労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成27年(不再)第42・46号
日本放送協会(名古屋駅前センター) 不当労働行為再審査申立事件 
再審査申立人 42号  協会 
再審査申立人 46号  組合 
再審査被申立人 42号  組合 
再審査被申立人 46号  協会 
命令年月日  平成28年11月16日 
命令区分  棄却 
重要度   
事案概要  1 本件は、協会の名古屋駅前営業センター長が、組合の支部副委員長に、「Aくんも、あんなところで書記長をやっていてどうするんだろう」など3件の発言をしたこと、団体交渉において同センター長が3件の発言をした事実はないと述べたこと、協会が同センター長の発言を議題とする支部団体交渉に組合中央執行委員の出席を拒否するなどしたことが不当労働行為に当たるとして東京都労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労委は、本件団交申入れに対する協会の対応は労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるとして、協会に文書掲示を命じ、その余の救済申立てを棄却したところ、協会及び組合がこれを不服として再審査を申し立てた。 
命令主文  本件各再審査申立てをいずれも棄却する。 
判断の要旨  1 地域スタッフの労組法上の労働者該当性
 協会の放送事業運営には、恒常的に世帯や事業所の放送受信契約状況等を確認し、受信者との間で契約の取次等を行うことが不可欠であるところ、地域スタッフは、協会の事業活動に不可欠な労働力として恒常的に労務供給を行い、協会の事業組織に組み込まれ、本件委託契約の大部分が協会により一方的・定型的に決定されている。また、報酬は実質的に労務対価性を有するといえ、これらに対応するように業務の遂行においては、協会によってその過程にも着目した集団的な管理がされ、一定の拘束もあり、交渉力の不均衡等、労働契約下にある者が有する部分も存在しており、使用者との交渉上の対等性を確保するための労組法の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められる。その一方で、上記の保護が不必要又は不適切といえるような顕著な事業者性を基礎付ける事情があるとは認められない。したがって、地域スタッフは、労組法上の労働者に該当する。
2 協会が、平成23年4月27日及び同年7月12日の団体交渉において、協会の名古屋駅前営業センター長が、支部副委員長に、「Aくんも、あんなところで書記長をやっていてどうするんだろう」など3件の発言(「本件各発言」)をした事実はないとした対応は、虚偽の回答を繰り返したものであり、不誠実な団体交渉に当たるか。
 (1) 本件各発言は、いずれも協会名古屋駅前センター長と支部副委員長の2人きりの場におけるものであり、本件各発言の存否を裏付ける直接証拠はないことから、本件各発言があったとされる前後の状況、本件各発言の内容、本件各発言があったとする副委員長の証言内容等について検討するも、本件各発言の存在は認めがたい。
 (2) 上記(1)のとおり本件各発言の存在が認め難い以上、協会が上記団体交渉において、本件各発言の存在を否定したからといって、直ちに虚偽の回答を繰り返したとはいえず、不誠実な団体交渉であったとは認められない。
3 名古屋駅前支部から、平成23年6月13日及び同年7月12日に申し入れられた団体交渉にかかる協会の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。
 (1) 協会は、本件各発言については、支部交渉に中央執行委員は出席しないという個別合意が成立していた旨主張する。しかしながら、当該個別合意が明確に成立していたとは認められない。
 (2) 協会は、名古屋駅前支部の上部団体である組合本部との間では、本件出席ルール(組合の上部役員は特に必要がある場合に下部交渉への出席ができ、その出席は協会側と組合側の間で話し合い、双方了解の上で行い、意見が対立した場合には直近の上部組織で調整を図る旨合意し、確認されたルール)を含む「事前了解」が合意されている旨主張するが、その全ての項目について合意されたと認めることは困難であり、本件出席ルールを個別的にみても事前了解に関する協議を通して合意がされたと認めることはできないし、本件交渉ルールにかかる交渉慣行があったと認めることもできない。
 (3) したがって、協会が主張する個別合意、本件交渉ルールに関する合意又は慣行の存在についてはいずれも認められず、協会が、上記地域スタッフにより組織されている労働組合から、平成23年6月13日及び同年7月12日に申し入れられた団体交渉について、組合中央執行委員の出席を理由に拒否、あるいは、当該中央執行委員の出席を拒否したことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成23年不102号 一部救済 平成27年8月25日
東京地裁平成29年(行ウ)第15号・平成29年(行ウ)第137号 棄却 平成30年9月28日
東京高裁平成30年(行コ)第322号 棄却 令和元年5月15日
 
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