労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪地裁平成27年(行ク)第309号
泉佐野市労働組合法第27条の20による緊急命令の申立て事件 
申立人  大阪府労働委員会 
申立人補助参加人  Z1職員労働組合(「組合」) 
申立人補助参加人  Z1職員労働組合Z2支部(以下「Z2支部」といい、組合と併せて「組合ら」という。) 
被申立人  泉佐野市(「市」) 
決定年月日  平成28年3月29日 
決定区分  緊急命令申立ての却下 
重要度   
事件概要   市が①組合費のチェック・オフについて事務手数料を徴収することにしたとして、組合に対し、事務手数料の徴収に係る契約の締結を求め、組合がこれに応じなかったところ、チェック・オフを中止したこと、②当該事務手数料に関する団交の申入れに応じなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は市に対し、1 事務手数料を徴収することなく、組合費のチェック・オフを再開すること、2 市がチェック・オフを中止していた間に組合が組合費集金のために金融機関に支払った振替手数料相当額の支払、3 文書手交を命じ、組合Z2支部に係る上記①の申立てを棄却した。
 市は、本件命令を不服として大阪地裁にその取消しを求める基本事件の訴えを提起した。
 本件は、大阪府労委が、本件命令のうち、主文第1項及び第2項につき、緊急命令を申し立てた事案である。 
決定主文  1 本件申立てをいずれも却下する。
2 申立費用は、参加によって生じたものは参加人らの負担とし、その余は申立人の負担とする。  
決定の要旨  第2 当裁判所の判断
1 組合らは、①主文第1項につき、市が本件命令を履行しないことにより、組合らの組合員の脱退や組合費の未納及び組合費集金のための事務の負担等、組合らの組織や財政に深刻な影響が生じ、組合らの活動の基盤が掘り崩される、②主文第2項につき、組合は、各組合員名義の口座からの送金を受ける方法により集金する際、1ロ座につき27円の費用を金融機関に支払わなければならず、本件命令の不履行により、組合が受ける損害が増大するとして、緊急命令により労使関係の正常化を図る緊急の必要性があると主張する。
2(1) 確かに、疎明資料によれば、組合が組合費の徴収を口座振替により行った場合に金融機関に支払うべき手数料が発生すること、組合員の中には、ロ座の残高不足で振替ができないことにより、直接組合員から集金すべき分の未納と合わせて徴収不足が発生しており、その額は、平成27年12月分につき、77万0994円の徴収予定額に対し、18万7277円であったこと、以上の点が認められる。
(2)ア しかしながら、疎明資料によれば、①市によるチェック・オフ中止後、組合が組合員らに対し、組合費徴収のため近畿労働金庫のロ座振替により行いたい旨通知したところ、組合員190名のうち165名がこれに応じたこと、②組合の組合員190名のうち、平成26年5月から6月にかけて6名(うち1名は組合の下部組織である組合Z2支部の組合員)が、同年8月には3名が脱退したが、その理由は、労働組合に入っていても先が見えない、住宅ローンの返済が苦しい、労働組合が市代表者市長の行動に歯止めをかけることができず、労働組合に入っていても仕方がないといったものであったこと、以上の点が認められ、これらによれば、組合(その下部組織であり、収入を組合からの交付金によっている組合Z2支部を含む。)の組合員の脱退と市によるチェック・オフの中止との間に因果関係があるとは認められない。
イ また、疎明資料によれば、①口座振替の方法による組合費の徴収に際しては、インターネットバンキングにおいて組合費の額等の所要事項を入力する必要があるが、これは、7名のパート職員を除き、原則として年1回の定期昇給時のみの作業であり、夏季や年末の一時金における組合費徴収のための上記入力作業は、担当役員において1日で行っていること、②組合の組合員のうち、ロ座振替による徴収に応じず、直接の集金を要する者は26名にとどまること、③組合が組合費の徴収を口座振替により行った場合に金融機関に支払うべき手数料は1か月当たり約4500円、年間約6万5000円にとどまること、以上の点が認められ、これらの事情に、④組合らがチェック・オフの中止後、1年半余りにわたって労働組合を運営していることをも併せ鑑みると、組合らにおいて、被申立人によるチェック・オフの中止によって、緊急に救済すべきほどの打撃が生じているとまでは認められない。
ウ 以上認定説示した諸事情を総合的に勘案すると、本案訴訟(基本事件)の判決による判断を待っていては、被申立人によるチェック・オフの廃止に伴って組合らに発生した組合費の徴収事務によって、組合らの運営に回復し難い損害を生じさせるとまでは認め難く、その他に、一件記録を精査しても、緊急命令を発する必要性を肯定するに足りる的確な疎明はない。
3 よって、本件申立てはいずれも理由がないから、これらを却下することとして、主文のとおり決定する。  
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成26年(不)第10号・第43号 一部救済 平成27年7月28日
大阪地裁平成27年(行ウ)第282号 一部取消 平成28年5月18日
大阪高裁平成28年(行コ)第180号 一部取消 平成28年12月22日
 
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