和ゴム株式会社及び同ショーワスポーツ株式会社は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
3 その余の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 対外投資に関する団交の拒否について
 企業が保有する資金等をどう活用するかは労働条件に直接関連する事項であるとはいえないから、協約等による特別の定めがない限り、義務的団交事項とはいえない。よって、被申立人会社らの前身である会社Sがこれに関する団交に応じなかったことは、正当な理由のない団交拒否には当たらない。
2 会社分割に関する団交における対応について
 Sは、申立人組合の同意を得て会社分割を行うという要求は拒否したものの、会社分割の決定を延期して交渉を継続し、一定の評価ができる代替案を提示し実施しているものといえ、したがって、その対応は不誠実な団交に当たるとまではいえない。
3 夏季一時金の成績査定率の変更について
 Sが1回のみの協議で交渉を打ち切ったことはいささか性急に過ぎるといわざるを得ないが、前年の年末一時金の交渉時からの継続協議事項となっていたこと及び支給時期を遵守するためとの理由も一応の合理性があることを考えれば、このことのみをもって、支配介入に該当するとまではいえない。
4 「組合有給休暇」の廃止について
 Sは、「組合有給休暇」が経理上の援助として違法なものと考えられること、組合員でない従業員との不平等となるなどの同社の考える廃止の理由を述べて繰り返し交渉に臨んだことが認められ、結局、労使の主張が一致せず協定できなかったものというほかないのであって、その他、組合に対する害意を推測させる事実は認められないのであるから、同休暇の廃止が支配介入に当たるとはいえない。
5 会社分割後の被申立人会社Tの団交拒否について
 Tが子会社の労働条件等について雇用主である子会社と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配力を及ぼしているとまではいえない。また、組合は、資産を多く継承した同社に対し、労働条件等の維持を目的とするというより、対外投資そのものに異議を述べることを目的として団交を求めているものと解するのが相当である。したがって、Tが団交に応じないことは、正当な理由のない団交拒否には当たらない。
6 平成22年の春闘要求及び夏季一時金を議題とする団交における対応について
 確かに昇給及び夏季一時金について十分な協議が行われたとの疎明はないが、この時期の団交においては、組合が強制捜査に関する要求のほか、経営陣の辞任、対外投資、会社監査人の辞任を議題とし、昇給等に関して交渉する時間が相当に限られたものとなっていたことが推認される。そうすると、交渉時間が短く、十分な協議が行われなかったことのみをもって団交が不誠実であったとはいえない。
7 組合の立看板の撤去について
 組合は、指定された組合掲示板以外への掲示を禁止し、掲示する場合には会社の許可を得なければならないことを規定した協定を締結していたのであり、過去に例のない工場正門という設置場所も考慮すると、Sらが組合に相当の期間を置いて通告した上で立看板を撤去したことをもって支配介入ということはできない。
8 「春季労使交渉に関する提案書」の提示について
 被申立人会社U、Vなど子会社3社が組合に対し、定期昇給、夏季一時金額等についての提案書を提示し、文書回答を求めたことについては、前例がないということだけを理由に組合活動の妨害ということはできない。そして、この提案書により組合の要求書の内容が変更されることはなかったのであるから、結果としても組合活動が妨害されたとはいえず、支配介入には該当しない。
9 組合員らに対する懲戒処分の実施について
(1) 平成21年11月27日付の懲戒処分
 朝礼で会社分割に抗議した組合員らに対し、子会社3社が全員に出勤停止、更に2名には降格を併せて課す懲戒処分を行ったことが認められる。しかし、組合員らの抗議は懲戒処分事由に該当することはあり得るものの、Sはこれを口実に、就業規則の目的たる社内秩序の維持に必要な程度を超えて、組合員であるが故に重すぎる懲戒処分を公表し、子会社3社がこれを継承して懲戒処分を行ったものと解するのが相当であり、組合員らに対する不利益取扱い及び組合運営に対する支配介入に該当する。
(2) 23年7月27日付の懲戒処分
 昼休み中に多人数でTの社長室に入り、投資した資金27億円の償還の確認を求めた組合員らに対し、大声を出した者は出勤停止、それ以外の者は減給6か月を基準とし、過去に同種の就業規則違反を行った者には加重するなどの懲戒処分が行われたことが認められる。しかし、そもそもこの基準の根拠は明らかではなく、前記(1)の懲戒処分の基準も疎明されていないこと等を勘案すると、基準そのものの妥当性が疎明されていないといわざるを得ない。また、他の懲戒処分と比較すると、重きに失するといえることは前記(1)の懲戒処分の場合と同様である。
 したがって、当該懲戒処分の実施は、前記(1)の場合と同様の理由により、組合員らに対する不利益取扱い及び組合運営に対する支配介入に該当する。
10 組合執行委員長の昇格の不実施について
 過去に昇格試験の題目を満たしていない作文を提出した者が昇格したとの疎明はなく、同時期に作文を提出した他の組合員は全員が昇格していることを併せ考えると、組合執行委員長が昇格しなかったことは、作文が昇格試験の題目を満たしていなかったことが理由であり、不利益取扱い又は支配介入に当たるとはいえない。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成24年(不再)第67号 一部救済 平成29年2月23日
 
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