労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成26年(不)第10号・第43号 
事件番号  大阪府労委平成26年(不)第10号・第43号 
申立人  X労働組合、同Z支部 
被申立人  Y市 
命令年月日  平成27年7月28日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人市が ①組合費のチェック・オフについて事務手数料を徴収することにしたとして、申立人組合X(以下「組合」)に対し、事務手数料の徴収に係る契約の締結を求め、組合がこれに応じなかったところ、チェック・オフを中止したこと、②当該事務手数料に関する団交の申入れに応じなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は市に対し、1 事務手数料を徴収することなく、組合費のチェック・オフを再開すること、2 市がチェック・オフを中止していた間に組合が組合費集金のために金融機関に支払った振替手数料相当額の支払、3 文書手交を命じ、申立人組合Z支部に係る上記①の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人X労働組合の組合費について、事務手数料を徴収することなく、チェック・オフを再開しなければならない。
2 被申立人は、平成26年6月以降チェック・オフを再開するまでの間、申立人X労働組合が組合費集金のため金融機関に支払った振替手数料相当額を申立人X労働組合に対し、支払わなければならない。
3 被申立人は、申立人X労働組合に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
記(省略)

4 被申立人は、申立人X労働組合及び同X労働組合Z支部に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
年 月 日
  X労働組合
   中央執行委員長 A 様
  X労働組合Z支部
   執行委員長 B 様
Y市
市長 C
   当市が、貴労働組合及び貴支部からの平成26年2月12日付け及び同年3月5日付けの団体交渉申入れに応じなかったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。

5 申立人X労働組合Z支部のその他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 申立人組合は申立人適格を有するかについて
 被申立人市は、組合は労組法が適用されない非現業職員が大多数を占め、労組法上の労働組合とはいえず、申立人適格を有さない旨主張する。
 しかし、混合組合の申立人適格が争点となった東京地裁平成25年10月21日判決、その控訴審判決及び上告審判決から明らかなように、現行法は混合組合の存在を許容していると解され、混合組合はその構成員に対して適用される法律の区分に従い、地公法の職員団体及び労組法上の労働組合としての複合的な法的性格を有すると解するのが自然かつ合理的であって、労組法適用者に関する問題については、構成員の量的割合にかかわらず、労働組合として労組法上の権利を行使できると判断される。そして、本件の争点は組合費のチェック・オフの事務手数料に係る組合への便宜供与に関する問題及びそれを議題にした団交に係るものであって、これを地公法適用職員に限った活動とみるべき特段の事情は見当たらず、労組法適用者の問題に関するものと解される。よって、組合は本件において申立人適格を有すると判断される。
2 組合費のチェック・オフについて事務手数料の徴収を申し入れたこと等について
 市では昭和49年頃から組合費のチェック・オフが事務手数料を徴収することなく行われてきたところ、このように長期間継続されてきたチェック・オフを中止又は変更するには合理的な理由が必要であり、市は組合に対し、その理由を明らかにして説明を行い、理解を得る努力をする必要があるというべきである。
 市は、チェック・オフに係る見直しは財政健全化計画に基づいて手数料の有料化を図ったものである旨主張する。しかし、市の財政健全化計画には職員の給与からの控除に係る事務手数料については記載がない。また、市は事務手数料を導入する際、条例の制定や改正を行っていないが、法令上、使用者が給与からの控除の際に事務手数料を徴収できるとする明文の規定はない。
 そうすると、仮にチェック・オフに係る見直しが市の財政上の問題を起因としてなされたとしても、市は慎重な検討を行わないまま、拙速に控除に係る事務手数料を徴収する制度を導入したといわざるを得ない。
 次に、市の組合への説明状況等についてみると、市が組合に交付した文書に、行政改革の一環として便宜供与のあり方についての見直しを行い、給与からの控除について事務手数料を徴収することにした旨の記載があるが、これ以外に導入の理由等を記載した書類を別途、交付し、説明したとする疎明はない。また、組合が本件団交申入れにおいて理由の説明等を求めているが、市は団交に応じておらず、市が手数料の徴収について組合の理解が得られるよう、説明しようとしていたとは到底解されない。
 したがって、市は組合に対し、その決定に従わなければ、チェック・オフ自体を中止するという態度を取り、必要な説明もないまま一方的に負担を強いたというのが相当である。
 以上のとおりであるから、市が組合費のチェック・オフについて事務手数料を徴収する旨申し入れ、組合が事務手数料の支払に応じなかったことを理由にチェック・オフを中止したことは、組合に対する支配介入に当たり、労組法7条3号に該当する不当労働行為である。
 なお、チェック・オフに係る事務手数料の徴収等の組合支部の活動への影響は間接的なものにとどまるというのが相当であるから、本件において、市が組合支部に対して支配介入を行ったとまでいうことはできず、この点に係る申立ては棄却する。
3 団交申入れに対する対応について
 市は、地公労法7条は団体的労使関係事項を交渉事項から明確に外しているとし、また、仮に団体的労使関係事項が交渉事項になり得るとしても、それが管理運営事項に該当する場合には団交の対象とすることができない旨主張する。
 しかし、一般に団体的労使関係事項も義務的団交事項として認められているところ、上記地公労法の規定からも、団体的労使関係事項を義務的団交事項から排除しているとみることはできない。
 次に、同条ただし書に、管理運営事項は団交の対象とすることができない旨定められているところ、管理運営事項とは、住民の総意によって信託され、法令によってその義務、権限を定められた地方公共団体の当局者の責任によって行うもので、労働組合との団交によって決定すべきものではないとする趣旨により、団交を行うことができない事項とされているものである。その要請は、団体的労使関係事項にも及ぶというべきである。
 そこで、チェック・オフとそれに係る事務手数料の徴収が管理運営事項に当たるか否かについて検討すると、市は、市の給与条例の規定を根拠に、チェック・オフをするか否かは条例により市の権限に委ねられており、管理運営事項に該当する旨主張する。
 しかし、上記給与条例の規定は労基法24条に基づき組合費の給与からの控除を適法に行う根拠となるものであって、住民の総意によって信託された地方公共団体の当局者という地位に特有のものとして、給与からの控除を行い得る権限を市に付与したものとみることはできない。また、そもそも市は、前述のとおり、事務手数料の導入に当たり、条例の制定や改正を行わず、相手方の同意を前提にした契約により行おうとしたことが認められる。
 したがって、チェック・オフとそれに係る事務手数料の徴収が管理運営事項に当たるということはできない。
 以上のとおりであるから、本件団交申入れの議題は便宜供与についてのもので義務的団交事項であると判断されるところ、市は正当な理由なく、これに応じなかったというべきであって、かかる行為は労組法7条2号に該当する不当労働行為である。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪地裁平成27年(行ク)第309号 緊急命令申立ての却下 平成28年3月29日
大阪地裁平成27年(行ウ)第282号 一部取消 平成28年5月18日
大阪高裁平成28年(行コ)第180号 一部取消 平成28年12月22日
 
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